無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
はやてさんのメンタルケア完了。
魔人狩りたちと初遭遇。襲われる。
勧誘はしたがなかなかうまくいかないようで。
夕方、EXCEEDS本部トレーニングルーム。
「高町さんに聞きましたよ。今日は大活躍だったみたいじゃないですか」
俺の言葉にシイナさんは照れくさそうに笑う。
「いやー、セツナの力となのちゃんのサポートのおかげだよ」
そう言って謙遜してるようでもまんざらでもないって顔に書いてありますよ。
今俺は日課のトレーニングの後、シイナさんと話している。
これやらないとヴィータが怒るんだ。質の良い訓練を集中して毎日やれって。
そんな俺がトレーニングが終わる頃いつも現れるシイナさん。最近目的がわかってきた。
「で、その。お祝いなんだけどさ。真木くんの腹筋、指でなぞらせてもらってもいい?」
この人、ただの筋肉好きだ。
特に割れてる腹筋がツボらしく何かと理由をつけて毎日触ってこようとする。
でもなー。今日は頑張ったからなー。イイヨ!
別に減るもんじゃないし。
「どうぞ、お好きなだけ触ってください」
俺は野生を忘れた猫のようにあお向けになってシイナさんに腹を向ける。
「ウヒョッス! ありがとうございます! ああ、夢にまで見たシックスパック」
シイナさんが指を這わせるたびくすぐったくて声が漏れる。自分の意図しない刺激なので我慢できない。
「ハァハァ、いいよいいよ真木君。頬ずりしてもいいよね? ね?」
「何してるの?」
顔を真っ赤にしてよだれを垂らしていたシイナさんだったが上から降ってきた言葉に固まった。
なぜならそこにいたのは最愛の妹だったから。
「セ、セツナ? ち、違うのよ。これはご褒美で」
「しーちゃん、今の顔変態っぽい」
その言葉にガーンとして固まるセツナさん。
大変ですよ、姉としての沽券というか威厳がほぼストップ安です。
「私はしーちゃんがそういう人だってわかってるけど他の人には迷惑かけないようにしてね」
妹のガチ説教に正座で「はい」というしかないシイナさん。お気の毒に。
「とりあえずセツナさんもEXCEEDSに慣れてきたことですし、改めて歓迎会でもしますか。高町さん、テスタロッサさん、八神さん、アリシアさん、ルークさんにも声かけるので」
俺の言葉に「わーい」と喜ぶ久瀬姉妹。うん、仲良きことは美しきかな。
さっそくムラサメを使い連絡を送ると全員OK。よし、じゃあ俺もシャワー浴びて準備するか。
「え、シャワーを浴びるなんてもったいないよ司郎くん!」
え? なんでですか?
俺が問いかけるような視線を送るとセツナちゃんは自分の口をふさいで驚いていた。まるで自分が言ったことが信じられないように。
「セツナ」
「しーちゃん、私」
「いいんだよセツナ。ようこそ。こっち側へ」
「違うかからね! 私、しーちゃんみたいな変態じゃないからね!」
なにやら2人がもめているが俺はシャワールームへ向かうことにした。
その日の夕食は大変美味で楽しかったことをここに書き記しておこう。
「で、どうムラサメ。該当する人物いる?」
『多すぎるくらいです。トワとユーナという名前だけでこの世界に何人いると思うんですか? その中からこの地区にいて外見上の特徴の一致。昨夜別の場所にいた人物を除外しただけでも100名までしか絞れませんでしたよ」
おっ、大分絞れたじゃん。
「じゃあ、その100名を訪ねるとするか。大丈夫大丈夫。Gメモリで移動すればすぐだから」
『非効率的です。現在魔人化の兆候があったという過去にさかのぼって調べていますがそれでも50人までしか絞れませんでしたよ』
あれ? 半分に減ってね?
もしかして俺のデバイスって超優秀なのでは?
