刑罰の執行および死亡に関する条項
一、死刑とは、死刑の執行を一度受ければ、その後いかなる状態で活動しても罪が消滅することを意味しない。
二、死刑は、他の刑罰を代替するものではない。禁固刑の代わりに死刑にはならない。
三、死刑が定められていることは、当該行為をしないよう命じる趣旨であり、一度死亡することを条件として当該行為を許可する趣旨ではない。
四、死刑執行後に蘇生、再生、再構築または復活した者については、刑の執行が完了したか否かを改めて審査する。
五、「一度死んだので刑は受け終えた」との主張は、本人がその後も活動している場合には認めない。
六、心停止、呼吸停止または脳機能の一時的停止のみをもって、当然に死刑の執行が完了したものとはみなさない。
七、医師が死亡を確認したことは、その後の蘇生を合法化するものではない。死亡証明書を所持している場合も同様とする。
八、死亡証明書を錬成してはならない。
九、自らを死亡確認する医師を錬成してはならない。そもそも、人間を錬成することは禁止されている。また、自身が医師として自身の死亡確認をすることは認められない。
十、死刑執行の直前に、自らの記憶、人格、魂または意識を他の肉体、物体その他へ移してはならない。
十一、「処刑された肉体とは別の肉体である」との主張は認めない。
十二、死刑執行前に自己を複製し、複製の一体のみを処刑させてはならない。
十三、「処刑された方が本物であった」との主張は、残った者が同一の記憶および人格を有する場合には認めない。
十四、どちらが本物であるかを処刑の直前に抽選で決定してはならない。処刑された者が偽物であったと後から主張することも認めない。
十五、死刑執行に備えて、一定時間後に自動的に肉体を再構築する錬成陣を設置してはならない。
十六、死後に自動的に起動することを理由として、本人が錬成したものではないと主張してはならない。
十七、第三者へ蘇生を依頼してはならない。
十八、「依頼ではなく遺言である」との主張は認めない。
十九、蘇生を依頼された第三者は、遺言の有効性を検討する前に中央司令部へ届け出ること。
二十、死刑執行後に幽霊、魂、鎧、石像その他肉体を持たない状態で活動を継続してはならない。
二十一、「生き返ってはいない」との主張は、会話、移動または錬金術の行使が可能な場合には認めない。
二十二、壁をすり抜けられることは、釈放の理由にはならない。収監が物理的に困難であることも、刑が消滅したことを意味しない。
二十三、死後に軍施設へ出没し、刑務官を脅して釈放証明書を書かせてはならない。そもそも、そのような書類は存在しない。
二十四、死刑執行後、別人の身体を使用して活動を再開してはならない。
二十五、「身体の所有者が異なるため別人である」との主張は、人格が継続している場合には認めない。
二十六、身体の元の所有者にも人格が残っている場合、二人分の身元確認を行う。
二十七、身体を交代で使用して刑期を分担してはならない。「自分が表に出ていた時間は半分だけである」との主張は、刑期の短縮理由とはならない。
二十八、終身刑とは、現在使用している肉体の寿命が尽きるまでの刑を意味しない。
二十九、肉体を交換、若返り、再生または複製した場合も、刑は継続する。
三十、「第一の人生を終えたため、現在は第二の人生である」との主張は認めない。
三十一、転生を主張する者については、前世の記憶、人格および犯罪との連続性を調査する。
三十二、捜査を避ける目的で前世の記憶を部分的に消去してはならない。
三十三、「今世では善良に生きている」との事情は、量刑上考慮されることがあるが、前世の犯罪を当然に消滅させるものではない。
三十四、懲役百年の判決を受けた者が、不老化、石化、冷凍、時間停止その他の状態となった場合、刑期の算定は別に定める。
三十五、「国家の収容費を節約した」との主張は認めない。
三十六、処刑または収監を免れる目的で、人間以外の姿へ自己を錬成してはならない。また、収監を妨害する目的で自身を大量に複製し、集団で刑務所に押しかける行為は禁止する。そもそも、勝手に増えてはならない。
三十七、石、動物、植物、気体、液体または錬成陣となった場合も、本人である限り刑は継続する。
