無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
「司郎はさ、15歳になったら誰と結婚するか決めてる?」
唐突にぶっこまれた爆弾に俺は思わず吹き出す。
「ごほっ、なんですか急に」
「フェイトか、なのはか、はやてか。アリサとすずかもいたね。誰と結婚するか、もう決めてる?」
俺はアリシアに3人がいかに自分と違い手の届かない存在かを説いた。だから結婚できないと。
アリサ嬢とすずかちゃんはクリスマスに振っちゃったからね。そもそも問題外だ。それに地球の法律だと結婚できる年齢は18歳からだし。
「じゃあ、わたしはー?」
「え?」
「15歳になったらわたしと結婚しないー?」
と宣うアリシア。
それに対し手俺は、
【選択してください】
冗談はよし子ちゃんですよ。
→アリかもしれない。
アリかもしれないと思ってしまった。
アリシアといると気が楽だ。
というか癒されるのはアリシアと一緒の時だけのような気がする。
今まで会った女性の中からずっと一緒にいる女性を選べと言われたら、間違いなく彼女が1番の候補に挙がるだろう。
それに俺には彼女をこの世に生み出してしまった責任がある。
本来であればこの世に存在しない彼女を生み出してしまった責任がだ。
その責任は何らかの形でとるべきだろう。
それが結婚という形なら言うことはない。
なぜなら彼女の一生を背負うという意思表示だからだ。
「アリシア」
自然と俺の口から言葉が出ていた。
「俺の事、好きか?」
俺の言葉に驚くアリシア。だが顔を赤くするとすぐにこくんと頷いた。
そっか。アリシアも好きか。
だったら決まりだな!
「しようか。結婚」
俺の言葉に目を大きく見開くアリシア。
「本当?」
「ああ。本当だ」」
「本当の本当に本当?」
「本当の本当の本当に本当だ」
ばさり、と引き出物が入った袋が床に落ちる。アリシアが抱き着いてきたので俺は受け止めた。
「夢じゃないよね? 本当に、本当だよね?」
「ああ、夢じゃないし本当の本当に本当だ」
この日、俺は初めてアリシアの涙を見ることになる。
とてもきれいな、澄んだ色の涙だった。
アリシアの誕生日まで俺たちは秘密の恋人になった。
もちろん父さんと母さん、アリシアの母のプレシアさんには結婚したいことを告げる。
返ってきた言葉は3人とも「おめでとう」だった。どうやらアリシアが俺のことを好きなのは3人にはバレバレだったらしい。
気づかなかったのは俺だけか。恥ずかしい。
で、アリシアの誕生日。俺はひざまずいてちゃんと店で買った結婚指輪をアリシアに渡し、結婚を申し込んだ。
アリシアの返事はYESだった。
そのことに驚いたのはプレシアさん以外の参加者。特になのはさんとはやてさんからはいつそんな関係になったのかと根掘り葉掘り聞かれ、他の参加者の前で全部吐かざるを得ない状況になった。
「いつ、どこで、誰が、どうやって⁉」
「クロノとエイミィの結婚式で、わたしが「15歳になったら結婚しない?」って聞いたらしろうが「結婚しよう」って」
「告白は? 告白はどっちからしたの?」
なのはさん、顔、顔怖い。
「わたしから、になるのかな?」
「いや、俺じゃないか? 結婚しようって言ったの俺だし」
「わたしに「俺の事好きか?」って聞いてきたもんねー。それで頷いたら結婚しようだもん」
「だって、あの時は俺の事なんて好きになってくれる人間がいるとは思わなかったから」
「そういえばわたし、しろうに好きって言ってもらってないかも―」
「あー。たしかにそうかも。俺にとっては当たり前のことだったから」
改めて俺はアリシアに向き直り、言葉にする。
「好きだよ、アリシア」
「うん。わたしも」
「むきぃいいいいい! なに2人の世界作っとんねん⁉」
「主はやて、落ち着いてください」
「主、主! 気を確かに!」
「ぶつぶつぶつぶつぶつ……これは夢、これは夢、これは夢、これは夢、これは夢」
「あきらめなさい、なのは。現実よ」
「なのはちゃん。選ばれなかったのはショックだろうけど前を向いて歩いていこう。ね」
激昂するはやてさんをいさめるアインスとシグナムに危ういオーラを放ちながらブツブツ言っているなのはさんを説得するアリサ嬢とすずかちゃん。
すまん、迷惑かける。
多少の混乱はあったがEXSEEDSの仕事も順調だし、恋人もできたし。あとは結婚式の日取りを決めるだけ。
