無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
前回の裁判でみんな激おこなご様子。
5年生になりました。
なのはさんが大けがした任務に相性最悪のヴィータと一緒に行くことに。
簡単な任務のはずだった。
いつも通り敵を倒して拠点を制圧するという慣れた任務のはずだったのだ。
相方があの気に入らない主の恩人であるという点を除けば。
そりゃ、主や自分たちを助けてもらったことには素直に感謝しているし、発明品で命を救われたこともある。
だが、この男とは合わない。
そんな確信がヴィータにはあった。
現に戦闘中でもヴィータが敵を蹴散らすのを効率がどうのとか魔導士を狙えとかうるさく指示する姿に辟易する。
まるで今まで自分たちを虐げてきたはやての前の主のようだった。
それがヴィータの心にむかっ腹を起こさせ、必要以上に暴れる原因となった。
そして、あろうことかそいつは自分を囮にして魔導ドローンの工場プラントに向かったのだ。
捨て駒にされたという思いがあった。かつて自分たちがされたように。
やっぱりあいつは気に食わない。
そう思いながらヴィータは魔力が尽きるまでその場に踏みとどまり魔導ドローンと魔導士たちを相手に大立ち回りを演じた。
すべては主はやてのために。
そして気に入らなくても任務は任務だ。あいつの護衛のために自分は遣わされたのだとこの時初めて思い直し生産の拠点、中央プラントに向かった。
「なんだ、こりゃぁ」
そこは地獄だった。
数多くのドローンが同士討ちしたのか壊れたドローンたちが死屍累々と広がっていたのだ。
「いったいどれだけ激しい戦闘があったんだよ」
と、ここでようやくヴィータは護衛対象のことに思い至った。
あいつが死ねばはやては悲しむ。
その一心で向かった生産プラントで見たのは、
「嘘だろ?」
ボロボロのゴーレムの装甲から血を流して壁にすがるようにして座っている真木司郎の姿だった。
その周りにはドローンの残骸が数えきれないほどあって、戦闘の過酷さがうかがえる。
「お前、どうして……その怪我は」
「ああ、ちょっとドジっちゃいました。げほっげほ」
口から赤黒い何かが出る。それを見てヴィータは血の気が引いた。
よく見ると彼がすがっている壁からも赤黒い染みを確認できる。これは、命に係わる量だ。
「お前、なんで⁉ アタシを囮にして逃げたんじゃなかったのかよ?」
「? ごほっごほ、確かに囮にはしましたがそれはここを制圧するためで。俺らはそのためのチームでしょ」
その言葉に雷が落ちたような衝撃をヴィータは受けた。
自分たちはチーム。そんな当たり前のことを自分は忘れていた。
ただ気に入らないやつの子守りをしながら自分1人が戦わないといけないと思っていたのだ。
だがどうだ。実際戦ったのは。怪我を負ったのは?
お前の言う気に入らないこいつではないか。
「ヴィータさん。ちょっと頼みを聞いてくれますか?」
「あ、ああ。ああ! 聞いてやるから死ぬんじゃねえ!」
ヴィータは思わず力強く司郎の手を握る。冷たかった。まるで血が通っていないように。
「俺のデバイス……ムラサメをこの機械のコンソールにつないでください。ハッキングはそれで完了しますので」
「コンソール? えっと」
ムラサメを渡されてあわあわするヴィータをほほえましく思いながら、司郎は声をかける。
「ムラサメ、手順を説明してあげてくれ。なるべくわかりやすく」
『承知しました。我が主』
それからヴィータはムラサメの指示を聞き、この施設のハッキングを開始した。
ハッキングには10分と時間が経たず成功し、医療キットを持ったドローンがヴィータの前に箱を落とす。
『ヴィータ様。主の怪我の応急治療をお願いいたします。管理局には連絡済みなのであとは応急処置の時間が生死を分けるかと』
ムラサメの言葉に「おう!」と頷きムラサメの指示する通りに応急処置を行った。
『結構です。これで主の生存確率は20%から75%へと大幅に上昇しました』
「なあ、他に何がある? アタシができることは?」
ヴィータの問いにムラサメは冷酷に告げた。
『ありません。そもそもこうなったのはヴィータ様が主の指示を聞かずに魔力を大量消費したせいです』
「アタシが?」
『はい。主はGメモリを使うことを提案しましたがそれも実行せずこのプラントに来る頃には魔力残量が10%以下の状態でした。つまり主が怪我を負ったのはあなたのせいです』
「そんな、アタシが」
ムラサメの言葉によろよろと後ろへあとずさり、ぺたんと座り込むヴィータ。
『このプラントを守護するメインコンピューターは強敵でした。おそらくいまのヴィータ様なら瞬殺されていたでしょう。しかし主は制御下に置いたドローンと複数のGメモリを巧みに使い機能を停止させました。問題はその後です』
