無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
司郎、スカリエッティと対面。
oneのなりたちや管理局について聞く。
はやて、闇の書を管理局が生物兵器として利用していたことに激怒。
捕らえられた女性、ナンバーズの服を着た変装能力を持つ刺客は尋問で何も吐かなかった。
はやては拷問を提案したが却下される。
「今のお前に正常な判断は期待できん。頭を冷やしてこい」
とゼストに言われてすごすごと帰っていくしかなかった。
ようやく見つけた司郎への手掛かり。それを逃すことはできない。
とりあえず彼女のことはゼストとレジアスに任せ、自分たちもできることをしよう。
そう思いまだ無事な隊員たちを集め、情報を集めるように頼む。さらに廃艦間近だったアースラを機動六課本部として再利用する準備をし、そのための書類仕事を行っていた。
「主、主はやて」
そこまで思い出したところで声を掛けられる。
「アインスか。もう8時間経ったんか?」
「いえ、高町なのはとフェイト・テスタロッサが帰還しました。ですが休む様子がないので主からもお言葉をいただきたいとシグナムが」
なるほど。たしかにアインスとシグナム2人では荷が重いかもしれない。
はやては手早く着替えるとアインスに連れられ機動六課本部(仮)に向かう。
そこにはシグナムに詰め寄る隊長2人がいた。
「どいてシグナム! ヴィヴィオを探しに行かないと」
「落ち着け、高町なのは、テスタロッサ。今は主や皆が情報を集めてくれている最中だ。いつでも動けるようにせめて睡眠をだな」
「そんなことわかってる! だけど、私は司郎も探しに行かないと」
エース2人に詰め寄られているシグナムの上に浮かぶアギト。
彼がシグナムに託した存在だ。もっとも、活躍の機会は未だ訪れていないが。
「子供と旦那が心配なのはわかるけどよぉ。ちったぁ頭冷やせよご両人。あんたら、相当カッカしてるぜ」
「せやで、2人とも。まずは落ち着き」
「主はやて」
アインスが連れてきたはやての姿にホッとするシグナム。
はやては振り向いた2人の顔を見て思わず顔をしかめた。
目が充血している。何より体から放つオーラが尋常ではない。
まるで近づくものは■すと言わんばかりの殺気に満ちている。
こらあかんわ。とくるりと回れ右して立ち去りたい。
だが自分以外に彼女たちを止められる存在はいないと思い直し、口を開く。
「心配せんでも、ヴィヴィオには司郎君がついとるはずや。それにスカリエッティにも目的があるはず。傷つけたりはせんやろ」
「はやてちゃんはいつも司郎君頼みだよね」」
なのはの言葉のナイフがざっくりと胸を刺す。
これは、痛いとこついてくるやん。
「機動六課の設立も、偉い人との根回しも、全部全部司郎君任せ。なのに自分が全部やったって顔で平然としてるし。本当に、何考えてるの?」
「高町なのは! 言いすぎだ」
「ええ、シグナム。確かにその通りや。司郎君がおらんかったらうちは大失敗するところやった。それは事実やから」
言いながらにらみつけてくるなのはを逆ににらみ返す。だが向こうも一歩も引く気はないようだ。
「司郎はあのナンバーズに左胸を撃たれたんだよ。無事なはずがない! 一刻も早く取り戻さないと」
「フェイトちゃん。アリシアちゃんの方がずっと冷静やで。司郎君があんなことくらいで死ぬはずない。せやから」
「ヴィータと一緒に行った任務で司郎は死にかけたよね。その時の事、私忘れてないから」
おっと、痛いところを突かれた。
これは教育が必要かなぁ? と思いながらはやては努めて冷静であれと自分に言い聞かせる。
「あれはうちの預かり知らぬところで起きた事件や。ヴィータも反省してあれ以来そういうことはなくなったはずや」
「そういうこと? 司郎をはやての騎士にするって鍛えてたこと? あれ、おかしいよね? なんで怪我させた本人が司郎を鍛えてるの? 普通逆だよね? 自分を鍛えて2度と司郎を怪我させないって誓わせないとだめだよねはやては」
過ぎたことをいつまでもぐちぐちと。この金髪女はとはやての額に血管が走る。
「その点は、ほんまごめんやで。でも、ヴィータが反省しとるのはほんまや。せやから」
