無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
真木真司による司郎君を使った模擬戦指導。
皆苦戦してCランク魔導士に負けて恥ずかしくないの?
最後は親子対決。さんざん連戦して疲れた息子にマウンティングして恥ずかしくないの?
なのはさんの魔力コントロールの課題という問題を出された俺が提案した特訓は、至極簡単なものだった。
「このGメモリに魔力を込めればいいの?」
「ええ。できるだけムラのないように一定の魔力を注いでください」
こんな風に、と俺は手元のGメモリに魔力を注ぎ手本を見せる。
魔力の残量がわかる色が赤から青へと変わり、再使用が可能な状態となった。
「わかったやってみる」
そう言ったなのはさん。明らかに気負いすぎだ。
あっ、ほら魔力が必要以上に注入されて漏れてる。メモリの色が紫になってしまった。
「これは、使えませんね。実験用へと回します。できるだけ均等に、コップに水を少しずつ注ぐようなイメージでやってみてください」
なのさんの魔力を込めたGメモリを回収し、新しいまだゴーレムの設計図が入っていない空のGメモリを渡す。
これで俺の研究も進み、なのはさんの魔力制御の腕も上がる。
まさにwin-winの練習方法だ。
「ふう、今度はちゃんとできた。司郎くん、これあといくつ魔力を注入すればいいの?」
「とりあえず1万本は欲しいですね」
あ、しまった。本音が出すぎた。なのはさんが固まってる。
「……ていうのは冗談で、今日はとりあえず100本くらいおねがいします。多いように思うかもしれませんが慣れれば俺みたいに話をしながら魔力注入できるのですぐですよ」
と、改めてGメモリに魔力注入して見本を見せる。
それに「はえー」と感心しているなのはさん。
言ってないけど俺が魔力注入したのはBからCランクのGメモリ。なのはさんが魔力注入するのはSとAランクのGメモリだ。
前者はグフカスタムやアッシマー。後者はノイエ・ジールやトールギスⅢみたいな高性能のGメモリ。
つまりなのはさんには俺がSランクやAランクの魔術師と戦う時用のGメモリの下準備を手伝ってもらう。
これで高ランクのGメモリの開発に専念できるぞー。
しかしそれでも魔力を注ぎ込みすぎるなのはさんの魔力量ってすごいな。さすがオーバーS。俺なんて同じものを作ろうとしたら倍の時間は魔力を注がなければならないからな。
「司郎君のお父さんは何であそこまで強いの?」
「さあ、知りません。俺も最近まで父親は主夫だと思ってたので。ミッドチルダの人だと知ったのも最近なんですよ」
世間話をしながら魔力注入していく俺たち2人。
「逆に俺も聞きたいですけどなんで士郎さんと恭也さんはあんなに強いんですか? 喫茶店のオーナーとその息子なのに」
「にゃははは、私もそれわかんないかも」
俺の言葉に笑顔で返すなのはさん。
そういえばこういう風に2人きりというのは久しぶりかもしれない。
いつもはすずかちゃんやアリサ嬢がいるし、フェイトさんもいるのでこうして2人きりで話すのは……ひょっとして初めて?
