✨『美しき天才、エルフォーリオ 〜優雅なる貴公子〜』✨ 作:Riho
第6話は、ついに迎えた運命のデビューセレクション!
超満員のスタンドを余所に、控え室の特注ソファで「だるい、帰りたい」と絶望するエルぼっちゃま。
服部さんの超絶覇王翻訳と、プール一杯分の涙を流す鹿野宿舎長、そしてファンファーレ前から胃薬を飲むタケシの苦難をどうぞお楽しみください! ️✨
本日もまた、ひとつの美しくも奇妙な伝説のページが開こうとしております✨✨
サラブレッド育成学園(サラ学)美浦校・鹿野宿舎に入寮してから数ヶ月——。
厳しい鍛錬(※エル本人はただ部屋でゴロゴロしていただけ)の日々を経て、ついに我らがエルフォーリオが本格的な実戦の場へと挑む、運命のデビューセレクションの日がやってまいりました! ✨
北の大地で秘められていた「大器」が、いよいよ学園のメインコースでお披露目されるとあって、メインスタンドは早朝の開門と同時に超満員!
観覧席を隙間なく埋め尽くしたのは、全国から駆けつけた熱烈なファン、学園の誇る華やかきレディたち、そして鋭い眼光で未来のダイヤの原石を吟味するプロのスカウト陣!
熱気と興奮はまさに飽和状態となり、空気がビリビリと振動するほどの地鳴りのようなざわめきが広がっておりました!
「おい見ろ……! あの名門・鹿野宿舎の横断幕が掲げられたぞ……!」
「ついに……あのノーザンクラブの最高傑作、美しき天才エルフォーリオ様がこのトラックに降り立たれるのか……っ!?」
「噂では、その圧倒的な美貌と威厳を前にしただけで息を呑み、腰を抜かす者すらいるとか……っ!」
誰もが、孤高の天才が解き放たれる歴史的瞬間を、生唾を呑み込みながら固唾を呑んで待ちわびておりました……ゴクリ……!
——ですが、みなさま☘️
出走直前、地下深くの VIP 控え室で何が起きていたか、わたくしたちは知っておかねばならないのでございます……!
防音壁で完全に遮断された鹿野宿舎専用の最高級控え室——。
そこには、外界の狂乱や地鳴りのような歓声などどこ吹く風とばかりに、特注の最高級イタリア製革張りソファに完璧なフォームで深く沈み込み、特注シルククッションをぎゅっと抱きかかえながら、半目で天井のシャンデリアを見上げているエルフォーリオの姿がございました……! ️✨
エアコンからは24度設定の心地よい微風が吹き抜け、室内に漂うのは最高級アロマの甘い香り。
(……あぁ、実に素晴らしい沈み心地だね……☁️ クッションの角度も、この革のしなやかさも完璧だ。というか……なんでこんな天国のような部屋から出て、外の蒸し暑いトラックに行かなきゃいけないんだろう……? 自分の足で立ち上がるという意味が、僕の美学のどこを探しても見当たらないよ……)
そう、我らが貴公子は「控え室の快適さ」に完全に心を奪われ、一歩たりとも立ち上がりたくなかったのでございます!あくびふぁ〜あ……!
「……おい!! エルフォーリオ!! もうすぐメインコースへの入場だぞ!! 頼むから専用のレーシングウェアを着て自分の足で立ち上がってくれ……っ!!」
専任トレーナーのタケシが、額から滝のような冷や汗を流し、青ざめた必死の形相で声を張り上げます!
ですが、我らが貴公子は「ん……☁️」と微かな桃色の吐息を漏らし、さらに深くソファの深淵へと沈み込むだけ!指先ひとつ、まつ毛一筋たりとも動かす気配すらございません!
その時でございます!⏰✨
「おのれタケシ様! ぼっちゃまの尊き集中を乱すとは何事ですかーっ!! 」
両手に最高級シルクの汗拭きタオルと、氷でキリッと冷やした超高級ミネラルウォーターを抱えた執事の服部さんが、激怒しながら割って入ってまいりました!
そして、じいはソファの脇に恭しく膝を折り、耳元へスッと顔を近づけたのでございます ♂️
「エルぼっちゃま……! おいたわしい……! このような雑音と泥に満ちた下界で、走らねばならぬお心が痛みますな……っ! 」
すると、心底めんどくさくなったエルフォーリオは、美しい瞳をわずかに薄開け、じいにしか聞こえない絹のように滑らかな小さな「王子様ボイス」でボソッと囁いたのでございます ✨
「……じい。だるい……。お家に帰りたいな……。このソファごと寮に運んでおくれ…… 」
ですが……じいのお耳は、あいにく本日も絶好調に遠かったのでございます
ぼっちゃまの消え入るような甘い怠惰の呟きは、じいのお耳を通過した瞬間、恐ろしいまでの覇王的超訳を引き起こしてしまいました!