「ずるいよ、姉さん」
だから気づかなかった。
「司郎は、私が先に好きになったのに」
1人だけ、この結婚式を心から祝えない人間がいることを。
半年が過ぎ、EXSEEDSが緩やかな解散の道を歩んでいた頃。
俺とアリシアは恋人関係を続けながら、結婚式について具体的な話し合いをしていた。
「なのはとはやて、それからアリサとすずかかな。わたしが呼びたいのは」
「それだけでいいのか? もっと友達多く呼んでもいいんだぞ」
俺の言葉にアリシアは首を振る。
「だって地球の友達を呼ぶわけにはいかないじゃない。まだ15歳なんだから」
アリシアの言葉からまだ15歳という言葉が出るのは意外だった。15歳になったら結婚しようといってきたんだし価値観がミッドチルダ寄りだと思っていたからだ。
「俺はユーノくんとハラオウン夫妻。それとリンディさんに守護騎士のみんな。シイナさんとセツナちゃん、トワさんと魔人狩りの4人かなぁとりあえずは」
「女の人多くない?」
仕方ないじゃないか。お世話になったのが女性が多いんだから。
しろうって男の友達、ユーノとクロノ以外いないの? と言わないのは彼女なりの優しさだと分かっているから大丈夫。大丈夫なんだ。
となると食事会プランがいいかな。聖王教会で挙式して地球式のブーケトス。親族があいさつとスピーチして食事して解散のこのプランなら人数も十分収まるし、予算も財布に優しいよ。
俺がそう提案するとアリシアは瞳をちょっと揺らした後「それがいいね」と頷く。うん、これは不満がある時のアリシアだな。
伊達に半年付き合ってるわけではない。彼女が嘘をつくときのクセを俺は見抜いていた。
「やっぱりお色直ししたい?」
「なんでわかったの⁉」
わからいでか。エイミィさんのドレスに目キラキラさせてたじゃないか。
しかしそうなると披露宴の時間調整が……まあいいか。その日の主役はアリシアだ。
彼女がやりたいことは全部やらせてあげよう。幸いムラサメデバイスで稼いだ金で資金は潤沢だ。
「とりあえずやりたいこと全部書いていこう。で、お互いこれはちょっと、ていうのは削っていく方式で」
俺の提案に頷いたアリシアは早速ノートに書きだし始める。
えっと何々? 誓いのキス。ブーケトス。ゴンドラから下りてくる。お色直し2回以上。ケーキ入刀?
オッケー全部やろう。というか、他にもやりたいことあったら遠慮なく言っていいんだぞ。
結局アリシアの意見とブライダルプランナーさんの話合いもあり、オプションをいろいろやることになった。
というか披露宴で改めて告白ってなんだ。俺、アリシアに告白するセリフを考えないといけないの?
で、結婚式当日。プレシアさんとフェイトさんが最前列にいる中緊張して牧師さんの前に立つオールバックの白タキシードの俺。
緊張からカチコチになっているとマテリアルズが指差して笑ってた。その光景を見て少し落ち着いたのは内緒だ。
オシャレしたドレスのキャロにベールガールをしてもらい教会に入ってきたアリシアは、はっきり言って美人だった。というか天使に見えた。
俺なんかと釣り合わないと思えるほどに。
「汝、真木司郎。この者を愛し、病める時も健やかなる時も共に愛し暮らしていくことを誓いますか?」
ぼーっと見とれていると神父さんの声に現実に連れ戻された。
「ち、誓いまひゅ!」
やべ、裏声出ちゃった。マテリアルズが爆笑してる。
「汝、アリシア・テスタロッサ。この者を愛し、病める時も健やかなる時も共に愛し暮らしていくことを誓いますか?」
「はい。誓います」
それに引き換えアリシアの堂々とした姿よ。
こういう時女の方が肝が据わるって本当なんだね。
で、誓いのキス。ヴェールを上げて、えっと何するんだっけ。顔を近づけて、右? 左? わけわかんない!
俺がまごまごしていると目を閉じていたアリシアがしょうがないなぁというように俺の顎をつかんで、
「っ~~~!」
「んっ」
2人のキスに盛大な拍手が。俺、頭混乱。星が瞬いていた。
その時初めてキスって甘いんだと場違いなことを考えてしまう。
アリシアに腕を引っ張られて写真撮影の後ブーケトス。シイナさんが受け取っていた。
歓声を上げるセツナちゃん。まんざらでもないトワさんと2人はうまくいっている様子。
で、気づいたら披露宴会場でウエディングプランナーの人に段取りの説明を受けてる。
あれ? 時間飛んでない? 俺、意識失ってた?
