無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
スバル、ティアナ、エリオ、キャロが管理局入りしました。
新人たちを連れ龍神様の元へ。
大事な何かと引き換えにパワーアップした新人たち。この先やっていけるのか?
街並みが再現された訓練場に、3体の影が浮かんでいた。
1体は教官役である高町なのは役のクレイゴーレム。
もう2体はそれを攻略する訓練生を模した俺が錬成したゴーレムである。
『ザンネック!』
高町なのは役のクレイゴーレムが首元にGメモリを挿し試合開始の合図が鳴る。
『マスラオ!』
『ケルディム!』
訓練生役のゴーレムが首元にGメモリを挿し、行動を開始した。
素早い動きでなのは役のクレイゴーレムを翻弄し、相棒のゴーレムの射線上に立たないように幻惑する。それを固定砲台に徹したなのは役のクレイゴーレムが狙い撃っていく。
『トランザム!』
赤い光を発し、マスラオのGメモリを挿したゴーレムの動きが素早くなる。その動きに対応し先読みしてなのは役のクレイゴーレムが砲撃を続けていくが、当たらない。当たらずにどんどんと近づいていく。
ついに到達するというところ懐に入ろうとしたマスラオのGメモリを挿したゴーレムが押し返される。防御魔法だ。なのはの3重の防御シールドを再現したクレイゴーレムは接近を許さない。
それを破ったのはライフルを撃ち続けていたケルディムのGメモリを挿したゴーレムだった。
いつの間にか至近距離に近づいていたケルディムのゴーレムが二丁拳銃で同じ一点を狙いシールドの薄い部分を狙って破壊していく。
1枚、2枚とシールドは削られ、最後のシールドはマスラオの持つ日本刀型の魔力サーベルによって破壊される。
最後はマスラオの放った拳とケルディムの銃撃によってなのは役のクレイゴーレムはバラバラになってしまった。
「はい、以上が高町なのは攻略の実戦検証でした。どう? できそう」
「無理です」
「無茶言わないでください」
俺の放った言葉に即否定するスバルとティアナ。
え? 俺のゴーレムはできてたけど? と視線で問うと、「あんな動き出来るわけないじゃないですか!」と返してくる。
「なんですかあの途中の急加速! あんなこと普通の人間はできません」
いや、君ならできるでしょう。戦闘機人でしょあなた。と俺はスバルを見返す。
「それに、正確無比なあの射撃。新人にどんなレベル求めてるんですか!」
とティアナ。え? 君射撃が得意なんでしょ? あれくらい練習すればできるって。
「えー、できると思うけどなぁ。凡人の俺にできたんだから天才の2人ならあれくらい」
「あなたが凡人って、いったい何の冗談ですか⁉」
とツッコむティアナ。
「いいか、ティアナ。俺、魔力ランクBでこの課にいる誰よりも弱い。だから非戦闘員。専門はデバイス技師なのよ」
俺の言葉に納得できないというような顔をする2人。でもこれ、事実だから。
「戦闘はあくまでおまけ要素。そんな奴に教えを乞う時点で噴飯ものなんだけどそれをできないっていうのはさすがに」
「何がおまけですか! 知ってるんですからね、陸のエースのカグヤさんを毎回打ち負かせて追い返してるの」
とティアナ。だってねぇ。
あの人「私が勝ったらあなたを好きにします。あなたが勝ったら私を好きにしていいです」って毎回挑んでくるんだもん。働き手が欲しい我が課からしたら絶好の人手確保のチャンスじゃん? だから本気でやりますよそれは。
そう話すとなぜかその場にいたキャロやギンガまでも「カグヤさん、かわいそう」って言ってる。
まあ、それはそれとして。
「俺はできないことは言わない主義だ。あれくらいできなけりゃ高町一等空尉に勝つのは無理だと思いなさい。逆にあの程度楽々こなせる実力を手に入れれば高町一等空尉に勝てる……かもしれない」
「かもなんですか⁉」
いや、だってねぇ。
俺のGメモリで仮想敵として設定したあのクレイゴーレム、なのはさんの10分の1の強さもないもん。
本物と戦うなら20倍の戦力は欲しいところだね。
「司郎兄……じゃなくて真木副官。副官はなのはさん……じゃなくて高町一等空尉と戦ったことはあるんですか?」
「ああ、あるよ。いっつも高町一等空尉の勝ちだけどね」
その言葉になぜか呆れた目を向ける守護騎士とオペレーターの皆様方。
なんだよぅ。俺、嘘は言ってないぞ。
