無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版)   作:百男合

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 あらすじこと前回の3つ
 夜海トワ、篠宮マナと接敵。
 あと一歩及ばずトワとシイナは共闘することに。
 魔人狩りたちを人質に取られシイナが戦闘不能。逃げたマナを追うことに。


第54話 篠宮マナの最期

 瑞穂のセーフハウスにいた蔵木エイジは篠宮マナがいる南極の魔人化薬製造所が襲われたと聞きこう提案をした。

「すぐにしっぽ撒いて逃げるか相手を全員殺してからゆっくり逃げるか」

 篠宮マナは後者を選んだ。

 だが、それは失策だった。南極の状況を伝える魔人メイドによると南極基地は90%が破壊され、原種0号の存続も危ういらしい。

 失敗したなとエイジは思った。最初にマナに原種0号を持ってすぐこの場に来るように言うべきだった。

 他のものは金で何とかなるが、あれだけは別だ。だから南極なんて辺鄙な場所に隠しておいたのに。

 そんなことを考えていた時だ。唐突にドアを開けられたのは。

「国連危険生物調査機関【EXCEEDS】総合本部総督の八神はやてです。この基地は我々EXCEEDSが占拠させていただきました」

 見れば扉の向こうに拘束されて転がされている魔人メイドたちがゴロゴロいる。

 まだ15にも満たないような子供にやられたのかこいつらはと思いながら、エイジは彼女が連れてきたEXCEEDS隊員たちを見る。

 もしここで魔人化能力を発動して襲い掛かっても待っているのは死だろう。

 冷静に計算してエイジはあきらめた。来る時が来たかと思ったともいう。

 篠宮マナと好き勝手していた時点で、こういう日が来ることはわかっていた。

「あなたには魔人化薬の流通、政治家や公的権力への違法な献金、そして我々が公開したリストの人物50名以上を殺害した容疑がかかっています。とりあえずEXCEEDS本部までご同行願えますか?」

 はやての言葉に頷こうとしたエイジだが、ふと気になり問いかける。

「あんたがfoundマンか?」

「はい?」

 突如告げられた予想外の質問に、はやては一瞬素に戻る。

「俺のパソコンにウイルスを送りやがった。あのfound itってやつ。アレ、あんたがやったのか?」

 エイジの質問に思い当たることがあったはやてはフォウ・ムラサメを起動し質問する。

「どう思う、フォウちゃん」

『絶対お姉ちゃんだよね。間違いない』

 やはりそうか。と納得し、はやてはエイジに語り掛ける。

「おそらくあなたが言っている人間に心当たりはあります。その人はあなたが南極基地でムラサメデバイスを不用意に使ったことを馬鹿にしていましたよ」

 はやての言葉にそうか。それでEXCEEDSは南極の基地に行ったのかとエイジは納得する。

 つまり、今こんな事態になっているのは自分のせいだということか。

「はは、ざまあねえな」

 どの道篠宮マナが終われば自分は終わりだ。生きていたって仕方ない。

「言っておくが俺は何もしゃべらないぜ。あんたの期待しているような情報は何もな」

 そう言った蔵木エイジはEXCEEDSの隊員により連れていかれた。

 そしてその言葉通りはやてがどんな司法取引を持ち出しても彼が篠宮マナのことをしゃべることはなかった。

 

 

 

