デロス学園都市   作:ラム

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しんかいぎょ様に喜んでいただけて筆者は嬉しみ。やったぜ。
ちなみに今話で使用した画像はしんかいぎょ様ご本人から頂きました。ありがとうございます。かんしゃ。

https://x.com/rum621 ここで更新報告してるからよければヨロシクネ……






 

 

 なんとか地下遺跡から脱出した後、自身の中に宿っていた復讐の化身であるウンブラとの邂逅を果たしたレオ。

 軽い自己紹介の後、今後について話し合おうとした二人。

 しかし、ゴブリンに追われ体がボロボロになり、ウンブラとも出会うという、およそ一日で体験したとは思えない出来事を乗り越えたレオの体は空腹を訴えており、学園の食堂が閉まる前に辿り着けるよう、二人は急いで食堂へと向かっていた。

 

 レオが息を切らして中央大食堂に辿り着いたとき、 案の定そこは戦場だった。

 約二万人の生徒が在籍しているデロス学園都市の全員の胃袋を支えるべく、食堂に並んだ各店舗から湯気と怒号が立ち昇っている。長テーブルの間を学生たちが行き交い、トレーを手に席を確保しようと、互いを押し合いへし合いしていた。

 

 そんな様を見たウンブラは、レオの脳内で呟いた。

 

 

『凄い人の数ね。で、どこに座るの?この様子なら先に席を確保しておいた方がいいんじゃないかしら。』

 

 

 ウンブラの言う通り、店舗でトレーを受け取った生徒の多くは座席確保に苦労しているようだった。多くの生徒が空いている席を探して真っ先に座っていくため、遅れた者に残される席などゼロに等しい。

 しかし店舗自体は苦労している様子も無く、毎日約二万人が押し寄せるせいか店舗の従業員達が生徒を捌く速度は尋常ではない。学園都市外ならば驚かれる程スムーズに人の波は流れ、次々と生徒達へ料理が提供されていく。

 

 

「あぁ。まだ空いているといいが……」

 

 

 レオが小走りで食堂内を駆け、どこかに空席がありはしないかと探していると、店舗からは遠く離れている為なのか一つだけ空いている席があった。

 すぐさまそこへ向かって座席を確保し、机に置かれているメニュー表を見る。

 

 デロス学園都市の食堂は、その在籍する大量の生徒に料理を届ける為か、直接店舗で注文し受け取る方式と、座席から各店舗へと繋がるベルを鳴らして注文し、ホール役の従業員が座席まで届けてくれるという二つの注文方式がある。

 レオが確保した席から眺めてみれば、店舗前には大量の生徒が立ち並んでおり、ボロボロになった今の体で並ぶには少しばかり躊躇う量であった。

 

 メニュー表を眺めてどれを頼もうかとレオが思案していたその時、視界の端で桃色の髪がぴょんと飛び跳ねた。

 

 

「はーい、うさぎのしっぽ亭特製ハンバーグ、お待たせしましたーっ!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 学園ランク75、ミア。この食堂に立ち並ぶ店舗の内の一つである「うさぎのしっぽ亭」にて働く、ピンク髪に緑色の瞳、ウサ耳カチューシャを頭に着けた学園のアイドル的美少女として有名な女子生徒。

 しかしそんな一面に反し、ミアは守銭奴としても有名で、ツケを払わない生徒には容赦なく取り立てを迫るという一面もある。ぶりっ子的な性格なものの、困っている人物は見過ごせないという善良な性格の持ち主だ。

 まるでウサギが飛び跳ねるように、ミアがトレー片手にスイスイと生徒の間を通り抜け、客席の間を縫い、次々と料理を運んでいく。

 

 

『……あの子、一見無邪気に見えるけどかなりの強さね。足運びに隙が無い。』

 

「だろうな。あれでもランクは75、かなりの強者だ。なんでもアイドル的存在らしい。」

 

 

 二人が話す間にも、ミアはニコニコと笑顔を振り撒きながら料理を各生徒のもとへ提供していく。

 

 何を食べるか決めたレオは机のベルを鳴らして注文しながら、頬杖を着いて食堂を眺める。

 レオからアイドルという言葉を聞いたウンブラは、「ふーん」と興味が無さそうに声を上げ、溜息を一つ。

 

