無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
司郎君、はやてさんに休暇申請。なぜかはやてさんと一緒に過ごすことに。
マテリアルズ再び。教会で健やかに成長しているようで。
はやてさんまさかの嫁ムーブ。頼れる仲間は誰もいないぞ!
結局休暇の3日間ははやてさんと一緒に過ごした。
1日目はミッドチルダ。2日目は地球。3日目は瑞穂。
2日目の地球はおなかが大きくなった母さんの見舞いだ。実家に顔を出すと安定期になったと言って大きくなった腹をさすっていた。
それと俺の休学届は父さんが代わりに出しておいてくれたらしい。おかげで後顧の憂いなくEXCEEDSで働けるというものだ。
学校に顔を出すとすずかちゃんとアリサ嬢が出迎えてくれた。俺とはやてさん、なのはさん、フェイトさんは同じクラスらしい。
またアリシアだけぼっちか。かわいそうに。
久しぶりの登校に俺って中学生だったんだなと改めて実感する。EXCEEDSでは制服着てる時間のほうが長いからもう社会人みたいな気分でいたよ。
これ、俺だけじゃなくなのはさんやフェイトさん、はやてさんやアリシアもそうなんだよな。
決していい精神状態とは思えない。早く瑞穂を平和にして学園生活を送れるようにしようと固く心に決めた。
はやてさんは家に帰っても誰もいないので俺の家に泊った。
そこで祖父母にやったように良妻仕草をしようとしたので両親には「俺ははやてさんと付き合ってないし今後もそのような関係に発展することはない」と念押しする。
俺の態度に「いけずやわぁ」と涙を流す仕草をするはやてさん。そんなことしても騙されませんよ。
だが両親はそうではないらしく、「司郎、さすがにそれは言い過ぎじゃないか?」「女の子に恥をかかせる子に育てたつもりはない」と説教を受けた。
よく見てほら! はやてさんめっちゃ舌出して笑ってるし!
このたぬき娘め!
結局その日ははやてさんが俺の部屋で寝て俺は地下室に布団持ってきて寝たよ。しくしく。
もううちの家族で誰も俺の味方がいない。
で、3日目は瑞穂に戻って観光。
はやてさんと普段行くことのないレジャー施設へ行って楽しんだ。
この日ばかりははやてさんは年相応の振る舞いをして全力で瑞穂の町を楽しんでいた。
そうそう。下手な策略めぐらすよりもそうやって素直に喜んでいる姿の方が素敵ですよ。
そう言うとなぜか顔を赤くして叩かれた。なぜ?
「ほんま、そういうとこやで」とはやてさん。俺は叩かれた理由を聞いているんですが。
で、心身ともにリフレッシュした我らが総督は俺を連れてEXCEEDS本部へと出勤してきた。
「おはようさん。みんな元気か? 私は元気やで」
さわやかな笑顔のはやてさんと対照的になのフェイとアリシアの顔が暗い。
これは、何かあったか?
アインスに話を聞くと俺と一緒に休暇を楽しんだはやてさんにオーバーSランク娘たちから「ずるいずるい」と抗議の声が出たらしい。
「せやけどなのはちゃんはこの前の休暇でこの世界の航空展見に行ったって言うとったやん。フェイトちゃんとアリシアちゃんも姉妹で瑞穂観光したって」
「はやてちゃんだけ司郎君を独占したことについて私たちは文句を言ってるの」
「そうだよはやて。独り占め、よくない」
「はやてしろうを独り占めしてずるいー! しろうはみんなのなんだから」
アリシアの言葉に耳を疑う。俺の人権、なんかみんなのものになってるらしいですよ。
「あはは、モテモテだね真木君」
「シイナさん。あれは遊ばれてるって言うんですよ」
俺のことをおもちゃか何かだと思ってるんだ。反応が面白いから。
「そんなこと、ないと思うけど」
とセツナちゃん。残念ながらそんなことあるのがあの4人なんだ。
「そういえば2人はちゃんと休暇取れてますか? 俺は今回が初休暇だったんですが」
俺の言葉にびっくりする久瀬姉妹。
「普通に休んでるよ! なに、真木君の労働環境超ブラックだったの?」
「司郎君かわいそう。私たちは任務がない日は普通に学校に行かせてもらってるから」
その言葉にホッとする。
よかった。ミッドチルダみたいに死んだ目で働く子供はいなかったんだ。
「そうそう。その休暇なんだけどこの前猫を助けた縁で友達ができてさー。トワっていうんだけど」
ん? トワ?
