無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
突撃ラスボスのお宅訪問。
復活! アリシア・テスタロッサ復活!
両親がアースラを襲っている……おかしい、何かの間違いではないのか?
俺はシンジ・マギ……いや、今の名前は真木真司だ。
今日は俺の半生を振り返ろうと思う。
興味がなければ無視してくれてもいい。どうせ面白くもない話だ。
だが、どうして俺と妻がミッドチルダからこの地球へと渡界してきたかは知ってほしい。
息子が生まれる前、俺は魔導士として時空管理局で働いていた。
尊敬するクライド・ハラオウンの下で。
だが闇の書事件ですべてが狂った。
上司のクライド・ハラオウン氏は妻と3歳の子供を残して死亡。俺も事件の後遺症で足と左半身をやられ、隊への復帰は絶望的と診断される。
これはいままで魔導士として生活してきた俺には相当なショックだった。まだ20代で魔導士どころか普通の職にも就けない身体になってしまったのだ。
その時にルヴィアと結婚していたのはある意味幸いだった。もし1人だったら世をはかなんで自殺していただろう。
妻のルヴィアとは管理局時代から付き合っていた。
10歳で1人前のデバイス技師として活躍していた彼女のハートを射止めた理由は……腐れ縁というやつだと思う。
俺は魔力総量が他の魔導士に比べ少ないから、よく怪我を負ったりデバイスを壊したりしていた。
それを彼女が直し、小言で文句を言われ。気が付いたら一緒にいる時間が長くなりデートへ誘うような関係となっていた。
もちろんアプローチをかけたのは彼女が成人した15歳になってからだ。断じて俺はロリコンではない。
話が逸れた。
そんな彼女がよくこぼしていたのは、自分より小さい魔導士たちが戦場へ行くことへの不満だった。
子供が戦場へ行くのはおかしい。ミッドチルダの道徳は間違っていると。
大きな声では言えないが、俺もそう思っていた。だが、魔力量がオーバーSランクの人間はどこの部署も欲しがる
まだ、碌な教育を受けていない10歳以下の子供も含めてだ。
時空管理局の魔導士と言えば聞こえはいいがやっていることは戦場の鎮圧や危険人物の護衛や保護など多岐にわたる。
そんな危険な仕事を俺たち大人ではなくまだ年端も行かない子供に任せるのはいかがなものか。
大っぴらには言えないがそんな不満が俺たちにはあった。
そしてある日、その考えを決定的にする出来事が起こる。
俺が闇の書事件で怪我をする前、彼女の部屋を訪れると部屋の電気もつけずにボーっとしている彼女がいた。
何があったのか聞いてみると、彼女が制作した新型のアームドデバイスをつけた子供の管理局の魔導士が殺されたそうだ。
管理局のデバイスは人気で、闇ブローカーの間で高く取引されている。
とくに妻が作ったデバイスは外見も中身も一級品で、犯罪組織が喉から手が出るほど欲しいブランドなのだそうだ。
だから、襲われた。
強く、身体の大きな大人ではなく、まだ弱く未熟な子供の魔導士が。
妻は言う。「私があの子のためにデバイスを作らなければこんなことにはならなかった」
そうじゃない。現に妻はまだ弱い子供がこの先生き残れるようにと願いを込めて強いデバイスを渡したはずだ。
それが裏返って狙われるようになっただけ。
この世界じゃよくある話。そう、よくある話なんだ。
「やっぱり、ミッドはおかしいわ」
妻のルヴィアはこぼした。
「子供があんな死の危険と隣り合わせの環境にいるなんて。魔力ランクがSオーバーの子が生まれたらそんな世界に我が子を送り出さないといけないなんて。そんなこと」
腹をさすり不安そうな顔をしながら悲しげに語るルヴィア。この時俺は初めて彼女が妊娠していることに気づいた。
ルヴィアの腹が大きくなり始めた頃。俺は闇の書事件で杖なしに歩けない身体にされて魔導士として戦力外通告を受けた。
だが、そのことがある決心を実行させる材料となる。
「地球へ行こう。ルヴィア」
地球とはここミッドチルダとは違う文化体系を持つ世界であった。
過去に資料で見たことがある。そこではミッドとは違い子供がある程度の年齢になるまでは親の保護下で生活し、成長していくのだと。
ミッドのような多様性のない未開の惑星だとされていたが俺たちが、いや。俺たちの子供が育つには最善の場所に思えた。
だが、俺と違い彼女は有名なデバイス技師だ。こちらでの仕事は山のようにある。
そのことが不安で君だけでもここに残るか? と聞いたところ返ってきたのは平手打ちだった。
「私にはあなたとあなたの子供以上に大切なものはもうないわ! 師匠や家族との縁を切ってでもついていく」
そして実際に家族と縁を切って(特に同じデバイス技師の父親とは相当もめたようで勘当されたといっていた)俺と一緒に地球に来てくれたのだ。
そこで生まれたのが司郎。我が家の宝物だった。
地球で暮らし始めて6年。
掃除や洗濯の家事や息子の送り迎えにも慣れてきた。
特に料理は元々好きだったのもあり妻が嫉妬するくらいにはできている。
司郎もずいぶん大きくなった。
教えてもいないのに足し算引き算をしたり、簡単な掛け算ができたりするたびに妻が「あの子は天才よ」と目を輝かせるのが楽しい毎日だ。
そんな妻は医師としてこの世界で働いている。俺がデバイスを壊して怪我して帰ってくるたびに治療魔法と医療にも詳しくなっていたそうで、この世界の医療レベルに楽々と順応していた。
ただ、相変わらずデバイスへの執念というか制作には熱心で、この世界でも使える武器のないデバイスの開発を地下室で人知れず行っていた。
それを息子が完成させたときは本当に驚かされたが。
その時息子の魔力ランクがEであることに不覚にも安堵してしまい妻と口論しかけてしまった。
俺としてはデバイス技師の才能を受け継いだ息子を褒めたつもりだったのだが、彼女はミッドでまだ子供が戦場に行っている事実を思い出してしまったらしい。
その後も息子経由で高町さん、月村さん、バニングスさんと仲良くなれたのは幸いだった。
しかし見事に女の子とだけ仲良くなっているな。これはどっちの血だろうか?
