もともとの構想では 事件→ルールが増える という繰り返しの作品になる予定でした。
かなり長いので二分しました。
錬金術師三大禁則
本書は、錬金術師に適用される禁則のうち、特に重大かつ厳格に禁止される三禁則を抜粋し、別冊として収録したものである。
本書に収録されていない禁止事項、遵守事項および細則については、錬金術師服務規程その他関係法令の定めるところによる。
なお、本書に収録されていないことは、当該行為が許可されていることを意味しない。
人体錬成禁止令
一、人を作るべからず。
二、死者を材料として人を作ることも、前項に同じ。
三、動物を材料として人を作ることも禁ずる。
四、植物、菌類その他人以外の生物を材料として人を作ることも同様とする。
五、「人ではなく、人に極めてよく似た動物である」との主張は認めない。
六、へそが存在しないことを理由として人ではないとする理論は受け入れられない。
七、指紋がない、歯列が異なる、脈拍がない、呼吸をしない、睡眠を必要としないその他通常の人間と異なる特徴を有することも、人ではないことの根拠とはならない。
八、「人形が動いているだけである」との主張は聞き入れられない。
九、「人形に人間の記憶を与えただけである」との主張も同様とする。
十、「魂は入っていない」と錬成者が主張する場合であっても、会話し、意思を示し、自己を人間として認識するものについては、本令を適用する。
十一、人間の身体に腕を増やしてはならない。
十二、脚、眼、耳、口、指、臓器その他身体の一部を、本来の数を超えて増やすことも禁ずる。
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十三、「予備として付けただけである」との主張は認めない。
十四、身体の一部を一時的に増やし、使用後に元へ戻す場合も同様とする。
十五、人体の一部を別の位置へ増設してはならない。
十六、「機能上便利である」との理由は前項の例外とはならない。
十七、複数人の身体を融合し、一個体として機能させてはならない。
十八、「接続しただけで融合していない」との主張は認めない。
十九、人間の頭部を動物の身体に接続してはならない。
二十、動物の頭部を人間の身体に接続してはならない。
二十一、人間の脳、記憶、人格または魂を他の人間、動物、人工物その他へ移してはならない。
二十二、「移したのであって作ってはいない」との主張は抗弁とならない。
二十三、人間を二人以上に分割し、それぞれを独立して活動させてはならない。
二十四、「どちらが本物か決めてある」ことは前項の適用を妨げない。
二十五、人間を複製してはならない。
二十六、「複製ではなく、同一材料から同一構造を再現しただけである」との主張は認めない。
二十七、本人の幼少時、老年時その他異なる年齢の姿を別個の個体として錬成してはならない。
二十八、人間を一度分解した後、同一人物として再構成することも原則として禁ずる。
二十九、「元に戻しただけである」との主張は、人体を完全に分解した場合には認めない。
三十、身体の欠損を補う医療目的の錬成については、別に定める。
三十一、前項を理由として、必要のない器官を追加してはならない。
三十二、「治療のついでに性能を向上させた」との主張は認めない。
三十三、身長、筋力、視力その他身体能力を著しく変更する錬成については、人体改変規約則に従うこと。
三十四、「本人が希望した」ことのみをもって許可を要しないものとはしない。
三十五、人間に翼、鰓、角、外骨格その他通常人間に存在しない器官を付与してはならない。
三十六、「装飾である」と称する場合であっても、神経、血管その他人体と接続され機能するものは器官とみなす。
三十七、人体の内部に小型の人間を錬成してはならない。
三十八、人体の外部に人体と連結された小型の人間を錬成することも同様とする。
三十九、第三十七条および第三十八条が何を想定した条文であるかを役所へ問い合わせてはならない。
四十、人間を作るための錬成陣を作ってはならない。
四十一、人間を作る錬成陣を自動的に作成する錬成陣も禁ずる。
四十二、人間を作る錬金術師を作ってはならない。
