​ ✨『美しき天才、エルフォーリオ 〜優雅なる貴公子〜』✨ ​    作:Riho

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第8話は、無傷の2連勝をかけた【百日草メモリアル・ジュニアS】!
秋風の寒さに凍え、「ソファーが硬くて腰が痛い」と文句を言うエルぼっちゃま。
それを『静寂の中の悟り』と超訳する服部さんと、人混みを避けて最速退勤するためだけに大外から爆走する貴公子の姿、そして早くもカウント「2」に進むタケシの胃薬の行方をどうぞお楽しみください! ☀️ ✨


 第8話:『百日草メモリアルと、静寂なる決意』 ☀️ ✨

みなさん、突然ではございますが……「真の美しさ」というものが、時に「圧倒的な怠惰」から生まれる瞬間をご覧になったことはございますでしょうか……?✨✨ 

 

無傷の2連勝をかけた次なる決戦の舞台は、秋の深まりを見せる東京メインスタジアム——【百日草メモリアル・ジュニアS】!! ✨

 

冷たくなってきた秋風を完全に吹き飛ばすかのように、メインスタンドは朝早くから駆けつけた観客で足の踏み場もないほどの超満員!  

 

「美しき貴公子」の2戦目を目に焼き付けようとするファンたちの熱気で、場内全体が地鳴りのようなざわめきに包まれておりました! ✨

 

ですが、パドックにエルフォーリオ様が姿を現した瞬間——スタジアムの空気が一変いたしました! グラウンド騒然…!

 

「……っ!? なんだこの空気感は……!?」  

 

「誰も声を張れない……っ!? まるで格式高いコンサートホールみたいだ……!」 ✨

 

いつもなら黄色い声援が飛び交うパドックが、まるで高級美術館のように静まり返ります。ファンも、ライバル陣営も、息を呑んでその美しい姿を注視するほかございません……! ️✨

 

最前列のファンは感涙を浮かべながら、小声で囁き合っております……!  

 

「すごい……手を振るのも遠慮しちゃう……。あの無駄のない凛とした走り、まるで計算された建築美みたい……っ! ️✨」

 

「見て、あの伏せられた美しい睫毛……! 秋の木漏れ日を浴びて、神様みたいにきれい……! ✨」

 

見学エリアの学園のレディたちも、ハンカチをギュッと握りしめて息を呑んでおります……! 

 

「いつも荒っぽいサラメンたちが、大人しく見守ってる……。彼がいるだけで、このレース場が優雅なサロンになっちゃうのね……!☕️ 」

 

コースの状態をチェックしていたベテラン解説者すらも、マイクを持つ手を震わせて唸りました! ️ 

 

「素晴らしい……! あの重心のブレなさを見ろ。秋風の抵抗すら完璧に受け流し、自身のエネルギーに変えているかのような美しい走りだ……! まさに究極のアスリートだッ!!」 

 

——ですが、皆様 ✨

 

周囲が勝手に静寂の芸術に酔いしれているその瞬間……エルフォーリオ様の頭の中を支配していたのは、あまりにも切実な心の叫びでございました……!   

 

(……寒ッ!! なんで急にこんな風が冷たいんだい……!? パドックって日陰が多くて寒すぎるよ……! お肌が乾燥しちゃうじゃないか……。みんななんでそんなにじっと僕を見てるの……? 早く温かい控え室に戻って、ブランケットにくるまりたいのに……。あぁ、だるい、早く歩き終わらないかな……☁️ ️)

 

そう、皆様が息を呑んでいた「神秘的な静寂」の正体は、単に「寒くて怠くて言葉も出ない貴公子」の素顔に過ぎなかったのでございます!   

 

パドックを終え、本番直前の控え室へと戻られたエルフォーリオ様。

 

ここで、恐ろしい悲劇(?)が彼を襲うこととなります!

 

控え室の特注ソファーに深々と沈み込み、すでに半分魂が抜けかけているエルフォーリオ様……ぽつん…… ☁️

 

(……だるいなぁ。今日のソファー、クッションが少し硬い気がするよ……。僕の繊細な腰が痛くなっちゃうじゃないか……。東京メインスタジアムの備品担当者は何を考えてるんだい……? 早く僕の部屋のフワフワなベッドに帰りたいよ…… )

 

そう、出走15分前だというのに、闘志を燃やすどころか「ソファーの硬さ」に文句を言い、二度寝の体勢に入ろうとしていただけだったのでございます!ふぁ〜あ……!  

 

その時でございます!⏰✨

 

「エルぼっちゃまーーっ!  滝涙ッ!!」

 

両手に最高級シルクのフワフワ抱き枕を抱えた執事の服部さんが、大粒の涙を流しながら滑り込んでまいりました!

 

「おいたわしい……! こんな硬いソファーでぼっちゃまの尊い腰をお痛めになるとは……っ!   」

 

すると、エルフォーリオ様は服部さんにしか聞こえないボソッとした「王子様ボイス」で耳打ちされました……ささやきボイス…… ✨

 

「……じい。腰が痛いんだ。サッと走って、早く僕の部屋のベッドへ帰ろうね…… 」

 

ですが……服部さんの耳は、本日も絶好調に難聴&幻聴モードを発動しておりました!!  

