無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
主人公、転生者だった。
リリカルなのはの世界で生き残るため、月村すずかちゃんとお友達になるんぜよ!
ドン引きされたけどなのアリすずの3人娘とお知り合いになりました。
デバイスが欲しい。
俺専用のスペシャルな奴なんて贅沢は言わない。汎用型のアームドデバイスでもいい。
とにかくデバイスが欲しい。この先生き残るために。
それなら母親に頼んで部屋にいっぱいあるやつ貰えばいいじゃん。
そう思った方。それがそうもいかない。
なぜなら前世の記憶を思い出した5歳の時、さっそく母親がよく使う部屋に無造作に置かれたデバイスが欲しいといったのだが渋い顔をされたのだ。
いわく、あれは試作品の模型だから実際は使えない。
それにお前にはまだ早いと。
というよりもデバイスを俺が何に使うのかと逆に問われ、俺は返事に窮するしかなかった。
馬鹿正直に「僕、魔法使いになりたいんだ」などと言えば頭がおかしくなったと思われるし、仮にそれが受け入れられたとしてもなぜデバイスが魔法使いになるために必要なものだと知っているのか? という根本的な疑問が生じる。
なぜなら俺が生まれてから現在に至るまで、両親はデバイスを使うどころか魔法を使った痕跡の1つすら俺に見せていないのだから。
ここで我が家の家族構成を説明しておこう。
まず両親と俺という核家族である。
父親の真木真司は専業主夫。
朝食からお昼のお弁当、夕飯はもちろん掃除洗濯にゴミ出し、ご近所づきあいもこなす日本人顔の30代男性。
しいて特徴をあげるとしたら下半身が不自由なことくらいだろう。短い距離なら杖を使って歩けるが普段は車いすを使っている。
幼稚園の年中ぐらいの頃あれ? 俺の父親っておかしいの? と思ったことはあるが別にショックは受けなかった。
むしろ幼稚園の送り迎えの時に乗っていた母お手製の改造車椅子(最高時速60km)に2人で乗ってると周囲からは「かっこいい」とか「乗せてほしい」と羨ましがられた記憶しかない。
おそらく足が不自由な理由もミッドから地球へ渡界した理由の1つなんだろうけど、まだ子供の俺がそれについてふれるのは不自然なので黙っている。
逆に母親の真木ルヴィアは医者として働いていた。
名前の通り外国人っぽい見た目でリリカルなのはの元ネタであるとらハ作品のヒロインが大人になった感じを思い浮かべてもらえばいい。ちなみに触覚は生えてないし髪は短めだ。
休みの日は栗色の髪に分厚いゴーグルをつけて家の地下室にこもって何かやってる。
その地下室に大量にあるのが未完成のデバイス、あるいは完成品のデバイスの模型なのだ。
察するに昔はデバイス技師だったんだろうな。
なぜデバイスが未知の存在である地球に来たのかはわからないが、今でもデバイスの設計図を作ったり試作品を作ったりしているのを見ると相当なデバイスジャンキーかデバイス馬鹿の技術屋なんだと思う。
仮に彼女が渡界した理由なら画期的すぎるデバイスの発明とか、禁忌の兵器を作っちゃった系かなぁ。
医者やってるくらいだから頭も悪くないはずだしそもそもただのデバイス技師だったならミッドから渡界する理由がない。
厄ネタの本命はこっちだろうなぁと思う今日この頃。
母親が外で働き父親が専業主婦。まるでまどかマギカの鹿目家みたいだぁ。
閑話休題。
まあ、こんな風に両親は子供の俺に魔法とミッド関連のことを隠している。
子供ならそんな2人の意図を汲んで見て見ぬふり、知らぬ存ぜずを続けた生活が正しいとはわかってるんですよ。
でもね、3年。あと3年しか時間がないの。原作が始まるまで。
子供の3年は大人の20年に相当するともいうがそれはあくまで認識的な意味で、時間的には変わらないわけで。
早いに越したことはないのです。
なのでこっそり忍び込みましたよ。母親がいない間に地下室のデバイス工房に。
机や床に散らばってるデバイスの設計図を読み込み、完成品の模型デバイスをバラしては元に戻し、デバイスに関する知識を深めていく。
幸いにも材料は豊富にあったし、設計図にあったデバイスをトライ&エラーを繰り返しながら制作した結果。
「つ、ついにできた」
俺は1年かけてようやく完成したデバイスを前に喜びで胸がいっぱいになっていた。
完成したデバイスは円盤状の基礎部分の上に流線的な鳥の頭頂部と透明な翼を取り付けた機械的な鳥のような姿をしている。
これがデバイスモードで普段の待機状態の時はリストバンドに変形できる代物だ。
デザイン的には仮面ラ〇ダーWのエクストリームメモリみたいな感じ。前世知識に結構引っ張られた感もある。
長かった。本当に長かったよ。
こう見えて前世は工業大学付属高校に通って理系に進んでいたけどデバイスは未知の技術だから完全に理解するのに1年かかってしまった。
やっぱりUSBメモリをガイアメモリに改造したりバイクを仮面ラ〇ダー仕様にしたりするのとは勝手が違うな。
早速起動すると空中に青い画面が浮かび上がる。
白い文字が次々と羅列され、利用規約やら何やらが描かれた文面が展開されていく。
うるせぇ我慢できるか! 了承スイッチオンだ!
