無能力転生者はリリカルなのは世界で生き延びたい(令和版) 作:百男合
フェイトさんとピクニック&ジュエルシード集め。
フェイトさん初戦闘。
なのフェイ、出会う。ジュエルシードは原作通りフェイトさんがいただきました。
月曜日。登校してくるとさっそくなのはさんに絡まれた。
「昨日はどうもありがとう。司郎君」
「いえいえ、大したことはしてないよ」
俺の言葉になのはさんは首を振る。
「ううん。私が飛び出した理由や気絶した理由をお兄ちゃんやすずかちゃんとアリサちゃんに話してくれて。私だったらうまくごまかせなかったの」
それはそうだろうなぁ。だってまだ小学3年生だもの。
誤魔化して嘘をついたことでまた心の重荷が増えていく負のスパイラル。
それを強制させた罪は大きいぞ淫獣。
俺はかばんに入ってこちらをうかがっているであろうユーノくんに向けて無言の圧をかける。
「それで、あの子……フェイトちゃんについて詳しく聞きたいの」
なのはさんの言葉とかぶさるようにチャイムの音が鳴り、教師がドアから入ってくる。
「よーし、みんな席について。朝の読書の時間を始めますよー」
教師の声になのはさんは何か言いたそうな顔のまま自分の席に戻っていく。
ふぅ、時間ギリギリになるように登校してきたかいがあったなぁ。
さて、この調子でなのはさんの追及をかわしていくか。
その後ものらりくらりとなのはさんの追及を避け、放課後。俺は一目散に家へ帰っていた。
昨日のお茶会の後、帰る前に道場へはしばらく行かないことを恭也さんには通知済みである。家で待ち構えるつもりのなのはさんは肩透かしを食らうことだろう。
で、この後原作では温泉でアルフがなのはさんたちにちょっかいかけたり、その後2回目のなのフェイ戦闘があったりするのだが。
「司郎、お帰り」
原作では悲しい瞳をしているはずの少女が、満面の笑みで俺にお帰りを言ってくれた。
あれ? その笑顔は本来なのはさんに向けられるもので俺みたいなモブに向けていいものではなくない?
「ただいまですテスタロッサさん。ジュエルシードの回収は?」
「うん。非活性状態のものを運よく回収できたよ。2つ。これも司郎が作ってくれた地図のおかげだね」
ホクホク顔で俺の手を引き、父さんの作ったおやつのパンケーキが置かれた机の前まで来ると「一緒に食べようと思って待ってたんだ」と目を輝かせながら言うフェイトさん。
あれー? 原作のどこか陰のある美少女はどこへ?
これってもう取り返しのつかないレベルで原作介入してない? 俺。
とりあえず手を洗ってランドセルを部屋に置いてきて、フェイトさんと一緒にパンケーキを食べる。
たっぷりのバターと蜂蜜のかけられたふわふわパンケーキを口にして、心の底から幸せを感じているフェイトさん。
うん。推しが幸せならそれでよし。
今まで考えていた難しいことがどうでもよくなる俺。
決して現実逃避しているわけではない。決してだ。
「それでジュエルシードが思ったより早く回収できたから、今度1度母さんのところに帰ろうと思って」
食事終わり、フェイトさんがそんなことを言ってきた。
はい来た。原作の重要イベント!
フェイトさんがプレシアの元に帰省して虐待される事件。
早い。早すぎるよ! まだクロノくん登場してないよ⁉
これもひとえに俺の作った地図が正確すぎたせいで。
誰だこんな地図を作ろうなんて言ったのは? 俺だ!
そうだ全部俺のせいだ! だが俺は謝らない。
どこかの所長のようなことを考えながら、どうしたものかと頭をひねる。
このまま帰っても、原作通り虐待……されるかなぁ?
原作は4つだった回収されたジュエルシードも倍以上の9個もフェイトさん持ってるわけだし。
不機嫌でもねぎらいの言葉くらいは……かけるかぁ? プレシアさんが。
うーむと腕を組んで唸る。
プレシアさんがフェイトさんに優しくする姿なんて闇の書の幻くらいしか思い当たらない。それくらい生きてた頃は苛烈なDV親だった。
アリシア関連の吉報でも持っていかないと喜ぶ姿が思い浮かばない。そんな相手なのだ。
待てよ……アリシア?