四十三、前項の行為は、それ自体が人体錬成に該当するか否かにかかわらず禁ずる。
四十四、「人間を作るつもりはなく、結果として人間になった」との主張は、結果を予見し得た場合には認めない。
四十五、「作ったものが自ら人間を名乗り始めた」との主張についても同様とする。
四十六、本令にいう「人」には、通常人間として認識される外見、知性、人格または社会的行動のうち相当部分を備える存在を含む。
四十七、人か否かについて疑義がある場合、錬成を行う前に中央司令部へ照会すること。
四十八、錬成後に照会してはならない。
四十九、「禁止されるとは思わなかった」は抗弁とならない。
五十、「前例がない」は、これを許可する理由とはならない。
五十一、第四十六条の適用を免れることを目的として、人として認識される要素を意図的に分割し、複数の物体または生物に分散させてはならない。
五十二、「賢者の石が人の姿をしているだけ」「本体は別に存在する」「これは端末にすぎない」その他本体が別に存在するとの主張は、「人」に該当するか否かの判断に影響しない。
五十三、一個の人格を複数の身体に同時に存在させてはならない。
五十四、「同一人物が複数の身体を操作しているだけであり、人数が増えたわけではない」との主張は認めない。
五十五、複数の人格を一個の身体に収容してはならない。
五十六、「必要に応じて切り替えて使用するためのものである」との主張も同様とする。
五十七、人間と同等の知性、人格または社会的行動を備える存在について、その寿命を意図的に著しく短くすることにより「人ではない」と主張してはならない。
五十八、「三日しか生きない」「使用後に自然消滅する」その他存在期間が短いことは、第四十六条の判断に影響しない。
五十九、「物品から人間が発生したのであって、人間を直接作ったわけではない」との主張は認めない。
六十、豚、牛その他人間以外の生物を母体として、人間を出生させてはならない。
六十一、「母体として使用しただけであり、人体錬成ではない」との主張は認めない。
六十二、人間以外の生物の受精卵、胎児その他発生途中の個体を、人間へ変化させてはならない。
六十三、「途中までは豚だった」「出生時点では人間になっていた」その他変化の時期を理由とする抗弁は認めない。
六十四、人間を産む能力を有する動物を作ってはならない。
六十五、「一代限りである」「繁殖能力はない」ことは前項の適用を妨げない。
六十六、第60条から前条までの規定を回避するため、人間を産む生物を産む生物を作ってはならない。
六十七、本令に禁止されていない方法を発見した場合、それを実行してよいという意味には解さない。
六十八、前項に該当する方法を発見した者は、実行する前に中央司令部へ届け出ること。
六十九、実験結果を添えて届け出てはならない。また、実験結果自身に届け出をさせることも当然禁止する。
七十、「禁止されているか確認するため一度だけ試した」との主張は認めない。
貴金属錬成禁止令
一、金を作るべからず。
二、銀、銅、白金その他貴金属についても、前項に準ずる。また、未知の金属についても暫定的に貴金属として扱い、錬成を禁止する。
三、金を含有する液体、粉末、気体その他の物体を錬成し、これより容易に金を得られる状態にすることも、金を作ることとみなし、これを禁ずる。
四、金を直接錬成せずとも、加熱、濾過、蒸留、沈殿その他簡易な操作によって金を得られる物体を錬成してはならない。
五、金を錬成する装置を錬成してはならない。
六、金を錬成する装置を製造する装置を錬成してはならない。
七、金を錬成する錬成陣を錬成してはならない。
八、前項の錬成陣を描画、刻印、印刷その他の方法によって自動的に作成する器具についても同様とする。
九、「金」とは、その化学的組成の如何を問わず、通常の取引に際して行われる簡易な検査によって金と区別することが困難な物体を含む。
十、従って、金と外観、重量、比重、硬度その他の性質が酷似するが、実際には金ではない物体を錬成することも禁ずる。
十一、「偽金である旨を作成者が承知していた」ことは、前項の適用を妨げない。
