​ ✨『美しき天才、エルフォーリオ 〜優雅なる貴公子〜』✨ ​    作:Riho

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第12話は、日本ダービー(2400m)激闘の数時間後——夜の鹿野宿舎が舞台です!
世間がエルの「美しき敗北」に涙する裏で、宿舎の廊下はまさに地獄絵図!
マイバケツに涙の海を作る宿舎長、真実を知りすぎて顔色青白なタケシ、さらには超重鎮・勝己代表までもが駆けつけ、部屋の前で壮大な大勘違いアフレコを繰り広げます!
クッションに埋もれて爆睡するエルぼっちゃまの「ボソッとした呟き」がどう超訳されていくのか、そして限界突破したタケシの「水なし太田胃散」の悲劇をどうぞお楽しみください!   ✨


 ✨第12話:『鹿野宿舎の涙と、太田胃散の誓い』  

日本ダービー・オールスターズ(東京メインスタジアム・2400m) ✨

 

全サラブレッドアスリート(サラメン)たちが一生に一度だけ挑むことを許された最高峰の頂上決戦  

 

そのゴールの瞬間、わずか数ミリ——ほんの髪の毛一本分という超極小の差で惜しくも2着に敗れ、無傷の無敗三冠という偉業の夢が途絶えた、あの衝撃の激闘から数時間後  

 

東京の喧騒から離れた美浦校・鹿野宿舎は、すっかり夜の静寂(しじま)と、しんとした静けさに包まれておりました ✨

 

世間の大手スポーツ新聞やSNS、テレビのスポーツニュースでは、

 

 『世代を代表する歴史的名勝負! 敗れてなお気高き美しき貴公子!』✨

 

 『写真判定数ミリの悲劇……エルフォーリオに送るスタジアム12万人の惜しみない拍手』 

 

 『敗北を知り、真の王者へ。秋の復権を誓うエルフォーリオ陣営』 

 

などと、エルの「美しき敗北」を称える感動的な特集がゴールデンタイムの枠を独占して連日組まれておりました ✨

 

しかし……!

 

そんな表舞台の感動的な盛り上がりとは完全に真逆のベクトルで、鹿野宿舎の2階、エルフォーリオ様の個室前は、正真正銘の地獄絵図のような大混乱に陥っていたのでございます! ‍♂️ 

 

  「エルぅぅぅぅぅッ!! 悔しいなぁぁぁッ!! ワシが……ワシが悪かったぁぁぁッ!! ダービーという巨大すぎるプレッシャーを全部お前一人に背負わせてしまったぁぁぁッ!!(ジャバババババ!バケツジャバババ!  )」

 

廊下中に響き渡る、魂を削るような大絶叫!  

 

声の主は、両手でマイバケツをガチガチと震わせながら抱え込み、膝をついて床に突っ伏している鹿野宿舎長!

 

目と鼻から滝のように噴き出し続ける涙と鼻水により、すでにマイバケツはなみなみと満たされ、溢れ出た液体で高級板張りの廊下には「涙の巨大な水たまり」が形成されております!  

 

  「宿舎長! だから廊下で大声を出して叫ぶなと言ってるでしょうがッ!! そもそもこいつは悔しがってなんかありませんよッ!!」

 

必死の形相で宿舎長のジャージの裾を引っ張り、なんとか立ち上がらせようと全身の力を込めているのは、専任トレーナーのタケシ!  

 

ダービーの激闘による疲労と、この数時間の異常なストレスにより、タケシの顔色は土気色を通り越して青白く変色しております!  

 

  「何を言うかタケシ!! 見ろ、あの固く閉ざされた絶対不可侵のドアをッ!! ダービーで人生初の黒星を喫し、自らの無敗伝説が途絶えたショックで、部屋に引きこもって一人静かに血の涙を流しておられるのだぞ……ッ! 悔しさのあまり、部屋から一歩も出て来られんではないかッ!!(マイバケツジャバババ! )」

 

そう、エルフォーリオ様の部屋のドアは固く閉ざされ、重厚な木製扉の向こうからは、物音ひとつ聞こえてまいりません  ✨

 

……しかし! 真実は、宇宙の裏表ほどに違っていたのでございます!