「ねえ、司郎君。私もお父さんとお兄ちゃんに格闘術習ったほうがいいかな?」
そんなことを考えていたらとんでもない爆弾が放り投げられてきた。
「え? なんでですか?」
「だって私、近距離格闘の手数が少ないらしいし。司郎君と一緒に訓練したほうがいいのかなって」
そんなことしたら完全無欠の管理局の白い大魔王が生まれてしまうじゃないか。
俺は努めて冷静さを保ちながら、なのはさんに提案する。
「二兎追うものは一兎も得ずと言いますし、とりあえず今は魔力制御に専念してみては? 格闘はセンスが必要ですし、俺なんて3年通って護身術レベルの強さなのですぐに効果は出ないと思いますよ」
嘘をつきました。本当はすぐに効果が出ると思ってるのにね。
高町の血というか不和の血を引いてるからな、なのはさん。士郎さんに習ったらとんでもねーバケモンになりそう。
そうしたら付け入るスキがない。
「それに、近接の手数はなにも格闘だけじゃないんですよ」
俺は言いながらムラサメに防御魔法をかけるように指示する。
『プロテクション』
「こんなふうに。高町さんみたいに魔力量の多い人の防御魔法って魔力の低い俺みたいな人間にとってはそれだけで脅威なんですよ。攻撃をどうやっても防がれるし、一方的に蹂躙されかねない」
俺の言葉に初めて気づいたという様子のなのはさん。まあ、今まで同格か格上相手しか戦ってこなかったからね。
「例えばですが2重、3重にプロテクションかけられたらもう絶望しかありません。こっちの攻撃は効かなくて高町さんは一歩も動かずに魔力弾で蹂躙される未来しかありませんから。それだけ魔力量の多さってすごい武器なんですよ」
「そっか。そうなんだ。ありがとう、司郎君」
なのはさんは何かをつかんだように1人頷いている。
あれ? 俺余計なこと教えちゃった?
10個目のGメモリに魔力を注入し、完成させたなのはさん。頑張れ、あと90個だ。
「でも、同じ道場で訓練したら司郎君とももっと一緒にいられるかなーと思ったの」
その言葉に俺は「へ―そうなんですか」と返した。
なのはさんファザコンだったんだ。家族との時間大事にしてるんだなぁ。
しかし自分の父親に君付けはどうなんだろう?
「おっ、やっとるな2人とも」
「はやてちゃん」
そんな話をしていたらはやてさんが休憩室にやってきた。
あっ、説明するの忘れてたがここ、アースラの休憩室。俺となのはさんの他には誰もいなくてみんな出払ってる。
「リィンもいますぅ」
「そりゃデバイスだからいるでしょうよ」
俺の言葉にむぅ~とリインフォース・Ⅱは顔を膨らませる。少し意地悪だったかな?
「アインスさんは今日は非番ですか?」
「いや、守護騎士のみんなと一緒に各地の鎮圧任務に行っとる。帰ってくるのは3日後やな」
はやてさんは近くの椅子に座り、俺となのはさんを眺めている。
「せやから3日間私寂しゅうてな。どっちかうちに泊まりに来ぃひん? おいしい料理作って待ってるで」
「うーん。私は魔力コントロールの課題を出されちゃったからそれに集中したいかな」
「じゃあ、俺の家に来ますか? 八神さんが来るなら母さんも喜びますし」
最近父さんの帰りが遅くて夕飯がおざなりになってるからな。料理ができるはやてさんがいてくれたら母さんは喜ぶだろう。
そう思っての発言だが2人の態度は極端だった。
「え? ほんま? 行く行く! 今日定時になったらすぐに向かうな!」
「待つのはやてちゃん。司郎君、私も行っていいかな? もうちょっと魔力コントロールのコツとかを教わりたいの」
え? どうしたんですか2人とも? 急にうちに来たがるなんて。
特になのはさん、さっきあなた魔力コントロールに集中したいって言ってたじゃないですか。
「なのはちゃんは魔力コントロールの課題があるんやろ? やったらここはうちに任せて自分の家で集中してやりぃや」