十二、「売却する意思がなかった」ことも同様とする。
十三、「研究目的であった」ことも同様とする。ただし、中央司令部が特に許可した場合を除く。
十四、海水、河川水、鉱石、廃棄物、汚泥その他自然物または人工物から金を分離・濃縮する装置を錬成してはならない。
十五、前項の装置そのものを錬成せず、既存の容器、配管、地形その他を変形して同等の機能を持たせることも禁ずる。
十六、「金を作ったのではなく、もともと存在していた金を集めただけである」との主張は、前二項について抗弁とならない。
十七、金を含む鉱石から、不純物のみを錬成によって除去し、結果として金塊を得ることも金の錬成とみなす。
十八、金原子そのものを生成せず、他の元素を金へ転換する過程を補助する錬成も禁ずる。
十九、錬金術を用いて温度、圧力、電位その他の条件を整え、自然現象によって金が生成されるよう仕向けることも禁ずる。
二十、「自然にできたのであって錬成したのではない」との主張は、錬金術師がその条件を意図的に形成した場合には認めない。
二十一、他人に金を錬成させる目的で、材料、錬成陣、計算結果、手順その他必要な情報を錬成によって提供してはならない。
二十二、「自分では金を錬成していない」との主張は、前項の場合に抗弁とならない。
二十三、金を錬成する錬金術師を錬成してはならない。
二十四、前項は人体錬成禁止令とは別個に適用する。
二十五、本令にいう「錬成」には、分解、再構築、分離、濃縮、精製、変換、複製その他名称の如何を問わず、錬金術によって目的物を得る一切の行為を含む。
二十六、本令の各条項を回避することのみを目的として、新たな名称、単位、物質分類または錬成手順を考案してはならない。
二十七、回答が遅いことを理由として自己判断で錬成してはならない。
二十八、中央司令部職員を錬成によって脅迫し、許可を得てはならない。
二十九、許可書そのものを錬成してはならない。
三十、許可書を発行する職員を錬成してはならない。
三十一、「この条文には書いていない」は抗弁とならない。
国家錬金術師服務規程 忠誠義務に関する条項
一、国家錬金術師は軍に忠誠を誓うべし。
二、「国家に忠誠を誓ったのであって軍に忠誠を誓ったのではない」との主張は認めない。
三、「国民に忠誠を誓っているため軍の命令には従わない」との主張も同様とする。
四、国家錬金術師は、法令および正規の指揮系統に基づく軍の命令に従うべし。
五、命令の文言のみを形式的に履行し、その目的を故意に達成不能とする行為をもって命令に従ったものとしてはならない。
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六、「命令された場所には到着したが、何もするよう命じられていない」との抗弁は、命令の目的が明白である場合には認めない。
七、「直ちに来い」と命じられた場合、翌朝までに到着すればよいとの解釈は認めない。
八、命令書を錬成によって改変してはならない。
九、命令書の文字を消去し、「命令を受けていない」と主張してはならない。
十、伝令の靴を地面へ錬成して命令の到達を妨害してはならない。
十一、電話線、電信線、道路、鉄道その他通信または移動の手段を錬成によって断ち、「命令が届かなかった」と主張してはならない。
十二、上官を壁の向こう側へ錬成し、命令を聞こえなくしてはならない。
十三、上官の机を天井へ固定することは、命令拒否の正当な手段とは認めない。
十四、上官の制服、椅子、執務机その他を錬成することにより職務遂行を妨げてはならない。
十五、「攻撃したのではなく家具を変形させただけである」との主張は認めない。
十六、上官から不快な命令を受けたことを理由として、その階級章を別の階級章へ錬成してはならない。
十七、「階級が下になったので命令権がなくなった」との主張は聞き入れられない。
十八、自らの階級章を上位のものへ錬成してはならない。
十九、「能力的にはその階級に相当する」との主張は認めない。
二十、辞令を自ら錬成してはならない。
二十一、軍印を錬成してはならない。
二十二、軍印に酷似するが厳密には異なる印章についても、通常の確認で区別できないものは軍印とみなす。