 

部屋の中—— ✨

 

外の騒ぎなど露ほども知らず、特注の最高級イタリア製シルククッションと、雲のように柔らかい極厚の羽毛布団に体をすっぽりと埋め込み、完全なる無重力体勢で横たわるエルフォーリオ様ソファ✨ 

 

すやすや……すやすや……  

 

 (……ふぁ〜ぁ。今日のダービー、本当に疲れたなぁ……。2400mも走らせるなんて、大人の考えることは本当に酷いよね……。足を伸ばしても伸ばしてもゴールが見えないんだもの……。でもまあ、お風呂上がりに冷えたシャインマスカット大福も食べられたし、今日はもう明日まで1ミリも動かないぞ……  )

 

そう! エルフォーリオ様は敗戦のショックや悔しさなどミジンコほども持ち合わせておらず、ただ「2400m全力で走ってだるいから、パジャマのままフカフカのクッションに埋もれて爆睡しているだけ」だったのでございます!半目ぽつん…… ☁️

 

そこへ、暗い廊下の奥から、カツン……カツン……と洗練された静かな足音が近づいてまいりました ✨

 

両手で捧げ持った特製の銀盆には、湯気が優雅に立ち上る淹れたての高級玉露と、老舗和菓子屋から取り寄せた季節の特撰「いちご大福」が美しく配置されております。執事の服部さんでございます  ✨

 

✨ 「宿舎長様、タケシ様。どうぞお静かに……。ぼっちゃまは今、深淵なる精神の試練、己の魂との対話と向き合っておられます……」

 

服部さんは静かにドアの前で両膝をつき、目を閉じて深く胸に手を当てながら、うっとりとした表情で語り始めました。

 

 ✨「おぉ……感じます……感じますぞ……! 厚いドア越しにビンビンと伝わる、ぼっちゃまの気高くも切ない『魂の慟哭』と『沈黙の誓い』が……ッ! 『……敗北を知り、我はさらに強くなる。この数ミリの屈辱こそが、我が絶対王道への真の糧……』とおっしゃっておられます……ッ!」

 

  「どこからどうやってそんな文脈を感じ取ったんだよッ!? 中から『スースー』ってめちゃくちゃ気持ちよさそうな寝息しか聞こえてこねぇだろッ!! 完全に爆睡して夢の中にいるんだよあいつは!!」

 

タケシの青筋を立てた魂のツッコミが、夜の廊下に虚しく響き渡ります!

 

しかし、服部さんは「ああ……ぼっちゃまの気高き覚悟に、我が涙が止まりません……っ!」と、シルクのハンカチで目頭を押さえる始末!涙ハンカチ✨

 

その時でございます!!

 

「——良い静寂(しじま)だな」

 

廊下の暗がりから、重厚で圧倒的な威厳とオーラを纏った声が響き渡りました!

 

廊下の照明を背に受け、威風堂々とした足取りで姿を現したのは……なんと日本スポーツ界の重鎮であり、ノーザンクラブの頂点に君臨する勝己代表その人でしたッ!!✨   ️

 

「「「勝己代表ッ……!?!?」」」

 

驚愕の声を上げる一同! 本来なら本部にいるはずの超重鎮が、自ら高級外車を走らせ、深夜の美浦・鹿野宿舎までねぎらいにやってきたのです!  

 

「代表……! わざわざこんな夜更けにお越しくださるとは……ッ!」(鹿野宿舎長)

 

勝己代表は静かに手を掲げてそれを制すると、深く腕を組み、固く閉ざされたエルフォーリオ様の部屋のドアをじっと見つめました。そして、重々しく、深く頷いたのです。

 

「……話す必要はない。私には聞こえるぞ。エルフォーリオの『沈黙の咆哮』が……ッ!」

 

「(はい出たーーーッ!! 重鎮特有の超大規模・勝手なアフレコねつ造ーーーッ!!  )」タケシは心の中で叫びました。

 

勝己代表は感極まった面持ちで、誰も頼んでいない熱弁をドラマチックに開始します!

 

 ✨「彼はほんの数ミリの差で敗れたのではない……。あえて最後のスパートを緩めて勝利を譲り、ライバルであるシャハリアルに栄光を分け与えることで、世代全体のレベル底上げを図ったのだ……! 12万人の観衆が見守るダービーという至高の舞台で、己の無敗記録すら投げ打ち、スポーツ界の未来を紡ぐ『真の王者の包容力』……! なんという恐ろしい男だ……ッ!」

 

  「絶対に違います勝己代表ッ!! こいつゴール直前でおやつの噛みつき方について悩み込んで足を緩めただけですからッ!! 1ミリも未来なんて紡いでませんからッ!!(声に出せない心の叫び)」

 

勝己代表は感涙にむせびながら、ドアに向かって優しく語りかけました。

 

「エルフォーリオよ……見事な戦いだった。敗れてなお、お前こそが我がノーザンクラブの最高傑作であり、絶対王者だ。今はゆっくり休むがいい……」

 

その時でございます!

 

ドタバタと騒がしい廊下の物音と勝己代表の重厚な大声に、わずかに目を覚ましたエルフォーリオ様。

 

フカフカのクッションの中からぬっと顔を出し、心底めんどくさそうにドアに向かってボソッと呟きました……ぽつん…… ☁️

 

 (……ねぇ、外で誰かが熱弁しててすごくうるさいんだけど……。タケシ、しずかにさせてくれる……? ついでに明日のおやつはイチゴ大福にしてほしいな……  )

 

そのかすかなささやき声が、ドアの隙間から漏れた瞬間!