空中に浮かぶ了承アイコンを連打連打。画面が消えるとブォンという起動音と共にデバイスが起動する。
『Hello World』
機械の女性を模した合成音声が地下室の工房に響く。
『Give me a name My master』
「あ、言語設定そのままだった。日本語設定と」
メニュー画面を表示させ、ポチポチと設定を変更する。
『認証設定のために当機への名称設定を推奨します。名前を付けてください、我が主』
「名前、名前か。よし、お前の名前はムラサメだ!」
名前の由来? フィーリングだよ馬鹿野郎。別に俺は艦隊をコレクションしてないし特撮ヒーローのドンムラサメが好きだからとかじゃ決してない。
作ってみてわかったがこのデバイスはなのはさんやフェイトさんの持つインテリジェンスデバイスやアームドデバイスとは根本的に思想が違う高性能AIを持つサポート型デバイスだ。
効率的な戦術プログラムを持ち主に提案したり、攻撃パターンのデータ収集、データの比較などが得意。
つまり武器らしき機能が一切ない。
他のデバイスと併用することを前提に作られたデバイスなのだろう。
正直途中から「なにこのはずれデバイス」とは思ったが、設計図の中には武装や兵器となりそうなデバイスの情報が一切なかった。まるで徹底して武器となるデバイスの機能を排除したかのように。
母親が何を考えてこのデバイスを完成させようとしていたのかはわからないが、今はとりあえずこの先を生き残るための情報収集が必要だ。
「ムラサメ、お前を使えばどんな魔法が使える?」
そう、これが知りたかった。
魔力がオーバーSランクのなのはさんもデバイスのレイジングハートがいて初めて魔法使いとしての能力が花開いたわけだし。
俺もデバイスを持てば魔法が使えるのでは? と期待しないわけにはいかなかった。
ワクワクしながら待っているとムラサメのカメラ部分から光が発せられ、俺の身体の頭からつま先まで光が通り過ぎていく。
それから数分デバイスの駆動音が室内に響き、ごくりと俺は唾を飲む。
『申し訳ありません主。私は演算補助用のデバイスでありますので戦術プログラムの提案はできても他のデバイスのように魔法をサポートすることはできません』
とのお返事。
えー、そりゃないよー。
散々期待させといてそんな。せめて空を飛ぶとかそういうこともできないの?
聞いてみたら『できません』とにべもなく告げられた。
そんな、俺の1年はいったい何のために……。
がっくりと肩を落としているとムラサメは『ただ……』と言葉を続ける。
『基本防御魔法のプロテクションは本機でも実行できます。さらにマスターが
おお、そういうのを聞きたかったんだよ!
「てことは俺には稀少技能が?」
『ございません。残念です』
ノゾミガタタレター!
なんだよ期待させやがって! 転生特典でなんかあるのかと期待しちゃったじゃないか。
上げて落とすのが得意だなこのデバイスは!
『現状私がお手伝いできるのは、例を挙げるなら魔法格闘術、ブースト、幻影、召喚、魔力変換、ゴーレム錬成などのサポートなどでしょうか』
魔法格闘術というとシューティングアーツ……Strikersのスバルとギンガが使ってたアレかぁ。ブーストと幻影はティア、召喚はキャロ、魔力変換はフェイトさんとエリオが使ってたっけ。
全部Strikersじゃないか! 今欲しいのは無印で生き残るための方法なんだよ!
ゴーレム錬成はVividのコロナが使ってたっけ。男の子の夢みたいなロマン能力……いいかもしれん。
でも、そもそも俺にそういう魔法の才能ってあるのか?
何か聞きたいようなそうでないような……もしないって言われたら今度こそ立ち直れないかもしれない。
聞くのは心の準備ができてからにしよう。うん。
決して先送りにしたわけじゃないぞ。
「じゃあ次の質問だ。俺の魔力ランクはどのくらいだ」
ドキドキしながら聞いてみると、ムラサメは機械的な音声で即座に答えた。
『主の魔力ランクはEに該当します』
……E?
オーバーSじゃなくてABCDEのE?
Fを最低値とすると1番下から2番目のE?
そんな馬鹿な⁉ 転生者ってもれなくオーバーSの魔力持ってるんじゃないの?
「え、本当にE? Bの間違いじゃなくて」
『Eです。間違いありません』
今度こそがっくりと膝をつきorzのポーズをとる。
え? 嘘やん。本当に? マジ?
これって原作介入以前の問題じゃん。どう転んでもモブ・ザ・モブにしかならない能力じゃない。
こんな一般人に毛の生えた能力でこれからどうしろっていうんだようわーん!