三十八、「現在は物品であるため、人を対象とする刑罰を執行できない」との主張は認めない。
三十九、刑務所の備品として登録されることをもって収監に代えてはならない。備品番号を付与された場合も、人格の存在が否定されるものではない。
四十、受刑者を材料として別の人間を錬成し、元の受刑者が消滅したと主張してはならない。
四十一、錬成後の者が犯罪の記憶を有しない場合も、直ちに無関係の第三者とはみなさない。
四十二、犯罪に関する記憶のみを別の物体へ移し、身体には無実の記憶だけを残してはならない。
四十三、刑は記憶に対して執行されるのではない。
四十四、死刑を言い渡された者は、自ら刑を執行してはならない。
四十五、「軍の手間を省いた」との主張は認めない。
四十六、自ら刑を執行した後に蘇生し、刑の終了を主張してはならない。
四十七、死刑執行の回数を競技、記録または研究成果として扱ってはならない。
四十八、複数回の死刑執行に耐えたことを理由として、恩赦を要求してはならない。
四十九、死刑を複数回執行する必要が生じた場合、二人以上で同時に受けてはならない。
五十、死刑のカウントは頭や体の特定の部位に帰着する者はない。よって、首を十個落とすことは十回の死刑執行とはみなさない。
五十一、死刑執行後に活動を再開した者については、処罰より先に拘束および本人確認を行うこと。
五十二、拘束担当者は、「どうせまた生き返る」ことを理由として必要以上に殺害してはならない。また、爆発をはじめとした、周囲を巻き込むような殺害方法は慎むこと。
五十三、本人も、「また生き返る」ことを理由として拘束に抵抗してはならない。
五十四、死亡、蘇生、複製、転生、憑依、人格移植その他通常の刑法が想定しない事情が生じた場合、勝手に当事者が自らに最も有利な解釈を選択してはならない。
五十五、当該事情について前例がない場合、刑が存在しないのではなく、中央司令部の判断を待つこと。
五十六、回答が遅いことを理由として脱獄してはならない。
五十七、「死者は脱獄できない」との主張は、本人が刑務所外を歩いている場合には認めない。
五十八、「死刑とは一回死ねば罪がなくなることではない」との説明を受けた後、確認のため実際に一度死んではならない。
五十九、抗命、禁則違反その他の行為について死刑が定められているのは、当該行為をしてはならないという趣旨であり、一度死ねば当該行為をしてよいという趣旨ではない。
六十、「万死に値する」とは、罪または責任が極めて重いことを表す比喩であり、一万回死亡すれば責任を免れるという意味ではない。
六十一、死刑の執行回数は、単純な足し算または引き算によって算定するものではない。
六十二、判決前に死亡した回数を、後に言い渡された死刑の執行回数から差し引くよう求めてはならない。
六十三、前項に基づき「以前に余分に死んでおいたため、今回はその分を差し引くべきである」との主張は認めない。
六十四、そもそも、前各項の解釈を問題とする事態に至らないよう、死刑に処されるような行為をしないよう努めること。
国家錬金術師資格に関する追加規定
一、国家錬金術師は、中央司令部の許可なく国家錬金術師を辞してはならない。
二、銀時計を返納したことのみをもって、国家錬金術師を辞したものとはみなさない。受付の机に置いて立ち去った場合も同様とする。
三、銀時計を紛失、破壊、売却、譲渡または錬成した場合も、国家錬金術師としての身分は消滅しない。銀時計そのものを原材料へ戻した場合についても同様とする。
四、「本日をもって辞める」「もう国家錬金術師ではない」その他これに類する宣言を口頭または書面で行ったことは、辞職の成立を意味しない。署名、押印または立会人の有無によって結論は変わらない。
五、辞表を提出した者は、正式な回答を受けるまで職務を放棄してはならない。
六、回答が遅いことを理由として、自ら辞職を承認してはならない。「三日間返事がなかったので黙示の承認と判断した」との主張は認めない。
七、辞職を承認する文書を錬成してはならない。用紙、印章、署名その他を完全に再現できる場合も同様とする。
八、辞職を承認する職員を錬成してはならない。当該職員が本人と同一の外見、記憶、筆跡および職務知識を有する場合も同様とする。
