無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
もしもあの時ああしていれば、運命は大きく変わっていたかもしれない。
そうもしもあの時。
闇の書の防衛システムを倒し、俺は浮かれていた。
これで当分の間生き残れると。
その日月村邸で行われた闇の書討伐お疲れ様会。
母さんの乱入で会場が冷え切るというアクシデントもあったが父さんのとりなしとはやてさんの決意表明により場の雰囲気は盛り返り、今は皆楽しく食事をしている。
そんな中、アリサ嬢に問われた。
「あんたまで私たちを置いて言っちゃうの?」
と。
それに対し俺は――
【選択肢を選んでください】
管理局に入ってなのフェイを追い続ける。
→管理局に入らずいち技術提供者に甘んじる。
「心配しなくても、あんなに危ないのはもうこれっきりですよ」
と言ってアリサ嬢を慰めた。
「真木君はなのはちゃんと……みんなと管理局ってところにいくんじゃないの?」
すずかちゃんが不思議そうに言う。
だってねぇ。うちの両親管理局アンチだし。入ろうとしたら反対されるだろうし。
何より俺にうまみがない。
管理局って超絶ブラックだし、死亡フラグ満載だし、普通に生きていくだけなら俺はただの協力者って立場に甘んじる。
なので管理局には入らない!
俺がそう宣言すると母さんは泣いて喜んでたし、父さんもほっとした顔をしていた。
ただなのはさんとフェイトさん、はやてさんは残念そうな顔をしていたよ。
「心配しなくても相談してくれれば協力します。今まで通りですよ」
と言ったんだがなぁ。
ちなみにアースラのリンディさん、クロノくん、エイミィさんにも残念がられた。
特にクロノくんに「本当に管理局に入る気はないのか」ってしつこく聞かれたよ。
俺が「ない」と答えると本当に残念そうに「そうか」と落胆していた。
歳の近い同性の友達が欲しかったんだろうか? ユーノくんで我慢しておいてくれ。
で、その後の俺たちはと言うとなんとなく。本当に何となく距離が開いていった。
まるで親友だったクラスメイトがクラス替えでクラスが違ったとたん徐々に遊ばなくなるように。
俺はなのはさん、フェイトさん、はやてさんと出会うことが少なくなっていった。
もちろん、管理局に頼まれれば仕事を請け負うこともある。
今回の依頼はムラサメ量産型の大量生産だった。アースラで使ってみたところ大好評なようで、管理局本部でも扱いたいらしい。
なのでバニングス家と月村家の研究チームに発注。そのまま納品することに。
俺、よく考えたらいらないな。
この時初めてそう思った。
で、5年生になったころ。なのはさんの撃墜事件を思い出しはやてさんとフェイトさんに気を付けるように忠告する。
忠告したんだが2人は「なのはなら大丈夫」と取り合ってくれなかった。結果、なのはさんは大けがを負い入院。2人とも顔を青くして忠告した俺に頭を下げてきた。
まあ、俺管理局員じゃないしね。信じろって方が難しいだろう。
だがその時の俺は相当引きずった。自分にもできることがあったのではないかと。
それを慰めてくれたのがアリサ嬢とすずかちゃん、アリシアの3人だった。
「なのはの怪我は残念だったけど、それにあんたが責任を感じるのは筋違いでしょ」
「そうだよ真木君。管理局で働くって決めたのはなのはちゃんなんだから」
「フェイトが怪我しそうになった時は教えてね。わたしが全力で止めるよー」
と。
ちなみにアリシアは管理局で働かずプレシアさんのそばにいることを選んだ。
本人曰く、「家で1人フェイトのことを待ってるママがかわいそうだから」だそうだ。
優しい子だよ本当に。
小学6年生の頃、この町に襲撃したマテリアルズとの戦いでは及ばずながら戦力として参戦。激戦を繰り広げる同じ顔をしたマテリアルズとなのはさん、フェイトさん、はやてさん。
管理局が真っ黒な事態に父さんと母さんは憤慨。プレシアさんもプロジェクトFATEが最悪な使われ方をしたことにショックを受けしばらくの間寝込んでしまった。
それを献身的に看病したアリシアは立派だと思う。
管理局もマテリアルズを作った組織を捕まえきれずこの一件は厄ネタとして触れられないまま放置されることとなる。
そんな管理局を信用できずマテリアルズはうちで引き取ることに。家族が増えたことで俺の周りもあわただしくなった。
で、そのまま小学校を卒業。中学生になったら俺はなのはさんとフェイトさんと出会うことが極端に減った。