 

『アイドルねぇ……ま、あたしには関係無いわね。少し眩しすぎるもの。』

 

 

 どこか寂しそうにそう呟いたウンブラ。

 それと同時に、レオの注文した料理が届けられた。

 ごゆっくりー、という定型文と共に料理を運んできた従業員がお辞儀をし、足早にその場を離れていく。レオに料理を届けた後は、直ぐ様忙しそうに次の注文を受けているようだった。

 

 

「……相変わらず美味いな、ここは。」

 

 

 がつがつと食べ進めるレオ。地下遺跡での戦闘で消耗した体が、栄養を求めて止まない。肉を頬張りスープを流し込み、パンをちぎっては口に放り込む。あまり行儀が良いとは言えない食べ方だが、今の彼にそれを指摘するのは酷というものだろう。

 

 その様子をしばらく黙って見つめていたウンブラだったが、不意に常とは違う声のトーンでレオに問い掛けた。

 

 

『ねぇレオ。一つ聞いていい?』

 

 

 レオの食べる手が止まる。何も答えないが、ウンブラに続きを促しているようだった。

 

 

『あんた、なんであんな遺跡に一人で潜ったの。ランク100ってのは確かにかなりの上澄み。だけど、それでもあの遺跡に単独で潜るのはあまり推奨されてないわよね?それにアンタ、普段はそんな軽率な行動なんてしないじゃない。』

 

 

 的確な指摘。ずっとレオの中にいただけあって、レオの普段の行動パターンや実力はウンブラにとって既知の物。だからこそ、この男が命を投げ出すような事をするとは思えなかった。さすがに、心の中までは伺い知れないため本人に聞くしかないのだが。

 

「……そうだな。だが、焦っていたんだ。このままランク100で終わる訳には行かないと思った。遺跡に強大な力があるという、本当かどうかも分からない噂を信じるしか無かった。……まぁそのおかげか、ウンブラとは出会えたけどな。」

 

 

 はぁ、と溜息を着いてから呆れたように声を出すウンブラ。

 

 

『……そう。まぁ、気持ちは分からなくもないわ。けど、次からは気を付けなさい。真偽の分からない噂を信じるよりも、レオ。アンタは、あたしとR.E.Vについての理解を深める事が優先よ。』

 

「……R.E.V?」

 

 

 R.E.V。レオに聞き覚えの無い単語がウンブラの口から発された。

 疑問に思ったレオが声をあげると、黒い霧が僅かに溢れ、レオの眼前に集まって霧散した。苛立ちか呆れか、どちらとも取れない声でウンブラが続けた。

 

 

『アンタね、自分が持ってる力の名前も知らない訳?……まぁいいけどね。あたしを自覚できたのも、あの遺跡有りきの事だし。知らないのも無理はないわ。』

 

 

 周囲の喧騒が遠のいた様に感じる。食器の立てる音も、生徒同士が談笑する声も一瞬の間は意識の外へと追いやられた。

 

 

『いい?R.E.V。正しくはRebellious Energy Vortex。強者や理不尽への反抗心が力に変換される、魔法適性も何一つ無いアンタが持つ特殊な力よ。つまり、アンタの持ってる唯一の武器って訳。』

 

「強者や理不尽への、反抗心……」

 

 

 自身の手を見つめるレオ。今の今まで、剣と銃、そして魔力による身体強化で何とかしてきたレオにとって、自身にそんな力があるなど知る由も無かった。

 

 

『遺跡であたしが実体化したとき、体の奥から何かが燃えるような感覚があったでしょう?あれがR.E.V。怒り、悔しさ、絶望…… そういう負の感情が溜まれば溜まるほど、強くなる。逆に言えば、ぬるま湯に浸かっていたら力なんて湧いてこない。アンタの持つR.E.Vは、そういう力なの。』

 

『そして、あたしはそのR.E.Vが最大まで溜まることで初めて、完全に実体化できる。あたしがアンタの切り札って事ね。』

 

 

 切り札。レオにはそう呼べるものが無かった。けど、これなら。今まで停滞していたランク戦でも、何かが変わるかもしれない。

 

 