聞き覚えのある声にシイナさんを見るとスマホみたいな端末に映る魔人狩りのリーダーの姿が。
「oh……」
思わずそんな声が出てしまう。
これ、俺が暗躍してシイナさんをトワさんに近づけたって思われる奴じゃない?
で、激昂したトワさんにあの赤い刀で刺されたりするやつじゃない?
嫌なフラグを立ててしまった。とりあえず魔人狩りたちをEXCEEDSに紹介して勧誘するタイミングは考えないとなぁ。
「ん? どうかした」
「いえ、きれいな人だと思いまして。シイナさんとは別のタイプで」
俺の言葉に4人娘が一斉にこっちを向く。
しまった。おもちゃを与えてしまった。
これから俺はネコに与えられたネズミのおもちゃのようにボロボロになるまでいじられるんだ。
「どれどれ? へー、司郎君ってこういう女の子がタイプなん?」
「きれいと言っただけです。好みとは言ってません」
はやてさんの追及をかわす。
「すずかちゃんがキリっとしたようなタイプなの。こういう人がいいんだ」
「いや、だからタイプとは一言も」
なのはさんの刺すような視線を回避。
「黒髪が好きなんだ。染めてみようかな?」
「その美しい髪を染めるなんてとんでもない!」
人類の宝が価値を失おうとするのを阻止し、
「セーラー服かぁ。いいなー。しろう、今度作ってー」
「仰せのままに」
無茶ぶりを全面的に受け入れることで被害を最小限に抑える。
どうだ、これが俺がここ数年で身に着けたオーバーSランク娘たちとのコミュニケーション術だ。
その後もワイワイ俺をいじって遊ぶオーバーSランク4人娘たち。
「なんていうか、4人がああなったのには真木君にも問題があるというか」
「そうだねしーちゃん。私たちは司郎くんに優しく普通に接してあげよ」
そんな光景を見て久瀬姉妹はそんなことを語ったのだった。
「こんにちは夜海トワさん。今日もお仕事を持ってきました」
私立景葉高校の門前で出待ちしていた俺の手を取って引っ張っていくトワさん。
路地裏で壁ドンされました。あれ、この展開もう見たな?
「あなたは! あんな風に出待ちされて私にどういう風評が付くか想像できないの? 同じクラスの人に「夜海さんって年下の彼氏がいるの?」って聞かれたよ!」
どうやら憤慨されている様子。そう言われてもねぇ。
「いや、そう言われても俺、夜海トワさんの連絡先知りませんし。いざという時の連絡場所も決めてませんしこちらから連絡を入れる際は直接出向くしかないので」
俺の言葉にその事実を初めて気づいたのかトワさんはスマホらしき道具の端末を出してきた。
「じゃあ、連絡交換。授業中以外はいつかけてきてもいいから」
ふむ、その言葉を聞けたということはある程度こちらを信用してもらったと考えるべきかな?
ちなみに魔人狩りのみんなとは5回ほど仕事を手伝ってもらっている。
その間依頼料とは別に手土産としてのプレゼントを欠かしたことはない。
「今回の手土産は異世界のお菓子とコーヒーです。今までのお菓子と遜色ない特別な品だと思いますが」
俺からの手土産を受け取ると複雑そうな顔をするトワさん。どうしたのかな?