 地上に出た篠宮マナはある場所に向かっていた。

 それは原種0号の【原木】

 あれさえあれば自分はやり直せる。

 今は逃げて、力をためて、今度こそ炎の魔人、セツナを倒す。

 そう心を決めたマナの背中を、鋭い蹴りが襲った。

「ぎゃっ⁉」

 地面に落ち、雪の残る地面を転がり回る。

 背中に意識を向ければ吸い取られた生命力。

 この力は。

 空を見上げると炎のように髪が揺らめき、目が太陽のように輝く夜海トワがいた。

「お前、お前お前お前! なんでお前がセツナの力を⁉」

「借りたのよ。シイナから、私に。セツナちゃんの意思で」

 炎の翼を生やし、炎をまとった巨大な日本刀を構え襲撃してくるトワ。

 その刀にまとわりつく炎に、マナは戦慄する。

 やばい、これ、避けないと死ぬ。

 間一髪。髪の毛を斬られるだけで済んだ。だが次はそうはいかない。

 マナは触手を練り上げドリルのようにし、空から襲来するトワに向かって放つ。

「篠宮マナァ!」

 裂ぱく一閃。

 気が付けば胴と足がさよならしていた。

 あまりのことに呆然とするマナ。

「が、ぎゃぁあああああ!」

 次の瞬間、体中が炎に包まれる。

 セツナの力だ。自分を滅ぼすために生まれた原種の魔人の力。

 それが容赦なく自分に牙をむいてきたのだ。

「熱い、熱い熱い熱いぃ!」

 ゴロゴロと上半身だけで転がり、炎を消す。

 見上げれば満天の星が見えた。

 場違いにきれいなその景色に思わず口の端が上がる。自分は今死にかけだというのに。

「何を笑ってるの」

 そんな自分を見て怒りを覚えたらしい。トワの言葉にマナは返す。

「いやいや、滑稽(こっけい)だと思ってねー。トワちゃんクソザコなのにセツナの力を持った瞬間俺つえーって調子乗っちゃって。うけるー」

 マナの言葉にまだそんな口を利ける元気があったのかと、セツナは炎をまとった刀で上半身を突き刺す。

「ぐっ、いい気分でしょ。弱い者いじめ。そうだよねー楽しいよねー。一方的に蹴ったり殴ったりっていうのはさぁ」

「何が言いたい」

「結局トワちゃんも一皮むけばアタシと同じだってこと。どう思う? あれだけ嫌ってた親の仇と同じことしてるってわかって。気分いいでしょ? 楽しいもんねー」

 トワは無言で上半身だけのマナを蹴飛ばす。それに「がはっ、ごほっ」と血を吐きながらも言葉を止めないマナ。

「弱い弱いトワちゃんはさぁ! セツナの力のおかげで強くなったけど根っこは変わらないもんねー! 何もできないんだよ君はぁ! 親の仇も、傷つけられた仲間の仇も取れない半端物なんだ」