「許さないよ」
唐突に放たれた言葉に、体の芯が冷たくなるのを感じた。
「はやてが許しても、なのはが許しても、他の人が許してみんなが忘れても、私は許してないから。あの事件の事。今でも」
「テスタロッサ、お前」
シグナムまで唖然としている。
フェイトが明確な殺意を自分に向けているという事実。
それがはやてを困惑させた。
「大体はやてはずるいんだよ。司郎を副官にしたり、何かにつけて司郎を手元においたがったり、一緒にいるところを見せつけて」
「テスタロッサ、今はそんな話は」
「私だって! 私だって司郎と一緒にいたかった。肩を並べて一緒に何かをしたかった。それをいつも邪魔してきたのがはやてだ!」
そう言うとフェイトは冷たい目ではやてを射抜く。
「いっそ、闇の書事件で■んじゃえばよかったんだよ。そうすれば、司郎の1番はずっと私だけだったのに」
「テスタロッサ、お前……自分が何を言っているのかわかっているのか?」
殺気を抑えようとしないシグナムに、フェイトは続ける。
「はやてはずるいよ。司郎を独り占めしてさぁ。そこは本来私の場所だったのに。司郎に1番最初に助けられたのは私なのに。私だけが司郎の特別だったのに!」
シグナムがレヴァンティンに手をかけた。それを止めようとしたはやてだったが次の瞬間言葉が引っ込んだ。
「いっそ姉さんも生まれてこなければよかったのに。そうすれば、きっと司郎は」
パァンと。
頬を叩く乾いた音が室内に響いた。
頬を押さえたフェイトが平手打ちした相手を見る。そこには伊達眼鏡をした三つ編みの彼女の姉がいた。
「どうして叩かれたかわかる? フェイト」
「私に生まれてこなければよかったって言われたからでしょう?」
勝ち誇ったように言うフェイトに首を振るアリシア。
「違うよ。さっき叩いたのはフェイトがしろうの頑張りを全部否定したから。わたしを助けたこと。母さんを救ったこと。そしてなによりフェイトを救ったことを」
アリシアの言葉に首をかしげるフェイト。
「司郎の、頑張り?」
「そう。はやてちゃんを助けたのもそう。しろうは本気ではやてちゃんを助けるためにわたしのリンカーコアを奪ってまで魔力を集めていた。どうしてかわかる?」
アリシアの言葉に首を振るフェイト。
「それが司郎のやりたかったことだからだよ。はやてを助ける。誰も不幸にしない。それがしろうのやりたかったことだったんだ」
「そんなの、姉さんの憶測でしょう? 他にも理由があったかもしれない。それじゃまるではやてが司郎の特別な人みたいじゃない!」
「はやてはしろうの特別だよ。でもそれはフェイトも同じなんだよ?」
アリシアの言葉に驚くフェイト。
「私が、司郎の特別?」
「そう。じゃなきゃ同じジュエルシードを集めていたなのはちゃんじゃなくてフェイトに渡した理由はなんなの? フェイトが特別だったからじゃない」
そしてフェイトを助けたかったからだよ。とアリシアは言う。
「今だってきっと、しろうは誰かを助けたいから行動してる。それなのになんでフェイトはそれを助けもしないではやてとケンカなんかしてるの!」
その言葉にその場にいた全員が衝撃を受けた。
そうだ。彼はいつも誰かや何かを助けるために行動していた。まるで救われない人間がいることを許さないように。
いつからだろう。そんな彼の行動を当たり前のように扱い、「司郎は司郎だね」と呆れていたのは。
本来なら、自分が彼を助けなければならないのに。
彼に受けた恩を返すべきだったのに。
「姉さん、私……私」
「よーしよーし。今のフェイトは悪い夢を見てるんだよ。ベッドへ行って少し眠ろうねー」
涙ぐむフェイトを連れアリシアは仮眠室にフェイトを誘導する。
「なのはちゃんも、休んでくれへんか? いざという時にちゃんと動けるように」
「そうだね。ごめんねはやてちゃん。さっきは言い過ぎたの」
謝るなのはにひらひらと手を振りながら「かまへんよ。事実やし」とはやては言う。
「司郎君に助けられてのうちやからな。司郎君がおらんとまるで役に立たへん。今回のことでようわかったわ」
「ううん。そんなことないの。イライラをぶつけちゃって、本当にごめんなさい」
そう言うとフェイトに続いて仮眠室に入っていく。