「最近、うちの連中があなたの手土産を期待するようになった。私は貰ってばかりで心苦しいんだけど」
なんだ、そんなことか。
「俺は正当な報酬だと思って渡してますけど。お仲間に喜んでいただけているなら幸いです」
さて、では仕事の話に移ろうか。
「今回のお仕事は海外の侵略種の素材を使った工場の破壊。うちのEXCEEDSメンバーとの共同作業となります」
「共同作業?」
眉根を上げて不機嫌さを隠そうともしないトワさん。はい、その反応は予想してました。
「といってもうちの課の人間の目的は侵略種退治。俺たちは工場の破壊と目的はぜんぜん違います。なので顔を合わせることはないでしょう。多分」
運命がいたずらしない限りは、ね。リリカルなのは世界だからどんな行動がトリガーになるかわからん。
「なるほど。この工場はうちのほうでも目をつけてたから言われなくても破壊するつもりだった。データは?」
「ムラサメ」
俺の言葉にトワさんの端末にデータを転送するムラサメ。
「とりあえずみんなに話してから参加するかどうかは返事する。いつも通り現地集合でいいの?」
「はい。よろしくお願いします」
俺の言葉を聞き去っていくトワさん。
うーん、まだまだ信頼度がたりないなぁ。
俺としてはそろそろ魔人狩りの人間と顔合わせしてもいいくらいに仲良くなったと思ってたんだが。
そんなことを考えて路地裏から表通りに出た時だった。
いるな。
多分、3人。こちらを見る視線でわかる。
というか、素人丸出しすぎて警戒するのもあほらしくなる。
まあいい。とりあえず様子を見るか。
俺は適当に歩きだしどこへ行こうかと考えるのだった。
「あっ、トワさん出てきた」
「ってことは次あの路地裏から出てくる男が例の男ね」
「出てきたわ。追いましょう」
真木司郎を追うのは喜多森ユーナ、新名アオイ、相沢シオリの3人である。
彼女たちは夜海トワ率いる魔人狩りのメンバーで、それぞれ有用な能力を持っていた。
ユーナは剛腕、アオイは解錠、シオリは蜘蛛。
いずれも戦闘や潜入で役立つスキルである。
だが最近その魔人狩りに異変が起きていた。
具体的には目の前を歩く男が原因で。
真木司郎。
EXCEEDSの職員と男……いや、少年は名乗った。
メンバーが血眼になって彼の情報を得ようとしたが強固すぎるプログラム(ムラサメネットワーク)に阻まれ、一切が謎に包まれた人物。
自分たちが調べるより上位互換のデータを渡してきて協力を願い出てくる変わった少年である。
毎回依頼料とは別に自分たちに手土産としてお菓子や珍しい食材を渡してくれるので悪いやつではないと思う。
だけどこちらだけ相手のことを知らないというのは気持ち悪い。
なので調べる。アナログな方法で。
リーダーであるトワには許可はとっていない。彼女はこういうのを嫌がりそうだからだ。
だがそれでも3人は調べなければいけない理由があった。
きっかけはアジトでの3人の会話である。
「最近、トワさん笑うこと増えたよね」
「スマホ見て笑うことが増えたし」
「なんだかカレンダーを見てウキウキした様子だし」
3人は最近トワの様子が変わったことを敏感に感じ取っていた。
まるで誰かと出会うことを心待ちにしているような。
それはあっていたのだが、彼女たちは肝心なところを間違うことになる。
「これは、男だよね」
「それな!」
「うーん、そうかしら」
アオイの言葉にユーナが同意し、シオリが難色を示す。
トワの横に男がいる姿を想像できなかったからだ。
「でもさあ、女があんな風にソワソワするのって男がらみじゃん」
「そーそー」
アオイの言葉にユーナも乗っかる。
「でも相手はトワさんよ。それに今まで親しい異性なんて」
とシオリが言ったとき、3人の脳裏にある人物が同時に浮かび上がった。
最近自分たちに仕事を手伝ってくれと懇願してくるEXCEEDSの隊員。手土産の人。なんかおかしをくれる人。
浮かんだのはそれぞれ別々の言葉であったが人物像は1人に絞られた。
「真木司郎とかいうEXCEEDSの隊員!」
言ったのは誰だったか。だが彼女たちが進む方向は決まった。
ヤツの情報を抑えてトワさんにふさわしい男か見極めようと。
で、現在に至る。
「ターゲット、道を普通に歩いてます。隙だらけだよ」
「まるで襲ってくれって言ってるようなものね」
「今アイスクリーム屋を通過ってちょっと待って」
