東方混迷郷   作:熊殺し

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結婚式の後ですが、日常回に戻ります。


76話

春に行われた博麗神社の神前式の様子は、文々。新聞で大きく取り上げられた。

一面の記事には神前式で二人が指輪を交換する瞬間が大きく載せられ、人里でお祝いムードとなる程、影響が強かった。

しかし、あれから二か月が経ち、流石に幻想郷も徐々に落ち着いた今までの空気に戻っていった。

 

__________

 

 

~紅魔館~

 

 

リュウトが自室のベッドに寝転がりながら本を読んでいると、扉からノックが聞こえてきた。

こうして、わざわざ彼の部屋に来るのは咲夜くらいしかいない。

開いている事を彼女に伝えると、音を立てながら扉が開き、咲夜が現れた。

 

 

咲「リュウトさん、お客様です・・・昼間からベッドでゴロゴロするなんて関心出来ませんわよ」

 

リ「ん?あぁ、やはり咲夜だったか」

 

咲「解っていたならだらしない格好で出ないでください」

 

 

呆れる咲夜の言葉を適当な返事で流し、再び注意される前にベッドから跳ね起きる。

テーブルの上に読みかけの本を置くと、咲夜は客人をリュウトの前に出した。

 

 

咲「全くもう・・・どうぞ、阿求さん」

 

阿「初めましてリュウトさん、稗田阿求と申します。

今日は貴方を私の屋敷に招待するべくやって来ました」

 

リ「俺を?あぁ、解ったぞ。

幻想郷縁起に俺の事を記すんだな?」

 

阿「流石ですね、話が早くて助かります」

 

 

単に身を包んだ少女、稗田阿求は一礼する。

靡く黒髪は日本人形を連想させ、見た目10代前半の少女でありながら、淑女としての嗜みを身に着けているようであった。

丁度、暇を持て余していたリュウトは直ぐに出かける準備を始めた。

 

 

リ「良いだろう。

断る理由も無いし、今更隠すことも無い。

用意するから待ってくれ」

 

咲「わ、私もご同行よろしいですか?」

 

リ「なんだ?咲夜も呼ばれたのか?」

 

咲「いえ・・・その」

 

リ「?」

 

 

咲夜は目線を下に向けながらボソボソと口ごもる。

何が言いたいのかを察した阿求はサッと彼女の片手を取り、ニコリと微笑みながら顔を近づけて耳元で囁いた。

 

 

阿「構いませんよ。

リュウトさんが気になるんでしょう?」

 

咲「!!」

 

リ「?」

 

 

阿求が囁いた後、咲夜の顔が一気に赤く茹で上がる。

何も聞こえていないリュウトには何が何だかさっぱり分からなかった。

 

 

__________

 

 

~稗田邸~

 

 

リ「おぉ、凄いな・・・」

 

咲「綺麗なお屋敷ですね、とても手入れが行き届いていますわ」

 

阿「咲夜さんに褒めていただけるとは光栄です。

私は何もしていないのですがね・・・」

 

 

大きな和室に案内された二人は、塵一つ無い屋敷に感心した。

確かに紅魔館が清潔を保っているのは人知を超えた二人がいてこそ。

それと同じ事を普通の人間が出来ている事に驚いたのだ。

 

 

リ「しかし、此処まで広いと流石に大変だと思うんだが」

 

 

彼はそう言うと、ニスの塗られた綺麗な木のテーブルに置かれた緑茶を一口啜る。

襖の向こうには広大な日本庭園が広がっており、大きな池に錦鯉が何匹も泳いでいるのが見えた。

白玉楼と良い勝負だ。

 

 

阿「ずっと昔に私の父が建てた屋敷なので今更縮小する気はありませんよ。

それに、転生を繰り返して私が守って来た屋敷でもあるんです」

 

リ「そうか、阿求は閻魔との契約で転生が許された存在だったな」

 

 

彼は未来の世界で、阿求が転生した少女から聞いたことがあった。

阿求は代々血筋で幻想郷の歴史を書き留めている一家の娘で、縁起を書き記す者は転生によって生まれるらしく、

彼女も生前の記憶を持ち合わせており、今から4代前の記憶を継いでいるとか。

しかし、転生するにはそれなりの枷があり、30年という短い寿命と、死後に閻魔の下で100年働かなければならない契約があるのだそうだ。

勿論、その時の記憶も持ち合わせており、彼女は映姫の事を知っている。

余りに幸せとは遠い生き方をしている彼女に咲夜は悲しみを感じた。

 

 

咲「転生する魂ですか・・・。

少し悲しいですね・・・」

 

阿「え?何故です?」

 

リ「結婚しても30年しか生きられないのだろう?