そう思っているとムラサメが口を開いた。
『検索数を2名まで絞り込みを完了。夜海トワと喜多森ユーナ。こういう時学生証というのは便利ですね。同じ年代の女性を調べるのにもってこいです』
おお、もう見つけたのか。えらい! 褒美に今度バージョンアップしてやろう。
『不要です。我々は常に進化しているので。どうしてもというなら今後2度と私以外のデバイスを使用しないと誓約してくだされば』
「あー、それは無理。いつどうなるかわからんから」
俺の言葉に沈黙するムラサメ。なんか不機嫌なオーラがデバイスから感じる。
しかし学生証か。考えもしなかった。
魔人狩りも普段は学校に行ってるんだって。
とりあえずムラサメが調べた情報を見てみる。
「夜海トワ。私立景葉高校3年生。喜多盛ユーナ観東第三高校2年、ただし通信制。住所は、まあ行ってから確かめるか」
俺はムラサメが提供した情報通りこの2人を中心に調べることにした。
住所は空振り。チャイムを押しても出てこなかったのでEXCEEDSの身分を明かして大家に鍵を開けてもらったが中はもぬけの殻だった。
まるで何日も家に帰っていないような。こもった空気が最近換気を一切していないことを物語っていた。
ということで現在私立景葉高校を目指しているわけですよ。12歳の俺が。
傍から見たら子供が何しに来たんだって話ですよね。ジロジロ見られてるのがわかる。
「やあやあ夜海トワさん。数日ぶりですね」
笑顔で俺が言うと夜海トワは驚いた顔で俺を見る。それから手をつかんでどこかへと連れて行こうとしていた。
「どういうつもり⁉」
屋上の扉の前、いわゆる壁ドンをされながら俺は夜海トワに迫られていた。
ちょ、そんなガチ恋距離で見られたら照れるよ。
「どういうつもりも何もスカウトに来たんですが。EXCEEDS、入る気ありません?」
俺の問いに絶対零度の目を向けるトワさん。
「ない、ありえない。魔人取引に関わっている組織と手を組むなんて」
歓迎されてないのはわかっていたがここまで拒否られるとは。
「EXCEEDSは警察や司法から独立した組織です。まあ、ぶっちゃけると外様ですね。なのであなたの思うようなこの世界の政府関係者やマスコミ、それとヤのつくお仕事とのつながりはありません」
「どうだか」
うーん、話を聞く気もないって感じ? それは困るなぁ。
「じゃあ少なくとも俺は警察やそれに属する組織にあなたのことは伝えません。この学校に通っていることも含めて。1週間ほどで信じてくれますか?」
「そんなの、口裏を合わせれば何とでもなる」
これもダメかぁ。
じゃあどうするかなー。信頼、三顧の礼、プレゼント。言葉が浮かんでは消えるがどれもうまくいきそうにない。
『マスター、交渉事には目標を明確にし、相手理解を徹底することが必要であると進言します。そのためには相手にもこの交渉をしてよかったと思わせるような関係を構築することを推奨します』
なるほど。そうか。
「じゃあ、俺からあなたたち魔人狩りに依頼するというのはどうでしょう」
俺の言葉にトワさんは眉根をあげる。
「依頼? 何?」
「例えば今抱えてる案件なんですが魔人薬の製造実験。さらった子供の保護とそれを取り仕切る科学者の捕縛。俺と一緒にやってもらえませんか?」
俺の言った事件の内容にトワさんの目つきが変わる。「詳しく」と顔をずいと近づけてきた。
「とある政府お抱えの製薬会社が魔人化薬の実験をしてるっていう情報です。まだ大っぴらになってませんがこれ、警察上層部も噛んでます。EXCEEDSが出しゃばって解決したらいろいろ問題な案件でして」
ムラサメに詳細な情報を出すように言う。青白い空中に浮かんだ画面にトワさんはくぎ付けだ。
「だから魔人狩りの方々に出張ってもらおうかと。あなたたち、魔人狩りっていう割には侵略種のエサ用に誘拐されてた子供を助けたりしてるし、こういう悪事放っておけないでしょう?」
俺の言葉に強く奥歯をかむトワさん。なるほどね、彼女はこういう人か。
「もちろん施設のボディーガードに魔人がいる可能性が高いです。危険な任務なので報酬は……このくらいでどうですか?」
俺はポケットマネーから軍で出す予算よりちょっと色を付けた代金をトワさんに提示する。
「私たちがやってるのは、お金のためじゃない」
ほう、聞きましょう。
「ただ、私たちのような存在を生まないため。魔人化薬なんてものを作ったやつらに復讐するために行動してるのよ」
「なるほど。では、その復讐。俺に手伝わせてください」
その言葉にぱちくりと目を瞬かせるトワさん。
「なんです? 復讐なんて何も生まないとでも言うと思いましたか?」
「だって、あなた国連の人でしょう。私たちが暴れると困るんじゃない?」
「全然。だってあなたたち、マスコミで全然報道されてないでしょ? 異常なくらいに」
俺の言葉に口元に手をやるトワさん。何か考えてるのかな。