ムラサメの言葉はヴィータを容赦なく傷つける。
『このプラントを管理していた魔導士たちとの戦闘。魔導ドローンをすべて失い集中力が切れていた主はその攻撃を受けました。バディで行動していたら99%防げた事態だと愚考いたします』
ムラサメの言葉に「ぁぁ」と小さな悲鳴がヴィータの口から出てきた。
『そもそも主は最初から魔導士を倒すようにヴィータ様に提案していたはずです。それを無視してドローンを破壊し大量の魔力を無駄に使ったヴィータ様は愚かであったと思考します。要するに、主が怪我を負ったのは全てヴィータ様のせいです』
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ!」
後悔が、口から音となって出てくる。
あの時ああしていれば。あの時こうしていればと言う後悔。
それをムラサメの言葉をきっかけにヴィータの小さな体に突き刺さっていったのだ。
そのときバリバリと空気を裂くような音が外からしてきた。
『管理局のヘリが到着したようですね。ヴィータ様。何をぼさっとしているのですか。主をヘリの元まで運んでください。足手まといでもそれくらいはできるでしょう?』
ムラサメの言葉のナイフは容赦なくヴィータを突き刺す。
それに一言も反論することなくヴィータは司郎に肩を貸し、外へと運んでいく。
管理局のヘリを見つけると大声で言った。
「頼む! こいつを助けてやってくれ! 誰か、誰でもいい! 助けてくれ!」
報告書を読んだリンディは頭を抱えた。
今回の任務は自分がシンジを間に挟まず2人に提案したものだ。
もしシンジに相談していれば結果は違っていたかもしれない。その事実が彼女の胸に暗い影を落とした。
まさか2人の相性がここまで悪かったとは。
そして彼の言っていたせめてもう1人人員が欲しいという言葉。
あれに従っていれば今回のようなことは防げたはずなのにと。
「艦長、真木司郎の意識が戻りました」
なので目の前にいる彼の父親にどういう顔をすればいいかわからない、というのがリンディの本音だ。
「この度は、あなたに説明なくご子息を任務に向かわせてしまい申し訳ありませんでした」
「艦長、今は任務中なので部下に軽々しく頭を下げるのはおやめください」
真木真司はそういうが目は鋭く彼女を責めていた。
「きっと今日はそういう星の巡りだった、としか言いようがありません。いつかは避けられない事態でしたから」
「そうですか。司郎君の様子は?」
「応急処置が功を奏したのか約3カ月で退院可能と言うことです。ただ……このようなことはこれっきりにしていただきたい」
そうよね。息子が大けがを負ったらそう思うわよね。
自分が勝手に任務を与えたという負い目もありリンディは深く反省する。
それに対しあくまで部下として真木真司はふるまったのだった。
えー、真木司郎です。
今病室にいるんですが眠ったヴィータがベッドから離れません。
お前どうした? そういうキャラじゃないだろう?
『いい薬です』
とはムラサメ先生談。なんか俺がいない間にヴィータと話したの?
『ただ、事実を述べたまでです。必要ならログを提出しますが』
いや、いいよ。どうせお前も俺やヴィータのことを思って言ってくれたんだろうし。
しかし、この状況どうしたもんかねぇ。はやてさんが来たら誤解しそう。
「司郎君! 怪我したんやて⁉」
ほら、噂をすればいらっしゃいましたよ夜天の書の主が。リインフォース2人連れて。
「ヴィータがおってなんでこんな酷い怪我を……相手はそんなに強かったん?」
「ええ。間違いなく強敵でした」
嘘は言ってない。ただ、やられたのは魔導士の魔力弾なんだよねー。だからこの程度の怪我で済んだともいうが。
「主はやて。ヴィータに聞き取りすべきではないですか? 彼に何があったのか知っておきたいので」
「あー。しばらく放っておいてあげてください。多分自責の念で今頭の中ぐちゃぐちゃみたいなので」
俺の言葉に頭に疑問符を浮かべる2人。俺はリィンⅡを呼んで内緒話するように言う。
「しばらく情緒不安定だと思うから気にかけてやって」
「わかりましたですぅ」
そんなことを話しているとヴィータが目を覚まし、はやてさんを見て顔を青くした。
「あ、はやて。アタシ、こいつにひどいことを……ごめん、ごめんよぉ」
「ヴぃ、ヴィータ? ひどいことって何? まさか」
「俺を怪我させたことを悔やんでるんですよ。ヴィータさんが応急処置してくれなかったら死んでたかもしれないのに。ヴィータさんは命の恩人です」
はやてさんが追及する前に俺は事実を言っておく。
それにヴィータはいたずらがばれた子供のようにおろおろしていた。
どうしたヴィータ⁉ お前本当にヴィータか?