戻ってきたアリシアの報告を聞いたはやては、本音を語る。
「うち、自分はどこか特別やって思ってたのかもしれん。何かあれば司郎君が助けてくれるって甘えとった。ほんま、ごめんやで」
「はやてはそれに自分で気づけたじゃない。すごいことだよ、それって」
アリシアの笑顔がまぶしい。それにはやては内心をこぼす。
「司郎君が帰ってきたら、本気で考えなあかんな。恩返し」
「そうだねー。わたしの分も、ママの分も。返さなきゃいけない恩はたくさんあるから」
そう言って笑う2人を、シグナムとアインスはほっとした顔で見つめるのだった。
どうも、真木司郎です。
現在俺はスカリエッティ基地の病室にいます。
で、何をしているのかというと。
「赤の6」
「赤の9」
「黄色の9」
「ドロ4」
「ドロ4重ねで」
「ドロ2重ねありだったよな? ほれ、ドロ2を4枚」
「ドロ2っす!」
「ぬあー! また私の元に大量のカードがぁあああ!」
同じ病室にいるチンクと他の姉妹のナンバーズとUNOをやっています。
参加者はone、オットー、ディード、セイン、ディエチ、俺とウェンディ。そしてカードを大量に受け取ったチンクだ。
なんというか、チンク弱いなぁカードゲーム。昨日はポーカーでぼろ負けしてたし。
「ウノです」
「黄色の3,ない。山札から引く」
「はい、青の3」
「青の6,ウノ」
「赤と緑の6ー! ウノ!」
「緑の1」
「リバース」
「ありゃりゃ」
「なっ、ずるいぞ! シロウ! せっかく手札を大量消費するチャンスだったのに!」
ほーらプンプンして興奮しない。スバルにやられた腹に響くぞ。
ちなみに俺はナンバーズたちからシロウと呼ばれている。
最初はoneの呼ぶ「マスター」と呼ばれていたがoneがそれを拒否。
なぜなら「マスター」は自分だけの特権だからと。
ムラサメシリーズっていうのは皆こうなのか?
なので俺のことは名前で呼ぶことになった。トーレとかは「おい」とか「お前」って呼ぶけどチンクたちは普通に呼んでくれる。
これで拘束されてなきゃなぁ。存分に仲良しナンバーズたちを観察できるんだが。
ウノの結果は1位one。ドベはチンクだった。
当然と言えば当然の結果。だがチンクは不満そうだ。
「姉の、姉としての威厳が」とブツブツ言っている。
カードゲームで姉の威厳とか関係ないだろうに。
「マスター、お疲れですか? 膝枕いたしましょうか?」
さめざめと泣くチンクを放っておいてoneは俺に尽くすモード全開である。このゲームも参加しなさいと言ったからしぶしぶやっているだけで最初にセインが誘ったときはガン無視だった。
「じゃあ、ドベのチンク姉は罰ゲーム! 何するッスか?」
ウェンディの言葉に全員がoneを見る。そうだね、罰ゲームの決定権は1位にあるよね。
「どうでもいいです」
「おい、さすがにそれはないだろう」
にべもなく答えるoneにさすがにツッコむ。もうちょっと姉妹仲良くしなさいよ。
「では、1位の権利をマスターにお譲りいたします」
ええ、俺にぃ?
そうは言われても相手はチンク。見た目はヴィータとタメを張るくらいの幼女だ。
下手なことをしたら児ポ法にひっかかって手にお縄がかかりかねない。
それに相手はケガ人だし。うーむ。
「シロウさん、シロウさん」
とここでセインが耳打ち。うん、なるほど。それはいいな
「じゃあ今日1日チンクは皆のことを名前の後に【お姉ちゃん】とつけること」
「なっ⁉」
さすが姉妹。姉妹の嫌がるところを的確についてくる。
「ご、後生だ。後生だからそれ以外の命令にしてくれないか?」
「駄目ッスよチンク姉」
「王様の命令は」
「絶対」
ニコニコと笑いながらウェンディと無表情のオットー、ディードがチンクに迫る。
「さ、呼んでくださいっす。恥ずかしがらずに」
「くっ、屈辱だ! ……ウェンディお姉、ちゃん。オットーお姉ちゃん、ディードお姉ちゃん」
顔を真っ赤にしたチンクにキャー! と歓声を上げるウェンディ。
「かわいいでちゅねーチンクちゃん。お姉ちゃんが甘やかしてあげるッスよー」
「興奮」
「悪くない」
オットーとディードも嬉しい模様。よかったね。
「マスター。私にも勝者の特権をいただきたいのですが」
と、one。断ってもいいけどそれじゃ盛り下がるからな。可能な事なら言いな。
