なので結構長めのエピソードになります。
今回は響華サイドの話です。
~博麗神社~
レミ「貴女ねぇ、もうちょっとおしとやかにしないと男が寄ってこないわよ?」
響「いいもん、リュウ兄が養ってくれるから」
レミ「兄でも男でしょうが」
昼間から吸血鬼が遊びに来ている神社。
居間の座布団に正座を崩して座り、緑茶を湯呑で啜る吸血鬼は世界中どこを探してもいないだろう。
最も、吸血鬼は探して見つかるものではないのだが。
響華の事を実の妹のように可愛がってきたレミリアは、ずぼらな響華の将来が心配で仕方がない。
響「リュウ兄は別だよ、私の事女として認識してないんだもん」
レミ「・・・貴女それ自分で言ってて悲しくならない?」
響「???」
レミ「あ・・・そう、いいのね」
自分が言えたことではないのでレミリアはこの件についてもう触れないことにした。
というより諦めた。
一旦落ち着こうとレミリアは湯呑に口をつける。
ちらりと目の前を見ると、響華が幸せそうにお茶請けの羊羮をほおばっていた。
その姿がふと、昔の友人の姿と重なったような気がした。
響「ん?どうかしたのレミ姉?」
レミ「え?あぁ。
昔の友人と貴女が何となく同じように感じたのよ」
響「へぇ、その友達って誰なの?」
レミ「貴女のひいおばあさんよ」
響「ひいおばあさん?」
首をかしげて誰?といった顔をする響華に少しだけ昔話を聞かせてあげた。
レミ「貴女のひいおばあさんの博麗霊夢はね、貴女の何倍もめんどくさがりな性格だったわ。
戦いに関しては先天的な天才だったから修行する必要もなかった。
そのせいかしらね、いつも神社で寝てるかお茶飲んでるところしか見たこと無かったわ」
響「わ・・・わたしそんなにひどくないよ?」
レミ「ふふっ、でもまぁ近い感じかしらね?」
響「もうっ!からかわないでよレミ姉!」
レミ「あははっ!ごめんごめん」
それから聞かされたレミリアの昔話は面白おかしなものばかりで、自分のおばあさんの話までしか知らなかった響華は笑いながらそれを聞いていた。
時には腹を抱えて笑い転げることも。
しかし、そんな楽しい時間ほど直ぐに過ぎてしまうものだ。
気付けば時計は3時を指していた。
響「え?もう3時?早いなぁ」
レミ「3時かぁ・・・。
おやつの時間ね!人里のお団子屋さんに食べに行きましょうよ!」
私が出すから心配いらないと言ってレミリアは立ち上がり、響華の腕を引っ張り立たせた。
悪いからと遠慮するも、そんなこと気にしなくていいと言い、玄関の靴を履いて二人は外に出た。
勿論レミリアは日傘も忘れずに。
~人里茶屋~
店員「お待たせしました、みたらし団子二人前です」
レミ「ありがとう、お金は丁度だから」
店員「はい、丁度頂戴いたします」
甘味処に到着してから店員にみたらし団子を二つ注文し、道側に置かれた木製の長椅子に腰かけて出てきた団子を店員から受け取る。
代金はあらかじめ椅子の端に丁度置いておいた為、店員はそれを回収して店の奥へと戻っていった。
皿に乗った団子は垂れにたっぷりと浸かって午後の日の光に照らされている。
硝子細工のように美しい団子だ。
レミ「久しぶりに来るとやっぱり良いものね、いつもはメイドに買ってこさせてるけど」
響「もちもち~」
三つ櫛に刺さった団子を幸せそうにほおばり、二人ともリスのように頬が丸く膨らむ。
直ぐに団子は口の中から消えたが、それで二人は満足だった。
道には様々な人が行き交い、老若男女、時々妖怪といった感じだ。
妖怪に知り合いの多い二人は、人里に住む妖怪の殆どと知り合いであり、人里ではほぼ100%の確率で誰かとすれ違う。
だからいつ話しかけられても可笑しくないのだ。
レミ「だからってなんでアンタなのよ」
神子「おや?何かよからぬ事でもありましたか?」
レミ「全体的に仙人って変人が多いからあんまり関わりたくないのよ」
神子「何だか否定できない自分が嫌になります・・・」
偶然通りかかった聖徳太子こと豊聡耳神子が、霊廟に帰る途中のところをついでがてらに寄って来た。
冠位十二階のトップを表す紫を多くあしらえた服装を着ているが、今ではそんなものに全く意味は無く、彼女曰く昔の服装を現代風にしただけなんだとか。
人間から仙人になった彼女の廻りには同じような仙人が多く集っており、一部を除いてめんどくさい奴が多い。
レミリアはその事を言っているのだが、まさかその変人達の中に自分が入っているとは思ってもいないだろう。
響「今日も聖さんのところに行ってたの?」
神子「えぇ、同業者みたいなものだから色々と話すことがあったりするんです」
響「素直に友達だからって言えばいいのに」
神子「ま、まぁそれもありますけどね!