らしくないヴィータの様子に違和感を持ったのは俺だけでないらしく、はやてさんもじっとヴィータを見て口を開く。
「ヴィータ。怒らへんから何があったのか最初からきちんと説明し。聞いたるから」
「八神さん」
それ、絶対怒る人のセリフですやん。
「ごめん、司郎君、これはうちの家族の問題やから。口挟まんとってな」
それからヴィータはおろおろした様子で俺を上目遣いで見てたがぽつりぽつりと話し出した。
自分が原因で俺が傷を負ったこと。自分が俺の提案を無視して自由にふるまったから作戦が失敗しかけたことを。
「八神さん、その話は真実じゃない。ヴィータさんを囮にして本命のプラントに侵入しようとしたのは俺が決めたことだし、ヴィータさんに責任は」
「司郎君は黙ってて」
静かな言葉。しかしそこには怒りがこもっていた。
これはブチギレはやてさんですね。ミッドチルダからアースラに帰ってきた時以来のお出ましです。
「ヴィータ……ごめんな」
はやてさんはヴィータを抱きしめた。
「はやて、なんで……なんではやてが謝るんだよぉ」
「私がおればヴィータはそんなことせえへんかった。私がそこにおったらヴィータのそんな振る舞いを許さへんかった。主失格や私は」
「違う! アタシは、こいつが嫌いだったんだ! だから軽んじて、邪魔だと思って。それなのに助けられて、失敗して」
もう頭の中がぐちゃぐちゃなんだろう。ヴィータは言葉に詰まらせるとはやてさんの腕の中で泣き始めた。
「アタシ、アイツにはやてが取られるみたいで嫌だったんだ。だから意地悪して、取り返しのつかないことを」
「うんうん。私が悪かったな。しっかりヴィータのこと見てなかったから」
「違う! はやては最高の主だ! それに泥を塗ったのはアタシなんだよ!」
うーん、シリアス時空はよそでやってくれないかなぁ。
こちとら病人だから。シリアスな空気は身体に悪いんだよ。
「とりあえず積もる話もあるみたいだからヴィータさん、今日は帰ったら?」
「やだ。ここにいる。お前の傷が治るまでいる」
俺の提案をはねのけやがったよこいつ。
やっぱりヴィータはヴィータじゃないか!(憤怒)
「ごめんな司郎君。この子が満足するまでしばらく置いといてくれる」
とはやてさん。え、主公認なんですか?
「シグナムやみんなにはうちがうまく言っとくから。ちゃんと恩返しするんやで」
「わかった!」
いや、わかったじゃなくてですね。はやてさんも病室から出て行かないで!
結局それから3カ月。傷が完治するまでヴィータにつきっきりで看護してもらうことになった。
かといって態度が軟化したわけではなく、話せばかみついてくるし構えばにらんでくる。
ヴィータはどんなになってもヴィータのままだった。
なのは「司郎君が大けがを負ったって⁉」
フェイト「見舞いに行こう、なのは!」
(番犬のように病室にいるヴィータ)
なのは「ヴィータちゃん、司郎君は」
ヴィータ「アタシが世話するから帰れ、たかまちなのは」
フェイト「司郎の世話なら私たちがするからヴィータは帰ったほうがいいんじゃないかな?」
ヴィータ「いやです。お前らが帰りやがれ、です」
なのフェイ(無言のプレッシャ)
ヴィータ(一歩も引かないヴィータ)
司郎「なあ、ムラサメ。俺なんか体調悪くなってきたんだけど」
ムラサメ『知りません。自業自得でしょう』
アリシア「しろうーお見舞いに来たよー。あ、フェイトとなのはちゃんとヴィータもいるー!」
この後アリシアがめちゃくちゃ空気を癒した。