アリシアを見ると天使のような顔で微笑んでくれる。その時初めて「ああ、俺この娘と結婚したんだ」と実感を得ることができた。
もったいないくらいいい子だよ。本当に。
で、披露宴。アリシアからの手紙にプレシアさん大泣きしたり、父さんが泣きながら俺の半生を振り返りながらスピーチしたり。
あ、桜がまだ赤ちゃんだから母さんは家にいて結婚式には父さんだけ出席したよ。
なのはさん、はやてさん、フェイトさんの3人が沈んだ様子なのをアリサ嬢とすずかちゃん、守護騎士とアインスたちが慰めていたりといろいろあったけど非常に楽しい披露宴になったと思う。
で、新婚初夜である。
知識はある。前世知識から知識はあるんだ。
だが具体的にどうすればいいのかは先ほどから大混乱である。クロノくんは「流れで何とかなる」と言っていたが。
やっぱりあれか? 俺がリードしないといけないのかな?
そんなことを考えながらベッドが用意されたホテルの1室に入ると金髪の長い女性がちょこんとベッドの上に座っていた。
「あっ、司郎。待ってたよ」
その姿に寒気がした。
見た目は間違いなくアリシアだ。さっき別れたばかりの。
なんで、という思いがある。なぜそんなという気持ちも。
俺は乾いた喉から言葉を出し、彼女の真意を問うた。
「テスタロッサさん、何のつもりですか?」
「もう、司郎ったら。アリシアって呼んでよ」
夫婦になったんだし。と言い、照れた様子は間違いなくアリシアに見える。
だが、心の中で俺は否定する。この娘はアリシアじゃない。
「アリシアは、どこです?」
「変なこと言うなぁ司郎は。私がアリシアだよ」
まさか一目で見破られると思っていなかったフェイト・テスタロッサは内心で舌打ちする。
彼と姉が付き合っていることは承知していたが、まさか自分と姉を見間違えることなく認識できていたとは。
普段なら飛び上がらんばかりに嬉しいことだが、今日この場所に限ってはその技能は邪魔だった。
「そんなことより、すごいねこのベッド。大人2人寝転んでも十分広いよ。司郎もおいでよ」
自分の中にあるアリシアを演じる。かつて自分がそうしていたように。
無邪気で、天真爛漫で、天使のような少女を演じる。
自分とは違い、母に求められた人格を。
「テスタロッサ……いえ、フェイトさん。もう1度聞きます。アリシアはどこです?」
だというのに目の前の男は自分ではなくアリシアを求める。あの時の母のように。
「あー、なんでわかっちゃうかなー司郎は」
むかつく。むかつく。むかつく。むかつく。むかつく。
なんで姉さんだけ全部持ってるの? なんで姉さんだけ愛されるの? なんで姉さんだけ。
なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで?
「いいじゃない。フェイトでもアリシアでもどっちでも」
フェイトは三つ編みを解き、伊達眼鏡も外して司郎を見る。
「私と姉さんの顔、同じだよ。使える魔法も、遺伝子情報も。なのにどうしてみんなアリシア姉さんを選ぶんだろう」
ベッドがから立ち上がると彼の腕を引き、強引にベッドに倒れ込ませる。
「ねえ、教えてよ。アリシアになれなかった私は、一生アリシアのように愛されないの?」
フェイトの質問に、彼は何とも言えない表情をする。
「違う。それは断じて違うよフェイトさん。君は愛されてる。なのはさんに、はやてさん。アルフにプレシアさんだって君を愛してる。そして他ならぬアリシアにも」
「でも、司郎は愛してくれないんだね」
返ってきたのは無言。それがフェイトの苛立ちを加速させる。
「ねえ、司郎。知ってた? 私、姉さんより先に司郎のことが好きだったんだよ」
その言葉に驚き瞳孔が開く司郎の様子に、フェイトの中で昏い喜びが花開く。
「地球に来た時、親切にしてくれて、ジュエルシード集めを手伝ってくれて。母さんの虐待から守ってくれて。最初はどうしてそこまでしてくれるかわからなかった。でも、今ならわかるよ」
ベッドに倒れ込んだ彼の耳元で、フェイトはささやく。
「司郎は、私の事が好きだったんだよね」
「それ、は」
図星だ。その事実にフェイトの口に笑みが浮かぶ。
「だったらさ、私でいいじゃない?」
ささやきながら、顔を近づける。
「アリシアじゃなくても、顔が同じで、遺伝子が同じなら。私の方が先に好きになったんだから。私の方を先に好きになったんだから。私にしなよ、司郎」
「悪いけど、それはできません」
『プロテクション!』
司郎がムラサメを起動させ防御魔法を発動。フェイトは吹っ飛ばされる。
床に両足で着地するとバルディッシュを待機状態から戦闘モードへ。
「たとえ先に好きになったとしても、俺が選んだのはアリシアだから。彼女の人生を背負うって決めたから」
ムラサメにGメモリを挿し込み、こちらに抵抗しようとする司郎に襲い掛かる。
『マスター!』
「素直にならない子は、嫌いだよ。司郎」
素直にさせるには両足と両腕は必要ないかと心の中でフェイトは思っていた。
一触即発の雰囲気の室内。それを破ったのは放たれた雷魔法だ。
「アリシア!