「あれ、探られて困る場所をピンポイントで襲ってるから警察も動くに動けないんですよ。マスコミも報道しない自由を発動して知らんぷりです。でも、うちは外様だからできることがある」
にっこり笑い手をトワさんに向かって伸ばす。
「あなたたちは魔人化薬を作ってる組織をつぶす。俺たちは魔人事件を解決した実績とこの世界にはびこる腐りきった政府や公権を制裁する大義名分が得られる。どうです? 悪い取引じゃないと思いますが」
俺の言葉に深く考える様子のトワさん。これは、あと一押しですね。
「ちなみに今日お伺いするにあたって手土産として駅前の限定プリン10個ほど買ってきたんですが」
「とりあえずその話、今回は乗ることにする。データ、私の端末に送ってくれる?」
よっしゃあ! 食いついた。
俺はムラサメのデータをトワさんのスマホみたいな端末に送り、その場で別れた。
さて、どうなるかねー魔人狩りは。
できれば俺の私兵じゃなくてEXCEEDSで正式に働いてもらいたいんだけど。
その前に彼女たちの血なまぐささをどうにかしないとな。今のままだとしつけのなってない野犬だ。
となると……やっぱりなのはさんとフェイトさん頼みだよなぁ。
わからせは早い方がいいかもしれない。
「トワさん、これすごいですよ。こっちが調べてた情報の上位互換すぎます。工場の見取り図や誘拐された子供の詳細な人数、敵の配置や魔人化薬の詳細なんて普通に調べても出てこないことがたくさん書いてます」
仲間の1人。相沢シオリの言葉に夜海トワは彼が本当にただ者でないことを知った。
「それ、ガセとかじゃないの? 私たちを罠にはめようとか」
「開錠」の能力を持つ新名アオイが言葉を投げかけるが、それにシオリは首を振る。
「こういうの、嘘やごまかしがきかない情報が載りすぎてるのよ。私たちが調べた情報と精査しても多分本物だと思う」
「だとしてもさぁ、話ができすぎてない? それにうちらを顎で使おうとしてんでしょそいつ」
声をあげたのは「剛腕」の能力を持つ喜多森ユーナだ。前回拘束されて転ばされたのを根に持っているらしい。
「聞くことないよトワちゃん。あんな奴、どうせ政府の人間なんでしょ」
「でも、外様って言ってた。今の腐りきった政府や公権を制裁するって」
ユーナの言葉に控えめながら小寺ユズが反対意見を出す。
「そんなの嘘に決まってるじゃん!」
「そうそう。政府の奴らは信用できない」
ユーナの言葉にアオイが同意する。
「それでも、私は行くよ」
夜海トワは決意を込めた瞳で4人を見る。
「魔人化薬の実験なんて、絶対許さない。私は、私たちのようになる人間を1人でも救いたいんだ」
トワの言葉に反対意見を言っていた2人も黙る。
「反対のユーナとアオイは今回来てくれなくてもいいよ。今回は私1人で」
「駄目よトワちゃん!」
「何のために私たちがいると思ってるんですか!」
「私たち、トワさんに恩を返したいんです」
「うん、恩返し、したい」
アジトから出て行こうとするトワを止め、戦闘準備する4人。
それに私は恩返しとか考えて助けてないんだけどなぁと1人思うトワ。
「あ、そうだ」
忘れていたとトワは彼に渡されたもう1つの贈り物のことを4人に話す。
「その情報源の人からお近づきのしるしにって駅前の限定? プリンっていうのを10個貰ったんだ。仕事が終わったらみんなで食べよう」
「限定プリン⁉」
4人の言葉が1つとなりトワはたじろいだ。
「あの、駅前にある200食限定の⁉」
「グルメサイトレビューで☆5が付いたあのお店の伝説のプリン⁉」
「うわー! まじアがる! まじアがる! その情報源さん神じゃん!」
「(こくん)(こくん)(高速で頷いている)」
4人の変わりように驚くトワ。
彼女は知らなかった。スイーツを前にした女子の底力というのを。
そしてそれが今度の仕事現場でいかんなく発揮されるということを。
「1人2つなんて夢みたい。ああ、いいことってしておくものね」
「政府の人間て言ってたけど話わかるやつじゃん! やっぱプリンは2つくらいないと食べた気しないし」
「今日もぶっ飛ばすぞー!」
「がんばりましょう」
4人の変わりように1人置いていかれる形となったトワ。
「ま、待って!」
慌てて髪を縛りマスクをつけて能力でできた「扉」へと飛び込んだのだった。
ユーナ「あー、一仕事終えた後のプリンマジうまいしー」
シオリ「本当ね。さすが限定200食のプリン。私も初めて食べたわ」
アオイ「うっま! マジでうっま! これを1個食べてもまだもう1個あるって幸せ」
ユズ「おいしいね」
トワ(そんなになのかしら。プリンっていってもたかがお菓子だし)ぱくっ
トワ「」
ユーナ「トワさん、どうしました?」
シオリ「おいしくなかったですか?」
アオイ「馬鹿、トワさんは味わって食べる派なんだよ」
ユズ「違うみたい」
3人「え?」
ユズ「気絶してる」
4人「トワさーん!」
あまりのおいしさから気絶してしまったトワさんに涙を流す4人なのだった。