「リィン、こいつらになのはと司郎の模擬戦データを見せてやれ」
「はいですぅ」
シグナムの声に空中に浮かんだ青白いウィンドウを操作するリィンⅡ。
その光景を見て新人2人とキャロとエリオが黙ってしまった。
いつも通り俺がなのはさんにコテンパンにされる動画の何が面白いんだか。
「いや、司郎。高町なのはをここまで追い詰められるのは管理局を探してもお前くらいだ」
またまたー。謙遜しちゃって、シグナムなら楽勝でしょ? 俺より強いんだし。
「そう言ってくれるのはありがたいがな」
「あんなにやられてるのに毎回パターンを変えて追い詰めてくるお前をあいつがなんと言っているかわかるか? 「次も楽しみなの」だとよ。愛されてんな―おい」
ため息をつくシグナムにからかうように言うヴィータ。
ええ、おもちゃとしての役割は果たしてますよ俺は。
そうじゃないとあの2人のそばにいることは許されないからね。
俺は戦闘画面にくぎ付けの新人4人に手を叩いてこちらに目を向けさせる。
「はいはい、こんな俺がやられてばかりの映像見てても何にもならないでしょ。じゃあ、高町なのは攻略情報をもう1回教えていくから」
「楽しそうなこと話してるみたいだね、司郎君」
聞きなれた声と肩に乗せられた手。
ギギギと油をさすのを忘れた機械のように後ろを振り向くと、そこには般若のオーラを背負った笑顔のなのはさんが。
「新人に変なこと教えるのはやめるの。そんなに私を攻略したいなら今すぐ模擬戦、始めようか?」
「はっはっは、高町さん。冗談はやめてくださいよ。俺があなたに勝てるわけないじゃないですか」
笑顔で流そうとしてたら反対側の肩もつかまれた。
「司郎、アインスに聞いたよ。エリオとキャロに面白いこと教えてるみたいじゃない」
声に振り向くとそこには天使の笑顔で悪魔のオーラを放つフェイトさんがいまして。
あれー? 俺2人を怒らせるようなことしたかなー?
新人に教官の効果的なボコリ方を伝授しただけなのに。
それってそんなにいけないことですか? いけないことですよね。
俺は襟を引かれズルズルと訓練場に連行された。
で、そこでなのフェイ相手にボッコボコにされる。奮闘したんだけどね。
あの2人に勝てるのなんて、今の管理局にいないんじゃないかな。
そう思わせられるくらいのコンビネーションだったよ。
ティアナ・ランスターは寮の一室でシャワーで濡れた髪を乾かしながら副官と隊長2人の戦いを思い出す。
最初は真木副官の言う通り一方的な蹂躙になると思った。
なにせ自分が師事する隊長は強い。それと同格の隊長とコンビを組んだらいくら真木副官でもあっさりとやられると思ったのだ。
だがそんなティアナの予想を真木副官は越えてきた。
20体のゴーレムをその場に錬成し、そのすべてを高町教官に向かわせ自分はフェイト隊長と一騎打ちの勝負に出たのだ。
なぜそんな自殺行為を⁉ とあの瞬間は思ったが後にそれが最適解だと知る。
なのはさんに向かった10のゴーレムは高速で移動し、防御魔法に張り付くとその場で自爆した。
それが10回。さすがの防御魔法のシールドにひびが入ったところで高火力のゴーレムを投入。シールドを破り攻撃が届く状態にした。
あとはそのゴーレムごと遠距離からのなのはさんを狙った狙撃。防御魔法を失ったなのはさんは一巻の終わりかと思われた。
「へえ、今日はそういう風に来たの」
もうもうと立ち上る煙の中、なのはさんは笑っていた。楽しくて仕方ないというように。
それから狙撃して弾を撃ち尽くしたゴーレムを端から砲撃魔法で破壊していく。その顔はとても楽しそうだった。
一方フェイトさんと戦う真木副官は部厚い防壁を持ったゴーレムを身にまとい奮戦している。
フェイトさんのバルディッシュで傷ついてもすぐに装甲を治し、着実に追い詰めていった。
そこへなのはさんの登場である。
非殺傷魔法とは思えない威力の魔力弾が飛んできた瞬間、真木副官は優勢だったにもかかわらず降参を宣言しGメモリを引き抜き戦意喪失を表した。
なのはさんの勝ちだー! と喜んでいるスバルにため息をつきながらギンガが「もし非殺傷の設定じゃなかったらなのはさんどうなってたと思う?」と言われティアナもはっとなった。
少なくとも五体無事とはいかないだろう。魔力弾が撃てたかどうかも怪しい。
つまり、模擬戦じゃなく実戦だったら……真木副官が勝っていた?
