無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
真木夫妻に悲しき過去。
真木夫妻、フェイト奪還のために管理局に喧嘩を売る。
真木真司、決着したと思ったところに息子のパンチでダウン。その後みんなと話し合い←いまここ
「だーかーら、なんで娘が滞在する場所の調査もしないで送り込むんですかあなたは! 日本じゃ宝石はよっぽどのことじゃない限り子供が換金できないし、ホテルに泊まろうとしても親の同意がなければ泊められないんですよ」
俺の言葉の前に小さくなっているのはプレシア・テスタロッサさん。フェイトさんの母親だ。
「それにもし子供だと足元見られて宝石が安く買いたたかれたらどうするつもりだったんですか。俺だったら相手が子供なら偽物ってことにして安く買いたたいて店から追い出しますよ」
まあ、実際調べてみたら宝石は本物だったわけだけど。
薄い本通りじゃなくてよかったねとはならない。
目の前のプレシアさんは「はい、はい。その通りです」と最初に会った頃のカリスマあふれる悪の女帝という姿が嘘のような素直さで首を縦に振るおもちゃのようになっている。
これ以上やると何かに目覚めそうなので俺はフェイトさんをずいと前へ突き出し、プレシアさんに言う。
「で、ここまで頑張った彼女に言うことは?」
「それは、あの……その」
「言うまで温泉はダメだよママ」
「あ、アリシア⁉」
もごもごしているプレシアさんにちょっぴり怒った顔のアリシア、それに驚いた声をあげるフェイトさん。
「もー。わたしのことはアリシアお姉ちゃんって呼んでって言ったでしょ。フェイト」
「そんなこと。クローンの私が言うのはおこがましいかなって」
「そんなことない! もしフェイトを悪く言うやつがいたらわたしがパンチしてやるんだから」
仲良し姉妹の姿に思わず「あら^~」と心の中で声が出る。
アリフェイ。あったかもしれない可能性の姉妹。いいねいいね。最高だね!
「フェイト」
2人がイチャイチャしている空気を裂き、プレシアさんが言う。
「今まで、本当にありがとう。こんな私についてきてくれて。あなたは……そうね。私が言うことが許されるなら、【自慢の娘】だわ」
その言葉にポロポロと涙を流すフェイトさん。
その姿に「フェイト、どこか痛いの?」と慌てるアリシアと「やっぱり私がこんなこと言うのは、許されないわよね」と自己嫌悪に陥っているプレシアさん。
2人ともわかってないな。
見なよ。フェイトさんの顔を。
こんなに幸せそうに笑っている少女が、母親を嫌っているわけないじゃないか。
さて、あの後の話をしよう。
両親がアースラを襲撃した後の話だ。
とりあえず俺はぶちのめした両親を連れ、アースラの艦長のリンディさんと対面させる。
この時両親とリンディさんが知り合いだったと聞いたときは驚きを通り越して呆れるしかなかった。
あんたら、敵の顔も知らずに戦ってたんかいと。
で、ジュエルシードがなのはさん側に12個回収されていること。
残り9個はこちらが回収していて、ユーノくんに渡す準備があること。
それがわかるとトントン拍子に話は進んだ。
プレシアさんがジュエルシードを積んだ貨物船を襲ったことはプロジェクトFATEの詳しい資料を渡すことで大幅に減刑された。
これは原作通りの展開で、原作はプレシアさんが死んでいるから資料とかが丸ごと管理局に回収されたんだよな。
で、その結果マテリアルズとかが生まれたりしたわけで。
罪深いよなぁプロジェクトFATE。この罪を一生背負って償っていってくださいね、プレシアさん。
で、プレシアさんの罪状は取り調べの後解放となった。
これには両親の働きかけが大きい。
フェイトさんが母親のためにジュエルシードを集めていたこと。管理局と戦ったことは本意ではなかったこと。
それと管理局時代のアレヤコレやのヤバイネタや秘密を黙っている代わりという司法取引が行われたことによりフェイトさんは即日解放となったのだ。
プレシアさんの解放はそのついでみたいなもの。
で、問題はアリシアさん。
彼女はプロジェクトFATEの完全な成功物。いわゆる生きた標本である。
どの組織も喉から手が出るほど欲しい検体。だが、それもリンディ提督が
生きる厄ネタだからね。仕方ない面もあるが両親に対する恩もあるらしい。
あんたら、ミッドにいた頃何やってたんだ?