九、辞職を承認する権限を有する地位へ、自らを任命、昇進または一時的に配置してはならない。
十、辞職を承認する権限を有する者を全員異動、失踪、拘束その他の状態に置き、「承認する者がいなくなったため自動的に辞職が成立した」と主張してはならない。
十一、国家錬金術師でない者も、錬金術に関する法令、禁則その他一般に適用される規定に従わなければならない。
十二、「国家錬金術師ではない」ことは、人体錬成、貴金属錬成その他法令により禁じられた錬成を行う理由とはならない。「辞職してから行ったので服務規程違反ではない」との主張によって、他の違反が消滅することもない。
十三、国家錬金術師は、自らを複製し、複製された者へ自己の服務義務、当直、報告書の作成、査定への出席その他の職務を押し付けてはならない。
十四、「複製の方が優秀である」「本人より勤務態度がよい」「既に三か月誰にも気付かれていない」その他の事情は、本人の服務義務を消滅させない。
十五、複製された者についても、禁則その他錬金術に関する法令を破ってよいことにはならない。複製元と複製体のどちらが「本人」であるかについて争いがある場合も、とりあえず双方とも従うこと。
十六、複数の複製体がそれぞれ服務義務の一部を分担している場合であっても、それらを合計して一人分の勤務を履行したものとはみなさない。
十七、国家錬金術師が死亡した場合、その者の服務義務は原則として終了する。
十八、前項の適用を受ける目的で死亡を偽装してはならない。棺、死亡診断書、葬儀、墓碑その他を用意したことによって死亡の事実が生じるものではない。
十九、自らを一時的に心停止、仮死その他医学上または錬金術上死亡と判断され得る状態へ置き、前項の服務義務終了を適用させてはならない。
二十、死亡後に蘇生、再構築、魂の再定着、別の肉体への移行その他の方法により活動を再開した場合は、速やかに中央司令部へ届け出ること。
二十一、「一度死亡したため以前の契約は失効した」との主張は、同一の人格、記憶その他本人との連続性が認められる場合には、原則として認めない。肉体の構成元素がすべて入れ替わっていることのみをもって別人とはみなさない。
二十二、死亡届と復職届を同時に提出して事務手続を簡略化してはならない。死亡予定日時を記載した死亡届をあらかじめ提出することも認めない。
二十三、除名、資格停止、辞職、退役その他の理由により国家錬金術師でなくなった者も、一般法令および国家錬金術師以外にも適用される禁則から解放されるものではない。
二十四、服務義務の終了と、一般法令に従う義務の終了を混同してはならない。
二十五、「辞めれば人体錬成をしてよいと思っていた」「国家錬金術師だけが禁止されていると思っていた」その他これに類する主張は認めない。
二十六、「それなら国家錬金術師を辞める意味がない」との苦情は、辞職願とは別の窓口へ提出すること。
二十七、前項の説明を受けた上で「国家錬金術師になってもならなくても関係ない」と主張する者については、そのとおりである。
二十八、自己を複製した上で、複製された者を含む集団により国家錬金術師試験を受験してはならない。
二十九、「全員が別個に受験を申し込んだ」「それぞれが独立した個体である」その他の主張は、受験者が同一の記憶、人格または錬金術上の知識を共有する場合には認めない。
三十、中央司令部の処理能力を麻痺させる目的で、自己の複製、受験者の大量申請またはこれらに類する行為を行ってはならない。
三十一、前項の結果として国家錬金術師試験が中止、延期または簡略化された場合も、資格を得たものとはみなさない。
三十三、国家錬金術師は、中央司令部の許可なく自らの二つ名を変更し、または他の国家錬金術師の二つ名と同一もしくは紛らわしい名称を称してはならない。「炎」「愚連」「白金」等、既存の二つ名の文字を一部変更したものについても同様とし、当該名称との整合性を主張する目的で炎を発生させ、暴れ、白金を錬成する等の行為をした場合であっても、その二つ名の使用が認められるものではない。また、貴金属を大量に錬成してはならない。
錬金術師による公共の安全および秩序の確保に関する規則
本規定は、錬金術に従事するすべての者に共通して適用される、公共の安全及び秩序の維持に必要な禁止事項を定めるものである。
