無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
管理局で働きたいと言ったら母親に勘当されました。
アースラに転がり込みそこで量産型ムラサメの販売を開始。
アースラ職員。ムラサメなしの生活が考えられない状態に。これは死の商人ですわ。
真木司郎です。
現在俺はミッドチルダの首都。時空管理局本局にいます。
どうしてこうなったかと言えばアースラで配ったムラサメ量産型のせいです。
あの後他の支部に比べてアースラだけ異常に業務効率がいいことが本局まで知れ渡り、そのきっかけがムラサメ量産型だとバレました。
まあ、口止めしてなかったからいずれバレるとは思ったけどここまで早くかぎつけられるとは。
で、俺は量産型ムラサメを持って各支部と各課を巡って「お試しで使ってくださいねー」とご挨拶しているところです。
「すまないな。休みの日なのに」
と謝ってくれるのはクロノくん。本来ならリンディさんが一緒のところなのだが生憎と上の人に召喚されたのだとか。
いわく「君のところ最近景気よさそうだけどどうなん?」(かなり砕けた言い回し)ということらしい。そりゃオーバーランクSの魔導士4人のスカウトと闇の書の防衛プログラム回収、それに加えて今回のムラサメ量産型による業務効率が素晴らしいお仕事の結果。
アースラは何か隠してるんじゃないかと上に勘繰られたらしい。そんなことないのにね。
で、俺は今回のミッドチルダ首都に行くことについて時空管理局に条件を出していた。
つまり、見たことのないデバイスを解体させろ……もとい、管理局のデバイス技師の仕事を体験させろということである。
まだ見ぬデバイスが俺を待っている。その事実が俺を高揚させていた。
なんかムラサメがさっきから「浮気ですか? 浮気ですよね? 出るとこ出ますよ」と再び信用モンスターが憑依してるんだが見えない聞こえない。
クロノくんに案内されて訪れたデバイス開発・修理課は一言で言えば……戦場だった。
「おい、この部品の発注したの誰だ! 桁1つ間違えてんぞ!」
「82番のコードくれ! ちげぇよそれは61番だろうが!」
「だ、か、ら、なんでこのネジを持ってくるかなぁ! 同じもん直すのに同じネジが必要なのはガキでもわかるだろ!」
「誰だここにインテリジェンスデバイス置いたやつは! 踏んづけちまうところだったぞ!」
うわぁ、とっても男臭い。
俺が若干引いていると「じゃあ僕はここで」とそのまま帰ろうとするクロノくんの肩をつかむ。
逃がさん、お前だけは。
こんな男臭い場所に今年10歳になるとはいえまだ一桁の子供を置いていくのかよう⁉
俺がピーピー文句を言っているとその様子を見ていた局員に声をかけられた。
「なんだぁ? ここはガキの来るところじゃねえぞ。それともデバイス壊したか?」
「い、いや。僕らは」
「ったく、子供はこれだからいけねぇ。乱暴に扱ってろくに手入れしねえから……おい、なんだそのデバイスは」
局員の目が俺の肩に止まるムラサメに釘付けになる。
「見たことのないデバイスだ。どこかのメーカーの最新モデル……にしては細かい傷があるな。少なくとも1年は使用した痕跡がある」
おっと、この人口は悪そうでもデバイスを見る目はありそうだな。この人にするか。
「このデバイス、調べてもいいですけど代わりに条件が」
「ああん? なんだそりゃ」
うろんげな顔で俺を見る局員さん。
「ここに来てる壊れたデバイスを修理させてください」
俺の言葉に今まで騒がしかった現場の言葉がピタリと止まる。え、なに怖いんだけど。
「お前がか? こんな子供に?」
「おい、ガキ。今何歳だ。言ってみろ」
「9歳です。今年で10歳ですけど」
「9歳⁉ お嬢より1歳も若いじゃねえか。帰んな帰んな」
クロノくん、今です。と俺はクロノくんの袖を引き合図を出す。
「失礼ですがこの少年の腕は僕が保証します。今使っている僕のデバイスも彼の手によるものですし、アースラが劇的に業務効率が良くなるきっかけを作ったデバイスを作ったのも彼です」
