『キュアエクレール=恐怖の大王説』に触れた結果。
爆誕してしまったネタです・・・・。
お暇つぶしになれば、これ幸い。
「――――なんてことをしれくれたんだッ!!」
「この度は、私の娘がとんだことを・・・・誠に申し訳ありませんでした・・・・!」
――――何もかもが、薄い膜を隔てた先にある様だった。
「どれほど謝ったって、命は戻ってこないんだぞッ!?」
「はい、重々承知しております・・・・!」
誰もかれもが、黒い装いで揃えている中。
怒号を上げる男の人、必死に頭を下げる祖母。
「・・・・ッ」
前を見ることが。
・・・・目が、遭うことが。
何よりも恐ろしくて、顔を上げられなくて。
「――――だいちゃん」
ひたすら、足元を見ていることしか出来なかった。
「――――なぁんでアタシが謝らないといけないのよォ!!」
キン、と響いた声に。
肩が跳ね上がる。
「この子が言ったんだよ!?『家族になりたい』って!!」
・・・・嗚呼、言った。
確かに言った。
だけど、こんなことは欠片も望んでいなかった。
「親が子供のお願い聞いて、何が悪いのよぅ!!」
「こん、の・・・・バカッタレがァッ!!」
――――この世は、『生きていていい命』で溢れている。
だけど。
『産まれて来てはいけない命』も、確かに存在していて。
「不貞の責任ば、子どもにひっかぶすっとは、何事かッ!?」
「いったぁい!!お母さん、なんでぇ!?」
――――だから。
『これ』の子どもである、自分もまた。
産声を上げては、いけなかったのだ。
――――まことみらい市。
近年回復しつつある景気により、再開発が始まりつつある都市である。
その街中の一画にある洋菓子店、『パティスリー・チュチュ』。
ケーキやクッキー、アイスなど。
幅広い種類の『おやつ』を販売している。
なお、当の店主は和菓子が好きだとか、なんとか。
「――――あ!」
そんな店に鳴り響いた、新たな来客を告げるドアベル。
ぱたぱた動き回っていたアルバイト、『帆羽くれあ』が足を止めれば。
この頃のやってくるようになった客が佇んでいた。
「いらっしゃいませ!中村さん!」
「・・・・ああ、こんにちは」
歓迎を込めて笑顔を見せれば。
件の客こと『中村
金髪碧眼という、外国人ハーフのお手本の様なビジュアルながら。
着流しをいなせに着こなす様から、一部の客から『若旦那』のあだ名で呼ばれている青年。
「今日も『いつもの』にしますか?」
「あー・・・・オススメは、ありますか?」
彼は基本的、チョコレートケーキを好むが。
時折オススメを訪ねてきたりもする。
「なら、このキャラメルナッツケーキはどうでしょう?」
「じゃあ、今日はそれと、コーヒーを。あと、同じケーキを持ち帰りでもう一つ」
「はい!ありがとうございます!」
そんなときは、ちゃっかり自分が担当するケーキを勧めてしまうのはご愛敬。
この頃持ち帰りも頼む様になった大也にも、恐らく気付かれているだろうが。
いつも幸せそうに食べてくれるのが、なんだか嬉しかった。
「――――お待たせしました!キャラメルナッツケーキの、コーヒーセットです!」
「ありがとう」
注文の品を届けると、一度顎を引いてから早速一口食べる大也。
「ん・・・・ん・・・・」
こくこく、頷くように頭を揺らして。
『しみじみ』、あるいは『じっくり』というオノマトペが似合う調子で味わって食べてくれる。
そして、その間は。
まさしく『幸せ』と言わんばかりのオーラを放っているのだ。
「・・・・ふふっ」
彼のそんな様子を見るのが、すっかりくれあの癒しになりつつあった。
おいしそうに食べてくれるのは、やはりパティシエ冥利に尽きるのである。
「すみませーん!」
「はーい!」
また新たな客が来店したので、後ろ髪を引かれつつ観察を切り上げるくれあ。
その足取りは、ご機嫌に弾んでいたのだった。
――――中村大也は。
自分が罪人であると自覚している。
己が身を、この世で最も卑しく、最も許されない命であると定めている。
故に、その死は必ず。
人の利益にならなければならないとも。
決めていた。
――――『草木も眠る丑三つ時』とは、よく言ったもので。
『魑魅魍魎が活発になる』と口伝が生まれるのも、納得の暗闇具合だ。
「――――は、は、は、は!」
その中を、女性は逃げ惑っていた。
「は、は、は、は・・・・!」
何度も何度も後ろを振り返る。
追手の姿は見えない。
しかし、いる。
気配ははっきり感じる。
「ひぃ・・・・!」
引きつった喉から、悲鳴を上げながら。
とっくに動かない足を、必死に動かして。
死に物狂いで逃げ回っていた。
「はぁっ・・・・はぁっ・・・・はぁっ・・・・!」
どうしてこんな目に遭っているのか分からない。
何が起こっているのかも分からない。
ただ一つ、はっきりしているのは。
「ミイイィィィィツケタアアアァァァァ!!」
「っきゃあああああああ!!」
あれに捕まれば、死ぬ。
「マテマテエエエエェェ!!」
建物と建物の合間から。
覗き込むように現れた、何か。
明らかに人間ではない、まさしくバケモノというべき風貌のそいつが。
まるで幼子のように追いかけまわしてくる。
「ひ、ひ・・・・アッ!?」
そして。
最悪なタイミングで、限界が訪れた。
足が縺れて、盛大に素っ転ぶ。
「ツウウゥゥカマアアァァエタァアアァァ!!」
「イヤーッ!!離して!!離してェーッ!!」
「ヒイイイイヒヒヒヒヒイイイィィィ!!ヤアアアアァァァダアアアアァァァ!!」」
即座に大きな手のひらに捕らえられて、死に物狂いで抵抗するも。
焼け石に水。
怯ませるどころか、さらに面白がらせてしまう。
「アソボウウウウゥゥゥアソボウウウウウゥゥゥアアアアアアソオオオオオボオオオオオオウウウゥゥゥ!!」
「痛い痛い痛い!やめて!やめて!やめて!」
そして、女性の腕を無理やり動かし始めた。
まるで、人形遊びする子どもの様だ。
(死にたくない・・・・死にたくない・・・・!)