「だからこそ司郎君に手取り足取り教えてもらうの。真司さんだって司郎君に教われって太鼓判を押されたの」
なんか見えない火花が散ってるような気がするが気のせいだろうな。2人が争う理由がないし。
そもそもこの2人って友達、親友ポジだから百合フィルターを通して見られないのがなぁ。
はあ、これがフェイトさんならなのフェイキマシタワーできるのに。相手がはやてさんじゃあなぁ。
「ちょっと君、今失礼なこと考えてへんかった?」
女性の勘というのは恐ろしい。俺は高速で首を振ってはやてさんの追及を避けた。
「司郎、司郎」
ちょいちょいと宙に浮かんで俺の肩に乗り内緒話をするように耳に語り掛けるリインフォース・Ⅱ。
「はやてちゃんが司郎の家に行くなら、リィン新しい服が欲しいです。作ってくれますか?」
おや、おねだりとは珍しい。
リィンの服は俺が裁縫の腕を生かし、趣味で何着か作っていた。
今日はどんなものが欲しいのかと聞くと、夏用の薄手のパジャマが欲しいらしい。
デバイスって気温とかで寝苦しさ感じるの? とは思ったが他ならぬリィンの頼みだ。断る理由はない。
なんだかムラサメが『浮気ですか?』とまた信用モンスターが乗り移った目をしているような気がするが無視だ無視。
「やった。これでアインスにまた自慢できますぅ」
ぴょんぴょんと跳ねて全身で喜びを表すリィンフォース・Ⅱ。
そういえばアインスさんも俺に服を作ってほしいってお願いに来たことがあったなぁ。「Ⅱにだけずるいです!」とか言って。
普段使いできそうな黒いシックな上着と白いスカートをプレゼントしたらご満悦だったし、本当にうらやましがっただけだろう。
だから、『浮気ですか? 浮気ですよね?』とプレッシャーをかけるのはやめろムラサメ。心配しなくても俺はお前一筋だから。
結局その後もなのはさんとはやてさんは何やら言い合っていたが最終的にはやてさんがうちに3日泊ることで話がついた。
なぜなら話している間になのはさんの魔力注入作業が全然進まなかったからである。
完成したものは受け取り残りはまた明日受け取るからと言った際のなのはさんの顔、なぜか悔しがってたなぁ。
代わりにはやてさんの顔は喜びに満ちていたけど。そんなに母さんに会うのが楽しみなのかな?
ミッドチルダ時空管理局の首都管理局。
その会議室で流された映像に、多くのものが目を見張っていた。
それはアースラで撮影された戦闘訓練風景。オーバーSランクの魔導士がCランク魔導士に敗北する光景だった。
「この映像は先日アースラで実践訓練形式の模擬戦を行ったものです」
説明する士官の言葉に、陸の魔導士が言う。
「あのデバイスは管理局で最近爆発的に広がっているムラサメというものに酷似している気がするが」
「はい。デバイスを使っていた彼がその開発者、真木司郎です」
その言葉に会議室がざわつく。続いて手をあげたのは空の魔導士だった。
「つまり彼の使ったあのガジェット、資料にあるGメモリを使えば我々も彼のように戦うことができると?」
「はい。映像を分析した魔導士たちがそう判断しました」
難しい顔をしているのはレジアス・ゲイズだ。
非魔術師である彼はこの会議に興味はなかったが彼のことが議題と聞いて会議に参加した。
彼のデバイスのおかげで自分の部署の仕事量が減ったのは確かだし、彼の不利になるような会議内容なら助けてやろう。
そんな考えだったが、内容がマズすぎた。
なぜならことと次第によっては今までの魔術社会がひっくり返るかもしれない内容だったからだ。
「つまり、魔力ランクの絶対性を揺るがす発明をしたというのか、彼は」
海の魔導士の言葉に、沈黙が場を支配した。
魔力ランクの絶対性。
それはミッドチルダでは当然の常識だった。
Aランクの魔導士にBランクの魔導士は勝てない。
ましてCランクやDランクなど束でかかってもSランクの魔導士に傷一つつけられないと思われてきたのだ。
それが今、ひっくり返った。