クロノくんの言葉に何人かの局員が顔を見合わせる。
「じゃあ、そこまでいうなら見せてもらおうじゃねえかお前さんの腕を。あ、それはそれとしてそのデバイス、調べさせてもらっていいか?」
「どうぞご随意に」
『主⁉ 私じゃないですよね。妹たちのほうですよね⁉』
ムラサメが何か言ってるが気にしない。俺は早速手直にあったアームドデバイスを解体し問題個所を発見。元の形に戻していく。
「す、すげぇ。鼻歌歌いながら躊躇なく解体してる⁉」
「しかも問題点見つけてパーツを入れ替えて元のデバイスに戻すのに5分もかかってないんじゃないか⁉」
「これは、お嬢を越える逸材じゃないか」
周りが何か言ってるがもう聞こえない。ここからは俺の独壇場だ。
「きーみをつれて駆けーだすよー誰ーも追いつけない場所ーへ♪ ふふふふん ふふふふーふん ふふふんふふふふ♪」
鼻歌を歌いながら解体し、問題点を発見。直して元の形に再構築。
解体し、問題点を発見。直して元の形に再構築。
鼻歌を1曲歌い終わることには修理済みのデバイスの山が築かれていた。
「よし、とりあえずこんなもんかな。ムラサメ、映像撮ってた?」
『撮っていましたよ。クロノさんが妹を私の代わりに技術師の方々に渡してくれたので抜け出せました。感謝の言葉を要求します』
「そっか。クロノくんありがとう」
『私に対してですが?!』
局員たちに量産型ムラサメを渡しているクロノくんは俺の顔を見るとずんずん近寄ってきていきなり肩をたたいてきた。
「な、なにするんだよぅ。暴力反対!」
「うるさい。君の代わりに質問責めされた僕の身にもなれ。専門用語ばっかりでちんぷんかんぷんだ」
それからくるっと背を向け出口へと向かう。
「とりあえず時間になったら呼びに来るからそれまでは好きに機械いじりでも何でもやっていてくれ」
よし、お許しが出たぞ!
これで何か言われても「アースラのクロノ・ハラオウンにここで修理してろと言われました」で乗り切れるからな。
俺は早速近くの局員さんに修理済みのデバイスを渡し、新しい壊れたデバイスを用意してもらった。
そこからは夢のような時間だ。
見たことのないデバイス。見たことのない機能。
こんな発想があったのかと驚くこと多数。
実に楽しい時間を過ごさせていただいた。
だが、楽しい時間には終わりが来るもので。
「つめーたい唇をーあたーためーああたー♪ あのー時のー瞬間ーふふふんふふふー♪」
「兄ちゃん、おい、兄ちゃんったら」
局員さんに肩をたたかれる。なんだよいいところだったのに。
「兄ちゃんが修理したそれで修理依頼のデバイスは全部修理しちまったよ。これ以上修理するには倉庫にあるやつ持ってこなきゃいけねぇ」
「じゃあ、次は倉庫に行けばいいんですね!」
目を輝かせる俺に、一瞬きょとんとする局員さん。それからゲラゲラ笑って肩を叩いてきた。
「違う違う。もう今日の分の仕事は終わりってことだ。あんたのおかげで貯まってた修理依頼も終わっちまったから今日だけで1週間分働いたんじゃないか?」
その言葉に時計を見ると4時間も経っていた。はえー、楽しい時間が過ぎるのは早いもので。
「課長も大層お喜びでな。特別日当を出すってよ。あー、遠慮するな。もらっとけもらっとけ。それだけの仕事をお前さんはしたんだから」
「おかげで俺も早上がりできるしな!」と言いながら局員さんは手を振り去っていく。
うーむ。いいことしたんだろうか?
『短期的にはよいことかと。しかし長期的に見た場合、主の行った行動は問題かと意見具申いたします』
「ほう、その心は?」
『主のいなくなったこの課の生産効率はまた元に戻るということです。つまり根本的な問題の解決にはなっていません』
あー、なるほど。管理局って超ブラックだからねー。
まあ、そのためにムラサメ量産型を持ってきたわけだけど。
これでムラサメの便利さに気づいた局員たちがもっとムラサメを頼ったら効率は良くなるかもしれませんね。
ブラックからダークグレーぐらいにはなるんじゃない?