で、リンディさんが父さんにしきりに現場復帰の意思はないのかと尋ねていた。
なにしろ管理局が誇る戦艦アースラを完全制圧したうえSランクオーバーの魔法使いを2人同時に手玉に取ったそうなのだ。
怪我をして車椅子状態だった昔はともかく今のあなたなら十分後進を育成できると。
だが父親はその誘いを断った。いわく、今は家事が忙しいからだと。
あと個人的に管理局のやり方は許せないとも言っていた。よくわからんがそれを聞いたリンディさんが落ち込んでいた。なぜだ?
で、その後母さんの診察を受けたプレシアさんの病状がただの栄養不足と睡眠不足、運動不足に生活習慣病だと発覚。
死に至る病でなかったことにほっとした俺とフェイトさんだったが、「このままだとあと3年で死ぬわよ」と笑顔で宣告され、本気でプレシアさんの生活を改善しなきゃと誓ったのだった。
で、現在。
いろいろ落ち着いて取り調べも終わった俺たち真木家とテスタロッサ一家は海鳴市の温泉街に来ていた。
あの時の約束を果たすために。
プレシアさんへの説教を終えた俺たち子供組は両親へと会話のターンをバトンタッチし、風呂に入ってくることとなった。
といっても言いたいことは俺がほとんど言っていたらしく、両親はプレシアさんと今後のことを話し合うのだそうだ。
フェイトさんと、アリシアのことである。
というのもプレシアさんがフェイトさんと向き合うのに時間が欲しいと言ったことがきっかけだった。
今までの態度が態度でいきなり良い親子関係になれるとはいいがたい。
さらに実の娘であるアリシアの蘇生に成功したというのも間が悪かった。
いわく、このままだとアリシアにかまいすぎてフェイトをないがしろにしそう。アリシアと仲良くしているところを見てフェイトが傷つくのではないか。
といった妄想が強迫観念のように浮かんでは消え心配なのだと診察中母さんに漏らしたそうだ。
それを聞いた両親が、それならばしばらくの間自分たちの家でフェイトさんを預かりまずは土日の2日間だけでも一緒に暮らすのはどうかと提案したのだ。
そして様子を見ながら3日、4日と一緒に過ごす時間を増やしていき、最終的に一緒に住めれば万々歳だと。
「どうしてそこまでしてくれるのかしら。あなたたちは私にいい思いをしていないはずでしょう?」
と尋ねるプレシアさんに両親は、まず子供の幸せが1番! それに子育てが難しいのはこちらも承知してるし頼られるのは悪い気がしないと笑顔で帰したそうだ。
というわけでフェイトさんとはしばらく同じ屋根の下で生活することになっている。
これ、原作のハラオウンルート消滅してないかな?
プレシアさんが生き残ったことで原作通りに行かないことは覚悟してたけど、クロノくんのポジションに俺が成り代わってない?
また思わぬところで原作壊しちゃったなと思い風呂から出てロビーの椅子に座って涼んでいると、向こうからフェイトさんとアルフとアリシアがやってきた。
「司郎、ここにいたんだ」
「しろう、アイスおごってー」
うわーっ! 推しのホカホカの湯上り浴衣姿ーっ!
まぶしくて見れませんと両目を手で隠す俺。
あ、アリシアちゃん。アイスはこのお金で買っておいで。フェイトさんと2人分買ってもおつりが出るくらいのお金は入ってるから。と財布を渡す俺。
「ありがとう。いってくるねー」と風のように売店へと消えていくアリシアとついていくアルフ。それを見送り、フェイトさんが隣の椅子に座ってきた。
おっふ。近い近い。
「司郎、ありがとうね。いろいろ私たちのために動いてくれて」
いえいえ。そんな感謝の言葉などこのモブにはもったいない。
そういえば、と気になったことをフェイトさんに尋ねてみる。
「なの…高町さんとは仲良くなりましたか?」
「うん。なのはとはその……徹底的にやられてわからされちゃった。で、友達になる約束もしたよ」
とフェイトさん。うん、高町式交渉術にやられたんだな。
ということはやられたんだ。バインドからの最大出力射撃。
「で、今度一緒に遊ぶ約束をしたんだ。その時は司郎も一緒にって言ってたよ」
笑顔でそんなことをおっしゃるフェイトさん。
いえいえ、なのフェイの間に挟まるなんてまねとてもとても。遠くから見守らせていただきますとも。
というか、なのはさん俺のことすごい怒ってそうだししばらく顔を合わせたくない。父さんが錬成した繭から助けた時も何か言いたげにこっちをじっと見てたし。
「ただいまー。買ってきたよー」
そんなことを考えていると売店から帰ってきたアリシアとアルフがバニラアイスを俺たちに渡してきた。
うん。温泉地にある80円くらいのでかいバニラアイス。嫌いじゃないわ! むしろ大好き。
4人でペロペロ舐めながら俺たちは両親の話し合いが終わるまで外で時間をつぶしていた。
さて、プレシアさんが生き残ったことで原作フェイトさんの次元干渉犯罪の重要参考人という立場は消滅してしまった。
なので数日後の休日、フェイトさんは普通になのはさんと2人で遊んでいる。
海鳴市にあるアウトレットモールに2人で行って買い物を楽しんだりお店を冷かしたり昼食をとったり。
つまりおデートですわよ奥様!