他ならぬ彼の発明品――Gメモリによって。
「拘束しましょう」
誰かが言った。目は爛々と輝いている。
「我々の世界の常識を揺るがすかもしれない人物です。危険なことには違いないかと」
「だがどういう理由で? 少なくとも私のように魔力の低い人間には彼の発明は天恵のように思えるが」
レジアスが発言するとそれにあざけりに近い視線が投げられる。なるほど、自分はこの場に歓迎されていないようだ。
だが、言うことは言わせてもらう。
「彼のデバイスのおかげで管理局の仕事量が劇的に減った功績を忘れていないか? 君たちは恩人の手に鎖をつけ牢につなぐのか?」
その言葉に「確かに」と魔導士たちがつぶやく。
「それに、これで管理局の人材不足も解決する。彼の発明品――Gメモリだったか。あれがあれば魔力が低く今まで魔導士になれなかった人間にも管理局で働くチャンスが巡ってくる。希望者に与えればそれだけでSランクの魔導士に匹敵する魔導士が誕生するのだから」
「それは魔導士でないあなただから言うことであって……」
反対意見を言おうとした若い魔導士の顔をにらむと悔しそうな顔をして黙り着席する。
ふん、根性なしが。それに、今のは侮辱的発言だ。あとであいつがいる課をつついてやろうとレジアスは決める。
「この内容はデリケートな問題なので慎重に会議をしてきたいと思います。ただ、彼の処遇をどうするかという問題で」
「だからさっきも言っただろう。恩義のある人間の手に鎖をかけるのかと。少なくとも彼は貴君らの言う反乱分子でもなければ危険思想を持った政治犯ですらない、まだ子供だ」
レジアスの言葉に何人かの魔導士は頷いている。それに慌てたのは下士官だ。
「で、では制裁は」
「ない。というか、ありえない。もっとも貴君が彼の作ったデバイスを使っているのに彼を陥れようと考えている恥知らずでなければの話だが」
レジアスの言葉で会議の流れは決まった。
真木司郎に関しての処遇は見送られ、さらにGメモリを管理局に提供するよう打診する方向で会議は終わる。
だが、これで終わるはずはないとレジアスは長年の勘と政治的手腕により理解していた。
(とりあえず、気を付けるように本人とアースラの指揮官には話しておくか。彼は得難い人物だからな)
アースラに借りを作るのも悪くないと考えながら、レジアス・ゲイズは会議室を後にした。
そして同じように考える者も、会議室には多くいたことを彼は知らない。
レジアスさんいい人過ぎない?
原作ではアレなのに? 大丈夫? 原作壊しすぎておかしくなってない?
なのは「ぐぎぎぎ」
司郎「高町さん、力みすぎない。リラックスリラックス」
はやて「こういうのは慣れやで慣れ。こう、な」Gメモリ完成
司郎「八神さん上手ですね。魔力的に相性がいいのかも」
はやて「ほんまに? じゃあゴーレム魔術教えてもらおうかなー」
司郎「八神さん魔力量多いし向いてるかもしれませんね。でも習うなら俺より父さんに習ったほうがいいと思いますよ」
はやて「へ?」
司郎「俺はあくまで錬金したゴーレムの能力を使ってるだけなので。本格的にゴーレム魔術習うなら父さんに話を通しておきますが」
はやて「えっと、それならええかな」
なのは「くふふなの」
はやて「なのはちゃん、何がおかしいんや」
なのは「別に何も?」
リィンⅡ「火花がバチバチなってるですぅ」
ランク別今まで出てきたGメモリ
S:ウイングゼロカスタム、デスサイズヘルカスタム、バルバトス、トールギスⅢ、サイコガンダム
A:ザンネック、マスター、アクエリアス、エピオン、ガイア、ノイエ・ジール、ヘビーアームズ
B:タイタス、グフカスタム、エルメス、GP-02
C:グフ、ズゴック、バウ、アッシマー、ヴァル・ヴァロ
D:ザクレロ、アッガイ、ベアッガイ
ランクは使用する魔力量(装甲の厚さとか攻撃に使う魔力、稼働時間)で分けられていてランクが高いほど強いというわけではないよ。