東方混迷郷   作:熊殺し

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大変遅くなりました。120話どうぞ。


120話

二人の初夜から約三か月が経過した。あの一件以来、二人の距離は更に親近していた。

今まで以上に一緒に居る時間が増え、何処へ行くにも共に着いていく。そんな関係になりつつあった。

 

 

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~紅魔館キッチン~

 

 

咲「リュウトさん、皆さん分のサラダ作り終えました。コーンスープも完成ですわ」

 

リ「ありがとう、もうじきパンも焼けるぞ。コーヒーは今淹れる。

出来次第持っていくから先に並べておいてくれ」

 

咲「畏まりました」

 

 

今日も全員分の朝食を二人で準備し終え、カフェテリアのテーブルの定位置に料理を並べた直後に館の住人達が部屋に集まってきた。

 

 

レミ「おはよう、今日は洋食なのね」

 

咲「えぇ、たまには良いかと思いまして」

 

レミ「良いんじゃない?リュウトの作る和食も好きだけど、咲夜の料理は絶品だわ」

 

咲「お誉め頂き光栄ですわ」

 

 

レミリアを筆頭に全員が席に着き、今日もいつもと同じように朝食を摂る。他愛もない話を交えながらも日常の始まりを終え、食事が終われば二人で食器を片付ける。

時間は過ぎ、館の掃除を一通り終えると、少し休憩を挟んだ。

今朝淹れた紅茶を咲夜が二人分用意し、共用スペースに置かれた丸テーブルを囲む。

 

 

リ「すまないな、何から何まで。あとは俺に任せていいんだぞ?」

 

咲「いえ、好きでしている事なので気になさらないでください」

 

 

咲夜がカップに紅茶を注ぐと、上品な香りが湯気と共に立ち上る。彼女は一通りその香りを愉しむと、少し口に含んで茶葉の味を下で感じる。

 

 

咲「今日も良い味ですわ」

 

リ「どれどれ」

 

 

咲夜に続くようにリュウトも紅茶を飲む。和を好む彼も、最近紅茶の味がわかってきたのでそれが良いものだという事は理解出来た。

 

 

リ「うん、美味いな。流石咲夜だ」

 

咲「喜んで頂けて良かったです」

 

 

彼女はにっこりと微笑むと、再びカップに口をつけて喉を潤した。

 

 

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リ「じゃあ、行ってくる」

 

咲「はい、行ってらっしゃませ」

 

 

 

休憩も終わり、人里へ買い出しに向かうリュウトを門の前で見送ると、門番の美鈴が心配そうな顔で話掛けてきた。

 

 

美「咲夜さん、気の乱れが少々見えますが、大丈夫ですか?」

 

咲「え?どういう事?」

 

美「咲夜さんの中の気がいつもと違って乱れているんです。体調が優れなかったリしませんか?」

 

咲「いえ、特にそういったものは感じないわ」

 

美「おかしいですね・・・私の勘違いかな?」

 

咲「きっとそうよ。今だって元気なんだし、問題無いわ」

 

 

美鈴に心配要らないと微笑みかけると、咲夜は館の中へ戻っていった。しかし、どうにも美鈴は引っかかりのようなものを感じていた。

 

 

美「心配いらない・・・か。体調不良でもなさそうだし、もしかしたら体の変化が原因かも・・・」

 

 

美鈴の心配を他所に、咲夜は仕事へ戻ろうとしたその時、急激な吐き気が彼女を襲った。

 

 

咲「うっ!!!」

 

 

急いで手洗い場へ駆け込み、洗面器に吐瀉物をぶちまける。幸い朝食を摂ってから時間が経っていた為、酷いものでもなかったが、未だに気分は悪くすっきりしない。

 

 

咲「な・・・なんで急にこんな・・・うぇ、」

 

 

先程、美鈴が言っていた気の乱れが関係しているのだろうか。こうなった原因を少し考えてみると、関連しているか分からないが、一つだけ変わったことが起きていた。

 

 

咲「そういえば、最近生理が来てないような・・・」

 

 

女性特有といえばそうだが、個人によって少々の差があるらしいこの現象は、サイクルが決まっているはずだ。

それなのに最近になってから一向にその兆候が見られない。

 

 

咲「もしかしてこれって・・・」

 

 

 

翌日、咲夜はこっそり永遠亭へと足を運び、永琳を訪ねた。彼女に事情を説明すると、直ぐに診察が始まり、精密検査が行われた。

検査終了後、診察室で待つよう言われ、数分後に戻ってきた永琳から診断結果が出された。

 

 

永「貴女、妊娠してるわよ。だれとの間の子かは想像がつくけど」

 

咲「やっぱり・・・」

 

永「おめでとう、ここまでは順調に育ってきてるわよ。これからは過度な運動は控えることね。体を労わりなさい」

 

咲「私が・・・お母さん?」

 

 

永琳の言葉を真に受け止めた咲夜は、同時に不安を感じた。

咲夜は、母親の顔を知らない。父親の顔も、幼少の頃の記憶自体が全く思い出せないのだ。それ故、彼女の中では母親がどういうものなのか、全く想像できないのだ。

 

 

咲「私も、ちゃんとお母さんになれるでしょうか?」

 

永「それは貴女の頑張り次第ってところかしらねぇ。理想の母親像なんてのは人によって違うんだし、その前に先ずは安心してお腹の子を産む準備をしなきゃね」

 

咲「う、産む準備ですか」

 

 

産む準備という言葉に咲夜は過敏に反応する。一度図書館で見たことがあるが、出産というのは激しい苦痛に見舞われながら行うものらしく、その痛みは想像を絶する程だとか。

 

 

咲「やはりその・・・痛いんでしょうか」

 

永「痛くないお産なんてないわよ。でも、その瞬間だけは忘れられない思い出になるでしょうし、その分だけ子供を大切に思う気持ちも大きくなるわ。

とりあえず、今は激しい運動を控える事!何時もの仕事も減らしなさい。リュウト君に任せるの。栄養もちゃんと摂ってね。もうあなただけの身体じゃないから」

 

咲「はい・・・」

 

 

少々不安が残るが、帰ったらリュウトにこのことを打ち明けようと咲夜は覚悟して帰路に就いた。

 




咲夜が妊娠です。後にこれに関連する話も書いていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

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