「このっ」

『待ってくださいトワさん、何かおかしいです!』

 怒りに飲まれそうなトワをセツナの声が止める。

『あの人、わざとトワさんを怒らせようとしてます。何か別の目的があるように』

 その言葉にハッとするトワ。気が付けば見知らぬ場所までマナを連れてきてしまったことに今更気づく。

「お前、何が目的だ。どこに行こうとしている」

「あーあ、ばれちゃったか。でもいいよ。目的は達成したから」

 その言葉にマナを見たトワは愕然(がくぜん)とした。

 なんと切ったはずのマナの足が再生しかけている。

 見ればマナの上半身から生えた触手の数本が洞窟に向かって長く伸びていた。

「いやー、いいところに蹴飛ばしてくれたよ。おかげで本物の原種0号のところまでひとっ飛びだった」

 マナはニヤニヤ笑いながら再生した脚で立ち上がり、ニタリと笑う。

「さあ、始めようかトワちゃんとセツナ。第2回戦をさぁ!」

 紫色の瞳が狂気に支配される。その迫力に我知らず1歩引いたトワは次の瞬間、茫然とした。

 なんとマナが踏み出そうとした足が地面に触れた瞬間、粉々になったのだ。

「は? なに、これ」

 おかしいのはそれだけではない。

 白かった肌が元の人間のようなものに戻り、背中から生えた触手に引きずられ洞窟へと向かっていく。

「なにこれ? 逆に吸収されてる? やだ、やだやだやだ! 助けてエイジく」

 それが夜海トワが聞いた肉体を持った篠宮マナの最後の言葉だった。

 次の瞬間、赤い何かが南極の地面に生え始めたのだ。

「これは、いったい……?」

『わかりません。ですが、行ってみましょう。あの洞窟に!』

 体の内側から聞こえてくるセツナの声に従い洞窟に向かうトワ。

 そこで彼女が見た者は、

「なに、これ」

 篠宮マナを吸収し、巨大化する原種0号だった。

 赤黒い世界樹。

 それが最初観た印象だった。

 赤黒い樹の枝が四方八方に広がり、どんどん凶悪で醜悪な姿へと巨大化していく。

 まさに地獄の釜の蓋が開いたという表現がぴったりな様相を見せるそれに、足が震える。

 まぎれもない恐怖だった。絶対上位の生命体を前にしたときに見せる動物的本能による恐怖。

 それがトワを動けなくさせていた。

『――ワさん、トワさん、しっかりしてください!」

 内から聞こえてくるセツナの声に、はっとする。そうだ、自分がやらないと。

 トワが思い直し大樹と化した原種0号に突っ込もうとした時だった

「おーい、トワー!」

 背後から聞こえてきた声に思わず振り返る。

「シイナ!」

『しーちゃん!』

 地下室に置いてきた親友。気絶から目を覚ましたのか。

 だがどうやってここまで? そんなトワの疑問は次の瞬間解凍した。

「なのちゃんとフェイちゃんに連れてきてもらったんだ。ほら、あの2人!」

 シイナが指差す先を見ると原種0号から産まれた飛翔体を撃ち落とし、原種0号に向かっていく少女たちの姿があった。

「すごい、なんなのあの2人」

 トワが見ている中、2人は欠片ほどの恐れも見せず原種0号に肉薄せんとレーザーを撃つ飛翔体を次々と撃ち落としていく。さらに原種0号に向け砲撃を放っていたのだ。

 それが花火のように世界を照らし、場違いにもきれいだとトワは思ってしまった。

 ついさっきまで命のやり取りをしていたのに。

「いやーやっぱそういう反応になるよねー初見は。あの2人、レベルが違うもん」

 うんうんと1人頷くシイナにトワがポカンとしていると胸元がむずむずして中から炎の魔人が飛び出してきた。

「しーちゃん! しーちゃん!」

「おお、お帰りセツナ。ちゃんとトワのお手伝いできた?」

 シイナに抱き着くセツナにホッとするとともにむっともする。

 私もシイナに抱き着きたいのにと。

『シイナさん、トワさん、聞こえますか?』

 その時シイナの持つデバイスに空で戦っている2人の声が聞こえてきた。

「はい、聞こえてます」

『この原種0号は私たちが相手にするので、2人は地中にいると思われる本体を破壊ないし無力化してきてください。お2人の能力なら可能です』

 なのはの声に、シイナとセツナが頷きセツナがシイナの中に入る。

 次の瞬間太陽のように燃える炎の髪と瞳を持った魔人状態のシイナが顕現していた。

『できれば急いでください。時間が経つと世界中に原種0号の卵が放たれるみたいなので』

 フェイトの通信に、シイナとトワは頷く。

『あ、ちなみにシイナさん。私が預けたGメモリ。ちゃんと持ってますか?』

 なのはの声に移動中渡されたGメモリを取り出すシイナ。

「はい、ありがたく使わせていただきます」

『貸すだけですからね。ちゃんと返してくれないと嫌ですよ』

 茶目っ気のある声で言われ、これは帰ってこないとなとシイナに思わせる。

 洞窟のあった場所に向かうと原種0号が出てきた大きな深い穴があった。

 まるで地の底へと続くように底が見えない深く暗い穴。ところどころに赤い宝石のような原種の光を見ることができる。

「トワ、私と一緒に来てくれる?」

 手を差し出し、最後の確認をするシイナ。

「ええ。地獄以外なら、どこへでも!」

 それにシイナは強く握り返し、2人そろって宙へと舞う。

『ウイングゼロカスタム!』

 シイナがGメモリをムラサメに挿入すると白い翼が広げられ、巨大な2つの銃を1つにしたゴーレムと一体化する。

 翼を折り曲げ急速落下。地面が見えたところで羽を広げ、空気抵抗を強くする。

「あれが」

「本物の原種0号」

 ゲームで見るオーブを飾る台座のような姿だった。

 原種0号はコアをさらし、まるで2人が来るのを待っているかのようにそこに鎮座している。

「セツナ、準備はいい?」

『うん、しーちゃん。できてるよ』

 胸の中にいる妹に問いかけ、ツインバスターライフルを原種0号のコアに向けて照準をセットした。

「トワも、しっかりつかまっててね」

 一緒にいるゴーレムをまとった親友に、バスターライフルの引き金に手をかけるよう促し、セツナは目を見開く。

「いっけぇえええええ!」

 引き金を引き、炎をまとった砲撃が原種0号を襲う。

 エネルギーがなくなるまで撃ちっぱなし。セツナの炎と、トワの持つ魔人の炎。2つが重なり爆発的なエネルギーの奔流が原種0号のコアを襲う。

「……がぁっ」

 その時シイナとトワの耳にその声は聞こえてきた。

「こんなところで、終われるかっての。あたしは、まだまだ欲しい。セツナの力も、トワちゃんも、みんなみんなほしい!」

 これは、篠宮マナの声?

