無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
妹が生まれました。
そして明かされる主人公命名のいきさつ。
文化祭に久瀬姉妹が瑞穂からやってきました。
地球での滞在は久瀬姉妹に結構なカルチャーショックを受けさせたらしい。
特に公共交通機関。時間ピッタリにバスや電車が来ることに驚いていた。
島では30分や1時間遅れることはざらなんだとか。
そしてそれはスーパーでも。
「豚の細切れが398円⁉ 安い! 安すぎる!」
「しーちゃんしーちゃん! この豚の塊肉のブロック、980円だって。瑞穂だと1万はするのに!」
と大興奮だったと買い物に付き合ったなのフェイからの報告で聞かされた。
トワさんと他の4人が楽しめそうなおいしい豚肉料理の店も見つけたらしい。
そういうわけで俺たちが文化祭の打ち上げで大いにはしゃいだ翌日。2人は瑞穂へと帰っていった。
なんかすずかちゃんが「お姉さんに会えなくなるの、寂しいです」って言ってたけど結構懐かれてますね。女性をたぶらかすフェロモンでも身体から出してるんですか?
それに笑いながら心配しなくてもまた会えるよと返すシイナさん。
次の日、本当にすぐ帰ってくるとは誰が予想できただろう。
「いやー、ユズの能力を使えばここに来るまで0秒だからさぁ。言ったでしょ。すぐに会えるって」
そういうシイナさんにすずかちゃんは喜んでいいのか呆れるべきなのか。複雑な顔をしていたという。
で、今回はトワさんと魔人狩りの4人が一緒。どこへ行くのかと言うとまずお昼にとんかつ専門店に行くらしい。
で、夕飯は豚しゃぶ。本当に豚肉を満喫しにここに来たんだなぁ。
あ、帰りはユズの【扉】で瑞穂の家に帰ったらしい。
で、次の日は豚肉のチャーシュー丼。ヒレ肉のカツレツを食べたんだとか。
本当に豚肉好きだなぁと思っていたらムラサメにヒレ肉を食べて泣いているユズとアオイの写真が送られてきた。
瑞穂では豚のヒレ肉ってこっちでいう牛のシャトーブリアンと同じくらいの扱いなんだとか。
で、そんな調子で豚肉料理を満喫していた魔人狩りと久瀬姉妹だったが……。
「なんか、丸くなりましたね」
主に肉体的な意味で。
俺の言葉に凍り付く6人。ちなみにトワさんはいない。
「だ、だってご飯おいしいし」
と明後日の方向を見て言うシイナさん。
「家で作るより外食のほうがおいしいし安いし」
とセツナちゃん。
「めったに食べられない料理に舞い上がっちゃって」
とユズ。
「仕方ないじゃん! おいしいんだから」
と開き直るアオイとユーナ。
「私としたことが。ついつい食べ過ぎてしまって」
一応最年長の自覚があるのか気まずそうな顔をするシオリ。
全員ワンサイズくらい体格がよくなってる。
まあ、ユズは痩せすぎだから今くらいの肉付きがいいと思うんだけど。
「みんな、どうかしたの?」
とここでスタイルが全く変わらないトワさんがやってきた。
すらっとしたスタイルだがこの人、ここにいる誰よりも食べている。
なのに太ったのは周りの6人だけ。神様って不公平だと思う。
「と、いうわけでお願いしますヴィータさん」
俺の言葉にお願いしますと頭を下げる6人。
現在いるのは八神家。そこで肉体改造のプロ、ヴィータにこの6人を託すことにしたのだ。
「司郎に聞いてると思うがアタシは厳しいぞ。弱音を吐いてもやめさせねーし、無理だと思ってることもやらせる。ただ、最後まで見捨てないからそこだけは安心しろ」
という宣言をして6人をしごいていた。
時折「遅い」だの「ノロい」だの「やる気あんのか」だのヴィータの叱咤の声が響く。あっちはあっちでやってもらうとして。
「シグナムさん、手合わせいいですか?」
俺は久しぶりにシグナムに手合わせをお願いした。
例の龍神様の他にもEXSEEDSでは次々と依頼が舞い込み、このままでは対応できなくなると思い俺自身もパワーアップの必要があると思ったからだ。
「いいぞ。いつもの公園でいいか」
「はい」
そうして俺たちは人気のない海の近くにある公園を通り抜け、砂浜に足を踏みしめながら向かい合う。
シグナムが人払いの結界を張り、レヴァンティンを起動させバリアジャケットに着替えた。
「いつでもいいぞ」
「では遠慮なく」
『アルトロン!』
両腕に龍の意匠が付いたゴーレムの姿に変化した俺は、ツインビームトライデントを持ちシグナムに向かう。
「ほう、見たことのないゴーレムだな? 新作か」
「ええ。いろいろギミックのある新作です」
やはり剣技ではシグナムに分がある。槍対剣とはいえ俺は着実に追い込まれていった。
「どうした? いつもの小細工はなしか」
訝し気な顔のシグナム。そんなにいうなら見せてやるよ!