特に1学期はなのはさん、フェイトさん、はやてさんの3人が学校にいないという異常事態が起こり俺を混乱させた。
こんな展開原作にはなかったぞと。
で、彼女たちが学校に来たのは3学期も半ばという頃だった。
ひどく疲れた目をしていた。まるで何日も寝ていないような。
俺は彼女たちに休養を提案したが聞き入れてもらえず、結局何もできず自分の無力さをかみしめるだけだった。
で、中学を卒業。それ以降はパタリと連絡がつかなくなる。
今頃彼女たちはどこにいるんだろうか。そんなことを考えながら、俺は大学入試の勉強をしていた。
彼女たちからフェードアウトするのには成功したが本当にこれでよかったのだろうか? そんな疑問が時折浮かんでは消える。
中学生の頃生まれた妹も今は幼稚園に通いマテリアルズのシュテルやレヴィ、ディアーチェを「ねーたん」と呼び慕っている。
その光景が唯一俺をよかったと思わせる光景だ。
「まーた暗い顔してる」
大学入学後、同じ学部に入学したアリサ嬢が俺を見てそんなことを言う。
「そんなになのは達の事が気になるの」
「いや、そういうわけじゃ」
否定する者の顔には出ているのかアリサ嬢がため息をつく。
「すずかや私には連絡来てるのに、あんたには連絡1つ寄越さないなんて。薄情なやつね」
え、何それ俺知らない。
そんな感情が表情に出ていたのだろう。俺を挟んで隣の席に座ったすずかちゃんも俺に言う。
「今度、新しい組織を作るんだって。だから忙しくなるから地球には帰ってこれそうにないって言ってたよ」
なるほど。機動六課設立に動いたか。
だが俺にはどうすることもできない。管理局で働かない安全な生活を求めたのだから。
彼女たちが求めてくれない限り動けないのだ。
「フェイトもねー、中々帰ってこれなくてごめんってわたしに言ってきたよー」
後ろの席から声をかけるのはアリシア。彼女もこの大学に通っていた。
ツインテールはやめ、長い金髪をおさげにして赤いフレームの伊達眼鏡をかけている。
フェイトさんは1度アリシアと本気の姉妹喧嘩をしてから家に帰りづらくなったらしい。
その内容を聞いてみたら「姉さんはいいよね」と言われたらしい。
母さんに愛されて、司郎のそばに居られて友達もいて。私と大違いだと。
アリシアはフェイトにはなのはやはやてという友達もいるし、母さんだってあなたを愛している。それに司郎を遠ざけたのは自分だろうと言ったらフェイトさんから手が出たらしい。
で、そこからは大げんか。非殺傷とはいえ魔法まで使ったそうだ。
以来フェイトさんはテスタロッタ邸を訪れていないのだとか。
「きっとうらやましかったんだよフェイトは」
とアリシア。
「わたしが自分が欲しい物全部持ってるように見えて。わたしが司郎のそばにいて。そこは本当は自分の場所なのにって」
「どういう意味です?」
最後の言葉だけ意味が分からず問いかけるとアリシアは「なーいしょ」と教えてくれなかった。
「で、真木。あんたそろそろ決めたの?」
とアリサ嬢。金色の長い髪をなびかせ俺を問い詰める。
この世界のアリサ嬢の父親は俺との約束を守り娘が髪を切るのを全力で止めてくれた。そうでなかったら原作通りショートカットになっていただろう。
「私とすずか。どっちの会社に入るのか」
そうなのだ。
俺は現在、というか実は小学3年生の頃からバニングス家と月村家からラブコールを受けている。
「ぜひ将来うちで働かないか?」と。
それは量産型ムラサメがきっかけで、今でも新しいGメモリを作っては研究所に見せに行っている。
バニングス家は水陸両用のゴーレムを使い海中探査を。月村家ではヴァル・ヴァロみたいな高速移動できるゴーレムを使ってFー1みたいな競技を将来的にできるように働きかけているらしい。
だが、その条件と言うのが、その。
「それは俺にアリサさんとすずかさん、どっちかと付き合えって言われてるのと同義なんですが」
何を血迷ったかバニングス家と月村家は俺が入社する条件としてどちらかの娘と結婚することを条件にしてきたのだ。
これには思わず頭大丈夫ですかと尋ねてしまった。大事な娘をこんな奴に任せるなんてと。
だが帰ってきたのは俺の予想外の言葉で。
「どこの馬の骨かわからん奴に嫁がせるより気心の知れた君のような男のほうがいい」
「君の得難い才能を考えれば娘を嫁がせるのは悪くない判断だ」
だそうだ。
でもねえ、俺別にアリサ嬢とすずかちゃんに好かれてないし。
彼女たちも望まぬ結婚なんか嫌だろうと思っていたのだが。
「あら、私は好きよあんたのこと」
「私も真木君のことが好きだよ」
とのこと。
は? いつの間に?