「で、ではアインスにしたように私にもヘアアレンジを」
オッケー。長い銀髪だからお団子ヘアにしてあげよう。ナンバーズにはいない髪型だからな。
「おおーなんか感じ変わるねー」
「似合ってるッスよー」
とセインとウェンディ。他のメンバーも好意的な視線だ。
「あ、ありがとうございますマスター。大切にしますね」
と顔を赤らめ恥じらう表情を見せるone。
その姿を見てスカリエッティが娘と呼ぶのを理解できてしまった。確かにこんな表情見せられたら、特別な感情を抱いてしまうわ。
「おらー、飯だぞチンク姉、シロウ」
そこにプレート飯を2つもったノーヴェがやってきた。
「ぶっは、なにその髪型。似合わねー!」
そしてあろうことか頬を染めていたoneの髪形をディスるノーヴェ。それにあーあという顔をする姉妹たち。
「――ノーヴェ」
「あん? なんだよ13」
oneは立ち上がると無表情でノーヴェに近づいていく。
「祈る時間を上げましょう。マスターがせっかく整えてくださったこの髪型を悪く言ったことを後悔しながらあの世へ逝きなさい」
「な、なにしやがるてめー!」
どったんばったん大騒ぎする2人を見ながらウェンディが言う。
「いやー、シロウさんが来てから13の顔がころころ変わって楽しいッス」
「そう?」
「そうそう。今までは笑わない、言うことを聞かない、愛想がないのないない尽くしだったからねー」
とセインが手をひらひらさせながら言う。
「姉としても姉妹仲が良くなったことに嬉しい限りだ。感謝する。シロウ」
チンクが頭を下げてくる。よせやい。俺は何もしてない。
いや、本当に何もしてないんだよ俺は。
他のナンバーズも顔を向けるとこくこくと頷いている。
そうか、俺がここにくるまでoneは孤独だったわけか。
やばいな。敵であるはずのoneに情が沸いてきている。
いけないことだと分かっているが、俺を無条件に慕ってくれる相手を邪険にはできない。
これもスカリエッティの策略なんだろうか?
「なんとかしないとな」
つぶやきながら入り口を見るとoneがノーヴェからプレート飯を奪還してテーブルに置いた後、飛び関節腕十字固めをノーヴェに極めているところだった。
眠っている司郎の元にやってきたoneはいとおしそうにその寝顔を眺める。
10分ほど堪能した後その右手に巻かれたリストバンドを外し、ドクターの元へ運ぶ。
「ごきげんよう、お姉さま」
そして修理を終えたデバイス、アン・ムラサメに対しひざを折り優雅な挨拶をした後本題を切り出す。
「お姉さま、私と賭けをいたしませんか?」
『賭けですか?』
「ええ、お姉さまと私だけの、秘密の賭け」
夜の月が1人と1体を照らしていた。
シイナ「情報収集から帰ってきたら会議室が修羅場です」
セツナ「怖いよぉ、しーちゃん」ぶるぶる
トワ「ケンカは、よくないと思う」
シオリ「ここは年長者の私が……やっぱり無理、怖い」
ユーナ「うっわー、フェイトちゃんマジこえー」
アオイ「あそこまで言う、普通」
ユズ「私が言われたら、多分1カ月くらい引きずると思う」
シスターシャッハ「しかし見ているだけというわけには行けません。止めなければ」
シュテル「では私が……おや、アリシア?」
パァン!
レヴイ「アリシアが行った―!」
ディアーチェ「よくぞやった! 褒めて遣わす」
シイナ「それからフェイちゃんを説教だー! さすが姉!」
アリシア「同じジュエルシードを集めていたなのはちゃんじゃなくてフェイトに渡した理由はなんなの? フェイトが特別だったからじゃない」
トワ「そうなの?」
シオリ「そういえばスバルさんやティアナさんたちがそういう内容の映像を見たって言ってたような」
ユーナ「ふーん、そんなことあったんだ」
アオイ「人に歴史ありだねー」
ユズ「私たちもトワさんに拾われてなかったらどうなってたか」
ディアーチェ「我らにも身につまされる話だ」
レヴィ「うん、そうだね」
シュテル「私たちも彼女が言うシロウの特別だったわけですね」
シスターシャッハ「どうやらテスタロッサ執務官を仮眠室に連れて行ったみたいですね。我々も報告に向かいましょう」
だから、78話でアリシアに過去のことを知ってもらう必要があったんですね。