■光が強くなれば、陰の実力者はより際立つ。ので、僕が天に立つ 作:あばなたらたやた
カゲノー家の領地にほど近い森で、夕闇が迫る中、村人の叫び声が響いた。重傷者を運んできた村人の話を受け、シドとアルファは野盗の襲撃現場へと急行する。
森の開けた場所にたどり着くと、粗末な鎧をまとった五人の野盗が刃物を振りかざして村人たちを脅していた。シドは一瞬で状況を把握し、アルファに小さく囁く。
「アルファ、村人たちを安全な場所に。僕がこいつらを片付ける」
アルファは頷いて村人たちを木々の陰へと導いたが、その視線はシドから離れなかった。
「君たち、その行為が違法だって分かってるよね。村人を襲うなんて真似をされたら、始末するしかなくなっちゃったよ」
「貴族の坊ちゃんが何だ? 俺たちに指図する気か?」
野盗の一人が剣を振り上げた瞬間、シドの姿がかさんだ。
次の瞬間、野盗の剣が宙を舞い、彼は地面に叩きつけられていた。誰もその一撃を目で捉えられない。
シドが無表情のまま放った二撃目で別の野盗の腕が切り落とされ、悲鳴が森に響き渡る。残りの三人が恐怖に引きつりながら後ずさったが、逃げる間もなかった。
青白い光を帯びた剣の一閃とともに、三人が同時に倒れ伏す。戦闘はわずか数秒で終わった。
地面に散らばる血と倒れた野盗の姿が、その圧倒的な力を物語っている。
アルファは息が詰まるような感覚に襲われていた。穏やかで誠実な貴族の青年が、瞬時に冷酷な死神と化す。その二面性に、彼女は戦慄を覚える。
シドは剣を鞘に収め、振り返って優しく微笑んだ。
「大丈夫、終わったよ。村人たちは無事?」
「……ええ、無事よ。野盗より貴方の方が恐ろしいかもしれないわね」
「怖がらせちゃったかな? 無差別殺人はやらないよ。ただ、守るためにこの力を使う。それが僕たちの理念だろ?」
アルファは小さく息を吐き、穏やかに笑みを浮かべた。
「そうね……保護、治療、支援。そのために、あなたの力が必要よ。私がちゃんと適切に導くわ」
「任せるよ、アルファ」
野盗の一件が片付き、カゲノー家の屋敷に戻った夜、シドとアルファは屋根の上に腰を下ろしていた。
雲一つない夜空には無数の星が瞬き、冷たい風が二人の髪を揺らしている。
「きれいだな、星って。こういう静かな時間、嫌いじゃないよ」
「そうね。戦いの後には、こういう時間が大切よ」
シドは両手を頭の後ろで組み、ぽつりと本音を漏らす。
「でもさ、僕って考えるの苦手なんだよね。今日みたいに野盗が出たらバッサリやっちゃえば終わりだし、暴力で解決できるならそれが一番簡単だと思う」
「……力で全てを解決するって、ずっとそうしてきたの?」
「まあね。でも、暴君みたいなやり方は嫌いだよ。力で押さえつけても、皆が心から従うわけじゃない。怯えてるだけなら隙を見せた瞬間に裏切られる。子どもの頃、横暴な役人に村人たちが団結して立ち向かったのを見て思ったんだ。暴力だけじゃ結局ダメなんだって」
アルファは驚きと感心を込めて微笑んだ。
「暴力で解決するのが簡単だと言いながら、ちゃんとその先を考えてるのね。……あなたが輝く星で、私がその光を導く月ってところかしら」
「だね。君が頭脳担当で、僕が暴力担当。これでちょうどいいよ」
アルファはシドの横顔を見つめ、心の中で温かな決意を抱く。彼と出会ってから、彼女もまた生きる意味を見つけたのだ。
「ねえ、シド」
「ん?」
「あなたと出会ったから、私も希望を見つけられた。ディアボロス教団を壊滅させるためだけじゃなくて、あなたと一緒にこの夜空みたいな未来を作りたいわ」
「うん、約束だよ。君と一緒なら、どんな闇だって切り開ける。保護、治療、支援――そして、幸せな世界を二人で」
星々が見守る中、シドの素直な言葉とアルファの静かな決意が響き合う。夜風が優しく二人を包み込み、シャドウガーデンの礎となる絆がさらに固く結ばれたのだった。