原作13話に大也達がお邪魔します。
――――ゾーゲインが起こした事件は。
彼が『乗り物』にしていた、『照間』の犯行と言うことにされた。
そもそも、キュアット探偵事務所が追っていた『しるくのストーカー』こそ。
照間だったのである。
付け回しと盗撮という、比較的大人しいタイプだったのだが。
ゾーゲインに文字通りの隠れ蓑にされてしまったことで、明るみに出てしまったという訳だ。
利用された被害者であるが、人の法律においても犯罪者でもある。
少しだけかわいそうだが、カモフラージュに持って来いの人材だった。
「――――キュアアルカナ・シャドウ、か」
とにもかくにも、あれこれが一段落したある日。
久しぶりのパティスリー・チュチュにて、大也は先日聞いた情報を反芻していた。
――――キュアット探偵事務所に、現在所属している
『明智あんな』と『小林みくる』が教えてくれた、いつかの襲撃者。
怪盗と対峙する存在でありながら、怪盗に与する彼女に関しては。
あんな達も情報を集めている最中だということだった。
「名探偵が
テラス席なので、遠慮なくテーブルに停まっているモンドは。
難しい顔をしながら、店内でくるくる働くくれあを見た。
・・・・襲撃された理由について。
大也達は、『何が琴線に触れたか分からない』と、ぼかして伝えている。
くれあの記憶が関係していることは確かなのだが。
それを知った彼女達まで、あの猛攻に晒されるのではないかと。
用心した結果だった。
「モンドのとこにも、情報は聞けないのか?」
関連して、キュアット探偵事務所がアルカナ・シャドウについて。
ロンドンの本部に問い合わせていることを思い出した大也が、モンドに聞いてみると。
「オミネが問い合わせてくれておるはずだが・・・・探偵事務所の方が早かろうな」
「そっか・・・・」
ゾーゲインの事件の事後処理と、ロビンに関する手続きの為に。
同心の妖精の本部、『妖精奉行所』に戻ったオミネを待つしかなさそうだ。
幸いと言うべきか。
あんなとみくるから、『本部からの返事が来たら、一緒に見よう』と寛大な言葉をもらっている。
「先にそっちに世話になりそうやな・・・・」
便乗するようで、申し訳ない気持ちに唸りながら。
大也はケーキをつついた。
――――その時。
世界が、揺れた。
「――――ッ!?」
「なんだ!?」
大也は椅子を倒しながら、モンドも羽根をぶわりと膨らませて。
周囲を見渡す。
――――重い。
あまりにも濃く、重い気配。
「囚人か・・・・!?」
「分からん・・・・だが、ただ事ではない!!」
放っておくだなんて選択肢は、最初から無かった。
「行くぞ!!」
「おう!」
ケーキが食べかけであるのも構わず、二人はチュチュを飛び出していく。
「中村さん?そんなに慌てて、どうしたんですか?」
「アッ!帆羽さん!ちょっと急用出来たんで、今日はここで!おつりはいりませーん!!」
「あ、ちょっと!?」
「・・・・どうしよう、この諭吉さん」
気配が濃い方へ駆けるごとに、街の様子が変わっていく。
建物にヒビが入り、蜘蛛の巣が張っていく。
「近いぞ!」
「ああ!ッ御用改めである!!」
十手を握り、同心の衣装をまとって飛び込めば。
「何者だい!?ベイビー!!」
シルクハットの青年と、
「プリキュアじゃない・・・・マジで誰よ!?」
お手本の様なギャルと、
「オウオウ!!新手かぁっ!?」
まさしく傾奇者な大男。
「・・・・ッ」
彼らと並んで、キュアアルカナ・シャドウの姿もある。
――――そして、
「――――何用だ、同心の妖精」
発言だけで、その場を支配する。
鎧の巨人が居た。
「ひ、大也さん・・・・!」
「ダメ、逃げて・・・・!」
後ろを見れば、記憶に新しいプリキュアの二人が。
満身創痍で地面に倒れているのが見えた。
「貴様らが、音に聞く怪盗団『ファントム』とやらかッ!?」
「――――如何にも」
モンドの鋭い問いかけに、鎧の巨人が悠然と頷く。
「そして、この私が首領『ウソノワール』である・・・・!」
「・・・・ッ」
言葉の一つ一つに、大也は物理的なプレッシャーを覚えながらも。
刀を霞に構え、切っ先をウソノワールに突き付けていた。
「――――ウソノワール様」
と、ここで前に進み出る者。
「ここは、私が」
アルカナ・シャドウだ。
「おっ!やる気だな新入り!」
「・・・・よかろう」
『傾奇者』のやんやを受けながら、大也と相対するアルカナ・シャドウに。
ウソノワールは再び頷いて許可を出す。
「現状でさえ、『未來自由の書』に載らぬ者共がいるのだ・・・・不確定要素は、消せる限り消せ!!」
「ライライサー!」
「――――ッ」
黙したままのアルカナ・シャドウの代わりに、お供妖精『マシュタン』が返事をすると同時に。
アルカナ・シャドウの姿が掻き消えた。
「消えた!?」