「しろう、逃げて」
アリシアは脂汗を浮かべながら
「ちっ、やっぱり足だけじゃなくて両腕も切り落とすんだった」
フェイトの言葉を聞いた瞬間、司郎の頭の中で何かが切れた。
「フェイト・テスタロッサァアアア!」
「がっ⁉」
左腕を犠牲にしてバルディッシュの一撃を受け、ビームクロスで身体を拘束する。
右手で首をつかみ、怒りのまま締め上げると「待って!」とアリシアの声がかかった。
「フェイトを許してあげて。お願いだから」
その言葉に頭に上った血が急速に降りていき、アリシアの元へ向かう司郎。
「これは……ひどい」
アリシアの足の腱が切られていた。見ると赤黒い血が別の部屋からこの部屋まで続いている。
おそらく足の腱を斬られてからバインドで拘束されたんだろう。再びフェイトへの憎しみが高まる。
「とりあえず病院に。今、救急車を呼ぶから」
この時、フェイトをバインドで拘束すべきだったと後に司郎は述懐する。
救急車が来て、現場検証のために警察が来た時にはフェイト・テスタロッサの姿は煙のように消えていたのだ。
その後の話をしよう。
フェイト・テスタロッサはその日を境に行方不明となった。
なのはさんやはやてさんに聞いても彼女たちも何も知らず、本当に消えてしまったのだ。
アリシアの足は腱をずたずたにされた挙句雷魔法で入念に焼かれたので再生するのが困難。車椅子生活となったが俺のGメモリのおかげで普通の人と変わらない生活を送れている。
あの日の出来事は俺たちは悪い夢だと思って忘れることにした。ただ時々アリシアが「どうすればみんな幸せになれたのかな」と思い出すようにつぶやくのに心を痛める。
4年後、機動六課が管理局内で設立されたころ、俺とアリシアは3児の両親となっていた。
いずれも年子で最初が女の子であとは男の子。一姫二太郎というやつだ。
プレシアさんは孫を猫かわいがりし、この子たちが結婚するまでは生きなければとアンチエイジングに磨きがかかってる。
キャロや両親、桜もかわいがってくれてるし、幸せな家族なんだろう。うちは。
ただ、フェイトさんが失踪した日以来アルフは目に見えて元気がなくなった。
「あたしがいたらあの娘を止められたのかな」と涙を流した日を忘れることはできない。
もしあの日、俺がフェイトさんを受け入れていれば。
彼女をあそこまで追い詰めたのは間違いなく俺だろう。そんな罪の意識からついそんなことを考えてしまう。
たとえそんなことしても、誰も幸せになれないというのに。
「どうしたのしろう?」
子供をあやしていたアリシアが俺を見て言う。
「いや、今日も我が家の天使と俺の天使はかわいいと思っただけさ」
我が家の天使は子供たちの事。俺の天使はもちろんアリシアの事だ。
「もう、しろうったら」
アリシアが俺にもたれかかり、肩に頭を預ける。
それを見て赤ん坊たちは「パパとママだけイチャイチャしてずるいと」あぶあぶあばあばと文句を言うのだった。
アリシア「え? 私のルートって……え?」
フェイト「私、こんなヤバイやつじゃないよ」
アリシア「わたし、フェイトと母さんとアルフと一緒にしろうと暮らしてる展開だと思ってたんだけど」
フェイト「いいじゃない。母さんには祝福されてるよ。多分」
アリシア「フェイトも一緒じゃないと意味ないのー」
フェイト「私は、無理かな。好きな人が身内とはいえ他の女と幸せそうに暮らしてるのを間近で見続けるのは」
アリシア「フェイト」
フェイト「だから、司郎のことは私が愛してあげるね」
アリシア「それが本性かー! フェイトの鬼、悪魔! サイコパス!」
フェイト「姉さんはいいじゃない。子供が生まれること確定してるし、やることやったんでしょ。足動かなくても司郎に治してもらえるからノーダメだし! 私なんて行方不明だよ」
アリシア「それは、うん? 全部フェイトが悪くない?」
フェイト「悪いのはこのルートの私であって私は悪くない」
アリシア「あー、ずるっこだー! フェイトそれずるっこだー!」
フェイト「ずるじゃないもん事実だもん」
フェイトさんの誕生花はナデシコ(ネット調べ)
ナデシコの花言葉 無邪気・純愛・大胆・思慕
赤いナデシコの花言葉 純粋で燃えるような愛・無垢で深い愛
ぴったりだね(白目)