あとお姉さん、私にもお茶をください。
それとお汁粉一つね」
店員「はーい、畏まりました!」
レミ「アンタここにいる気満々じゃないの」
神子「あら?いけませんか?」
レミ「はぁ、好きにしなさいな」
店員にお汁粉を頼んでとどまる気満々の神子にため息が出てしまう。
折角響華と二人きりでお茶をしていたのに台無しだ。
それほど響華は周りから好かれているということなのだが、人里に来てからも道行く人に挨拶をされまくったし。
やはり博麗の巫女だから知名度が半端なく高いのだろう。
響「そういえば今日は屠自古さんと布都さんと一緒じゃないんですね、珍しい」
レミ「確かにそうね、いつも一緒に歩いてるのに」
神子「今日は霊廟で留守番ですよ、どうも聖さんと私が仲良くしているのが嫌みたいで・・・」
響「へぇ~、何だろうね?別に友達同士仲が良いんだから何も言うこと無いと思うんだけどなぁ」
神子「そ、それは・・・」
レミリアの口がにやりと歪む。
少しいたずらをしてやろうという口だ。
神子が何故答えるのを躊躇うのか知らなそうな響華に、その理由を教えてやった。
レミ「あら?知らないの?
屠自古って神子の奥さんなのよ?」
響「え!?そうなの!?」
神子「あー!!何で言うんですか!
勘違いされるから出来るだけ言わないようにしてるのに!!」
レミ「アハハハハ!!!」
神子の慌てように笑いが止まらない。
涙目で訴える神子の必死な顔にレミリアは大爆笑し、腹を抱えて笑い続けた。
元々神子は男だったのだが、聖人になった時に何故か女になってしまったらしく、屠自古を妻に持つ同性愛者のような事になってしまったらしい。
折角今まで秘密にしていた事だったがもう遅い。
既に響華含め茶屋に居る客も普通に話を聞いており、皆揃って、へぇ~というような反応を見せていた。
昔、宴会で酔った勢いでレミリアに話してしまったのが運の尽き、話す相手を間違えるとこういう事態になりかねない。
この話が世間に広まれば、自分が同性愛者だと勘違いされかねない、そう考えるとどんどん気分が落ち込んでいき、半ば放心状態になる。
その時、この状況で一番聞きたくない声が聞こえてきてしまった。
屠「ほう?太子、私が貴女の妻だったら何が不味いんですか?」
響「あ、屠自古さん」
神子「イィ!?屠自古!?
いつの間に!?」
屠「貴女がなかなか帰ってこないから連れ戻しに来たんです、、、」
体を持たないせいで屠自古の足音は聞こえない、そのせいで神子は直ぐ近くまで彼女が迫っていたことに全く気付かなかった。
尸解仙となるときに体を失い、それ以来亡霊として生きているせいだ。
死んでいるのに生きているとはどういう事なのだろう。
屠「それで?どこをほっつき歩いているのかと思ったら・・・。
響華さんとレミリアさんと一緒にお茶をしていたとは・・・」
どうやら屠自古は今の会話を全て聞いていたようで、うつむいたまま握り拳がプルプルと震えている。
これは不味い、非常に不味い。
命蓮寺に出かけると朝言った時、凄く不機嫌になっていたのにこれ以上怒らせたら・・・。
いや、もうお怒りになられているようだ。
話によると屠自古は雷を操る能力を持っており、怒ると能力で雷を落とすらしい。
レミ「ヤバい、、、響華、離れるわよ」
響「う、うん、、、」
雷の被害は被りたくないので二人は神子を置き去りにしてそそくさと店の中から小走りで退散する。
気付けば屠自古と神子の周りには誰もいなくなっていた。
皆の安全が確保できたことを確認すると、屠自古は雷を思い切り神子の脳天に突き落とした。
屠「天誅!!!」
神子「いぃぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁ!!!??」
間近で人間が落雷に遭う瞬間を目撃した全員がおぉ、と若干後ずさりながら驚きの反応をする。
落雷後の丸焦げの神子を見てからは引いている者も多かったが。
屠自古は丸焼きになった神子の首元を掴み、どうもお騒がせしましたと一礼してからそれを引きずりながら去っていった。
地面には真っ黒なすすを引きずった跡のようなものだけが残っていた。
レミ「、、、帰りましょうか」
響「そうだね」
予期せぬ事態が起こったが、これはこれで面白かったので良しとしよう。
もういい時間帯なので、二人はこのまま解散して帰路に就くことにした。
その日の夜、響華が稽古から帰って来たリュウトに今日あったことを話し、リュウトも妖夢の手料理を食べたことを話すと、
響「ずるい!何でリュウ兄ばっかりそんなにいい思いばっかりするのさ!」
と、怒声のような文句が返って来たそうだ。
~紅魔館 レミリアの部屋~
食事を終えたレミリアは自室に戻り、机に飾られた一つの写真立てに手を添え、話しかける。
レミ「なんだか今日は波乱に満ちた一日だったわ、久しぶりにこんな日を過ごした気がするわね。
一体何年ぶりなのかしら・・・貴女達が生きていた頃は毎日そんな感じだったような気がするけど・・・ねぇ、咲夜」
写真に写る少女は、笑顔でレミリアに応えているかのようだった。
写真の隅にはこう書かれていた。
sakuya izayoi・・・と。
何故か登場神子さま&屠自古さん。
神子さんは聖徳太子なので元男という独自設定です。
屠自古は聖徳太子の妻が元ネタらしいんでそれをやりたいが為にこんな無茶設定にしてしまいました。
尸解仙は仙人の一種で、一度死んでからもう一度復活してなれるらしいんですが、魂を別の入れ物に移す必要があるらしく、長い時を過ぎても朽ちない物を用意しなければいけないそうです。
神子が尸解仙になるために選んだ入れ物が金のかんざしで、女性が使う物を入れ物に選んだ結果、それが体に反映してしまったという設定なので矛盾は生まれてないかと思います。
金なら錆びないし。
まぁかんざしの話は後々することにします。