「切り札、か。」

 

『そう、切り札。アンタは勝ちたいんでしょう? なら使いこなしてみせなさい。強者や理不尽への反抗心から生まれるって事は、そういった物への特効になるということ。つまりは格上殺しの力。……出来るでしょう?アンタなら。なんせ「夢見る男」だものね。』

 

 

 愉しげに声を上げたウンブラは、まるでウィンクでもしているような調子でレオに告げた。

 

 

「あぁ。分かった。どの道、俺に選んでいる暇なんて無い。どんな力だって物にしてやる。ウンブラ、俺はどうすればいい?」

 

 

 ウンブラが満足気に鼻を鳴らし、黒い霧がレオの周囲を揺蕩う。

 

 

『まずは来週のランク戦。そこで格上にぶつかりなさい。R.E.Vは実戦でしか育たない。訓練じゃ意味が無いの。』

 

 

 ウンブラがそう告げたと同時、周りの生徒達がにわかに騒がしくなる。

 見れば、周囲の生徒達は魔導水晶で作られた情報端末を手に、騒めきが広がっていた。

 

 

「おいおいおい……またイオンかよ。どんだけ強ぇんだアイツは……」

 

「アミリィ様でも勝てないって相当だよね……」

 

 

 イオン。学園の頂点に立つ無敗のトップ。燃えるような赤髪と、灰色の瞳を持つ長身痩躯の青年。着崩した白シャツに赤ネクタイ、黒いロングブレザーを羽織り、彼の身長を越える細身の大太刀「日輪」を佩いている学園最強の男。

 

 頂点を目指すレオにとって、いつかは越えなければならない相手だった。

 

 

「ランク戦があったのか……?」

 

 

 レオも情報端末を開いて確認してみれば、学内ランキング一位に燦然と輝く「イオン」の名前。戦績は全戦全勝。二位のアミリィとの差は歴然としおり、挑戦者が現れても片手間に捻り潰すのが彼の日常である事は、学園に在籍していればよく耳にする話だ。

 

 

『イオン。聞いた事があるわ。あらゆる攻撃を防ぐっていう反則級の力「無敵」と、鍛え抜かれた剣術。正直戦いたくない相手ね。妄想好きの子供でももう少し加減するわよ。』

 

「……そうだな。だが、頂点を目指す以上いつかは戦う相手。やるしかない。」

 

 

 とはいえ、重要なのは目の前の事。来週に迫ったランク戦にて、格上との戦闘経験を積み、R.E.Vの扱い方に慣れておく事こそがレオにとっての目下の課題だった。

 

 

『……そうね。そういえば、来週のランク戦。誰と戦うかは決まっているのかしら?』

 

 

 レオが情報端末を確認すると、丁度来週に行われるランク戦の対戦表が決定された通知が全生徒へ送信された所だった。

 来週の月の曜、学園都市中央部に併設されるように建てられた闘技場「アルカディア・コロシアム」にて行われるランク戦の第七試合。

 端末に表示されていた名前は、学園ランク39・バルバトス。

 

 

「……バルバトス。因果逆転の使い手。いきなり格上か。願ったり叶ったりだな。」

 

『バルバトス……因果逆転?』

 

 

 ウンブラがその名を反芻するように黙り込んだ。黒い霧が不穏にレオの周囲で揺れる。

 

 

「あぁ。俺も良くは知らないが、結果を先に確定させる力らしい。推測ではあるが……恐らく、避けられない攻撃って事なんじゃないかと思う。」

 

『なるほどね……つまりは回避も防御も意味を為さない。上等じゃない。R.E.Vの慣らしには丁度いいわね。』

 

 

 ウンブラと会話を続けながらも食事をしていたレオは、食べ終わった所で立ち上がる。

 

 

「今日は休む。詳しい事は明日にしよう。」

 

『そうね。レオ、アンタはさっさと体を治しなさい。来週体がボロボロで戦えませんなんて言い訳は通じないからね?』

 

「分かってる。ポーションを飲んだらすぐ寝るさ。」

 

 

 食器をトレーに乗せて店舗へと返却したレオは、未だボロボロの体を引き摺りながら、学生寮への帰路を辿っていった。

 

 

 

 

 

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