光が強くなれば、陰の実力者はより際立つ。ので、僕が天に立つ 作:あばなたらたやた
シャドウガーデンの地下拠点は、日に日に活気を増していた。構成員の数が数十人を超え、医療施設や訓練場、技術開発局がひしめき合うようになった結果、通路は人で溢れ、物資の保管場所が不足し、訓練場では順番待ちが発生する事態となっていた。
ある夕方、シド、アルファ、ゼータ、イータが会議室に集まり、現状について頭を悩ませていた。灯りが揺れるテーブルの脇で、シドがぼやく。
「人が増えるのは嬉しいけど、さすがに狭くなってきたね。訓練するにも窮屈だし」
「その通りね。現在の拠点は隠密性に優れているけれど、この規模の拡大には対応しきれなくなっているわ。安全で広範な、新たな拠点が必要よ」
イータは眠そうに耳を掻きながら呟く。
「物資さえあれば拡張する技術はある……でも、この森の地下じゃもう限界。どこか広い場所に移るのが一番……」
その時、ゼータが静かに手を挙げた。
「私、提案があるんだ。新しい拠点として、古都アレクサンドリアに目をつけてみない?」
「アレクサンドリア? 聞いたことある。滅びた要塞都市の?」
「うん。今は廃墟で、毒の霧が周囲を囲む危険な地域だけど、それが逆にいいんだ。教団も近づかないし、広大な土地がそのまま残っている。もし毒の霧をどうにかできれば、シャドウガーデンにぴったりの拠点になるはずだよ」
アルファは目を細め、慎重に思案する。
「毒の霧か……敵が近づかないのは利点ね。でも、どうやってその危険を克服するつもり?」
「主の属性変換魔法とイータの技術があれば解決できるよ。主の魔法で霧を吹き飛ばすか浄化して、イータに毒を防ぐ魔術礼装や中和装置を作ってもらえば、私たちだけで安全に進軍できるわ」
イータの目がカッと見開かれ、メモを猛烈に書き込み始めた。
「おお、ゼータ、いいアイデア。毒の中和には魔力結晶と薬草を組み合わせた装置が使える。マスターの魔法と連動させれば、短時間でエリアを浄化できる……!」
「いいね、試してみたいや。古都なら広いし隠れる場所もありそうだ」
シドが軽やかに笑うと、アルファは決断を下した。
「アレクサンドリアは危険だけど、その分教団の手が及ばない。シドの魔法とイータの技術で毒を克服できれば理想的ね」
数日後、シャドウガーデンの一行は古都アレクサンドリアを目指し、森の奥を進んでいた。シドを先頭に、アルファ、ゼータ、イータ、そして親衛隊を含む十数人の構成員が魔剣や仕掛け武器を構えている。
外周に近づくにつれて空気は重くなり、濃い毒の霧が視界を白く濁らせた。
「うわ、ほんと霧がすごいね。浄化装置なしじゃ到底進めないね」
シドが顔を顰める中、イータが背負った円筒形の「浄化装置」のスイッチを入れた。低い振動音とともに青い光が放たれ、周囲の霧がみるみる薄れていく。
「この装置は魔力結晶と薬草の組み合わせ。半径10メートルは清浄な空気に変わる設計……私が計算した通りに動けばね」
アルファは地図を確認しつつ周囲に目を光らせる。
「イータ、見事だわ。みんな警戒を怠らないで。霧が晴れても、何が潜んでいるか分からないわよ」
「了解、アルファ様。獣人の感覚で変な気配があったらすぐ教えるよ。主も、頼りにしてるからね」
「任せて、ゼータ。僕の魔法と魔剣の試運転にもちょうどいいしね」
シドが剣の柄に手をかけたその時だった。重い静寂を切り裂くように、低く響く咆哮が辺りを震わせた。
「――ッ!?」
シドが身構えた瞬間、晴れかけた霧の奥から巨大な影が立ちはだかる。それは白い鱗に覆われたドラゴンだった。
体長は十数メートルに及び、鋭い爪と牙が鈍い光を放ちながら、古都の守護者のように一行を威圧していた。
「じゃあ、死のうか」
シドはドラゴンの首を跳ねた。
「悪いが、無理だ」
「うわ」
ドラゴンは火を吹いて周囲を焼き尽くす。事態を重く見たシドは速やかな排除へ移行した。魔力を高める。するとシドから紫と黒の光が生まれる。
「アトミック」
魔力が爆発した。