本人たちはそんな様子を微塵も見せていなかったがわかっているんだと思う。
事実、模擬戦が終わると「あの時はああしたほうがよかった」とか「あれはああしたほうがいい」と真木副官に意見を求めていた。
あれは2人が真木副官の実力を認めている証拠だ。
何が凡人だ。なにがこの課の中で1番弱いだ。
あの人みたいな天才に、自分は一生なれない。
そう思って模擬戦の後真木副官にそのことを話すと、彼は怒ったように言う。
「え? なに? それってキミをスカウトしたテスタロッサさんの目を信じられないってこと?」
「そういうわけでは……」と遠回しに自分にはあなたのような才能がないことを言うと、頭を振って言われた。
「俺、才能なんてないよ。6歳の時魔力測定したらEランクだよEランク。デバイスにも使える魔法がないって馬鹿にされたし、使える魔術がゴーレム魔術しかなかったの。だから工夫した。生き残るために」
『私は馬鹿にした憶えはありませんが。主に対して真摯に向き合っていたと告げます』
「いいや、馬鹿にしてたね。ゴーレム錬成した時なんて『その程度の事も知らないんですか?』って馬鹿にしたじゃないか」
『そのようなログは存在しませんが? 主の記憶の捏造かと』
突然始まったデバイスと人間の漫才に目を丸くしてると「ともかくさ」と真木副官は言う。
「俺にはゴーレム錬成しかなかったの。それをいかに魔力が少なくても使えるかと考えて作ったのがGメモリで、そこからいろいろ発展させて今に至るわけ。つまり、俺より才能がある君たちは確実に俺より強くなれる」
そう言うとティアナの拳に自分の拳を打ち付ける。
「だから、自分は特別じゃないと思うのはやめなさい。周りの才能がある人間に追いつきたいのはわかるけど無理はしないこと。無茶な成長は思わぬしっぺ返しを食うからね」
そのことに訓練の後のオーバーワークに覚えがあるティアナはどきりとした。
「凡人が天才に追いつくにはがむしゃらに頑張るしかないっていうのは嘘だ。天才が1足飛びに階段を駆け上がるなら天才が踏みしめなかった階段を登れるのが凡人だ。彼らの見落としたことに気づくことができるのも才能だよ」
それは詭弁ですよ。とティアナは思う。が、不思議と口からは出なかった。
「それになんたって、俺は失敗する名人だからね」と真木副官は笑う。
「なんですか、その失敗する名人って?」
「人は失敗したほうが成功するより2つ多く学べる。それに、八神さんみたいに失敗が許されない人もいる。その人の代わりに俺が失敗するんだ。で、その学んだことを生かして八神さんが失敗しないように立ち回る。それが副官の仕事なんだ」
「だからね」と真木副官は言った。
「成功するよりも失敗から学んだほうがいい。今のままでは君が1成功するたびにスバルは2つ学んでると思うといいよ。いずれ追い抜かれて取り残されるのは自明の理だと。それを知ってなお成功する道を選ぶか、失敗から学ぶかは君の自由だ」
そう言って笑いかける真木副官の顔は優しかった。
まるで兄のように。
「それに失敗するのが当たり前って考えた方が気が楽よ」
と言い残して彼は去っていった。
「失敗することが当たり前、か」
そう思いながらすっかり乾いた髪を下し、1人物思いにふけるティアナだったが決心するとデバイスを起動させる。
内容は六課で見た真木副官となのはさんとの模擬戦の記録。
注目すべきところは「どうやったら勝てる」ではなく「どうして負けたか?」という点だった。
「ティアー。おなか空いたから夜食食べに行こうよー」
スバルの言葉に意識が現実に戻ってくる。
気が付けば映像をぶっ通しで3時間は見ていた。夜更かしは美肌の大敵で翌日のパフォーマンスも落とすというのに。
だがこの問題の答えを放っては置けない。その思いがティアナを突き動かしていた。
「ごめん、スバル。1人で行って。私、今日はこの映像の分析で忙しいから」
「あ、これなのはさんと司郎兄の模擬戦だよね。ひょっとして全部見るつもり?」
スバルの言葉に、ティアナは映像から目を離さず頷く。
「ええ。模擬戦でも学ぶことは多いわ。それに、私の足りないところも」
ティアナを見ていたスバルはにっと笑い、部屋を出て行くとインスタント麺を2人分用意して持ってきた。
「あんた、それ」
「ティアだけずるいよ。私もなのはさんと司郎兄の戦い見たい」
私がやっているのは分析なんだけどね。
そう思うティアナだったが真木副官の言うところによるとこのままだとこの娘に追い抜かれるのは自明の理だという。
追い抜かれてたまるか。自分にだってプライドはある。
ティアナはクッションを1つ置いてスバルの分のスペースを作ると映像が見えるように拡大した。
「おー、やっぱりなのはさんつよいなー。ティア、うどんとラーメンどっちがいい?」
「ラーメン」
答えて受け取ったティアナは顔をしかめた。
「スバル、これ」
「あ、ティア運いいねー。それ、新商品の激辛ラーメンだよ」
いや、私別に激辛好きじゃないんだけど。
この時ティアナの脳内に真木副官の言葉が再生された。
『人は失敗したほうが成功するより2つ学べる』
確かに自分はよく調べもしないでラーメンを選んで失敗して人任せにしてはいけないと学んだ。
だがあと1つは何だろう? そう思ってラーメンを口に運んだ。
「くぇっちゅいお⁉」
「ティア? どうしたのティア?」
不思議そうにこちらを見るスバルにティアナは必死にラーメンを指差す。
これ、辛いじゃない。苦い。
苦くて痛い。
そう説明したいのに舌がうまく回らない。なるほど、これがもう1つの学びか。
うかつに激辛ラーメンを食べてはいけないという。
「ちょっと待って。今お水入れるから」
ペットボトルからコップに水が入れられ、ティアナはそれをひったくるようにして奪い飲んだ。
「~~~ッ⁉」
痛い、痛い、辛い、辛い!