シオリが見ている前で少女が転び手に持っていたアイスクリームがアスファルトに落ちていた。
周囲が気の毒そうに見る中少女は泣くことを忘れショックで茫然としている。
「ターゲット、3段アイスを注文。まさか女の子の目の前で食べるために⁉」
「そう考えるユーナは相当性格悪いと思う」
「ええ、普通はああいう風に……ちょっと待って」
真木司郎は少女にアイスを手渡すと笑顔で背後から来ていた男の手をひねった。
完全に死角だったはずの男の手をつかんだことに驚いていると真木司郎は手をつかんだ男に向き直る。
「はい、確保。こういう人の親切を利用した犯罪って俺特に許せないんだよね」
そう言って近くの警察署に男と子供を連れて行った。
「え? え? どういうこと?」
「あの男と女の子はグルってことじゃない」
「観光地とかでよくある手ね。瑞穂でやってる人は初めて見たけど」
資産家であるシオリは身に覚えがあるのか唸っている。
「で、結局あの男はいいやつなの? 悪いやつなの?」
「今の感じだとどっちともいえないなー」
「いや、犯罪者を捕まえるのも彼の仕事でしょう。EXCEEDS所属って言ってたし」
話しながら後をつけると今度はガールズバーに立ち寄った。
「うわっ、最低」
「トワさんというものがいながら女遊びとか」
少年を軽蔑するアオイとユーナだったがシオリは別の事に思い至っていた。
「ちょっと待って。あの店って」
『ハンブラビ!』
突如少年が自分のデバイスに何か挿すと次の瞬間姿が変わる。
そのまま手に持ったムチ状のもので店にいるボーイを電撃で昏倒させていた。
「何やってんだあいつー⁉」
「ちょ、マジなにやってんの?」
頭を抱えるユーナとアオイの横でシオリは難しい顔で真木司郎が入っていったビルを見ている。
しばらくすると警察車両が来てそれに真木司郎が拘束した大人……魔人化の解けた人間を引き渡していた。
「あのビル、反社の魔人くずれのたまり場って噂があったのよ。私たちが動くほどじゃないと思ってたけど相当な人数の魔人が居たみたいね」
ぞろぞろと警察車両に乗せられていく30人近い人数を見ながらため息をつくシオリ。それに「マジか⁉」と顔色を変えるユーナとアオイ。
「とりあえず、仕事ができる相手ではあるみたいね。データも毎回正確だし」
シオリの言葉にアオイもうなずく。
「だねー。お土産のお菓子もおいしいし、いいやつなんじゃね?」
ただ1人、ユーナは否定する。
「私は認めないよ! アイツがトワさんの相手なんて。確かに仕事もできるやつだしおいしいお菓子くれるけど、私に腹パンしたの忘れてないし!」
「それはあなたがいきなり襲い掛かってきたからでしょう」
声に目を向けるとさっきまで警察に囲まれていた真木司郎がいつの間にか自分たちのそばにやってきていた。
「いつの間に⁉」
「ついさっきです。で、どうですか? 俺を監視して何か面白いことでもありましたか?」
ニコニコと笑う少年に、3人の心が重なる。
バレてた。しかも遊ばれてたと。
「きょ、今日はこのくらいにしてやるー!」
と去っていく3人。それにあの3人と仲良くなるにはもう少しかかりそうだなと頭を悩ませる司郎であった。
ユズ「トワさんおかえりなさい」
トワ「ただいまユズ。あれ? みんなは?」
ユズ「出かけてるみたいです。それ、今回の手土産ですか?」
トワ「そうみたい。一応毒はないとは思うけど私が先に食べて毒見しておくから30分経っても何もなかったらみんなで分けて食べて」(お菓子持っていく)
ユズ「わかりました」
ユズ(あ、トワさんまた端末見て顔緩んでる。最近多いな)
トワ(うふふ、シイナシイナー。きゃわゆいなー。猫ちゃんだっこしてるシイナかわいいよー。会ったその日に生まれたままの姿をお互いに見せあうなんて運命だよね)
ユズ(最近トワさん笑うこと増えたな―。それはいいんだけどちょっと嫉妬しちゃうな。相手は誰だろう?)
トワ(はー、シイナの脇をペロペロしたい。違う、prprしたい。うなじに顔うずめてクンカクンカしたいよー。あの豊満なバストに顔をうずめて深呼吸したい!)
トワ「ユズ、私部屋にいるから何かあったら呼んで」
ユズ「はい、わかりましたトワさん」
ユズ(3人がお菓子の人を追跡してることは言わない方がいいよね。うん)
トワ(さあ、みんなが帰ってくるまで部屋でスーパーシイナタイム、はっじまるよー!)
黒髪族の愛は重く、深い。みんな知ってるね?