■光が強くなれば、陰の実力者はより際立つ。ので、僕が天に立つ 作:あばなたらたやた
シャドウガーデンの医療施設で数日を過ごしたゼータは、仲間たちとスープを囲み、互いに支え合う姿を見るうちに強い意志を芽生えさせていた。
ある朝、ゼータはシドとアルファのもとを訪れ、真剣な眼差しで告げる。
「主、アルファ様。私、シャドウガーデンに正式に参加したい。ここでみんなを支えるだけじゃなく、教団と戦う力になって恩返ししたいんだ」
「その気持ち嬉しいよ。君が仲間になってくれるならもっと強くなる。アルファ、どう思う?」
「素晴らしい決断よ、ゼータ。あなたの気持ちはシャドウガーデンの理念にぴったりだわ。まずは訓練を受けて、獣人の素質がどれだけ活きるか見せてもらうわね」
その日から始まった訓練で、ゼータは驚異的な才能を開花させた。剣術の戸惑いはすぐに消え、獣人特有の敏捷性と鋭い感覚で模擬戦の相手を次々と翻弄する。
イータ開発のチャクラムを持たせれば、的を正確に仕留めてみせた。
見学に訪れたシドが「すごいね、才能がある!」と驚くと、ゼータは少し照れくさそうに尻尾を振る。
「主のおかげだよ。あの時助けてくれたから、頑張ろうって思えたんだ」
訓練後、アルファはゼータを呼び寄せ、静かに告げた。
「戦闘に向かないなんて思い込みだったわね。その力を見込んで、シドの親衛隊の副隊長を任せたいの」
「……私でいいのか分からないけど、信じてくれるなら全力でやるよ。貴方方を守るために」
◆
カゲノー家の裏庭では、夕陽がオレンジ色の光を投げかける中、王都のミドガル魔剣士学園へ旅立つ姉・クレアがシドの前に立っていた。
「シド、そろそろ学園に行っちゃうでしょ? 最後に姉ちゃんの強さを刻んでおくわよ!」
「わかったよ、姉さん。なにするの?」
返事をする間もなく、クレアはシドに飛びかかり、その肩にガブリと噛み付いた。
「痛っ! 姉さん、何!?」
「これが修行よ! 私の痕を体に刻んで、忘れないようにしなさい!」
肩を押さえて苦笑するシドに、クレアは満足げに手を差し伸べる。
「王都で私が一番になってやるから、シドも置いてかれないように頑張りなさい」
「了解、姉さん。次会う時は、僕ももっと強くなってるよ」
夕陽に照らされた小さな歯形は、旅立つ姉との温かな絆の証となった。
地下拠点の訓練場では、シドが一人で剣を手に新しい魔力の使い方を試していた。
魔力を単なる力の塊や破壊エネルギーとして使うのではなく、性質を変えられないかという疑問から思いついたアイデアだ。
ある夜、アルファとイータを呼び寄せたシドは、両手をかざして見せた。
「魔力に『属性』を付けたら、もっと色んな使い方ができるんじゃないかって思ってさ」
シドが集中すると、手から小さな炎が飛び出して的を焼き、続いて冷たい風がそれを凍らせ、さらに土の塊が鋭い矢となって別の的に突き刺さる。
「これは……魔力に属性を与えたってことね。炎、氷、そして土?」
「属性変換……魔力を別の概念に変更できるなんて革命的ね、さすがマスター!」
アルファは戦略的な視点に切り替え、興奮気味に頷く。
「教団との戦いにおけるシャドウガーデンの切り札になるわ。状況に応じた戦術も組めるし、治療の効率化にも応用できるかもしれない。シド、あなたが開発したこの魔法を、私が訓練プログラムに組み込んで構成員に教え込むわ」
「テきる……属性変換を補助する魔術礼装とか、駆動鎧とか、私の技術がもっと活きるわ」とイータも目を輝かせた。
シドの思いつきから生まれた「属性変換」は、シャドウガーデン独占の秘密の力となり、教団との戦いに向けた組織の未来をさらに力強く切り拓いていくのだった。