体中の毛穴からどっと冷や汗が出る。
思わず舌を突き出して「ひー! ひー!」と声を上げた。
辛い物を食べた後に水を飲んではいけない。
また失敗から1つ学んでしまった。
そして最後の学びは翌朝。
体重計に乗った時にわかってしまった。
夜食は体重にダイレクトに響く。
合計4つの学びを手に入れたティアナは、明日から健康的な生活をしようと誓うのだった。
司郎「えー、続いてのご意見です。タイトル詐欺。主人公が全然無能力者じゃない?」
司郎「戦闘能力、交戦戦績、チートデバイスで全然無能力者じゃない?」
司郎「そんなことないだろ! どう見たって無能力者だろ! Sランク魔導士に囲まれたら明日にはもう会えなさそうだろ!」
司郎「ちょっと目を放してたら物言わぬ屍になってそうだろ!」
司郎「実家とされた家と家族がSSSランクなだけで本人はレアスキル無し、魔力Eの無能力者だっただろ!」
司郎「もうなのフェイを見守り続けることはできないだろ!!」
司郎「それにこのタイトルじゃなかったら「お前もなのフェイ最高と言いなさい」になっていただろう!」
結論、本人は間違いなく無能力者。デバイスとガジェットがチートなだけ。戦闘能力は士郎さんに弟子入りして自力で身に着けたから実質無能力者。
ティアナ「昨日はひどい目にあった」
スバル「ティアー、コンビネーションの訓練しよー」
ティアナ「あんたは平気そうね」(目の下にクマ)
スバル「なにがー?」(もちもち肌。食った栄養は胸に行くタイプ)
ギンガ「2人とも、お疲れ様」
スバル「ギン姉!」
ティアナ「ギンガさん、お疲れ様です」
ギンガ「ティアちゃん、聞いたわよ。昨夜徹夜して先輩となのはさんの戦いを分析してたって」
ティアナ「あはは、真木副官手数が多いですよね。それを固定砲台だけで毎回しのいでいるなのはさんはさすがとしか」
スバル「たしかに。なのはさんすごい!」
ギンガ「いやいや、すごいのは先輩でしょ」
スバル「え?」
ティアナ「確かに、戦略だけでBランクがSランクに比肩しうる戦闘をするなんて、頭がおかしいとしか思えませんが」
ギンガ「あれ? ティアちゃん。もしかして今先輩のことディスった?」(殺気)
ティアナ「いえ、いい意味で! いい意味でですよ。頭のネジが外れてないとあんな捨て身な戦法を考えても実行できないなって」
ギンガ「それが先輩のすごいところなのよー。フェイトさんとの模擬戦ではいつも完封してるし」
スバル「え、そうなの⁉」
ギンガ「そうなのよ。すごいでしょ!」
ティアナ(なんでギンガさんがあんなに喜んでるんだろう)
ギンガ「なのはさんとの戦いも最初は一方的だったのに徐々に食らいついていったんだから!」
ティアナ「その話、詳しく」
スバル「私も聞きたい聞きたい!」
ギンガ「いいわよ。あれは私が機動六課に来て1カ月の頃」
なのは「ギーンーガー?」
ギンガ「ヒィッ⁉」
なのは「面白そうな話してるの。私も聞かせてほしいの」
ギンガ「あ、いえ。その……あの」
なのは「元気が余ってるなら模擬戦しよう。ちょうど訓練場も開いてるし」
ギンガ「え、遠慮しておきます―!」
スバル「ギン姉、いっちゃった」
ティアナ(ん? ギンガさんからメールに添付ファイル。これは……)
ティアナ「スバル、スバル」ちょいちょい
スバル「なに? ティア」
ティアナ「ギンガさんから真木副官となのはさんの戦闘映像ファイル貰ったから、今日も分析するわよ」
スバル「本当、やたー!」
なのは「2人とも元気そうなの。これはもう少しメニューきつくしてもいいかな」