なお、本規定に掲げるもののうち、特に重大な危険を伴う行為については、別に定める「三禁則」によるものとする。また、職務上の義務、身分その他服務に関する事項については、「国家錬金術師服務規程」を参照すること。また、各種追加規定についても同時に確認すること。
本規定の禁止事項は、必要に応じて中央司令部職員により追加されることがあり、当該追加事項は、追加された時点をもって効力を生ずる。
なお、一般の法令により既に禁止されている行為が本規定にも重ねて記載されている理由についての質問は受け付けない。そのような記載を必要とするに至らしめた者は、自らの行為を顧み、深く反省すること。
第一章 一般則
一、錬金術師は、錬金術によって人の生命、身体または財産に危険を生じさせてはならない。
二、現実に損害が発生しなかった場合も、相当の危険を生じさせたときは前項を適用する。
三、「結果的に無事だった」との主張は認めない。「自分なら対処できた」との主張も同様とする。また、本規定にいう「結果的に無事だった」とは、当初から死傷者その他の被害が生じなかった場合をいい、発生した死傷者を治療、蘇生または再構築した結果、最終的に死傷者が存在しなくなった場合を含まない。
四、対処できる錬金術師が現場にいたことは、危険を生じさせてよい理由とはならない。当該錬金術師が危険を生じさせた本人である場合は、特に理由とはならない。
五、錬金術師は、公共の平穏を著しく害する錬成を行ってはならない。人を驚かせ、怯えさせ、混乱させ、避難させ、または危険が存在すると誤認させる錬成もこれに含む。
六、「驚かせるつもりはなかった」との主張は、その結果を容易に予見できた場合には認めない。「驚く方が悪い」との主張は認めない。「錬金術を知っていれば驚かなかった」との主張も同様とする。
七、住民が錬金術に慣れることを期待して、同一の騒動を繰り返してはならない。
八、錬金術師は、自己の管理できない錬成物を作ってはならない。
九、作成時に管理できていたことは、その後も管理できることを意味しない。
十、「普段はおとなしい」との主張は認めない。「命令すれば止まる」との設計は、命令が確実に伝達される場合に限り停止手段とみなす。
十一、錬成物が命令を拒否できる場合、前項の停止手段とはみなさない。説得、懇願、取引または餌によって停止させる方法は、非常停止手段とはみなさない。
十二、錬成物の機嫌が良いことを安全条件に含めてはならない。
十三、錬成物を公共の場所で使用する場合、その大きさ、数、速度、重量、強度および機能を必要最小限とすること。
十四、「作れる最大のもの」を必要な規模と解釈してはならない。
十五、大きさを制限された場合、数を増やして同等の効果を得てはならない。数を制限された場合、一体を大型化して同等の効果を得てはならない。
十六、大きさおよび数を制限された場合、密度、速度、硬度、攻撃性その他の性能を増加させてはならない。
十七、各個体が規制値を下回ることは、集団全体の危険性を考慮しない理由とはならない。
十八、総質量、総体積、占有面積、行動範囲または住民に与える恐怖のいずれかが相当な程度に達する場合、規模の名称にかかわらず許可を要する。「小型」「中型」「携帯型」「愛玩用」その他作成者が独自に付した名称は、規模の判断を左右しない。
十九、錬成物を作成した者は、その所在、状態および個数を把握しなければならない。
二十、「おおむね把握している」との報告は認めない。「だいたい全部戻ってきた」ことをもって回収完了としてはならない。
二十一、一体でも所在不明となった場合、その旨を速やかに届け出ること。識別番号を付していなかったことを理由として、自分の錬成物か判別できないと主張してはならない。
二十二、回収が困難であることを予見できた錬成物を屋外へ放してはならない。「いずれ自然に崩れる」との主張は、崩壊までの所在管理を不要としない。
二十三、錬成物の作成者は、その停止、解体、回収および原状回復の手段をあらかじめ用意すること。停止方法を当該錬成物自身にのみ記憶させてはならない。
二十四、作成者にしか使用できない停止方法を採用する場合、作成者が負傷、失神、死亡または逃亡した場合の代替手段を設けること。
