無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
夜海トワ、喜多森ユーナ。司郎に正体バレする。
魔人狩りたちを勧誘するがなかなかうまくいかないようで。
手土産の限定プリンは効果抜群でした。
魔人狩りとの共同作戦はうまくいった。
というか、うまく行き過ぎた。
実験用にさらわれた子供は全員保護できたし、研究者たちも拘束。出資者のデータも回収できたしこっちの犠牲者ゼロ。
まさに1人勝ち状態。やったね!
それでも魔人狩りたちは俺に心を許してないのか襲撃を終えるとそそくさと帰ってしまった。
信頼されるって難しいなぁ。
で、その戦果をもってEXCEEDS総合本部の総督室につくとデータをはやてさんに渡し、言った。
「休暇が欲しいんですが」
「え、なんて?」
聞こえてますよね? という言葉を飲み込み俺は続ける。
「休暇が欲しいんです。2日か3日ほど」
その言葉にさすがにごまかしきれないと思ったのかはやてさんはため息をつく。
「あのな、司郎君。今EXCEEDSはめっちゃ忙しいねん。侵略種退治に魔人災害の対策、さらにこの世界の公権と司法、政治との関係構築。手が2つじゃ足りんほどや」
「そうですね。知ってます。でも、それと俺が休暇をとることとは何の関係もないですよね?」
にらみ合う俺とはやてさん。
「というか、八神さんも休んでくださいよ。上が休まないと下が休めないじゃないですか」
「そんなこと言われてもなぁ。私忙しいんよ。さっきも言ったけど」
「そのためのムラサメデバイスでしょ」
俺の言葉に明後日の方向を向くはやてさん。おい、こっちを見ろ。
「事件に対するトリアージを含め業務内容は書類仕事は7割、人事関係は5割、他のこまごまとした作業は9割減らされたと管理局のデータにありますがどんなお仕事をされているのですか?」
「そらあれや。君のもってきたデータをもとにこの世界の司法や警察、政治家とのやり取りを」
「主よ、嘘はいけません」
その時アインスが部屋に入ってきた。
「あ、アインス⁉」
「司郎。その休暇届、総督秘書の私が受け取ります。どうぞどこへなりと主を連れ出してください」
「え? 連れ出せってどういう」
俺の疑問にアインスは目を細め、
「主はお仕事を頑張ればある人に甘えられるという役得のためにない仕事を増やしているのです。実際の仕事はもう8割終わらせています。それでも仕事を辞めないのはその人に甘えたいがためで」
「ちょ、リィン・アインス! やめ、やめてー!」
顔を真っ赤にしてアインスさんの口を閉じさせようとするはやてさん。
一体誰なんだ。はやてさんを甘やかすなんてことをする奴は。
そいつのせいではやてさんが休暇を取らずに仕事漬けの毎日を送るなんて本末転倒じゃないか。
「なのでどうぞお2人で休暇を満喫してきてください。大丈夫です。いざという時は私とⅡでどうにかしますから」
というわけで俺とはやてさんは3日間休暇をもらうことになった。
「で、どこ行くん司郎くん?」
なぜか俺の休暇についてくることになったはやてさん。
あの、別についてこなくてもいいんですよ。やりたいこととかあるんじゃないですか?
「ええの。司郎君と一緒にいることが私のやりたいことやから」
とはやてさん。うーん、でもなー。これから行くところを考えるとなー。
「ミッドチルダの聖王教会に向かうんですが、本当にいいんですか?」
「聖王教会? なんでそんなところに」
はやてさんの言葉に俺は2年前にアースラを強襲した3人娘たちのことを思い出すのだった。
マテリアルズ。
プロジェクトFATEの完成作品であると同時に高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやてのデータをもとに作られた人造生命体である。
兵器としては優秀で、オーバーSランクの魔力を使いあらゆる戦場を渡り歩き敵を殲滅する……はずだった。
元となった高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやてにぼろ負けしたことでその運命は大きくねじ曲がったのだ。
つまり、あまりの力量差に「これ、使えたもんじゃねえな」と出資者に思い込ませることができた。
その点はあの場でボコボコにした3人に感謝すべきなんだろう。
俺の命も狙われてたしね。
で、この3人、2年前から俺の伝手で聖王教会に保護してもらってる。
シスターとして。
ついこの間まで父さんが月に1回は様子を見に行ってたんだが今は母さんのおなかの中に赤ちゃんがいる。
地球から離れられなくて俺に様子を見てきてくれとお鉢が回ってきたのだ。
「というわけでおじゃましまーす」
「いらっしゃいませ、シロウさん」
シスター姿のシュテルが出迎えてくれる。
たたずまいから雰囲気まで完全にシスターだ。シスターシャッハよりシスターらしい。
ひょっとしてこの娘の天職ではないかと思ったその時だった。
「シンジいらっしゃーい! ごはんー! ……なんだシロウか」
顔面に逆肩車の態勢でとびかかってきたシスター服のレヴィ。下にスパッツ履いてるとはいえ、この挨拶、まさか毎回父さんにやってるんじゃないだろうな。
しかも俺が父さんじゃないと分かるとすっげー不服そうな顔で離れて行った。
「来たかシンジ。余に供物を与えることを許す! ……なんだシロウか」
今度はディアーチェがシスター服で尊大な態度をとっている。手にはワイングラスを片手に。
「苦労してるんだな、シュテル」
「それほどでもありません。いつものことです」
「いつものことなんかい!」
シュテルの言葉にはやてさんがツッコむ。おや、騎士カリムと話に行ったはずでは?
