東方混迷郷   作:熊殺し

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さぁ、長らくお待たせしました。とうとう2人が決心をつけます。
R18指定にした方がいいか迷いますが、まぁ細かい事は気にせず書きました。ではどうぞ。


119話

散々な茶会を終えたその日の夜、咲夜は早めに湯に浸かった後、一人自室でクローゼットの中を見ながら唸り悩んでいた。

 

 

咲「うぅ~ん、勝負下着なんて言われても、そんなもの持っていないし・・・どうすれば・・・・」

 

 

今日の昼にレミリアとフランに言われた通り、下準備を進めようとするも、そんな事態に備えた下着など急に用意できるわけもなく、どれもパッとするようなものではなかった。

勝負下着と言われれば派手な色なのだろうが、彼女の持っているものではせいぜいライトブルーか薄いピンクだろうか。レースで飾られているわけでもなく、透き通っているわけでもない。故に彼女は頭を捻りながらかれこれ30分はその場に佇んでいた。

それゆえ彼女の足元には様々な色の下着が転がっていた。

 

 

咲「白は何だか子供っぽいし、水色はいつも履いているし、ピンク・・・はキャラに合ってない気がする・・・。となると黒かしら」

 

 

一度、上下揃って黒の下着を試着してみようと姿見の前でパジャマを脱ぐ。

シャツを上げた瞬間、ガチャリとドアが開く音がした。

素早くシャツを戻し振り向くと、その正体はレミリアだった。

 

 

咲「お嬢様!ノックぐらいしてから入ってください・・・」

 

レミ「貴女の様子を見に来たのよ。どう?順調に準備は進んでる?」

 

咲「いえ、まだこれといったものが見つからず・・・。とりあえず持っている中で一番それらしく見える黒にしようかと」

 

レミ「へぇ、どんなヤツか見せてみなさい」

 

 

咲夜がそっと黒の下着の上下を差し出すと、レミリアは手に取り広げてみる。しかし、見る目は少し渋そうであった。

 

 

レミ「あまり飾り気が無いのが気になるわね、黒だと確かに大人っぽいけどせめてレースかリボンみたいな装飾があるものの方がいいわね。そーいうの持ってないの?」

 

咲「こういう事の為に用意してあるものが無いので、見た目はシンプルなものしか・・・」

 

 

だからこんなに時間がかかっているのかとレミリアは理解出来た。そこで彼女は咲夜に助言をしてやる事にした。

 

 

レミ「いい咲夜?男はギャップに萌えるのよ」

 

咲「ギャップ」

 

レミ「そう、今回はギャップ萌えを狙うわ」

 

咲「ギャップ萌え」

 

 

聞いたことも無い言葉にポカンとするだけだが、要は見た目と内側の差異が生み出す可愛さという事らしい。

咲夜にはよくわからなかったが、男を堕とすならそれが最適とのこと。

 

 

レミ「というわけで、飾り気がないなら可愛い色の下着で勝負よ!」

 

 

結果、レミリアが落ちている様々な色から選んだものはピンクだった。

これなら大人っぽい咲夜の印象からの女の子を生み出せるギャップとなるらしい。

それを手渡すと、レミリアはこれ以上邪魔しては悪いと足早に部屋を去っていった。

急に物静かになった自室で、咲夜は胸の鼓動を抑えながら早速着替えを始めた。

 

 

_____________________

 

 

リュウトは、湯舟に浸かりながら考えていた。咲夜をどう誘うべきかどうか。

小悪魔からの助言とアイテムは貰ったものの、今まで経験が無い為どうもよくわからない。

 

 

リ「それらしく見せずに、最初は他の話題から入ることでそういう雰囲気に自然に持っていく・・・と言われてもなぁ」

 

 

小悪魔からの助言は、今のリュウトには難易度が高すぎた。素人がそんなテクニックをこなせる訳もなく、ただ緊張だけが彼の胸を圧し潰そうとしていた。

 

 

リ「小悪魔はああ言っていたが・・・本当に咲夜は嫌がらないだろうか・・・」

 

 

そもそも咲夜が誘っているかどうかも真意は定かではないのに、本当は小悪魔やパチュリーの言葉に踊らされているだけなのではないだろうか。結論の点け方が有耶無耶な分、不安も大きくなる。

もしこれで咲夜にその気が無く、身体目当てだったと愛想を突かれたら、そう考えただけでも恐ろしくなる。

 

 

リ「あぁくそっ!考えるだけ無駄か!」

 

 

頭を掻きむしって乱暴に湯舟から上がると、半ば自暴自棄になりながら風呂を出る。こうなりゃ男らしく当たって砕けてやる!