 どこにいるのかと目を動かし姿を探すがそれらしき姿は見当たらない。

「だから、全部、よこせぇえええええ!」

 声と同時に原種0号が活性化する。木の枝を伸ばし、白い翼を広げるシイナに襲い掛からんとする。

「させない!」

 トワが大ぶりの刀、ガーベラ・ストレートを投げ飛ばしそれを止める。

 放り投げられたその大刀は回転し、原種0号の幹に深く突き刺さった。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! この刀、ムカつくムカつくムカつく! あたしの腕を斬りやがった刀!またあたしの身体を傷つけやがってぇ!」

 その時トワは気づいた。

 篠宮マナが原種0号と融合しながら、意思を保っていることを。

「篠宮マナァ!」

「遊ぼうよトワちゃーん! 今度はじっくりと時間をかけてさぁ! 世界をゲーム盤にしてあたしとエイジくんのチームと、君たち2人で!」

「そんなの、お断りだ」

 マナの声を聴いてシイナがビームの出力を上げる。

 原種0号のコアにひびが入り始めた。

「待て! 待って待って! それってズルじゃん! もっと楽しもうよ! 楽しいことは長続きしたほうがいいでしょ? そうだよね!」

「残念だけど、楽しいと思っているのはあなただけだよ」

 トワは1人つぶやくように言い、炎の出力を上げる。

『そんなたくさんの人が悲しむことをゲームと言うなら、あなただけで遊んでください!』

 シイナの内側でセツナが声を上げ、炎の出力をさらに上げた。

「ずるい、ずるいずるいずるい! そっちだけ3対1じゃん! 卑怯じゃん! 正義の味方なんでしょ? だったら正々堂々相手してよ!」

「その言葉、少し前の自分に言ったら? セツナと融合した時に記憶もちょっと受け継いだけど、あんたトワと戦うのに原種0号の力借りようとしてたでしょ」

 シイナの言葉に黙るマナ。しかしそれも一瞬。

「あたしはいいんだよ。だってあたしはトワちゃんと違って強いから! どんな力も使う! どんな手段も使う! それが強者だから! つまらないプライドでためらってるトワちゃんとは違うんだよ」

 まるでお話にならない。完全に破綻している論理に言葉をかけるのをやめ、3人はエネルギーを注ぐのに集中する。

「おーい、もしもーし! なんで無視するのー? なんでなんでなんでなんでなんで? お話しようよー! これじゃあたしだけしゃべって馬鹿みたいじゃん?」

 無視。エネルギーを注いだ影響か、コアのひび割れが広がっていく。

「終わりだ、篠宮マナ」

「あー、その力、欲しかったなぁ。明るい、輝く太陽みたいな力。あたしがどんなに求めても得られないあったかくて、胸の炎を燃やすような気持ちにさせてくれるワクワクする力。それがあればあたしもエイジくんに」

 言葉は最後まで続かず終わる。

 コアに走るひび割れが完全に全体へと及び、原種0号はその活動を止めたのであった。

 




【1】
マナ「『セツナァ! お前はあたしの――』」
セツナ「な、なに急に⁉」
マナ「あたしの最後の断末魔候補集だよ」
セツナ「ああ、はい。そう言う趣旨なんだね」
マナ「じゃあ次。『話が……違うよ……エイジ君がアタシは特別だって……死にたく、ない……』」
セツナ「アーマード〇アだね。『だまして悪いが』並に有名なセリフだね」
マナ「はい次『あははははは! ははは! 正義の力でも消せない炎があることを知るがいいよ! はははははははははは!!』」」
セツナ「資料によるとMETAL WOLF CHA〇Sだね。バカゲーだけどこういうシーン、嫌いじゃないよ」
マナ「はい次ー。『まだ死ねない、だってあたしはまだ幸せになってないじゃないかぁあああああ!』」
セツナ「資料によるとパワポケ12だね。アニメ本編を見ると充分幸せそうなんだけど」
マナ「で、最後。『ジャンケンで決めよう!』」
セツナ「なにそれ?」
マナ「さあ? でも知ってる人は知ってる伝説のアニメの1シーンらしいよ。これは断末魔じゃなくて命乞いらしいけど」
【2】
トワ「シイナ、さっきマナにセツナちゃんと融合した時私の記憶を受け継いだって言ってたけど、どれくらい受け継いだの」
シイナ「え?」
トワ「具体的には、私の何を知ってるの?」ずいと近づく。
シイナ「あー、えーっと、その」目をそらし顔を赤くする。
トワ「……なるほど」シイナの腕をつかむ。
シイナ「と、トワ⁉」
トワ「その反応、知ったね。シイナ」
シイナ「………はい」
トワ「ふふ、いいよ。許してあげる。これからもよろしくね」
シイナ「うん」
セツナ(よかったー、トワさんのドン引きするような重い想いじゃなくて表層的な恋心だけしーちゃんに伝えることができて)
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