二十五、軍による砲撃を通常の停止手段に含めてはならない。
第二章 無許可の錬成および事前告知
二十六、公道、広場、公園、駅、学校、病院その他不特定多数の者が利用する場所において、大規模な錬成を無断で行ってはならない。軍用地または研究施設内であっても、他の利用者に危険が及ぶ場合は同様とする。
二十七、「公共の場所であるとは知らなかった」との主張は、道路、駅、広場その他その用途が明らかな場所においては認めない。夜間その他一時的に利用者がいないことは、公共の場所でなくなったことを意味しない。午前三時の駅前広場も公共の場所である。
二十八、大規模な錬成を行う場合は、必要な立入制限、監視その他の安全措置を講じること。見張りを一人立たせたことのみをもって十分な措置とはみなさない。なお、その見張りが実験への参加を希望している場合、見張りとして数えてはならない。
二十九、人目を引き、または周辺住民に不安を与えるおそれのある錬成を行う場合は、必要に応じて周辺住民、施設管理者、軍、警察または消防へ事前に告知すること。窓から巨大な顔だけが見える場合も、人目を引く錬成に含む。
三十、前項の告知において、錬成物の大きさ、数、外観、音声その他の挙動を故意に過小に説明してはならない。「多少大きな物体が動きます」とのみ記載して全高二十メートルの人型錬成物を歩行させ、または「多少驚く可能性があります」とのみ記載して悲鳴を発する錬成物を放してはならない。なお、全高十九・九メートルであっても本項の趣旨は変わらない。
三十一、告知は、通常の注意をもって確認できる方法により行うこと。告知文の末尾その他容易に認識できない箇所へ小さく記載したことをもって、十分な告知とはみなさない。
三十二、「告知を読まなかった住民に責任がある」との主張は、告知の時期、場所、方法または内容が不適切であった場合には認めない。
三十三、住民が軍、警察、消防または聖職者へ通報することが容易に予見される錬成は、原則として事前許可を要する。
三十四、前項にかかわらず、実際に二つ以上の機関が出動した場合、当該錬成について人騒がせな行為でなかったか検証を受けなければならない。
三十五、三つ以上の機関が同時に出動した場合、特段の事情がない限り、当該錬成は人騒がせな行為であったものと推定する。
三十六、出動した機関同士が互いを事件関係者と誤認するに至った場合、作成者は理由のいかんを問わず直ちに錬成を停止し、安全確保に努めること。
三十七、「結果として合同訓練になった」「連携強化に貢献した」その他社会的利益が生じた旨の主張は、当初の無許可錬成を正当化する理由とはならない。後日、実際に合同訓練へ採用された場合も同様とする。
第三章 虚偽の災害、警報および異常事態
三十八、火災、洪水、地震、噴火、建物の崩壊、敵襲、暴動その他の災害または事件が発生したと誤認させる錬成を行ってはならない。
三十九、本物の炎に見えるが熱を持たない物体その他実害のない錬成物であっても、通常人が災害または事件の発生を誤認するおそれがある場合は、前項を適用する。「防災意識が高まった」との主張は認めない。
四十、本物の血液に見える液体を、公道、建物その他人目に触れる場所へ大量に流してはならない。「成分を調べれば血液ではないと分かる」との主張は認めない。また、本物の血液も当然禁止する。
四十一、川、池、井戸、噴水その他公共の用に供される水を、血液その他これに類するものと誤認される色に変えてはならない。事前に「血ではありません」と掲示した場合も、原則として許可を要する。
四十二、人の悲鳴、泣き声、助けを求める声、爆発音、銃声、警報音その他緊急事態の発生を疑わせる音を発する錬成物を、公共の場所に設置し、または放置してはならない。「試験中」と表示した場合も、周囲に当該音が届くときは同様とする。
四十三、特定の人物が接近した場合にのみ悲鳴その他前項の音を発する機能を錬成物に付与してはならない。
四十四、防犯を目的として前項に類する機能を設ける場合は、一般の通行人その他正当な理由をもって接近する者に反応しないことを、あらかじめ確認すること。
