~レミリア自室~
レミ「ふうん。
って事は元に戻るのも時間の問題って事だな」
咲「はい。
現在は文が山の中でその植物を採取中です。
その交換条件として今回の事故を新聞に載せられてしまいます。
勿論、ねつ造をしないという条件付きで、ですが」
レミ「別にいいよ。
元に戻ればこっちのモンなんだから」
男子用のカッターシャツと赤いネクタイ。
レザーパンツに身を包んだレミリアは、玉座に座りながら咲夜に紅茶を注いでもらい、湯気と共に香を楽しみながらそう答えた。
一方で、現地に向かったリュカは霊夢達と別れ、文同伴の元、哨戒天狗の許可をもらって山に入っていた。
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~妖怪の山~
リ「文姉さん、此処誰の家?」
文「私の昔からの友人ですよ。
山の麓から天狗の里付近の標高までなら彼女に聞いた方が早いですからね。
探すのを手伝ってもらえるかもしれませんし」
そういってリュカを連れてきたのは、森の中にぽつんと建つ一軒家。
というより大きめの小屋だった。
一階建ての木製の家屋だが、煙突や立て札が立てかけられており、そこには{にとり工房}と書かれていた。
リュカはこの名前に見覚えがあった。
玄関を文が叩こうとすると、突然小屋の中から金属を研磨する騒音が聞こえてきた。
文「あ~、始まりましたね。
気にしないでください、いつもの事なので」
気にせず扉が壊れそうなほど大きくノックをする文。
すると、中から聞こえていた騒音が止み、乱暴に引き戸が開けられた。
に「誰だよ!扉が壊れちゃうだろ!?」
文「どうもにとり、久方ぶりですね」
に「あれ?文じゃん?
確かに久しぶりだね」
水色の作業服と同じ色をした髪を、チェリーリボンでツインテールにした少女。
河城にとりは扉を叩いたのが文だと解ると、素っ頓狂な顔をした。
文「実は今日は頼みがあって来たんですよ」
に「頼み~?
それって後ろの女の子と何か関係があるの?」
文の後ろに隠れる形となっているリュカの存在に気付いたにとりは、覗き込むように文の背後へと首を向けた。
に「可愛い女の子だね~!
人間みたいだけど・・・名前はなんていうの?」
リ「えと、その・・・。
神谷・・・リュウトです」
に「可愛い顔して名前は男っぽいね」
リ「まぁ、男だから・・・」
に「え?」
首をかしげて不思議そうに今の言葉を聞いた彼女は、あぁ、と言い、手をポンと叩いた。
分かったような顔をしているが、理解してくれたのだろうか?
に「緊張してるから冗談で紛らわそうとしたのか!
アッハハ!大丈夫だよ!
私は妖怪でも人間は襲わないし、というより友だとだと思ってるからさ!
お願いって私と友達になる事だったのか~!」
全く違い解釈をして勝手に話を進めている。
リュカの言葉を完全に冗談だと思い込んでいるようだ。
文「いえ、本当に男ですよ?
詳しく言えば、元々は男、ですがね」
に「え?・・・えぇ!?」
信じられないと言いたげな顔で、にとりはリュカの周りをくるくると周りながら観察し出す。
見てくれは完全に女なので、二人して自分をだまそうとしているのではないかと疑ってしまった。
に「・・・私をからかってるんじゃあ?」
リ「いや、本当なんだ・・・。
これが冗談ならどれだけ良いことか・・・」
今にも泣きそうな顔を手で伏せると、彼女も冗談ではないと確信したようで、哀れみの表情でリュカの背中を擦った。
だが、にとりには一体何があってこのような状況になっているのか全く解らず、リュカに事情を聞いてみた。
に「それで?一体何があったの?」
リ「うぅ・・・実は・・・」
リュカは、今日の朝型に起きた事件について簡潔に説明した。
~少女説明中~
に「成程ね、それで私の所なのか」
文「そうなんですよ、手伝ってくれます?」
に「う~ん・・・いいよ。
但し!一つだけ条件がある」
少し腰を落とし、合掌して頼み込む文。
それに腕を組んでにとりは呻りながら悩んだが、数秒後には了承した。
但し、手伝う上で必要な条件を提示した。
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~図書館~
魔「おぉ!これはまさしく私が求めていたものだ!」
文「採れるだけ採ってきましたからね。
どれくらい必要かもわかりませんでしたし」
よっこらせ、と文が背負っていた竹籠をテーブルに乗せる。
文とリュカが持ってきた竹籠の中には魔理沙が注文していた植物が籠の半分ほどまで入っていた。
手に取って使えるか確認するが、どれも鮮度が良く使うのに問題は無かった。
魔「よし!さっさと調合始めようぜ!」
パ「小悪魔、美鈴とソレをすり潰して」
小「了解しました!」
早速魔理沙達はパチュリーと共に薬の調合を再開した。
文はその様子を写真に収めようとしたが、如何せん何をしているのか全く分からなかった為、意味不明な写真を撮ってもフィルムが勿体無いと撮影を中断した。
クスリが完成したのはそれから約2時間後の事だった。
そして、次の朝には全員が元の身体に戻っていた訳だが、まだリュウトはやるべき事が残っていた。
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~人里~
リ「おっちゃん、店に売っているキュウリを全部譲ってくれ」
店主「何だい急に?
まぁいいけどよぉ」
一人、里の八百屋へ来ていたリュウトは何時もの恰好でキュウリを大量に購入していた。
もうすぐ秋も終わりという季節に残っていたキュウリ、合計して37本を袋に詰め、店主の親父に金を払う。
かなりの金額だが、訳も無く財布から札束として出してみせた。
リ「少し用があってな。
早急にキュウリを50本用意しなければいけないんだ」
店主「そうなのか、この季節に大変だなぁ。
お!そういえば昨日すっげぇめんこい女の子が店の前を通ってな!
連れの男と一緒に注目の的だったんだぜ?」
リ「そ、そうなのか」
それ、絶対自分の事だ・・・と、自覚症状が心にグサリと刺さるような感覚がした。
近いうちに新聞に載せられる事になったらこの店主は一体どんな顔をするだろうか。
というか、里の皆からまた注目されることとなるだろう。
性転換している時に慧音達に遭遇しなかったのは不幸中の幸いだろう。
ところで、何故リュウトが季節外れのキュウリを今更大量買いしているのかというと・・・。
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り「ほら、約束通りキュウリを買えるだけ買って来たぞ」
に「やった!これで当分はキュウリ不足に悩まされずに済む♪」
里の帰りに山の工房へやって来たリュウトは、にとりに全てのキュウリを袋ごと手渡した。
リ「しかし、本当にキュウリが好きなんだな」
に「そりゃあそうだよ!
キュウリは河童の為にあるようなものだからね!」
そんなことは無いのではないか?
そう突っ込みたかったが、袋に頬ずりする程ならそう言えるのかも知れない。
これほどまでに喜んでくれると、彼としては買ってきた甲斐があったと言うものだ。
に「ところで・・・これだけのキュウリ買うお金、かなりしたんじゃない?」
リ「その事なら気にしないでくれ。
心優しい人が全額負担してくれたからな」
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その後、帰って来たリュウトが図書館へ行くと、広い部屋で体操座りをしながら隅に蹲るパチュリーが見えたという。
そして彼女の書斎のテーブルの上には、何も入っていないがま口財布だけが置かれていた。
キュウリの金はレミリアが全てパチュリーに支払わせたとさ。
めでたしめでたし。