妻と話し合った結果、俺の血だと言われてしまった。子供だった自分を本気で口説いたあなたそっくりと言われたのが不服で仕方ない。
そして息子が作ったデバイスのガジェット、Gメモリの完成、
これによって俺は以前と同じように歩けるようになった。
妻はこれが正しいデバイスの発展の仕方よ! と喜んでいたが、一方で俺は別のことについて考えていた。
この子、デバイス技師として優秀すぎないか?
いくらなんでもまだミッドチルダで確立されていない技術を作り出すのはおかしいだろうと。
もし彼女の父がいたら同じことを……いや、孫を褒めたたえて妻のように全力で喜びを表現するかもしれない。
とりあえずこれからは息子のことを今まで以上にしっかりと見ていなければ。
そう思い、その日から肉体的鍛錬を始めた。リハビリには長い時間がかかりそうだ。
息子が9歳になった。
相変わらず女の子3人と仲がいい。
一体将来は誰を選ぶんだろうと考えていると、またまた1人女の子を我が家に連れてきた。
一目見てわかった。この子は魔導士だ。
ただ管理局所属ではない。テスタロッサというどこかで聞いた名前が引っ掛かったが息子に彼女の家庭環境を聞いて放っておけないということで保護した。
使い魔もつれていたからかなりの腕前だと察せられる。眠っている間にデバイスで魔力を測らせてもらったがオーバーSだった。
そしてその時気づいた。テスタロッサ。プレシア・テスタロッサだ!
ヒュードラ事件で多くの死傷者を出した責任者とされる彼女。だがその捜査内容は疑問視する部分が多々あり、彼女はむしろ被害者ではないかというのが俺とクライドさんの私見だった。
そんな彼女の娘? が地球に何をしに来たのか。
その理由を俺と妻はデバイス越しにプレシア・テスタロッサと息子の会話で知った。
【ジュエルシード】【アルハザード】
まさかそんなものが関わっていたなんて。それよりプレシア・テスタロッサに一歩も引くことなく提案していた息子は何者なんだ?
末恐ろしさというより不気味さに近いものを感じた。この子は本当に自分たちの子なんだろうか。
翌日。アルフというオオカミの使い魔と一緒に帰ってきたフェイトちゃんに息子からの
だが1週間後、時空管理局がこの町に来たことで穏やかならざる事態へとなる。
エスティアと同型艦。間違いなく時空管理局のものだ。
管理局が一体この地球へ何をしに?