めきめきと、自身の体が上げる悲鳴を聞きながら。
涙をボロボロ流した。
その時だ。
「――――ッ」
上空。
何かが降ってくる。
いや、飛び降りて来る。
振り上げているのは、刀。
『誰?』と、思ったその間に。
そいつは刃を振り下ろして、
「ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!!?」
バケモノの腕を、切り落としてしまった。
「――――モンド、頼む」
「承知!」
――――意識を飛ばした女性を、真ん丸なカラスに託して。
『彼』はバケモノと対峙する。
「ウウウウウゥゥゥゥ!!オマエ!!オマエ!!オマエエエエエエエエッ!!!」
腕の痛みに悶えながら、三階建てのビルはあろうかという高さから睨みつけられても。
怯むことなく、刀を向ける。
「オマエガアアアアアア!!ァァァアアアアソベエエエエエエエエエエエ!!!」
「――――餓鬼の遊びに、付き合ってられるか」
叩きつけを、跳躍で回避。
頭上で、上段に構えて。
「――――
炎を灯した刀を、お返しとばかりに叩きつけて。
「――――一閃ッ!!」
バケモノを、両断したのだった。
「――――ヒロヤ」
「モンド、女の人は?」
「大きな怪我はないが、気を失ったままだ・・・・無理も無し、あれほどの目に遭えばのう」
『彼』こと、大也は。
納刀しながら真ん丸カラスに話しかけながら、女性の様子を見れば。
気を失ったままで魘されているが、命に別条がないことに小さく安堵の息を吐く。
「じゃあ、いつも通り警察に通報しとこう」
「うむ」
公衆電話の近くに運び、そこから『倒れている人がいる』と通報。
物陰に隠れて、被害者が保護されるのを確認してから。
モンドと共に、家路についた。
――――大也がモンドと出会ったのは。
もう半月前になる。
夜、どうしても勉強用のノートを調達しなければならなくなり。
出かけていると。
昔話に出て来る鴉天狗の様な井出達の者が、得体のしれないものと戦っているところを目撃。
あれよあれよと戦闘に巻き込まれ、死にかけたところを。
責任を感じた鴉天狗こと、同心の妖精『モンド』の力を分け与えられることで一命をとりとめた。
その代償として、ぬいぐるみの様な姿になったモンドの代わりに。
彼の任務である『妖精監獄の脱獄囚討伐』を請け負うことになったのだった。
「――――毎度のことながら、感謝する」
夜闇を駆ける中。
モンドが改まって礼を述べて来た。
「お陰で、彼奴等の蛮行を少しでも食い止められている」
「いいよ、俺の為でもあるから」
夜風を頬に受けながら、大也が口角を上げれば。
モンドもまた、安心した笑みを返すのだった。
「――――そういえば」
翌日のパティスリー・チュチュ。
いつものようにケーキを注文していると、くれあが切り出した。
「中村さんは聞いた事あります?『鴉侍』の話!」
「からすざむらい」
「はい!なんでも、悪者に襲われると、どこからともなくやってきて、助けてくれるとか!」
彼女の口から飛び出した言葉を、オウム返しすると。
くれあはニコニコと語り出す。
「まるでヒーローみたいですよね!」
「はは、帆羽さんはそういうの好きなんだ?」
「ふふっ、テレビのやつはそれほどじゃないんですけど。この噂だけは、なんだかワクワクしちゃうんです!」
「・・・・へぇ」
――――少しだけ、期待した自分を。
脳内で百回殺す。
「・・・・中村さんは」
「ん?」
その一方で、くれあは眉尻を下げて。
「あんまり興味ありませんでしたか?」
「ああ・・・・まあ、もうヒーローにときめくような年でもありませんからね」
『すっかり可愛げもなくなりましたよ』と、自嘲の笑みを浮かべた大也。
「けど、帆羽さんが興味を持つなら、少し気になってきました」
「・・・・それなら、よかった」
なんとか、そうやってフォローをいれると。
ほっとした顔になったくれあに、彼自身もまた安堵するのだった。
「あ、お持ち帰りの分は、お帰りの際にお渡ししますね!」
「ああ、帰るときに声かけさせてもらいます」
「ありがとうございます!」
ぱっと咲いたくれあの笑顔に、思わず同じ笑顔を返した大也。
いそいそと動き出す彼女を見守りながら、案内された席に着いた。
――――自分のことなど。
すっかり忘れてしまった彼女に。
何度も安心を覚える自分を、何度も殺しながら。
大也は今日も、甘いケーキを口にするのだった。
癖になってるんだ・・・・『書いたら、上げる』ってのがさ・・・・()