東方混迷郷   作:熊殺し

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久しぶりの投稿です。読んでくれたらうれしいです。


121話

~大図書館~

 

 

リ「なぁ咲夜、いくらなんでも気が早くないか?」

 

咲「ダメですよリュウトさん。早い段階で準備を進めないと何かあっては困るでしょう?」

 

リ「しかしなぁ・・・まだお腹も大きくなってないのにそんな本読んでもどうにもならないだろう」

 

 

図書館で咲夜が賢明に読んでいる本。た〇ごクラブ。この本には子供が生まれてから母親が何をすべきなのかが書かれている。

ちなみにこのシリーズのひ〇こクラブ、〇っこクラブも此処に常備してある。何故こんな本が置かれているのかは不明だが、今回に限っては一応役には立ちそうだ。

が、まだそれを読むのは早い気がする。

 

 

リ「大体、そんなに急いだってしょうがないだろう。永琳からも言われたんだろう?先ず産んでからだって」

 

咲「それはそうですが、心配なんですもの。

まだ母親になる覚悟だって出来てませんわ。母親がどういったものか分からないんですもの」

 

 

一生懸命に勉強を続ける咲夜。彼女は母親像がどういったものか想像が出来ないと言った。

話を聞くと、彼女は幼い頃の記憶がすっぽりと穴が開いたように無く、今でも全く思い出せないらしい。

今でも覚えているのは、ベッドに横になりながら見たレミリアとパチュリーの顔だという。

何故記憶が無いのかは咲夜にもわからないらしく、未だ謎が多い。

 

 

リ「なら、何にも縛られずに自由に考えればいいんじゃないか?ただの産みの親が母親なのか、愛情を注げば母親なのか。それを完璧に説明するのは難しいんだ」

 

咲「自由、ですか?」

 

リ「あぁ。それに、父親は俺だ。君一人に背負わせやしないさ」

 

咲「あら、カッコいい事言うのですわね」

 

リ「そういうことを言うから全部台無しになるんだぞ?」

 

 

二人は噴き出してその場で笑ってしまう。その笑い声が聞こえたのか、図書館の奥に居たパチュリーも顔を出してきた。

 

 

パ「仲の宜しいことで。でも図書館ではもう少し静かにしてほしいものね」

 

咲「も、申し訳ありません・・・」

 

パ「分かればいいのよ。それより、何を話していたのかしら?」

 

リ「いや、実はな?」

 

 

リュウトは咲夜の悩みをパチュリーに説明すると、彼女も咲夜と同様に、母親を知らなかった。いや、当の昔に忘れてしまったというのが正しいだろうか。

 

 

パ「私も母親がどんなものかなんて知らないわよ、哲学を語る気も無いわ。

でも、敢えて母親を想像するならあ貴女の場合、レミィかもね」

 

咲「え?お嬢様ですか?」

 

パ「幼い貴方が行き倒れていたのを助けたのもレミィだしね。今でも忘れもしないわ、あの時のレミィはかなり殺伐とした性格だったから、人間を殺さずに屋敷に持って帰ってくるなんて考えられなかったわ」

 

リ「そんなに凄かったのか?」

 

パ「今じゃ想像も出来ないくらいにはね。なんせスカーレットデビルなんて呼び名が付くくらいだったから」

 

咲「流石はお嬢様ですわ」

 

リ「咲夜、そこは褒めていい部分なのか?」

 

 

ぶっちゃけ咲夜にはレミリアが尊敬する存在であることに変わりないらしく、善だろうが悪だろうが関係ないようだ。

 

 

パ「因みにフランと合わせて紅魔の吸血姉妹って呼ばれてたわ」

 

リ「恐ろしいな・・・一体何をやらかしたんだ?」

 

パ「それは想像に任せるわ。でも、そんなレミリアが咲夜を拾ってきたときは本当に驚いた」

 

 

レミリアがまだヨーロッパに居た頃、彼女の名を知らない欧州の魔物は居なかったという。

当時は出会った者全てを殺してしまうような凶暴さだったらしいのだが、咲夜だけは自ら抱えて屋敷に連れ込んだ。

 

 

リ「どんな経緯で咲夜と出会ったのかパチュリーは知らないのか?」

 

パ「詳しい事は知らないけど、あの時レミィが言ってたのは、(咲夜が特別な子)だって」

 

咲「私が特別?」

 

 

確かに、彼女は人間という枠組みを超えた強さを持っている。並の妖怪では相手にすらならない程だ。

並外れた運動神経や霊力を扱えるというのもあるが、やはり一番はインチキじみた時間操作能力だ。

人間にしては異常な強さを誇る彼女の出生は気になるところがあるが、今となっては謎のままなのだろう。

 

 

咲「私の出生の秘密、ですか」

 

 

自分の存在について深く考えてこなかった咲夜は、徐々に不安を感じ始めていた。レミリアが自分を拾った本当の理由がよくわからないのが引っかかるのだ。しかし、今更本人に聞くのも気が引けるというもの。

 

 

リ「咲夜、心配しなくても、レミリアは君をただの道具として拾ったわけじゃあない。普段の接し方を見ればわかるさ。主人を信じろ」

 

 

リュウトは優しく咲夜に語り掛け、安心を与える。

不安になるのも無理はない。記憶が無いというのはそれだけで未知の恐怖を与えるものだ。その心の支えになるのが、今の彼の役目である。

 

 

咲「・・・そうですわね、私が間違っていましたわ。命の恩のあるレミリアお嬢様に対して失礼な事を。

私はこれからも、お嬢様についていく所存ですのに」

 

リ「心配する事なんてない。何かあれば二人で乗り越えれえばいいさ。心強い仲間だって居る、何とかなるさ」

 

パ「心強い仲間って私とかの事かしら?」

 

リ「他に居るか?」

 

パ「はぁ。ま、頼りになるように善処するわ」

 

 

そう言う彼女は部屋の奥へと戻っていき、再びデスクで読書を始めた。興味なさげな反応だが、彼女のキャラ的に、心のうちでは満更ではないのだろう。

 

 

_____________________

 

 

日は沈み、暗くなった図書館でパチュリーは一人、ろうそくの火を灯した自室で考えていた。咲夜が自分の正体を知った時、どう思うのか。

 

 

パ「世の中には知らない方が幸せな事もあるって言うけど、今回ばかりはそうかもね」

 

 

彼女は手にしていた草臥れた革のノートをそっと閉じ、物音一つしなくなった図書館を出ていく。

そのノートの表紙にはこう書かれていた。

 

 

{人工進化研究資料No.0398}




次回は一旦、外の世界に話を移します。
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