四十五、一般の通行人に反応した後、「泥棒のような歩き方だった」「挙動が怪しかった」その他錬成物の判断が正しかった旨を主張してはならない。
四十六、空中、地面、建物、水面その他住民から視認できる場所に、不吉な文字、巨大な錬成陣、顔、眼その他住民の不安を著しく招く図像を表示してはならない。
四十七、「世界の終わり」「審判の日」「門は開かれた」その他災害、超常現象または身の危険を示唆する文言を公共の場所へ表示してはならない。
四十八、実際に何かしらの門が開かれた場合は、表示その他によって住民へ知らせる前に、中央司令部へ報告すること。
四十九、前各項の文字または図像に、通行人の動きに応じて内容を書き換え、追跡し、または個別に呼びかける機能を付与してはならない。
五十、前項の機能に住民の氏名、住所、家族構成その他当該住民が「なぜそれを知っているのか」と疑問を抱く情報を使用してはならない。
五十一、前各項に違反した結果、住民の避難、通報、避難訓練の実施、防災用品の購入その他防災意識の向上が認められた場合であっても、当該結果をもって行為を正当化してはならない。
以下の第四章から第九章までについては、追記および改訂が重ねられ、分量が著しく増加したため、本規定から分離し、別冊として収録する。別冊への移行に伴い、項番号は改めて付し直すものとする。
このため、旧第五十二項から旧第三百五十項までに相当する事項については、本冊における旧項番号によらず、必ず別冊の最新版を確認すること。
第四章 地形、建築物および交通への干渉
第五章 天候および自然環境
第六章 移動、運搬および追跡を行う錬成物
第七章 自律錬成物および多数の錬成物
第八章 外観および人を驚かせる錬成物
第九章 その他の人型錬成物
第十章 事故発生後の措置
三百五十一、錬成物が脱走、暴走、増殖または行方不明となった場合、作成者は直ちに関係機関へ報告すること。「まだ事故ではない」「まだ誰にも危害を加えていない」その他自己の判断によって報告を遅らせてはならない。
三百五十二、脱走その他管理を離れた錬成物が善良に生活していることは、前項の報告義務または作成者の管理責任を消滅させない。住民が当該錬成物に名前を付け、飼育を開始した場合も同様とする。
三百五十三、前項の錬成物が就職、婚姻、公職への就任その他継続的な社会生活を開始した場合は、自己判断で回収、放置または管理終了として扱わず、中央司令部へ個別に照会すること。
三百五十四、事故後、錬成によって現場を修復し、または原状へ戻す場合は、その前に被害状況、事故原因その他必要な事項を記録しなければならない。
三百五十五、事故現場、証拠、記録その他事故の調査に必要な物を、事故の隠蔽その他不正な目的で錬成、改変または消去してはならない。関係者の記憶についても同様とする。
三百五十六、負傷者を治療したことを理由として負傷事故がなかったものとし、または破壊した建物を再構築したことを理由として物損がなかったものとして報告してはならない。
三百五十七、住民その他関係者の記憶を消去、改変その他の方法により失わせたことを理由として、人騒がせではなかった、通報されなかった、または事故そのものが存在しなかったと主張してはならない。「誰も覚えていない」は「何も起きなかった」と同義ではない。
三百五十八、本規定に具体的な定めのない錬成物であっても、その大きさ、数、速度、重量、鋭利さ、自律性、増殖能力、外観その他の事情により、人の生命、身体、財産または公共の平穏を害するおそれがある場合は、錬成前に中央司令部へ照会すること。
三百五十九、巨大でなく、少数であり、低速かつ軽量であることのみをもって安全な錬成物とはみなさない。その他の事情により明らかに人騒がせなものを作ってはならない。
三百六十、「条文上いずれの分類にも該当しない」との主張は認めない。既存の分類に収まらないほど異常な錬成物については、なおさら錬成前に中央司令部へ照会すること。
三百六十一、前項の照会に際して、判断に影響を与える特徴を意図的に省略してはならない。「聞かれなかった」ことは、省略する理由とはならない。特に、脚が百本ある場合は自ら申告すること。
三百六十二、本規定に新たな禁止事項を追加する必要を生じさせるような錬成は、原則として行ってはならない。