さて、課長が日当をくれるというのでオフィスを覗いてみる。
「失礼しまーす」
他の局員たちは帰ったのか誰もいない。
いや、1人いた。奥のデスクで壮年の男性が書類仕事をしている。
「ああ。君がクロノ・ハラオウンが連れてきたデバイス技師か。話は聞いているよ。うちの課の連中が世話になったね」
栗色の髪の毛をした課長さんは眼鏡越しに俺を見るなり、固まった。
まるで時が止まったかのように。
「? どうかされましたか」
「ああ、いや。すまん変なことを聞くようだが……シンジ・マギという名前に心当たりは?」
シンジ・マギ? 真木真司? それ、うちの父親のことじゃん。
「それとルヴィアという女性の知り合いはいるかい?」
「真木ルヴィアは俺の母親ですが」
俺がそう言うと課長さんは「お、おおおおお!」となんかテンション上がってる。
え、なに? 怖いんだけど。
「局員たちがお嬢の再来と言っていたからもしかしたら、もしかしたらと思っていたが」
バン! と座っていた椅子から飛び上がり俺の元まで来ると力強く抱きしめる。
え? 何? 誰か、誰かー! 男の人呼んでー⁉
「我が孫よー!」
「司郎、時間になったから迎えに来た……なんだこの状況は」
男2人が抱き合う様子につぶやくクロノくん。
そんなのこっちが聞きたい。
「改めまして私の名はシェロ・エーデルフェルト。ルヴィア・エデールフェルト……いや、ルヴィア・マギの父であり君の祖父に当たる」
整備課課長のシェロさんの言葉に、俺ははぇーそうなんですかと言うしかなかった。
母さんからじいちゃんとは勘当して会えないとは言われていたし、父さんにおいては孤児だったらしい。
なのでうちには祖父母がいないもんだと思っていたがいたようだ。
今俺はデバイス開発・修理課の課長のお宅、つまりじいちゃんばあちゃんのお宅に訪問している。
クロノくんと一緒に。
「なんで僕も一緒にいないといけないんだ」
だって1人で知らない家は怖いんだもん。そばにいてよ。
うるうるした瞳で見つめるとクロノくんはため息をついたがそばにいてくれるようだ。
そういうチョロいところ、結構好きよ。
「彼女はリン・エーデルフェルト。君の祖母に当たるな」
「よろしく、司郎君」
黒髪の長い女性がにこりと上品そうに笑う。それに俺は「あ、どうも」ということしかできない。
「で、司郎くんだったな。君は私たちのことをどの程度まで娘に聞いている?」
「全然聞いてないです。むしろ祖父母はいないと思ってました」
俺が正直に言うとシェロさんの額に血管が浮き出たように見えた。
これは怒っていらっしゃいますねぇ。
「そ、そうかそうか。あのバカ娘……じゃない。ルヴィアは家出同然で家から出て行ったからな。さもありなん」
努めて冷静さを装うとしているが手がプルプル震えてますよ。怒りが隠しきれていない。
「私が娘と君の父親が地球に渡界するのを止められなかったせいで君は今まで私たちのことを知らなかったようだな。すまない」
頭を下げるシェロさんに、俺は慌てて言う。
「そんな、頭をあげてください。それに、母さんには母さんの理由というか、信念があったみたいですし」
「信念、信念か……あんな駄々を信念と呼ぶのははばかられるがな」
その言葉におや? と俺は思う。母さんの事情知ってて言ってるのかな?」
「言っては悪いが当時娘がぶつかった問題はデバイス技師ならだれもが通る通過点のようなものだった。それで心を病み辞めて行く者もいる。だが、私は娘がそれを克服してくれると信じていた」
それなのにあれだ。と、シェロさんは悔しそうに言う。
「娘は逃げ出した。命から、責任から。私はそれが恥ずかしい。デバイス技師なら常にそれと向き合いながら新しいものを作っていくべきだろう」
「あなた」
孫のいる前でその話は……とリンさんがシェロさんを止めようとする。
「いや、この際だから言わせてもらう。うちの娘は修理師としては優秀でもデバイス技師としては失格だった。だから結局逃げ出して」
「お言葉を返すようですが」
シェロさんの言葉を遮り、俺は言う。
「母さん……真木ルヴィアは決して逃げていません。あなたの言う命や責任と向き合い続けてきました」