話を聞くと小学生のころから。毎年バレンタインにチョコを配っていた俺にお返しチョコとして手作りのチョコを毎年贈ってくれたり、ホワイトデーに特別な意味のあるお菓子をくれたりしていたらしい。
それに気づかない俺ってやつは……!
そんなわけで大学のキャンパスライフでアリサ嬢とすずかちゃんが日々バチバチにやりあっていたりする。
理由は俺でだ。
周囲もそんな状況を面白がって俺が最終的にどちらを選ぶか賭け券が出回っているらしい。
畜生。他人事だと思いやがって。
「で、どうなの?」
尋ねるアリサ嬢。原作と違って髪は長いままだしナイスバディだと思う。
「当然私だよね」
とすずかちゃん。男を惑わすフェロモンがやばい。高校生の頃も年上キラー。新入生キラーの名をほしいままにしてたし、この大学でもファンが多い。
こんなの選べるわけねーじゃん。
「わたしって手もあるよ」
とアリシア。
頼むからこれ以上混乱させないでくれ。
とりあえず俺は大学を卒業するまで返事は保留させてもらっている。
この4年の間に俺よりいい相手と彼女たちが出会うことに
いっそのことアリサ×すずかで付き合って俺は戸籍上の夫になるのが1番いいのに。
そんなことを現実逃避で考える。
「選ばないとなぁ、今度こそ」
もう10年以上前になる過去の選択。俺は命惜しさからなのフェイと違う道を歩むことを選んだ。
だが、それは逃げたともいう。原作から。高町なのはとフェイト・テスタロッサという人間の物語から。
それに後悔をしなかったと言えば嘘になる。だからこそ、今度は後悔しない選択をと真剣に悩むのだった。
ちなみにこの世界では母と祖父母は喧嘩別れしたままだし、なのはさんは大けがを負うし、マテリアルズ事件は解決されないし、管理局はブラックなままだし、クイントさんは死ぬし、レジアスとは敵対するし、フェイトさんはアリシアとケンカ別れしたままだし、セツナは死ぬし、大量の人が寄生型侵略種のテロで死ぬし、トワさんは警察に自首するし、エイジ君は死ぬし、瑞穂と国連の立て直しが半年以上かかるし、なのはとフェイト、はやては1年留年するし、キャロは部族を追い出されて数年間各地を放浪する。それと結婚するとフェイトさんは謎の失踪をする。
アリサ「私のルートがバッドエンド扱いってどういうことよ!」
すずか「私とアリサちゃんのルートね」
アリサ「しかも真木の奴に好きってひとことも言われてないし―!」
すずか「それも不満かなー。真木君結婚に乗り気じゃないみたいだし」
アリサ「もういっそ酒でも飲ませて既成事実を」
すずか「アリサちゃん、発想がよくない」
アリサ「そうよね。それは最後の手段よね」
すずか「まあ、私たちは真木君に好きって伝えたんだし、あとは真木君次第かな?」
アリサ「それで解決するならとっくに解決してるわよ」
すずか「じゃあ、卒業まで半年ごとにお互い付き合ってみるのはどう? で、より好きだった方と結婚するとか」
アリサ「なるほど。いい案ね」
すずか「もしくは真木君が考えたように私たちが付き合って戸籍上の夫になってもらうとか」
アリサ「だってそれは……ええ?」
すずか「うちの会社とアリサちゃんの会社。合併したら敵なしだと思うんだ」
アリサ「すずか、あんた妙に乗り気ね」
すずか「だって私、なのはちゃんも好きだけど同じくらいアリサちゃんも好きだから」
アリサ「馬鹿。私も同じくらい好きよ」
司郎君、いらないんじゃないかな?