「どこに・・・・!?」
アンサーとミスティックが驚愕している目の前、大也はおもむろに十手を引き抜いて構える。
直後、破裂したような音を立てて、アルカナ・シャドウの蹴りが炸裂した。
「・・・・ッ」
「せぇあッ!!」
十手で受け止めたまま、掬い上げる様な斬り上げを放つ。
難なく避ける一方で、その威力と早さに一瞬だけ眉を広めるアルカナ・シャドウ。
着地と同時にロッドを突き出し、大也の肩を穿とうとする。
「――――ちょうど
大也はそれにも反応し、刀と十手を交差させて受け止めると。
更に踏み込んで鍔迫り合いに持ち込んだ。
「お前には、聞きたかことが
「・・・・ッ」
にやりと凄んで見せれば、アルカナ・シャドウは目に見えて険しい表情になった。
「ッ・・・・アルカナスターレイン!!」
すぐに大也を弾き飛ばし、無数の流星を撃ち込む。
視界を遮る黒煙から、飛びのいて逃れる彼を追いかけて。
自分から黒煙に飛び込むと、ほんの三歩で肉薄。
「ふ・・・・!」
「ッ、づ・・・・!」
防御の上から大ぶりを叩き込み、建物をぶち抜きながら吹っ飛ばした。
「ヒロヤ!」
「大也さん!」
モンドやプリキュア達が案じる声を上げる中を、アルカナ・シャドウはさらに追いかけていく。
「――――
建物を挟んだ、向こう側の通りに出ると。
立て直した大也が、出合い頭に斬りかかる。
「ラァッ!!」
「ッ・・・・!」
ロッドで受け止められた箇所を軸に体を翻し、蹴りを放つ。
アルカナ・シャドウはなんとかのけ反って、掠めさせるだけに留めると。
投げ飛ばす様に大也を遠ざけた。
(――――強くなっている)
明らかに研ぎ澄まされた動きで、体勢を立て直す大也を見て。
警戒を上方修正するアルカナ・シャドウ。
頭を切り替える為、得物をくるりと回しながら睨む。
(今、この場で・・・・『あの子』について追及されると困る・・・・!)
大也が求めている情報。
自分の目的、守るべきもの、背負った使命。
それらを加味して、『何が何でも叩きのめす』という結論を出す。
(やっぱ強か・・・・!)
一方の大也もまた。
刀を正眼に、十手を高波に構えて。
油断なく相手を見据える。
(オミネさんにしごかれたお陰で、動きも
優れた指導者に恵まれたおかげで、なんとか喰らいついていけている。
しかし、アルカナ・シャドウが格上であることは依然変わりなく。
鈍く息を吐き出して、緩んだ感覚を研ぎ澄ませた。
「良いぞヒロヤ!オミネとの鍛錬の成果が、良う出とる!!」
「ちょっと鍛えたくらいで調子に乗らないで!ッアルカナ・シャドウ!負けちゃダメよー!!」
――――それぞれの妖精達が、やんやの声で騒ぐ中。
空気が張りつめる。
「「――――ッ」」
大也も、アルカナ・シャドウも。
相手の一挙手一投足を見逃すまいと、注視する。
するり、するり。
間合いを測り合いながら、円を描くように動く。
仕掛けるか、否か。
目まぐるしく思考し続け、相手の隙を探り続ける。
――――そうやって、周囲への警戒が疎かになってしまったところへ。
「――――加勢するぜェッ!新人ッ!!」
「ッ、ゴウエモン・・・・!?」
飛び込んで来た『傾奇者』が、桜吹雪を放ってきた。
「あの同心小僧!なかなかやりやがるみたいだな!」
「・・・・邪魔だけはしないで」
『ゴウエモン』と言うらしい『傾奇者』を、しばしねめつけていたアルカナ・シャドウだったが。
このまま二人で押しきればいいと結論を出したようだ。
「二人がかりかよ・・・・!」
「悪く思うなよ!これもウソノワール様の為だ!」
アルカナ・シャドウだけでも不安を拭えないというのに、初見の敵が加わったとあっては。
さすがの大也も、苦い顔をせざるを得なかった。
「――――ならばこちらも一人増やそう!」
「モンド!」
その傍らに、モンドが駆けつけた。
「おおっ!どうするんだぁ?」
ゴウエモンが楽しそうに扇子を構えている隣で、警戒に目を細めるアルカナ・シャドウ。
今でこそ、マシュタンと変わりない愛らしい姿をしているが。
中身は数多の犯罪者と渡り合ってきた、歴戦の猛者。
無策で躍り出て来たとは、到底思えなかった。
「――――ああ、こうしてやるさ」
果たして。
不敵に笑ったモンドは、大也の肩から飛び立つと。
「――――いつの時代も」
両翼を広げ、全身から力を迸らせる。
「――――美味い食事と言うものは、ありがたいものじゃ」
ぬいぐるみの様な姿からは、想像もできない。
至近距離で肌を炙るプレッシャー。
「こ、これは・・・・!?」
「・・・・ッ!?」
ゴウエモンも、アルカナ・シャドウも。
驚愕と警戒に顔を強張らせる目の前。
「――――妖精にも、人にも」
幻だったはずの熱さが、炎という実際の形を以て顕現して。
「――――計り知れぬ力を、与えてくれる!!!!」
「――――