それこそトラウマが信念に昇華するぐらいの葛藤を経てね。
これをとムラサメをシェロさんに渡す。
「その結果がこのデバイスです。武装を一切持たない人を助けるためのデバイス。あなたの娘が作った、全く新しい考えのデバイスです」
俺の言葉にシェロさんは驚いていたがムラサメを一目見ると職人の顔になり青白い画面を次々と表示させデバイスの中身を解析しだした。
「ふむ。なるほど。高い演算速度に処理能力。自立して持ち主をサポートする人工知能。さらに他の姉妹機とリンクすることによってさらに高速の読み込みと演算処理を行える。……素晴らしい。これもある意味デバイスの1つの形だ」
お褒めの言葉いただきました。
俺はムラサメの通話機能を起動させて母さんを呼び出す。
『もしもし司郎? 寝る前の連絡には早いけど一体どうし……って、父さん⁉』
驚く母親の声。それに対しこちらも驚きの声が返る。
「ルヴィア⁉ お前、いったい今まで何をして」
「はいはい。2人とも積もる話があるでしょうがその前に、母さん聞いて」
俺は先ほど録音したシェロさんの言葉を再生する。シェロさんは顔真っ赤。母さんは驚いた顔のまま固まっている。
「こういうわけだから、そろそろ仲直りしたら? どうせ母さんが意固地になって家出同然でミッドチルダから地球に渡界したんでしょ」
『ちょ、違うわよ! 私は父さん……そこにいるシェロさんに勘当されたから家を出たんですぅ。もう未練なんかありませんー』
いー! だと歯をむき出しにして挑発する母さん。子供かよ。
子供だったわ。シェロさんとリンさんの。
「あ、あれはお前がデバイス技師の仕事なんてどうでもいいと言ったから」
『私、今地球で医者やってるし。デバイス技師なんかよりもよっぽど稼いでるわよ! 一家の大黒柱なんですー」
「でも俺が生まれてからもずっとデバイスの設計図と模型、作ってたよね」
俺が核心をつくと母さんは目を泳がせながら、
『あ、あれは息抜きっていうか。その、遊びで』
「またそれか。デバイス開発を遊びなんて言うやつに仕事は任せられん。口酸っぱく言っていたはずだがな」
『言葉の綾でしょ! なによ、デバイス開発課の主任さんはこんな時間まで未成年を拘束してるわけ? 服務規程違反なんだけど!』
「残念、今の私は課長だ! お前が地球へ行ってから10年の間に出世したんだよ」
ギャーギャー言い合いを始めた親子2人に置いてけぼりの俺。茫然としているとリンさんに声をかけらえる。
「ああなると長いから晩御飯にしましょう。あなたたち、嫌いなものはある?」
俺はないことを伝える。クロノくんの分も作ってくれるようだ。
「ふふ、こう見えても孫を相手に料理を作るの、夢だったのよ。今日は張り切って作るわよ」
腕まくりするリンさんにじゃあ僕はこの辺でお暇させてもらうよと言うクロノくんの腕をがっちりつかむl
だから逃さないって。ね?
結局母さんとシェロさん……おじいちゃんとの言い合いは夕食を食べ終わっても終わらず、「今日は泊って行って」というリンさんのお言葉に甘え用意された部屋に入るころになってようやく1度会話が中断された。
「あの馬鹿娘め。いったいあの石頭は誰に似たんだか」
「あなたですよ」
プンプン怒っているがどこか嬉しそうなおじいちゃんにおばあちゃんが言う。
そうしてミッド首都の1日が終わったのだった。
母親と祖父母との雪解けは近い。
一方アースラ居残り組。
アリシア「しーろーうー、あーそぼー!」
エイミィ「司郎君なら艦長とクロノくんとミッドチルダ首都に行ってるわよ」
フェイト「そうなんだ」
はやて「3人だけずるいなー。今度私らもつれて行ってもらお」
なのは「あ、私とフェイトちゃんはユーノくんに会いに1度行ったことがあるの」
アインス「私のコアも管理局に預けられていたらしいですね。1度行ってみたいです」
シグナム「お礼参りか? 私も同行するぞ」
シャマル「あらあら、仕方ないわね」
ヴィータ「で、どいつをぶんなぐりゃいいんだ?」
ザフィーラ「お前ら……主を困らせてどうする」
リィンⅡ「リィンも! リィンも行きたいです!」