「いや、ここで存在アピールしとかんとなんやいないままの扱いされそうでな。ほなうちはカリムと話してくるから司郎君は3人とお話しとき」
と言って去っていくはやてさん。
相変わらず騎士カリムと仲が良いようで。
俺は父さんに言われていたことを確かめるために3人に質問する。
身の回りで困ったことはないか。
教会での生活は苦しくないか。
管理局の人間がいらんことしてきてないかなど。
それに対し3人は首を振ってそういうことは一切ないと返事した。
うん、これで俺のやることは終了。
あとははやてさんとカリムのお話が終わるのを待つだけだ。
「シロウ、シロウ! お土産とかないの?」
俺の袖を引きわざとかがんで上目遣いでおねだりするレヴィ。
くっ、顔だちが推しに似てるからつい甘やかしてしまうじゃないか。
「聖王教会のみんな用にお菓子を買ってきたからみんなで分けてな」
「わーい、お菓子だー」
「ちゃんとみんなで分けるんだぞー」
俺の言葉に箱から瑞穂産のお菓子を持っていくレヴィ。どこまでも自由人だな。
「すみません、うちのレヴィが」
「まったく、あやつにはシスターとしての自覚が足りないな」
どの口が言うんだどの口が。
シュテルはともかくディアーチェはぜんぜんシスターに見えないぞ。
俺がそう思っているとシスターシャッハがやってきた。
「おや、3人ともここでしたか」
シスターシャッハの姿を見かけたレヴィが急いで手に持ったお菓子を口の中に入れる。
「ふもっ! ふももも! ふもも! ふも!」
「誰も取らないから落ち着いて食べなさい。レヴィ、あなたは少し淑女の振る舞いというものをですね」
くどくどと説教を始めるシスターシャッハ。それに「ふもー!」と言いながら逃げ出すレヴィ。
「私から逃れられると?」
だが一瞬で間合いを狭められローブの首の後ろをつかまれていた。まるで猫のようだ。
「3人はご迷惑かけてませんか?」
俺の言葉にシスターシャッハは「安心してください」と言う。
「今はお客さんが来てはしゃいでるだけで普段はおとなしくしていますよ。シュテルはもちろんディアーチェも料理を手伝ってくれますし、レヴィは子供たちに好かれています。手の足りない我が教会に必要な人材です」
そう言ってくれるとここを紹介した甲斐があるというものだ。
というか、ディアーチェが料理? たしかにコピー元は料理上手だがそれも受け継がれたのか?
俺のいぶかし気な視線を受け、「不敬であるぞ」と宣う闇統べる王。
「ディアーチェの料理は大したものですよ」
「王様の料理、僕好きー!」
2人が言うなら本当に料理上手なのだろう。
それなのになぜ父さんの料理を求めるのかは不明だが。
「シンジの料理はねー、王様と違う味がして好きなんだー」
とレヴィ。
「そうですね。私たちに対して作ってくれるという点でも評価はプラスです」
顔を赤くして言うシュテル。
「我に捧げる供物としては1級品だからな、シンジの料理は。アースラにいた頃から楽しみであった」
とディアーチェが懐かしそうに言う。
なんというか、君たちにとって父さんの料理=おふくろの味になってない?