「『この汚れたトラックを我が走りで平定し、真の王者の威光を示そう』……とおっしゃっている……っ!! なんと気高き覇気! なんという圧倒的な決意の言葉でございますかーーっ!! ✨」
じいは感動の涙をボロボロと流しながら崩れ落ち、オレンジ色のハンカチで顔を覆いながらタケシの胸をバシバシと激しく叩きました!
「お聞きになりましたかタケシ様ッ!? ぼっちゃまは今、この学園のトラックすべてを我が足元にひれ伏せさせると宣言されたのです! さあ、出撃の準備をーーッ!! ✨」
「へ……!? どこをどう解釈したらそうなるんだよじいさん!! 今あきらかに『だるい、帰りたい』って顔してただろ!! 捏造もいい加減にしろ!!」
タケシが必死の形相でツッコミを入れますが、じいは全く聞いておりません!
じいは感動に打ち震えながら、半目でフリーズしているエルフォーリオを恭しくソファから抱き起こし、強引に出走用ゲートへと促したのでございます!
自由を奪われ、トボトボと連れていかれるエルフォーリオ——。
そして——ついに、太陽の光が降り注ぐメインコースへと姿を現したエルフォーリオ——!✨
「キャァァァァァーッ!! エルフォーリオ様よーっ!!✨ ✨」
「なんて美しく幻想的な佇まい……! 立ち姿だけで画集ができるわ……っ!!」
一歩足を踏み入れた瞬間、メインスタンドから割れんばかりの爆発的な黄色い悲鳴が上がります!
しかし、エルの心の中はまさに絶望の色に染まっておりました。
(……うわぁ、日差しが眩しすぎるよ……。靴に砂が入るのも嫌だし、汗をかくのもベタついて最低だ……。早く……一刻も早く走り終えて、あの涼しい控え室のソファに戻ろう……それだけを考えて全速力で帰ろう……)
その時、VIP視察席で見守っていた鹿野宿舎長が、激しく涙を流しながらハンカチをギュッと絞り上げました!
「見ろ……あの研ぎ澄まされた集中力を……っ! 周囲の数万の歓声すら耳に入らぬほど、己の内なる走りと深く対話しておる……! ワシは……ワシは感動したぞーーっ!! ドラム缶二杯分どころか、プール一杯分の涙!!」
さらに、後方で腕を組みながら見守る勝己代表も深々と頷きます。
「うむ……素晴らしい『静』の闘志だ。無駄な昂ぶりや浮ついた気配を一切見せず、ただ冷徹に勝利という結果だけを見据えている。まさに我がクラブの最高傑作……!✨」
「だから違うって!! ただ怠くて一刻も早く帰りたがってるだけなんだってば!! 」
タケシの魂の叫びが、大観声の渦の中に見事に掻き消されていきます!
完璧な美貌でトラックに佇みながら、ただ「早く終わらせてソファにダイブしたい」とだけ切望するエルフォーリオ。
ズキッ……!!⚡️
そのギャップと周囲の異常な過熱ぶりに、タケシのみぞおちに破壊的な激痛が走りました!
「ぐぬぬ……っ!! デビュー戦のファンファーレが鳴る前から、俺の胃が完全崩壊しそうだ……っ!! 」
タケシは震える手でポケットから白くて丸い錠剤を取り出し、水を探す間もなく生唾とともに喉の奥へ押し込みました……!ゴクッ……!ゴクッ……!
こうして、本人の「だるい」という切実な本音を完全に置き去りにしたまま、美しき怠惰の貴公子による伝説のデビュー戦のファンファーレが、高らかに鳴り響いたのでございます…… ✨
第6話をお読みいただき、本当にありがとうございました!✨
「早く終わらせてソファに戻りたい」だけのために全速力で走ろうとするエルフォーリオと、それを圧倒的な集中力と勘違いする大人たちのギャップを楽しんでいただけたら嬉しいです!笑
「面白かった!」「タケシの胃を応援したい!」と思っていただけたら、ぜひページ下部から【評価(★★★★★)】や【ブックマーク登録】をポチッと押していただけると励みになります! ✨
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