考えるまでもない。ジュエルシードというロストロギアの回収に決まっていた。
この頃からフェイトちゃんが帰ってくるたびに生傷を作ることが増え、俺と妻の治療魔法を受けることが多くなる。
管理局と敵対しているということだろう。口には出さなかったが、憤りを俺たち夫婦は抱いていた。
子供に対して大人の魔導士が寄ってたかって魔法攻撃をするなんて。
実際戦っているのは彼女と同年代の魔法少女だったのだが、その時の俺は知る由もなく。管理局への怒りを募らせていく。
そしてある日突然町中が魔力の閃光に包まれ、その日からフェイトちゃんが帰ってこなくなった。
おそらく管理局に囚われているのだろう。空中にまだ戦艦が浮上していることからそれは明らかだ。
俺と妻のルヴィアは心を1つにしてフェイトちゃん救出に動いた。
まずデバイスのムラサメ2つを使って電子戦を戦艦に対して行い艦の機能をショートさせる。
その後俺が魔導士をおびき出し、妻のルヴィアが館内に侵入しフェイトちゃんを救出する手はずになっていた。
艦橋に降り立つと魔導士時代に愛用していたデバイスのティターンズを使い、戦乙女型のゴーレムを13体錬成し戦闘に備える。
さらに自分の周りにはクレイモア地雷を錬成して迎え撃つ構えをとっていた。
「そこの魔導士! 一体何者だ? 所属と目的を言え」
その声と顔だちに思わず一瞬固まってしまう。
昔の上官の面影が色濃く残った黒髪の魔導士。
「君は……クロノ。クロノ・ハラオウンくんかい?」
俺が問いかけると少年……クロノくんは驚いた顔をしつつも警戒を解かずデバイスを構える。
「僕のことを知っているなんて、どこかで会ったことが? 生憎時空管理局に弓引く危険分子に知り合いはいないはずだが」
「君のような子供を戦いに送り出すなんて、管理局はやっぱり変わっちゃいない!」
俺はティターンズで生み出した13体のゴーレムをクロノくんに向かわせ、戦っている間に空中に別の物質を錬成していく。
その時、上空から魔法の射撃が行われゴーレムの連携が崩される。
目を宙に向けるとそこには高町さんの娘のなのはちゃんが白いバリアジャケットを着て杖型のインテリジェンスデバイスを構えクロノくんを囲むゴーレムを上空から魔法で射撃していた。
「管理局め! 魔力があれば現地の年端も行かない子まで戦力にするのか⁉ そういうところは昔から変わらないな!」
「クロノくん、大丈夫なの?」
「なのは、助かった。そのまま射撃を続けてくれ」
クロノくんが射撃で薙ぎ払われたゴーレムの残骸を飛び越えこちらに向かってくる。
ゴーレム使いは近接攻撃に弱い。教科書通りの戦法だ。
だが、それが仇になる
指揮棒状のティターンズを振り、錬成していた透明度の高い鏡のようなブーメランを向かってくるクロノくんに放つ。
1つは目くらまし。もう一つの目的は上方に視線を向けさせること。
「くっ」
髪と頬を裂くように飛び去って行くブーメラン。目を閉じないのはさすがだとほめるべきところだろう。
だが、甘い。
俺は後方へと飛び、魔力を練る。そしてクロノくんが足元のクレイモア地雷の爆発に巻き込まれる姿を見ながら最大魔力で錬成した。
「センチュリオン! アーム」
爆発の煙から巨大な鎧に包まれた腕がクロノくんを握りつぶさんと拘束する。
それから13体の錬金を1度解き、別の形へと錬成!
「飛翔せよ!
13体の壊れた女神のゴーレムたちの破片から巨大なハエが錬成され、宙に浮かぶなのはちゃんに向かって飛んでいく。
「いやぁあああああ! 虫! 虫いやなの⁉」
半狂乱になりながら巨大なハエを打ち落とそうと躍起になっているなのはちゃん。冷静さを欠いた魔法射撃はよけるのはたやすい。瞬く間に巨大なハエたちにたかられ黒黒とした塊になる。
「錬金。
巨大なハエたちを今度は糸状に錬成してなのはちゃんを拘束。宙から落ちてきたなのはちゃんをもう片腕のセンチュリオン・アームを錬成して受け止める。
モガモガ言っているがこうでもしないと無力化できないんだ。すまないと心の中で謝っておく。
さて、俺はセンチュリオンの右腕に拘束しているクロノくんに向き直る。
「それだけの腕を持ちながら、なぜこんなことを⁉ あなたほどの魔導士ならテロリストに身を落とさなくてもいいだろうに」
「残念ながらこれでも魔術ランクはB+止まりでね。君が思うほど優秀じゃないのさ」
そんなことを話していたら妻のルヴィアがフェイトちゃんを連れて戦艦から出てくるのが見えた。
よし、ここが引き時だな。
「では、さらばだクロノくん。バインド!」
クロノくんにバインド魔法をかけセンチュリオンの錬成を解く。
あとは2人を抱えて高速移動用のゴーレム足場を作り逃げるだけ。
「なーにーをー」
その時だった。息子の声が聞こえたのは。
思わず固まる俺。だが、次の瞬間その行動を後悔することになる。
「やってんですかあんたたちは―!」
『タイタス』
顔面を狙ったゴーレムをまとった全力パンチ。
狙いは寸分たがわず、
そして息子の司郎の呆れにも似た冷ややかな視線を向けられたのだった。
Q。闇の書事件はクロノパパが闇の書に艦の制御を乗っ取られたのをグレアムさんに沈めてもらったから犠牲者はクロノパパだけじゃないのん?
A。劇場版や媒体によって闇の書事件の内容は違うし……。まあ、そういうことで。
次回、待望のなのフェイ