■光が強くなれば、陰の実力者はより際立つ。ので、僕が天に立つ   作:あばなたらたやた

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四話

 

 月が雲に隠れた夜、シャドウガーデンはディアボロス教団のアジトの一つである古びた砦に忍び寄っていた。

 

 シドを先頭に、黒いマントに身を包んだ十数人の構成員が静かに進む。その統制された動きは、アルファの指導がしっかりと浸透している証だった。

 

「アルファ、準備はいいね? ここの教団員は少ないみたいだけど、油断はできないよ」

「ええ、分かってるわ。斥候の報告だと、地下に実験体が数人閉じ込められている。教団員を制圧したら、すぐに回収と治療に取り掛かるわ。シド、あなたは戦闘を頼むわね」

「任せて」

 

 シドが軽く笑って剣を抜いた次の瞬間、彼の姿がかさんだ。音もなく門番二人が倒れ、構成員たちが闇に紛れて砦へ雪崩れ込む。

 

 シドの圧倒的な一閃が扉を切り裂いて地下への道を開き、駆けつけた教団員たちを瞬く間に薙ぎ払った。

 地下の牢獄には、魔力暴走で肉塊と化した者たちがうめき声を上げている。

 

「何者だ! 儀式を妨げる気か!」

「儀式……ただの人体実験じゃないか。お前たちみたいな奴らがいるから、シャドウガーデンが必要なんだよ」

 

 冷ややかな言葉とともに放たれた魔力の剣閃が、教団員たちを一掃した。

 静寂が戻った地下で、アルファは的確な指示を飛ばす。構成員たちが鉄格子を開けて悪魔憑きたちを運び出し、シドの魔力操作を応用した治療術が施されていく。

 

 青白い光に包まれ、一人また一人と人間の姿を取り戻した者たちは、涙を流しながら感謝を口にした。

 剣を鞘に収めながら近づいてきたシドに、アルファは穏やかな笑みを向ける。

 

「やっぱり君の管理能力ってすごいね。昔の僕なら敵を倒すだけで終わってたけど、今はこうやって助けることもできる。シャドウガーデンも、だいぶ大きくなった」

「あなたの力があってこそよ。私の計画も、構成員の訓練も、あなたという核がなければ成り立たなかったわ。でも、今の私たちなら教団に立ち向かえる。見てて、シド」

 

 彼女の背後では、斥候、戦闘員、治療師たちがそれぞれの役割を完璧にこなしていた。元魔力暴走者たちが回復後に志願して仲間となり、組織は数十人規模の希望の象徴へと成長を遂げている。

 

 

 シャドウガーデンの拠点であるカゲノー家の地下室では、地図や書類が広げられたテーブルの中心でアルファが説明を進めていた。

 シドは壁に寄りかかり、剣を手に興味深そうに聞き入っている。

 

「ディアボロス教団との戦いは長期戦になるわ。戦闘力だけじゃなく、資金がなければ私たちの活動は限界を迎える。だから――『ミツゴシ商会』を設立するわ」

 

 アルファは地図を指し示す。

 

「高品質な商品を扱って得た利益を、シャドウガーデンの資金源にするの。拠点の拡大も装備の強化もこれで円滑になるわ」

「商会? 僕、商売とか全然分からないけど……具体的に何を売るの?」

「例えばこれよ」

 

 アルファがテーブルに置いた小さな箱から、精巧な革製の小袋を取り出した。

 

「治療用の薬草を詰めた携帯ポーチ。私たちが魔力暴走の治療で培った技術を応用し、魔力で効果を高めて傷の治りを早くするの。他にも、軽くて丈夫な防具や魔力を込めた武器など、私たちの技術にしか出せない品質のものを売るわ」

「おお、すごいね。僕も戦場で使いたい便利さだ。これを売って儲けるってわけだね。アルファ、頭いい」

 

 褒めるシドに軽く笑みを返し、アルファはさらに新たな計画を明かした。

 

「表向きは普通の商会だけど、実質は資金と情報を集める拠点にするわ。各地に店舗を置けば、教団の動きを監視する目も増える。さらに、技術開発局も設置するつもりよ。ミツゴシ商会のために革新的なアイテムを研究し、私たちの活動を支える技術を進化させる部署だわ」

 

 地下室の一角では、シドたちに救われた技術者や学者がすでに道具や書物を手に準備を進めている。アルファが取り出した魔力を蓄える試作水晶を見せると、シドは目を輝かせた。

 

「これなら戦場で魔力切れしても安心だね。アルファ、君は本当にすごいよ。僕、剣振ってるだけでいいのかなって思うくらいだ」

「あなたは剣を振るだけで十分よ、シド」アルファは優しく微笑む。「あなたの力があってこそ私たちの計画は現実になる。ミツゴシ商会も技術開発局も、あなたという武力があって初めて輝くのよ」

 数ヶ月後、ミツゴシ商会は領地周辺で大きな評判を呼んだ。

 高品質な薬草ポーチや魔力武器は貴族や冒険者の間で瞬く間に話題となり、その利益は着実に組織の基盤を支えていく。技術開発局も次々と新たな治療器具や戦闘装備を生み出し、構成員たちの練度をさらに押し上げていた。

 ある夜、シドとアルファは屋敷の屋根に立ち、星空を見上げていた。

「商会も開発局も、私たち二人が始めた夢の続きね。これからもっと強くなって、ディアボロス教団を壊滅させるわ」

 夜風にミツゴシ商会の旗がパタパタと揺れる。資金と技術を手に、闇を切り裂くシャドウガーデンの光は、ますます力強く輝き始めていた。

 

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