俺は折りたたまれていた腕を伸ばし、ドラゴンハングから火炎放射をシグナムに向けて放つ。
「っ、なるほどこう来たか」
いきなり2倍に伸びた腕に戸惑うシグナム。その手から放たれた火炎放射に驚いたようだ。
だがそれも一瞬。冷静さを取り戻すと伸ばされた腕を切り落とし、俺に剣を突きつけた。
「駄目でしたか」
「そうだな。これならいつもお前が使っているマスターのほうがマシだ」
うーん、発想は悪くないと思ったんだがなぁ。
じゃあ、これはどうだ。
俺は次のGメモリをムラサメに挿し、ゴーレムを身にまとう。
『アシュタロン!』
今度はアトミックシザーズでシグナムを挟もうとする。
これは挟んだらちょっとやそっとじゃ抜け出せないぞ。
だがそこはさすがシグナム。俺の意図を読んでハサミから逃げる。それをハサミについたビームキャノンを撃って追い詰める俺。
あっ、三角跳びの要領で壁を蹴って急降下してきた。
俺はビームスピアをボウガンモードにして落ちてくるシグナムを狙い撃つ。だがすべてかわされアトミックシザーズの根元をレヴァンティンで切られた。
これも使い物にならないか。
「どうした? 何を焦っている」
俺の様子にシグナムが尋ねてくる。
まいったな。こんなに早く見破られるとは。
「いや、そりゃ焦りますよ。あの龍神様みたいな俺のGメモリが通用しない存在がいると分かったのもありますが、最近EXSEEDSに来る任務でも俺自身の力に限界を感じ始めて」
「それで新しいGメモリの開発か。精が出るのは認めるが、内容をもっと精査すべきだと思うな」
シグナムがレヴァンティンを収め、バリアジャケットを解除する。稽古はここまでと言ったところだろう。
「ヴィータの特訓のおかげでお前自身、強くなっている。それこそ主はやてを任せられるくらいな」
「でも俺、シグナムさんにはあの時の1回しか勝ったことがないんですが」
そう、勝ったのは闇の書蒐集でだまし討ちに近い勝ち方で勝ったあの時のみ。それ以降は負け越していた。
シグナムのおかげでいくつのGメモリが開発段階でボツになったことか。
「あの日以来、お前に油断するのはやめた。あの時のお前の言葉があったからだ」
え? 俺なんか言いましたっけ?
そんな顔をしていたのだろう。シグナムは笑って言う。
「私が油断しないと使えない手。9回の負けはこの日のための布石。あれ以来お前の負けは次の戦いのための布石だと思って油断しないようにしている」
その言葉に俺は雷に打たれたようなショックを受けた。
そうだよ。負けは勝ちの途中なんだ。いつの間にかそのことを忘れていた。
いつの間にか最初から勝つことを目指し、負けることを極端に恐れていたのだ。
そうじゃない。そうじゃないんだよ真木司郎。
俺はなのはさんやフェイトさんたちとは違う凡人。
失敗して当たり前。むしろその失敗を次に生かす人間でなければならないんだ。
「俺は、俺はそんな当たり前の事すら忘れて」
「悩みはなくなったようだな。では、もう1勝負」
「ちょっと待った」
俺とシグナムの戦いに割って入ったのは、トワさんだった。
「お前は……? 人払いの結界を張っていたはずだが」
「うん、最初から見てたから。司郎が負けるところも。だから、これは仇打ち、になるのかな?」
『アストレイレッドフレーム!』
トワさんは量産型ムラサメにGメモリを挿し、ゴーレムを身にまとい巨大な日本刀を構える。
「司郎の発明品はすごいって証明。私がしてみせる。いいかな、シグナムさん」
「よかろう。原種を倒したという腕前、見せてもらおうか」
レヴァンティンを起動し、再びバリアジャケットをまとうシグナム。
「参る」
珍しくシグナムが先手だ。トワさんに対してレヴァンティンを振るう。
だがトワさんは大刀でそれを滑るように受けそのままシグナムの身体を貫こうとする。
「ふむ、なるほど」
一太刀。
たった一太刀でシグナムは相手の力量を図ったらしい。
潜るように体をかがませ大刀の根元まで行くとレヴァンティンを閃かせ刀の根元から切断する。
「すごい」
ぱちぱちと目を瞬かせ、シグナムの神業ともいえる技術に素直に賛辞を贈るトワさん。
「じゃあ、こっちも本気で行かせてもらう」
もう1つの刀、タイガーピアスを構え、【断刃】の能力を発動させる。
「さっきと何か変わったのか?」
「それは戦ってみてのお楽しみと言うことで」
うわー、トワさんずっけー。
シグナムは訝しそうにしていたが、刀にレヴァンティンが触れた瞬間顔色が変わった。
「なるほど。それがお前の魔人の能力か」
正確には能力の1つです。はい。
じりじりと間合いをはかる2人。先に動いたのはトワさんだった。
「氷牢!」
シグナムの足に氷を走らせ動きを止め、一気に勝負を決めに来る。
だが相手は剣の騎士シグナムそんな小細工ではいささかも動揺しない。
レヴァンティンを構え凍ったままの下半身で上半身だけで苛烈なトワさんの攻撃を受ける。
激しい剣戟に火花が散った。
うーん、やっぱりシグナムはすごいな。
下半身動かないというハンデありでもGメモリを使ったトワさんと互角……いや、それ以上の腕前だなんて。
トワさんも相手の実力が上と気づいているはず。それでもと俺のために戦ってくれるのはなぜだろう?