俺はその様子を余すことなくデバイスのムラサメに録画させ、俺自身も双眼鏡で遠くから見守っていた。
「ねえねえ、わたしたちもお買物しようよー。見てるだけってつまんない」
と言うのはアリシア嬢。
俺がなのフェイデートを追跡していると、いつの間にかついてきていた。
なぜだか知らんが目覚めた日から彼女になつかれている。
ムラサメが作ったシュミレーションプログラムに問題はないはずだが俺になつくようなプログラミングがされたんだろうか? あるいはただの刷り込み?
わからんがまあ、嫌われるよりはいいと思い放っている。
「しっ、今いいところだから。あっ、なのはさんがフェイトさんにデザートのパフェをあーんしてフェイトさんが顔真っ赤にしてる!」
これはキマシタワー! 俺が盛り上がってると「見せて見せて」と俺の双眼鏡を奪おうとするアリシア嬢。
ちょ、君のその右手に持ってるのは何⁉ 双眼鏡でしょう! 俺が渡した予備の。
仕方ないので昼食用のアンパンと牛乳を渡すと小動物のようにご機嫌で食べだすアリシア。
生まれたばかりなのでちょっとお馬鹿……もとい天然なアリシアに手を焼いていると、なのフェイが店を出てどこかへ歩き出した。
これは……あの名シーンの場所ですね。
有名な「名前を呼んで」が生で聞けるかもしれない! ムラサメ! 録音機能に問題はない? オッケー? 了解!
海辺の公園へと移動したなのフェイ。俺とアリシアは植え込みの陰に隠れる。
さあ、始めてくれ! あの有名なシーンを。
友達になるにはどうすればいいのか聞くフェイトさんに「名前を呼んで」と返すなのはさん。
何度もなのはさんの名前を呼ぶフェイトさんに涙を落とすなのはさん。
友達が泣くと自分も悲しいことを知り、抱き合う2人。
再会の約束をして、「なのはに困ったことがあったら、今度は私がなのはを助けるから」という王子様発言をするフェイトさん。
これは原作壊しちゃったから見られない、残念!
そして別れの時、互いのリボンを交換する。
これでなのフェイが完成するわけですよ!
「へ、へ、ふぇくし!!」
そんな風に1人で俺が盛り上がっていると、隣で大きなくしゃみをするアリシア。
ああ、ここ海が近いからね。まだ5月とはいえ潮風は冷たいよね。
そんなことを考えていたら黒い影が俺たちの上に落ちてきた。
「司郎君、なにしてるのかなぁ?」
「アリシア姉さんも。2人でデート? 楽しそうだね」
ニコニコと笑顔ではあるがプレッシャーを放つなのはさんとフェイトさん。
あっ、これこの後の展開が無理な奴だ。リボンの交換は中止です。中止!
「うん、そうだよー。フェイトもなのはとデートしてたんでしょ。よかったねー」
アリシアの言葉にニコニコ笑顔から俺をにらむ顔に変わったような?
「もう、司郎君。すみに置けないねこのこの」
痛い痛い。なのはさん、肘鉄がみぞおちにクリティカルヒットしてる!
「司郎、何も知らない姉さんを連れまわすのはどうかと思う」
フェイトさんの目が絶対零度だー! ちょ、ちょっとアリシアさん言ってやって。俺の潔白を示す言葉を言ってやって!
だがその願いもむなしくアリシアは皆仲良しだねーとのほほんモード。
しまった! この場に俺の味方が誰もいない。
「そういえば司郎君には説明してほしいことがたくさんあるの。ちょっと向こうで『お話』しようか」
それ、実際には死刑宣告では?
なのはさんが俺の襟首をつかみずるずると引きずっていく。
俺は2人に助けを求める視線を送るが2人はにこにこするだけで助けてくれない。
お、俺の求めるなのフェイはどこにー⁉
そんな言葉にならない叫びは海風にかき消されて誰の耳にも届くことはなかった。
無印編完。
次回はお誕生日編です