そういえば、小悪魔からもらった禁忌アイテムシリーズの使えるものと使えないものを分けておかなければ。

バスローブに着替え、ベッドの横に置かれた丸テーブルに鎮座するサキュバス御用達の品々の中には、使用方法すらよくわからないものも含まれていたりしていた。

 

 

リ「この輪っかの入った袋は・・・アレだよな。これは精力剤?なのか?怪しいクスリは止めておこう、俺にはまだ早い気がする・・・」

 

 

その他にもローションや大人のおもちゃなど、小悪魔は好きに使ってくれと色々渡してきていた。アホか。

この場に居ない彼女に一人で突っ込んでいると、入口をノックする音が聞こえた。

 

 

咲「あの・・・リュウトさん?宜しいでしょうか?」

 

リ「え?あ!咲夜か!?」

 

 

ノックの主はあろう事か咲夜だった。しかし今扉を開けるのは拙い。

 

 

リ「少し待ってくれ!ほんの少しだ!」

 

 

なんの用で来たのかは兎も角、今このブツを見られるのはいけない。

リュウトは急いでテーブルの上の物をベッドの下に突っ込み、目につかないように隠す。

 

 

リ「よし、一先ず此処に入れておけば安全か」

 

咲「あの・・・大丈夫ですか?」

 

リ「い!?あ、あぁ。今開ける!」

 

 

慌ててドアを開けるリュウト。その額には汗が滲み出ていた。

部屋の前で待っていた寝巻き姿の咲夜の手にはワインとグラスが二つあり、晩酌の誘いだと勘づいた。

しかし、いつもと様子が違うリュウトの反応に、咲夜は疑問を抱いた。

 

 

咲「まぁ、汗をかいていますわ。何やら慌てた御様子でしたし、どうかなさいましたか?」

 

リ「いや、これは・・・」

 

 

これは夜のアイテムを急いで隠した時の冷や汗だなんて口が裂けても言えないリュウトは頭をフル回転させて他の言い訳を口にする。

 

 

リ「さっき風呂に入ったばかりでな、暑かったから汗をかいたのかもしれん」

 

咲「そうでしたか。なら良かったですわ」

 

丁度バスローブを着ていた事が幸いし、違和感の無い言い分だ。出任せの様なものだったが、どうにか誤魔化せたようだ。

彼女を部屋に招き入れると、リュウトはドアを閉めてそっと咲夜に気づかれないよう鍵を掛ける。

 

※此処からはお互いに目的が同じ筈なのにも関わらず、何も知らずに牽制し合う二人の様子をご覧ください。

 

 

リ(咲夜、何故今日という日に君は自分から晩酌に誘ってくるんだ!)

 

 

まだ心の準備が出来ていない頃からゲームオーバーしたリュウトは、どうすればコンティニューに持ち込めるか考える。自分がハメられているとも知らずに。

咲夜は時間を止め、テーブルに置かれたグラスにワインを一瞬で注ぐ。何故時を止めて淹れたのか彼にはよくわからなかったが、そんな疑問を抱くよりも前にグラスを差し出された。

 

 

咲「さぁ、乾杯しましょう」

 

リ「ん?あ、あぁ・・・」

 

 

出されたグラスを受け取ると、彼女は笑顔で手に取ったグラスで乾杯し、口をつける。

何やら上機嫌な咲夜を見ていたら考え事が吹き飛んだリュウトは、ワインを一気に喉に流した。その瞬間、咲夜の口元がにやりと微笑んだ。

それはとても妖艶で、今にも手を伸ばしてしまいそうな程に甘美なものだった。

・・・というか、急に身体が熱くなってきた。

 

 

リ(おかしなことを考えすぎて頭がどうにかなったか。冷静になるんだ、これじゃあ発情期じゃないか)

 

 

心の中で自身の欲と格闘しながら冷静沈着を保とうとするが、これは明らかにおかしかった。

咲夜が3割り増しで色っぽく見えてしまう。

何かの見間違いかと思い目を擦ってもう一度見るが、やはり物凄くそそられてしまう。

 

 

咲(よし、作戦は成功したみたいですわ)

 

 

彼女はフランから貰った媚薬を一滴ワインに混入させたのだ。

絶対にバレないように能力まで使って入れたのだから落ち度は無い。しかし、彼がそれを一気に飲み干してしまうのは想定外であった。

案の定、強力すぎるそのクスリはリュウトの体の隅々までオスへと変貌させつつあった。

 

 

咲(まさか一気飲みしてしまうとは・・・徐々に慣らしていくつもりでしたのに・・・」

 

 

実はこの媚薬、咲夜は自分のグラスにも一滴混入させていた。

やはり彼女も一歩踏み出すためには媚薬の力に頼るしかなかったようなのだが、少しずつ飲んで体を慣らしていくつもりだったのに、これでは計画丸潰れだ。

だがこんなことで作戦を中断するつもりは彼女には無い。

 

 

咲「リュウトさんったら、顔が真っ赤ですわ。そんなに急がなくても夜は長いですわよ?」

 

リ「さ・・・咲夜・・・」

 

 

咲夜の身体も徐々に火照ってきており、気分が高揚していた。

そして、その時は唐突にやってきた。

 

 

リ「咲夜・・・すまん、もう限界だ!!!」

 

 

咲「え?きゃっ!?」

 

 

彼は持っていたグラスを投げ捨て、咲夜をベッドへと押し倒す。

驚いた彼女も不意にグラスを落とし、されるがままに押し倒された後、彼に強引に、しかし熱く唇を奪われる。

不思議と嫌な気分ではなかった。それどころか心地よささえ感じるほどだった。

二人の長い夜は、まだ始まったばかりである。

 

 

to be continue...




次でこの回は終了となります。どうなるかはお楽しみに。
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