俺の発明がすごいという証明と彼女は言ったがそれだけだろうか? もっと他に目的があるような。
「いくよ。司郎、見てて」
トワさんの言葉に俺は戦いを注視する。
トワさんがタイガーピアスをシグナムのレヴァンティンに力任せにぶつける。
「ぐっ」
「これで」
価値を確信したトワさん。シグナムの首元にタイガーピアスを突きつけ勝利宣言しようとするが甘い。
「え?」
「残念。私の勝ちだ」
蛇腹剣状のシュランゲフォルム。カートリッジを1つ消費していつものシュベルトフォルムから変形したレヴァンティンのもう1つの姿だ。
その剣にゴーレムの腕を拘束され、ちょっと引くだけで腕の神経がズタズタになる状態にされたトワさんは降参とタイガーピアスを手放した。
「降参。ごめん司郎、仇は取れなかった」
悔しそうに言うトワさん。【氷牢】の能力を解くとGメモリを外し元の姿に戻る。
「なかなかいい太刀筋だ。鍛えれば一角の者になるだろう」
と言うシグナム。うん、珍しいなそんな手放しでほめるなんて。
俺には「そんなおもちゃに毎回付き合わされる私の身にもなれ」って言われるのに。
俺はトワさんにねぎらいの言葉をかけようとしたが何故か泣いていた。
え、なんで?
「ト、トワさんなんで泣いて? シグナムさんの言葉はアレですけど一応ほめてるんですよ」
「おい、アレとはなんだアレとは」
俺の言葉に聞き逃せないとシグナムが憤慨する。
「違っ、私。司郎の発明に救われたから。司郎がすごいんだって証明したかったから」
ああ、なるほど。
つまりこの戦いは彼女なりの俺へのエールだったわけだ。
「篠宮マナとの戦い。多分このGメモリがなかったら相手にすらならなかったと思う。最後の原種0号を倒した時も。君の発明のおかげで助かったって証明したかったんだ」
「ありがとうございます。おかげで落ち込んでた気持ちが少し楽になりました」
年上の少女を慰めようとしてもうまくいかないものだ。
俺は素直に感謝の言葉を伝えることしかできない。
それに対しシグナムは「いい仲間を持ったな」と去ろうとするが俺は肩をつかみ止める。
「頼みます。2人きりにしないでください」
「だが、私はお邪魔だろう」
そんな気の使い方しなくていいから。
高校生を泣かせる中学生男子という絵面のほうがやばいから。
結局俺はトワさんが泣き止むまでシグナムにいてもらい、八神家へと帰った。
そこではヴィータのしごきにシオリとユズが口からエクトプラズム的な何かを吐き出しながら倒れていて。
「おらおら、あと3周! 死ぬ気で走れー!」
「は、はひぃ~」
シイナさん、セツナちゃん、ユーナ、アオイがヴィータの言葉に情けない声で駆けていく姿を見て平和だなぁと思うのだった。
シイナ「ヴィータさんの訓練。効くんだけどきついなぁ」
ユズ「鬼教官……」
ユーナ「あんなちっこいのにどんだけパワーあるんだっての」
アオイ「それな!」
シオリ「私は正直体力的についていけなかったわ。やっぱり歳かしら?」
セツナ「シオリさんは充分若いと思いますけど」
シオリ「あら、ありがとうセツナちゃん。これ、間食用のチョコだけど食べる?」
ユーナ、アオイ、ユズ(そういうところなんじゃないかなぁ)
シイナ「でも、ヴィータさんは神だから! がんばれば私たちも真木君みたいな筋肉になれるよ」
みんな(腹筋バキバキの自分を思い浮かべる5人)
セツナ「わたし、適正体重になったら抜けさせてもらうね」
ユズ「私も」
ユーナ「あたしも」
アオイ「さすがにあの腹筋はないよ」
シオリ「あれを目指すのは乙女的にもなしだと思うわ」
シイナ「なんで⁉ きれいだよ真木君の筋肉。ああなりたいとみんなは思わないの?」
全員「全然」
シイナ「うわーんヴィータさーん!」
ヴィータ「いや、そりゃそうだろ。アタシも司郎にダイエット目的って聞いてメニュー組んだからな」
結局2週間で元の体重に戻った。