 

「『この程度のトラックの硬さ、我が覇道の足枷にもならぬ。無駄な思考を削ぎ落とし、静寂の中で秋の風を感じているのだ』……とおっしゃっている……っ!! なんと神々しい悟りの境地ーーっ!! ✨ああ、我が主の神々しさよ……ッ!」

 

服部さんは感動のあまり胸の前で固く両手を組み、震える吐息を漏らしながら、傍らにいた専任トレーナー・タケシの肩をガシッと掴んで激しく揺さぶりました!ガシガシッ! 肩外れるッ!!

 

「お聞きになりましたかタケシ様ッ!? ぼっちゃまは今、静寂の中で勝利を確信されたのです! さあ、至高の戴冠式への準備をーーッ!! ✨」

 

「言ってねえよ!! 絶対『腰痛いから早く帰る』って言ってたろ!! 捏造通訳もいい加減にしろ!!  」

 

タケシが必死の形相でツッコミを入れますが、服部さんは一切耳に入っていない様子で「ああ……感動です……っ!」と己の涙の海に浸り続けております!

 

一方、VIP視察席ではノーザンクラブの勝己代表が、ワイングラスを傾けながら優雅に双眼鏡を覗き込んでおりました…… ✨

 

「フッ……見ろ。1番人気のシルヴァーネビュラや、不敵に笑うヘヴンズレインのプレッシャーすら気にも留めない、完璧な『静』の境地。無駄なエネルギーを1ミリも使わない、これぞ効率化を極めた王者の威厳よ……!」

 

(※実際は「早く終わらせて車の中でイチゴタルト食べたいな」としか考えておりません。)

 

場面は、本番直前の発走準備エリアへと移ります!! ✨

 

出走を控えたライバルたちが荒い息を吐き、緊張感が漂う中、有力サラメンのシルヴァーネビュラやヘヴンズレインたちが鋭い眼光で牽制し合っております!バチバチッ!!⚡️⚡️

 

「ふん……噂のエルフォーリオか。あの気圧されるようなオーラ……だが、この東京の広いコースならば俺の走りが勝る! 蹴散らしてやるぞ! 」

 

ライバルたちが勝手に熱く対抗心を燃やす中、専用のレーシングウェアに身を包んだエルフォーリオ様は、ただ半目でポツンと立ち尽くしておりました……ぽつん…… ☁️

 

(……はぁ。スタートの枠の中って狭くて暗くて居心地が悪いんだよね……狭小物件だよ……。サッと入って、サッと走って、サッと帰ろう……それだけを考えて走ろう……退勤ダッシュ…… )

 

がしゃん……! がしゃん……! ✨

 

シグナルが点滅し、一人、また一人とゲートへと収まっていきます。

 

ライバルのシルヴァーネビュラ、そしてヘヴンズレイン……最後に我らがエルフォーリオ様が、静かにゲートへと吸い込まれていきました。

 

場内が一瞬で静まり返り、ピンと張り詰めた緊迫感が全スタジアムを支配いたします……ゴクリ……。

 

『バンッーーーーーッ!!!』    

 

ゲートが開いた瞬間、地鳴りのような大歓声!きゃああああっ!! ✨

 

各選手が一斉に飛び出します!

 

スタート直後、好スタートを切った1番人気のシルヴァーネビュラがスーッと絶好の位置につけ、ペースを握ります。

 

すぐ後ろには激しい気性を覗かせるヘヴンズレインがぴったり追走!

 

一方、エルフォーリオ様は——またしても集団の後方、ちょうど中団の影に隠れるようにしてトボトボ追走!トボトボ…… 

 

「おおっと! 注目のエルフォーリオは後方5番手付近からの追走! じっくりと前方を見極め、牙を研いでおります!かっこいい〜ッ!」 ✨

 

実況の熱い声が響き渡りますが、手すりを握りしめるタケシは青ざめて叫びました!ガタガタガタ!!

 

「見極めてるんじゃねぇ!! ただ単に走るのが面倒で後ろにいるだけだろあれ!!  」

 

その通りでございます。エルの心の中は……

 

(……はぁ、やっぱり東京のコースは広くて走るのが面倒だなぁ……。前の人たちが蹴り上げる土や芝が飛んできたら服が汚れて最低だ……。少し離れて走ろう……)

 

大きなカーブを抜け、レースが大きく動き始めます! ✨

 

ゆったりとしたペースに痺れを切らしたライバルたちが、徐々にポジションを上げようと仕掛け始める中、運命の最終直線へ!

 

直線コースに入った瞬間、風を切る足音がスタジアム中に轟きます!

 

残り400mの標識を通過!  

 

ここで真っ先に仕掛けたのは、力強いフォームで抜け出してきたライバルのヘヴンズレイン!