 

勝己代表がハッと目を見開き、全身を武震させました!ピクッ⚡️

 

 ✨✨「おぉ……ッ! 今、何という気高き言葉を……! 『代表よ、気遣いには感謝する。しかし我が見つめるのは過去の栄光にあらず。明日の新たなる一歩(イチゴ大福)のみ』……とおっしゃったかッ!!」

 

   「言っていませんッ!! 『明日のおやつはイチゴ大福にしてほしいな』って言っただけですッ!! どこをどう聞いてそこまで都合よく超訳してるんですかッ!! 耳とおめでた脳みそがめでたすぎだろッ!!」

 

重鎮までもが超ウルトラおめでた妄想モードを発動させた瞬間でございます! ✨ 

 

ズキズキズキズキッ……!!⚡️ 胃液逆流ッ!!キリキリ……!!

 

  「ぐはっ……! エルのマイペースさと、宿舎長・服部・代表の三大重度勘違いトリオに挟まれて……俺の胃が……俺の胃が破裂するッ!! 薬! 薬……ッ!  」

 

タケシは震える手でポケットに手を突っ込み、新しい胃腸薬の箱を取り出そうとしました。

 

……しかし! ダービーの直前で手持ちの薬を床にぶち撒けて散乱させたため、ポケットの中は完全に空っぽ!!

 

   「な……ないッ!? 胃薬のストックが無いッ!? そうだった……さっきダービーの時に全部床に撒き散らしたんだ……ッ! 嘘だろ……俺の生命線が……ッ!!」

 

絶望に打ちひしがれるタケシ!

 

胃の激痛に耐えかね、その場に崩れ落ちそうになったまさにその時!

 

✨「タケシ様、ご安心召されよ……✨」

 

服部さんが懐からすっと取り出したのは、黄金の刺繍が施された特製のシルク巾着袋!

 

中から現れたのは……なんと、美浦市街の24時間薬局で買い占めてきた、大量の新品の太田胃散(箱ごと)でございました!✨  

 

「ぼっちゃまのトレーナーであるタケシ様の胃の健康は、我がノーザンクラブの最優先事項。常に30箱の予備を常備しております……受け取りなされ✨」

 

  「準備が良すぎるだろ!! ていうか胃薬を常備する前にエルの態度をどうにかしろよッ!!」

 

タケシは叫びながらも、喉の激痛に耐えかねて箱をバリッと破り、粉末の胃薬を手のひらに開けると、白湯を求める余裕もなく一気に喉の奥へと押し込みました!

 

ゴクッ……! ゴクッ……! ゲホッゲホッ!!  

 

   「うぐっ……! かはっ……! 白湯が……白湯が欲しい……ッ! 誰か温かい白湯を……ッ!!」

 

膝から崩れ落ち、廊下の床に突っ突っ伏してむせるタケシ!

 

その横で、勝己代表が力強く頷き、宿舎長がバケツの涙を拭いながら熱く叫びます!

 

  「見ろ服部! タケシも胃薬を飲み干して、代表の前で秋の雪辱に向けた『太田胃散の誓い』を立てておるぞッ! ワシらも負けていられんッ! エルのために夜食の高級すっぽん鍋を煮込むぞーーッ!!」

 

   「だーかーらー! こいつすっぽん鍋なんて絶対食わないだろ!! イチゴ大福が食べたいだけなんだよーーーッ!!(床を叩きながら絶叫)」

 

勝己代表に見守られながら、夜の美浦校・鹿野宿舎にタケシの悲痛な叫びと宿舎長のバケツジャバババ音がいつまでも響き渡るのでございました……。

 

当のエルフォーリオ様は、特注クッションの温もりに包まれ、明日届く予定の「特撰イチゴ大福」の妄想に胸を躍らせながら、再び深ーい眠りへと落ちていくのでございます……  ✨

 

 (……ふぁ〜ぁ、明日のイチゴ大福、あんこは白あんがいいなぁ……  みずみずしい✨)

 

美しき貴公子の気高くも呆れるほど怠惰な物語は、秋の更なる波乱へと続いていくのでございます……  ✨   ✨




第12話をお読みいただき、本当にありがとうございました!✨
勝己代表まで登場して『あえて勝利を譲り世代の未来を紡いだ真の王者』と大勘違い!
「明日のおやつはイチゴ大福ね」というエルの呟きすら『明日の新たなる一歩(イチゴ大福)』と超訳され、服部さんから手渡された【常備30箱の太田胃散】を水なしで飲み干すタケシの不憫さに笑っていただけたら幸いです!笑
「勝己代表の妄想翻訳が面白すぎる!」「タケシに誰か白湯をあげて……!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひページ下部から【評価(★★★★★)】や【ブックマーク登録】をポチッと押していただけると凄く励みになります!  ✨
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