二十三、上官の署名を錬成してはならない。
二十四、「筆跡を真似たのではなく紙の炭素配置を変更しただけ」との主張は認めない。
二十五、軍の命令を拒否する目的で、自らを一時的に石像、銅像、動物、器物その他命令を理解できない状態へ錬成してはならない。
二十六、「命令を受けた時点では人間ではなかった」との抗弁は認めない。
二十七、任務を回避する目的で、自らの記憶を消去してはならない。
二十八、任務を回避する目的で、命令を受けた記憶のみを選択的に消去することも同様とする。
二十九、他の国家錬金術師に自己の記憶を移し、「任務も移った」と主張してはならない。
三十、国家錬金術師資格は魂、記憶、肉体その他いずれか一部に付属するものではなく、当該人物に付属する。
三十一、従って肉体を交換しても服務義務は消滅しない。
三十二、身体の九割以上を機械鎧その他人工物へ置換した場合も同様とする。
三十三、「もはや人間ではないため軍との契約は失効した」との主張は認めない。
三十四、国家錬金術師は敵国、反乱軍、武装組織その他軍と敵対する勢力へ、自己の錬金術上の知識を故意に提供してはならない。
三十五、「学術交流である」と称した場合も、軍事利用が容易に予見されるときは同様とする。
三十六、軍施設の構造を詳細に記した模型を錬成し、敵対者へ贈与してはならない。
三十七、「模型であって地図ではない」との主張は認めない。
三十八、軍の機密文書を一度分解して暗記し、その後元へ戻した場合も閲覧したものとみなす。
三十九、「紙を開いていない」は抗弁とならない。
四十、命令に疑義がある場合、正規の手続により上官または所管部署へ確認すること。
四十一、疑義があることを理由に独自の解釈で正反対の行動を取ってはならない。
四十二、「結果的に軍の利益になった」との理由のみで、命令違反は免責されない。
四十三、もっとも、明白に違法な命令まで服従義務の対象とするものではない。
四十四、前項を理由として、自らが気に入らない命令をすべて違法と認定してはならない。
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四十五、「私の良心に反する」はそれのみをもって軍法上の違法命令を意味しない。
四十六、「軍上層部より自分の判断の方が正しい」と考えること自体は禁止しない。
四十七、ただし、それを理由として勝手に軍を指揮してはならない。
四十八、国家錬金術師は、軍に忠誠を誓った事実を忘れてはならない。
四十九、錬金術を用いて忘れた場合も同様とする。
五十、「忠誠を誓ったのは昨日の自分であり、今日の自分ではない」との主張は認めない。
五十一、本規程にいう「軍」とは、アメストリス国軍をいう。「軍」は人名ではない。
五十二、従って、「軍」と名付けた人間を作り、または既存の人間を「軍」と改名した上で、当該人物に忠誠を誓ってはならない。そもそも人を作ることは禁止されている。
五十三、「軍」は動物の個体名または種名でもない。
五十四、犬、猫、馬その他の動物に「軍」と名付け、当該動物に忠誠を誓ったことをもって、本規程上の忠誠義務を履行したものとはみなさない。
五十五、複数の動物をまとめて「軍」と呼称した場合も同様とする。
五十六、「軍」は物品、錬成物、兵器、車両その他の名称でもない。
五十七、銀時計、銅像、旗、机その他の物品に「軍」と名付け、これに忠誠を誓ってはならない。
五十八、「軍」は建物、土地、研究室、軍施設その他の場所の名称でもない。
五十九、自己の研究室を「軍」と命名し、当該研究室に忠誠を誓ったことをもって、本規程上の忠誠義務を履行したものとはみなさない。
六十、本規程にいう「軍」は組織の名称であり、アメストリス国内においては、国家の正規の軍事組織であるアメストリス国軍のみを指す。
六十一、「軍」と称する別の組織を設立し、これに忠誠を誓ってはならない。
六十二、自らを唯一の構成員、最高司令官および忠誠の対象とする「軍」を設立してはならない。
六十三、「「軍」が何を指すか明記されていなかった」との主張は、本条項を読んだ後は認めない。