「再現しようと試みたがなかなか難しくてな」というディアーチェにレシピを聞いてこようかと言ったら断られた。
いわく、試行錯誤しながらあの味に近づけるのが楽しいのだと。
そんなものかねぇ。
その後はやてさんが騎士カリムとの話を終えるまで3人とシスターシャッハと近況報告をして時間が過ぎて行った。
「おまたせー。ほな行こか」
帰り際、はやてさんはにこやかな顔で3人とシスターシャッハに挨拶すると聖王教会を出る。
「上機嫌ですね。なにかいい予言でも聞いたんですか?」
俺の言葉に対し、はやてさんは「乙女の秘密や」と口を閉ざしたのだった。
その後ユーノくんの働く無限書庫に瑞穂土産を渡して管理局に寄りレジアスにも瑞穂土産を渡しておく。
裁判の時とマテリアルズの大捕り物の時はお世話になったからね。お礼はきっちりと。
はやてさんはレジアスさんに丁寧にあいさつしていた。本編ではタカ派のおっさんと呼んでたのにえらい違う対応だ。
まあ懲りずに俺を勧誘しようとするレジアスに「あげません。もううちのなので」とはやてさんが腕を引いて俺を抱き寄せた時バチバチ火花が散ったけど。
そんなこんなで今日泊る祖父母の家にたどり着いたのだった。
「ほんまええの? せっかくの家族水入らずなのにうちがいて」
「1人でホテルで食事なんて味気ないでしょう。うちで食べていってください」
特にはやてさんはその傾向が強いからな。今の守護騎士がバラバラな状況もストレスに違いない。
本当は毎日家族みんなでご飯を食べたいはずだからね。
そう思って祖父母の家のドアを開け、祖父母と対面したはやてさんは、
「初めまして。司郎君と付きおうてます八神はやてって言います」
爆弾を落としやがりました。
思わず俺が顔を見ると顔を真っ赤にしてそらしやがりましたよこの人。
やだ、遊ばれてる。
「おお、司郎も隅に置けないな」
「孫が恋人を連れてくるなんて。今日はなんていい日なんでしょう」
「ちょ、待ってじいちゃんばあちゃん。この人俺の上司! そういう間柄じゃないから」
「せやね、上司と部下という関係上あまり大っぴらには言えんよね」
俺が必死に否定するのにちょっと寂しそうな顔でつぶやくように言うはやてさん。
「あらあら、プラトニックな関係なのね」
「そういうことなら私たちも黙っておこう。職場恋愛は難しいからな」
「違うんですこの人冗談が好きなだけの俺の上司なんです。ねえ、聞いて!」
俺の訴えもむなしく確実にそういう関係として扱われるはやてさん。
ちょっとうちの祖母と世間話しながら料理の手伝いをするなんていういい嫁ポジションやめてもらっていいですかねぇ! なんかリンばあちゃんも悪い気はしてないみたいだけど!
シェロじいちゃんはお前の父親と母親もある意味職場恋愛だったよと懐かしそうに語りだしてるし。駄目だ、誰も話を聞いちゃくれねぇ!
「はーい、あなた。ごはんですよー。私も手伝ったからしっかり食べてな」
料理を運んでくるはやてさん。見てくださいよこの笑顔!
この勝ち申したといわんばかりのご機嫌な顔をよぉ!
俺は恨みがましい目をしながらはやてさんを見る。その間にもはやてさんは巧みな話術で祖父母を懐柔し味方にしていく。
「おばあ様のお料理、とても勉強になりますぅ。私にも教えてほしいわぁ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。娘はデバイスばかりに興味が行ってお料理のほうはてんで駄目だったのよ。その点、はやてちゃんは安心ね。孫を安心して任せられるわ」
はやてさんの褒めトークにリンばあちゃん陥落。
「おじい様、グラスにお酒をお注ぎしますね」
「いやいや、もうしわけない。孫には過ぎた気の利く女性だ。シロウ、この娘のことを大切にするんだぞ」
シェロじいちゃんも陥落。あれ、もう味方いない?
「ベッドが娘の使っていたもの1つしかないんだけど2人ともいいかしら?」
「問題ないですぅ」
「ありまくりですよ! 俺はソファーで寝るので八神さんがベッドで寝てください!」
こうして久しぶりの祖父母の家訪問なのに全く安らぐことなく過ごすことになった。
はやてさんを連れてきたのは間違いだったかもしれない。
カリム「はやて。友人としてあなたにアドバイスします。今日この日があなたが他の女性たちから彼を奪い取るのに有利な日です」
はやて「ほんま⁉」
カリム「ええ。とりあえず今日は周囲の人間に彼は自分のものアピールをすることをお勧めします。あるいは自分は彼のものアピールですね」
はやて「そ、そんなん……恥ずかしいやん」
カリム「言ってる場合ですか! あなた、他の女性たちに比べて彼に対する恋愛距離が周回遅れの自覚を持ちなさい」
はやて「そ、そんなひどくないもん! 私ちゃんと好きやもん!」
カリム「あなたが好きなだけではだめなのです。ただでさえ上司と部下という恋愛に発展しにくい関係なのに彼にだけ負担のかかる仕事を振っていることに罪悪感もあるんでしょう」
はやて「な、なんでそのことを」
カリム「私のレアスキルは優秀な時は優秀なので。で、詩編にはこうあります。将を射んとする者はまず馬を射よと」
はやて「つまり?」
カリム「彼の関係者や血縁者を抱き込めということです」
はやて「なるほど。今日泊るおじいさんおばあさんを味方にせえってことやな」
カリム「その通り! さあ、やるのです八神はやて! 将来の明るい未来のために」
はやて「ありがとなカリム! うちらズッ友やで!」
カリム「行きましたか」
カリム(くくく、はやてちゃんのパワハラ、モラハラで疲弊する司郎君。それに手を差し出す私。タイミングはしっかり見極めないと)
カリム(なにしろ下手をすればはやてちゃんとくっつきかねない危険な手ですからねぇ。肉を切らせて骨を断つというやつです)
カリム「最終的に彼が我々聖王教会の手に入ればそれでいいんですよ」
シャッハ「失礼します騎士カリム……ご機嫌ですね。何かいいことが」
カリム「ええ。これから起こる、かもしれませんその時は2人で祝いましょう」
シャッハ「はぁ」