それに、死んでからも過酷な労働が待っているなんて可哀そうじゃないか」

 

阿「そんな事ありませんよ。

私が結婚する人も、また転生者なのですから」

 

リ「何?転生出来るのは阿求だけではないのか?」

 

阿「はい、なので許嫁が私には居ます」

 

咲「許嫁・・・ですか」

 

 

実際、未来の世界でもリュウトは阿求について知っていた。

転生することについても多少なりとも聞いた事があったが、結婚相手まで転生者だとは初耳だった。

そして、一番驚いたのが、その許嫁が屋敷に住んでいる事だった。

 

 

阿「今から呼んであげますね。

愁さ~ん、お客様に貴方の事紹介したいから来てくださ~い」

 

咲「ど、同棲しているのですか!?」

 

 

驚く咲夜を他所に阿求が彼の名を呼ぶと、部屋の障子が開き、一人の少年が現れた。

年齢は阿求と同じ位で、顔だちには少し幼さが残っている若い少年だ。

しかし、良い家柄なだけあって服装は平民が着るようなものではなく、灰色の袴を穿いていた。

 

 

愁「そんなに大きな声で呼ばなくとも自分は此処にいます。

はしたないのでお客さんの前で止めてください」

 

阿「そんなこと言って、前に生きていた時代では肝心な時に居なかったではありませんか」

 

愁「貴方はよくそんな昔の事を覚えていますね」

 

 

阿求の言葉をサラリと躱し、愁という少年はリュウトとテーブル越しに対面する。

しれっと阿求の隣に座った彼は、一礼して丁寧な言葉遣いで自己紹介を始めた。

 

 

愁「初めましてリュウト殿。

阿求の許嫁兼前代の夫、愁と申します」

 

リ「初めまして、博麗リュウトだ。

以前は神谷と名乗っていたが、偽名を使う意味も無くなったから本名で名乗らせてもらう」

 

愁「やはり本当に博麗の血を継いでいるのですね」

 

リ「あぁ、何なら永遠亭で血液検査をしても良いくらいだ」

 

愁「疑ってなどいませんよ。

纏っている空気が霊夢さんに似ていますからね、正義に満ち溢れています」

 

咲「♪」

 

 

自慢の彼を誉められて少し嬉しくなった咲夜からは自然と笑みが零れる。

微笑ましく思う愁は、自分たちと咲夜達を照らし合わせて語った。

 

 

愁「本当に仲がよろしいのですね

まるで最初に出会った私達を見ているようです」

 

阿「あの頃は私達も初々しかったですね~」

 

愁「私が君を想う気持ちは変わっていませんよ?」

 

阿「あら、嬉しい事を言ってくれるのですね」

 

 

頬に手を当てながら照れる阿求だが、彼女達の最初というのは今から1000年以上昔の話である。

それでも二人が未だに愛し続けていられるのは、もしかしたら転生というもののお陰なのかもしれない。

 

 

リ「見せつけてくれるのは一向に構わんが、当初の目的は忘れるなよ?」

 

阿「勿論。

ついでに咲夜さんとの関係も詳しく教えて貰っちゃいましょうか?」

 

咲「そ、そんな・・・」

 

愁「阿求、咲夜殿が困っておりますよ。

そのくらいにしておいてあげなさい」

 

阿「ククっ、冗談ですよ咲夜さん。

真に受けないでくださいな」

 

 

その後、幻想郷縁起にまた一つ名前が記された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これを機にリュウトの情報が幻想郷縁起に載せられる事になります。
めんどくさいのでその部分は省略します。
愁は阿求の許嫁として再登場させました。
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