「この部屋でなーにしてるのかしら、シロー?」
突如聞こえてきた声にびくりと身体が跳ねる。
四つん這いのまま恐る恐る声のほうに顔を向けると、そこには扉を開け入り口から笑顔でこちらをにらんでいる母がいた。
「うちの子は天才かもしれない」
突如妻が発した言葉に、真木真司は夕飯の材料のトマトをまな板の上で包丁を使って切りながら答えた。
「今度は何をやらかしたんだい? うちの子は」
息子が立ち上がったり言葉をしゃべったりするたびに妻の口から出てくる定型文に、いつものことかと料理を続ける。
「私が考えてた未完成のデバイスを完成させたわ。しかも1人で」
ルヴィアの言葉に軽快な包丁の音が一瞬止まった。だが気を取り直しフライパンに切り終わったトマトを入れると玉ねぎの先端と根の部分を包丁で器用に切り取り半分に切ると皮を剥きだした。
「君の子だ。不思議はないだろう。君だって10歳で管理局からのデバイスの調整を任されてたじゃないか」
「調整するのと1から作るのは天と地ほども差があるのよ。それに私は父や工房のみんなが丁寧に教えてくれてたもの」
あの子と違ってという言外の言葉。それを理解しながらも真司は玉ねぎを水洗いして横に切っていく。
「あの子、私の描いた設計図と模型のデバイスを分解しただけで構造を理解してた。デバイス用の材料が減ってるのには気づいてたけれど、まさか本当に造ってしまうなんて」
難しい顔をするルヴィアに、材料を使っていたことは黙認していたのか。と真司は思いながらフライパンにオリーブオイルと玉ねぎを入れ、車いすの車輪を転がしコンロの前に立つと火をつけた。
「それも君が考えてた、あの新型デバイスを。だろう?」
「そうよ。悔しいけれど軽く調べただけでも確信したわ。あのデバイスは世界を変える」
トマトをつぶしながら玉ねぎと炒める夫の姿にかつて魔導士だった姿を重ねながら、ルヴィアは言う。
「人間と同じように思考する。ユニゾンデバイスとは違う機能を目指した演算補助特化の自立思考型支援デバイス。あれが100体もあれば管理局の仕事量は半分に減るわね」
「そりゃすごい。10年前にそれがあったならぜひ俺も欲しいね。そうすれば徹夜明けで君とデートをして叱られることはなかった」
「真面目に聞いて」
軽口を言う夫に、ルヴィアは難しい顔で言う。
「管理局が、見逃すと思う? あの子の才能を」
「見つかりっこないさ。管理局が地球のこの場所に来る確率なんて小数点以下だろう?」
ぐつぐつと煮えるトマトソースに冷凍の鶏肉団子を1パックの半分ほど加え、さらに煮詰める。
「それはそうだけど」
「それにたとえシローが管理局に入るとしても魔導士じゃなくデバイスの整備技師に専念させれば……いや、失言だった。怒るなよ」
にらんでくる妻の視線をかわしながら、真司は味を調えるためにケチャップと塩コショウを加えた。
「あのデバイスは、
ルヴィアの言葉に真司の胸中に苦い思い出がよぎる。思わず口を開きかけ、ピピピピッと鳴るタイマーの音がそれを止めた。
「パスタが茹で上がったよ」
事実だけを告げる真司の言葉。それはこの話はこれで終わりだと言外に示したのだとルヴィアは理解した。
「そうね。私もあの子もおなかペコペコだわ。今日の夕飯は?」
「肉団子入りスパゲッティとコーンスープと鶏むね肉の甘酢サラダ。コーンスープはインスタントだけどその分サラダには力を入れたよ」
サラダの入っている冷蔵庫を親指で差し、にっこりと笑う。
どのメニューも息子の司郎が好きなもので、今日がお祝いだという認識が2人にはあった。
自分たちの息子が偉業を成し遂げたという記念すべき日。そして自分たちの心配事が杞憂に終わった日。
「大皿に盛りつけるからシローを呼んできてくれ。まだ地下室にいるのかい?」
「いいえ、部屋で反省中よ。魔力判定がEだったのがよっぽど堪えたのかベッドに突っ伏してるけど」
「気持ちはわかるよ。俺も昔そうだったから」
言葉に喜びの色が混ざっているのを、真司は隠せなかった。
息子の司郎の心情を無視した言葉だったが、それで息子は魔導士になれないと分かったからだ。
こんなに嬉しいことはない。
「私が運ぶわ。大皿を運んだら小皿を運ぶから用意しておいて」
真木家の料理はスープなどを除いて大皿から自分が食べる量を好きなだけ小皿にとって食べる方式だ。
なので今日のメニューのスパゲッティとサラダは結構なサイズの大皿とサラダボウルに入っている。
「了解。いつもありがとう」
足が不自由な自分を献身的に支えてくれる妻に感謝しながら、真司は茹で上がったパスタをザルに移し水を切って大皿に盛った。
それからフライパンの鳥団子入りトマトソースを上へかけようとして、ふとインスタントコーヒーが目に入る。
苦みを知ったか。我が息子も。
トマトソースに隠し味でインスタントコーヒーを小さじ1杯。
わずかな苦みと香ばしさを増大させる効果のそれは、苦みは人生を引き立てるという父親から息子への小さなメッセージだった。
なのフェイまであと10話