光が強くなれば、陰の実力者はより際立つ。ので、僕が天に立つ 作:あばなたらたやた
古都アレクサンドリアの外縁で、白いドラゴンの燃えカスが積み重なり、静寂が訪れていた。
シドは剣を鞘に収め、汗を拭いながら仲間たちと胸をなで下ろす。だが、その瞬間、地面が微かに揺れ、低い唸り声が響き始めた。
倒れていたドラゴンの白い鱗が再び輝き、閉じていた目がゆっくりと開く。傷が癒えた巨体が起き上がり、毒の霧が再び周囲に漂い始めると、シャドウガーデンの面々は一斉に武器を構え直した。
「生きてるんだ……そこは死んでおいてよ、生物てして」
驚愕するシドの眼差しを受け、ドラゴンは翼を軽く広げ、深く響く声で一行を見下ろした。
「死んだと思うたか。儂は古都と共に生き、古都と共に滅びた存在。この地を守る意志が尽きぬ限り、死にはせぬ」
「なら、なぜ蘇ったの? 私たちを試すため? それとも、まだ戦うつもり?」
アルファの冷静な問いかけに、ドラゴンは低く笑うような音を立てる。
「いや、試しは終わりだ。お前たちの力、見事だった。炎と氷と土を操り、結束して儂に挑んだその姿――気高さを感じた。良いだろう、お前たちを認める」
「認めるって……どういうこと? さっきは僕たちを欲深いって言ってたじゃないか」
シドの警戒混じりの言葉に、ドラゴンは目を細めた。
「確かに、儂は人の欲を疑った。だが、お前たちは違う。力だけでなく、仲間と共に戦い、互いを支える意志を見せた。アレクサンドリアを託そう。お前たちが気高さを保ち、欲に溺れぬ限り、儂は敵とはならぬ。毒の霧も、儂が退けよう」
「ありがとう、あなたの言葉は私たちの理念を肯定してくれるわ。シャドウガーデンはここを拠点にし、気高さを失わないと約束するわ」
アルファが穏やかに微笑み、シドも肩の力を抜いて剣を鞘に収める。
「他人に生殺与奪の権利を握られるのは嫌だけど、まあ仕方ないか」
「シドとやら、面白い人間だ。我が名はラグナ。お前たちの戦いを見守ろう」
新たな守護者となったラグナが見守る中、毒の霧が晴れ、古都アレクサンドリアの全貌が月光の下に姿を現した。
ラグナとの戦いを終え、一行は静まり返った要塞都市の内部へと足を踏み入れる。
「うわ、大きい……! 廃墟って聞いてたけど、まだ全然立派だね」
「その通りね。数百年前に繁栄していた頃は、この地域の中心だったところよ。植物の侵食はあるけれど、この堅牢さは驚異的だわ」
アルファの言葉通り、高さ十数メートルの石壁は苔や蔦に覆われながらも崩れる様子はなく、門をくぐると放射状に石畳の道が広がっていた。要塞としての設計が随所に残るその光景に、ゼータは尻尾を揺らして目を輝かせる。
「見て、主! この壁、めっちゃ厚いよ。それにこの広さなら、訓練場も医療施設も技術開発局も全部作れちゃう!」
「ほんとだ……あの塔なんて技術開発局にぴったり。石がしっかりしてるから装置の振動にも耐えられるし、最高」
イータが嬉しそうに頷き、シドも石畳を軽く踏みしめながら笑った。
「霧の竜が守ってただけあって頑丈さが半端ないな。高い壁で見張り台もあるし、教団が来てもここなら守りやすい」
さらに奥へ進むと、蔦に覆われた広大な大広間が現れた。半壊した屋根の下、しっかりと立ち並ぶ石柱を見たシドは腕を広げて言った。
「ここ、訓練場にしよう。僕の魔法もゼータの動きも、思う存分試せるくらい広い」
「ほんとだ! 親衛隊のみんなも絶対喜ぶよ!」
ラグナがゆっくりと近づき、静かな声で告げる。
「この都市は、かつて儂が守り、滅ぼした場所だ。お前たちが気高さを保つなら、この要塞は再び輝くだろう」
「分かったよ、僕たちはシャドウガーデンの理念のためにここを使う。保護、治療、支援――この広さなら、もっとたくさんの人を救える」
シドの力強い言葉に、アルファは頼もしい笑みを浮かべた。
「ええ。アレクサンドリアの堅牢さと広さを活かせば、シャドウガーデンは次の段階に進めるわ。ラグナ、あなたの協力があれば、教団への反撃も盤石になるわね」
月光が石造りの要塞都市を照らし出す中、シドの活躍と仲間たちの結束が生んだ新たな拠点で、シャドウガーデンは未来を切り開く第一歩を踏み出したのだった。