俺は細い糸を手繰り寄せるように1つのことを考える。
アリシア・テスタロッサ。必要以上のジュエルシード。そして俺のデバイスムラサメ。
これは、ひょっとするとひょっとするかもしれんぞ。
「司郎? 司郎、聞いてる?」
頭に浮かんだ妙案が形になる前に、フェイトさんの声に現実に引き戻される。
しまった、集中力が切れて形になる前に霧散してしまった。
だが、糸口は見つけた。俺は努めて冷静にフェイトさんに答える。
「聞いてますよ。お母さんのところに帰るつもりなんですよね」
「うん。それでお土産、なにがいいかな。やっぱり甘いお菓子なんかがいいんだろうか」
にっこり笑顔で言うフェイトさんに原作の鞭で打たれる姿が重なる。
この娘を1人で帰しちゃだめだ。
決意した俺は、自然と口に出していた。
「テスタロッサさん。その帰る時、俺も同行していいですか?」
「駄目だ」
父の真司の言葉が重々しく室内に響く。
夕食が終わった後、俺はフェイトさんの帰省についていくことを両親に告げた。
で、その反応がこれである。
まあそれも無理からぬ話で、両親には多少脚色したがフェイトさんの家庭環境をつまびらかかつ丁寧に説明して我が家に宿泊させてくれるように説明していた。
母親がDV気質でネグレクト状態なことも包み隠さず。
そんなところに血がつながっているとはいえ子供を返す+自分の息子もついていくという。
うん。俺でも止めるわ。
だがここは承知してくれなければ困る。俺は言葉を
「そこを何とかなりませんかお父様」
「駄目なものは駄目だ。どうしてもというなら私たちもついていく」
本気と書いてマジと読むくらい目が座っている両親に、どうしたものかとフェイトさんと顔を見合わせる。
「あの、真司さん。ルヴィアさん。私の住んでいるところはその、遠くて。転移……じゃなくて移動する人間の数に制限が」
フェイトさんそれ逆効果!
「あら。じゃあ私が話をつけに行きましょうか。大丈夫、母親同士だし冷静な話し合いができると思うわ」
母さん、それ話し合いに行く人間の顔じゃない。
笑顔ではあるが怒りのプレッシャーが漏れ出ている母におののきながら、俺は言葉を続ける。
「とりあえず父さんと母さん。いったん冷静になって。テスタロッサさんが暴力を振るわれないように俺がついていくだけだから」
「司郎、母さんが私に暴力をふるうなんて……いや、それは私が悪いことをしたときだけだから今回は大丈夫だと思うんだ」
おいおい、そんな言い方したら。
「こんないい子に暴力をふるうなんて、その母親は鬼か悪魔か⁉」
「いいのよフェイトちゃん。このままうちの子になりましょう! 私のことお母さんって呼んでいいから!」
あっ、アカン。両親がなんかスイッチ入ってしまった。
「古い知り合いにミッドチルダの弁護士がいるんだ。腕のいいやつだから君への虐待が認められれば養子縁組もできると思う」
ちょっと待って。今普通にミッドチルダって言ったんだけど⁉ 隠してたんじゃないの?