 

「ここだ! このまま全員引き離して勝つぞーッ!」と必死の形相でスパートをかけます!

 

その時でございます!

 

後方を走っていたエルフォーリオ様は、前方の混雑した状況を見てそっと眉をひそめられました……ピクッ⚡️

 

(……あぁ、前の人たちが密集して走っていてすごく邪魔だな……。このまま後ろにいたら、あの人たちがバテた時に僕まで巻き込まれてブレーキを踏む羽目になる……。それに、ゴールした後に他の選手たちと混雑して帰るのが遅くなるのも、人に囲まれるのも僕は嫌なんだ……。一番早く、誰にも邪魔されずに控え室へ帰れるルートは……誰もいない一番外側の広いレーンをスーッと通り抜けることだよ ✨)

 

「……僕の邪魔をしないでくれるかい……?」 ✨

 

一切の無駄を削ぎ落とした流麗で美しいフォームのまま、エルフォーリオ様は大外へとスッと車線を変更!

 

そこから解き放たれたのは、まるで重力すら無視したかのような滑らかで爆発的なトップスピード!! ✨ 

 

まるで氷の上を滑走するかのような完璧な走り!スーッ……⛸️✨

 

「伸びてきたぁぁぁぁッ!! エルフォーリオだッ! 人波を避けるように大外から異次元のスピード! まるで羽が生えたような軽快な走りだぁぁぁッ!!」 ️ 

 

観客席から割れんばかりの絶叫と悲鳴が上がります!キャァァァァッ!!  

 

「な、なんだあの走りは……!? 力みが一切ないのに、どんどん前を引き離していく……っ!!」

 

混雑を嫌うあまり「誰もいない一番外側」を優雅に通り抜けたエルフォーリオ様は、1番人気のシルヴァーネビュラも、粘るヘヴンズレインもあっさり交わし去り、圧倒的な差をつけて堂々の1着でゴールイン!!無傷の2連勝を飾られましたッ!!  ✨

 

ゴォォォォォールッ!!!    ✨

 

1着で駆け抜けた瞬間、エルフォーリオ様は勝利の余韻に浸ることもなく、減速しながら真っ直ぐに選手控室へ続く地下通路へと足早に消えていかれました!スタスタ…… 

 

「キャァァァァァーッ!! エルフォーリオ様ぁぁぁッ!!✨ ✨すきーーーッ!!」

 

「勝ち誇ることもなく、静かに引き上げるあの孤高の美学……! 痺れるわぁッ!!  」

 

スタンドのファンの女の子たちが大歓声で歓喜の涙を流し、見学エリアのレディたちもその圧倒的な美技にただただ感嘆の息を漏らします!✨

 

テレビの前で応援していた鹿野宿舎長は——!!

 

「ううっ……! 見たかタケシ……! 『混雑を避け、自らの美学を貫く』というぼっちゃまの気高き意志(※大勘違い)が、あの完璧な大外強襲を生んだのだ!! ワシは……ワシは感動したーーッ!!  (マイバケツに涙ジャババババ! )」

 

オレンジ色のハンカチを絞りながら、バケツに涙のプールを作る宿舎長!

 

「だから違うって!! ただ混雑が嫌で人混みを避けて早く帰りたかっただけなんだってば!!  どこに意志があるんだよ!!」

 

タケシの魂のツッコミが大歓声の渦の中にかき消されていきます! ✨

 

一方、検量室の奥、特注シルク毛布にくるまりながら、服部さんに高級イチゴタルトを口へ運ばせるエルフォーリオ様 ✨

 

(…タケシ、次の東京メインスタジアムのソファー、もっとフワフワなやつに変えておいてね…… )

 

ズキッ……!!⚡️ キリキリ……!!

 

勝利の余韻に沸き立つ陣営の中で、ただ一人、タケシだけがみぞおちを押さえてうずくまりました!胃液が出そう!!

 

「ぐはっ……! 2連勝のめでたい裏で……俺の胃薬(太田胃散)のカウントが早くも『2』になった……ッ!  ううっ……!!」

 

タケシは震える手でポケットから2錠目の白い錠剤を取り出し、水なしで喉の奥へ押し込むのでございました……!ゴクッ……!ゴクッ……!  

 

こうして、本人の「ソファーが硬い」という切実なワガママを完全に置き去りにしたまま、美しき怠惰の貴公子による無傷の伝説は続いていくのでございます……  ✨   




第8話をお読みいただき、本当にありがとうございました!✨
人混みに巻き込まれず一番早く控え室へ帰るためだけに大外から豪脚を繰り出し、堂々の2連勝を飾ったエルフォーリオ!
勝利後すぐにイチゴタルトを食べながらワガママを言い、またしても胃を痛めるタケシの奮闘も楽しんでいただけたら嬉しいです!笑
「面白かった!」「2連勝おめでとう!」「タケシの胃薬が心配!」と思っていただけたら、ぜひページ下部から【評価(★★★★★)】や【ブックマーク登録】をポチッと押していただけると励みになります!  ✨
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