「自分で動かず子供を使って目的を果たそうなんて親、ろくな奴じゃないわ! そんな管理局みたいな考え、認められないわぁ!」
母親も管理局とか言い出したんだけど。というか、うちの母親管理局アンチだったのかよ。
「「とにかく絶対! フェイトちゃんを帰すわけにはいきません!!」」
うーん。心配と愛情からの言葉だと分かってはいるんだけどここまで頑固だとは。
致し方ない。
「ムラサメ、錬金」
言葉と共に糸状の金属が椅子に座っている両親を縛る。
いやー持っててよかったタングステン。以前アリサ嬢の銅像を作ったお返しにいろんな金属をもらってその中の1つにタングステンがあったのだ。
これでしばらくの間は動けないだろう。
「シロウ、何するんだ⁉」
「シロウ、この金属の鎖を解きなさい!」
両親が何か言ってるがあー、聞こえない聞こえない。
「行こう、テスタロッサさん」
「え、でも」
俺の両親を見て何事か言いたそうな顔をするフェイトさん。それに俺はにっこりと笑顔を返す。
「大丈夫。しばらくすれば解けるから。それまでの間に、とっとと君のお母さんと話を付けてこよう」
はい、これ海鳴市名物翠屋のコーヒーとお菓子詰め合わせ。アルフに変身して買ってきてもらった。
まだなのはさんと顔合わせしていない今だからこそできた裏技だ。お土産はこれで十分だろう。
俺はフェイトさんの手を引いて家を出て行った。この時はまさか後にあんなことになるなんて思ってもいなかったのだ。
司郎とフェイトが家を出て行った後。
「錬金」
真司の言葉に拘束していた鎖は物体へと変換され、手元にタングステンの塊が錬成される。
「まさかあの子があんなことするなんて」
妻のルヴィアのため息を含んだ声に、自分も冷静ではなかったなと反省した。
なにしろ子供が戦場に行くことや子供が大人に利用されるという事柄は自分たちが最も忌避する行為だったからだ。
それを息子が連れてきた少女がやらされていると聞いて自分も妻も立場を忘れて激高してしまった。
もう自分たちは管理局の人間ではないのに。
それにしてもあのフェイト・テスタロッサという少女。
この世界の常識に疎すぎたり使い魔を連れていたことからこの地球の人間ではないと思っていたが、まさか魔術師の娘だったとは。
だとすると母親はプレシア・テスタロッサというところだろうか。しかし彼女の娘はあの事件で死亡したと資料には書かれていたはずだが。
それに年齢が合わない。
あの娘の年齢は息子と同じくらい。プレシア・テスタロッサの娘が実は生きていたのなら30歳近いはずだが。
管理局へ連絡しておくか?
一瞬思い浮かんだ考えを、すぐ否定する。
闇の書事件で負った怪我のせいで時空管理局を退職し、ミッドチルダからこの地球へ渡界してきた自分がいまさら何を言うのか。
長い間染みついた習慣は抜けないなと苦笑しつつ、これからどうすべきか妻と話し合う。
「2人の居場所は?」
「ちょっと待って。今デバイスの痕跡を追跡してるから」
妻のルヴィアが自分のデバイス……息子におねだりして作ってもらったトロワ・ムラサメを起動し複数の画面を展開させている。
ムラサメシリーズには同型機の居場所を把握するプログラムが仕込まれており、それは設計図から製造した真司は知らず開発者のルヴィアだけが知っていることだった。
「やっぱり転移したわね。すごい速さで地球から遠ざかってる。今いる次元座標は」
すぐさま画面が切り替わり、ムラサメのAIがその場所へ至る方法を提案する。
「うん。私は無理でも今のあなたならギリギリ転移できる。今すぐ追いかける?」
「ああ。だが少し様子を見る」
真司の言葉にルヴィアは信じられないようなものを見る目で声をあげた。
「フェイトちゃんを虐待している親なのよ⁉ それにシロウが無事に帰ってくるって保障もないのに」
「いや、ロストロギアがまだこの町にある以上フェイトちゃんの母親、プレシア・テスタロッサはシロウに手は出せないはずだ」
あくまで予測だが、この地球にロストロギアが点在していてフェイト・テスタロッサはそれを母に命じられて回収に来た可能性が高い。
だとしたら息子の役割はなんだ? 現地協力者。衣食住を提供する存在。
そしてロストロギアを探す手段を持っているか知っている。
だから2人は先週の土日連れだって外出したのではないかという推測につながった。
それならばプレシアは今後もロストロギアを集めるため司郎に手出しができないはず。
だが自分も父親だ。もしも息子が傷つけられたらという可能性を考えないわけではない。
「ムラサメからの音声はリンクできてるのかい?」
「当然。それにムラサメのAIは互いにリンクしていて、常に進化し続けてるわ」
妻の得意げな顔を見て、真木真司は音楽で使う指揮棒のようなものを取り出す。
「ティターンズ」
『yes,master』
男性の合成音声が響くと同時にバリアジャケットが展開する。
久々に袖を通したそれはやや重く、実戦からのブランクを真司に感じさせた。
「いざという時は無理やりにでも2人を連れて帰ってくるよ。心配せず待っててくれ」
「了解。気を付けてね」
妻の言葉を背中に受けながら、真司は転移魔法を起動させるのだった。
なのフェイまであと3話