私は神◯万象チ◯コとデビ◯メイ◯ライから!!()
「な、何!?」
どぉん、と。
向こうの通りで上がった火柱に、誰もが目を見開く。
続けて、何かが建物を突き破って吹っ飛んできた。
ゴウエモンと、アルカナ・シャドウだ。
「・・・・何事か」
「ッウソノワール様!申し訳ございません!」
羽織った上着を派手に翻しながら、まとわりつく炎を振り払い。
言葉通り申し訳なさそうにするゴウエモンと、そんな彼の小脇に抱えられたアルカナ・シャドウ。
「しかし、『あれ』が来るとは思わず・・・・!」
そんな彼らが、苦い顔で見上げる先。
――――炎が、燃え盛っていた。
建物の上に立つ、大也の傍ら。
三つ足のカラスが、炎の翼を広げている。
大きさも、通常のカラスより一回りどころか三・四倍はあるだろうか。
「何、あれ・・・・!?」
「モンドさん?でも・・・・!?」
味方であるプリキュア達が困惑している中。
「――――
ジェットが素っ頓狂に叫ぶ。
「そ、それって何なの?ジェット先輩!」
「ポチィ!?」
「長生きした妖精だけが使える、切り札の一つだ!ボクも初めて見た・・・・!」
アンサーの問いに、やや興奮気味に答えるジェット。
普段あまり見ない先輩の様子に、『本当に珍しいものなんだ』と。
アンサーとミスティックは、改めて大也達を見つめた。
・・・・じりじりと空気を焼く熱気。
見るからに『熱い』と分かる燃え盛りぶり。
触れれば当然、火傷を負うだろう。
だと、言うのに。
「綺麗・・・・」
「うん・・・・」
あまりにも自然に、口からそんな感想が出て来た。
こんな時に、あんまりにも場違いな声色で発言してしまったことを一瞬恥じるが。
隣のミスティックも、同じ声色で肯定したことで。
少しだけほっとした。
「
一方、どこか高揚した声を上げたのは、成行きを静観していたウソノワールだ。
「――――モンド」
「ああ、手傷の一つは負わせてやろう!」
迸る闇の力を前に、大也達もまた徹底抗戦の構え。
再度燃え上がったモンドの炎を、袈裟に構えた刀に纏わせて。
「来るがいい!!」
文字通り飛び掛かってきた大也達へ、ウソノワールはシンプルな拳を突き出す。
単純故に、よく分かる。
ウソノワールが秘めた、力の片鱗。
当然怯むことなく、大也は刀を掲げて。
「――――
――――刹那。
業火が立ち上った。
怪盗団はそれぞれ自分で、プリキュア達はミスティックのバリアに隠れて。
必死にやり過ごす。
「・・・・ッ」
「終わ、た・・・・?」
やがて熱気が収まり、アンサーが恐る恐るバリアから顔を出すと。
「――――悪くない威力だ」
直撃した箇所から、かすかな黒煙を上げながらも。
掠り傷一つ追っていないウソノワールが、厳かに賞賛を口にする。
もちろん、大也は苦い顔を隠せない。
「倒せるとは到底思っておらんかったが・・・・甘かったか!」
モンドも口惜し気に炎を滾らせ、悔しさをにじませた。
「ニジーよ、未來自由の書は?」
「・・・・まだ、何も」
「・・・・これでも、まだ、か」
対するウソノワールはと言うと、大也達を見据えたまま背後に問いかける。
分厚い本を恭しく広げたニジーが、首を横に振って答えると。
ウソノワールは、焦りと苛立ちを含んだ声で唸り声。
「どちらにせよ、消えてもらおう」
一呼吸で切り替えて、再び拳が握られる。
「――――プリキュアにも、同心にも!!」
再三迸った、ウソノワールの闇の力。
「ッ来るぞ!」
「ああッ!」
「ッわたし達も・・・・!」
「ええっ・・・・!」
まさしく『嘘だ』と言いたくなる覇気を前に。
大也とモンドも負けじと炎を再燃させ、先んじた攻防で満身創痍だったプリキュア達もなんとか立ち上がる。
「ヌウウウウウンッ!!」
「
ウソノワールの拳と、大也・モンドのコンビ技。
焼き増しの様な激突の横を、アンサーとミスティックが果敢に駆け抜けて。
「「たあああああッ!!」」
両サイドから、飛び蹴りを叩き込もうとするが。
「――――愚かッ!!」
「うおっ!?」
大也達は真正面から競り負けてしまい。
「ああっ!」
ミスティックは近くの本屋に突っ込み、
「きゃあっ!」
アンサーは、ウソノワールの足元に転がった。
「キュアアンサー・・・・未來自由の書に載らぬ異分子・・・・!」
「くっ・・・・!」
足元の彼女を見下ろしたウソノワールの声には、節々から怒りがにじみ出ていた。
「ッ、アンサァー・・・・!!」
それでもなんとか立ち上がったアンサーは。
「アタァーックッ!!」
拳に嘘を破る力を纏わせて、叩きつける。
しかし、疲労とダメージで威力が半減した攻撃は。
悲しいほど簡単に受け止められてしまう。
「――――嘘よ、覆え」
そんな彼女を見下したウソノワールの目元が、怪しく輝く。
「お前は私に跪く・・・・!」
ウソの力を持った言葉が、アンサーに直撃する。
「――――っあ」
彼女の瞳が、邪に染まる。
途端に、意志に背き始める体。
動きたくないのに、動こうとする。
身をかがめて、膝を折って。
言われた通り、跪こうとしていた。
「ぅ・・・・っづ・・・・!」
「ひれ伏せ、プリキュア」
必死に抵抗するアンサーへ、ウソノワールは命令を重ねる。
「お前の行く末は、私が決める」
声が、言葉が。
物理的な重みを伴って、押さえつけて来る。
「いかん!」
「ああ!」
その様子を見て、大也は再びモンドと並んで突撃。
ウソノワールへ攻撃し、せめて今行われている『支配』を妨害しようと試みるが。
「ッ・・・・!」
「ッ、お前・・・・!?」
アルカナ・シャドウが割り込み、大也達の攻撃を受け止めた。
「っぅ・・・・!」
「そこどけッ!邪魔すんなァッ!!」
高温の炎に晒され、目を開けているのもつらいだろうに。
一歩も退く様子を見せない彼女を、大也が突き飛ばそうとすると。
「生きがいいな!!ボウズ!!」
焼き増しの様に、ゴウエモンが加勢してくる。
「悪いが、ウソノワール様の邪魔はさせないぞ!!」
「ッ、クソ!!」
「ヒロヤ、後ろもだ!」
背後には『青年』と『ギャル』も立ちはだかり、すっかり取り囲まれてしまっていた。
「大人しくしていることだね、ベイビー」
「さもないとぉ、チョベリバな目に遭うよォ?」
「ッヂ・・・・!」
まさしく四面楚歌の状況に、大也は舌を打つ。
「どうする、ヒロヤ・・・・!?」
「どうも
「・・・・は、愚問であったな!!」
自らの炎に負けず劣らずの闘志を燃やす大也を目の当たりにして、モンドもまた不敵に笑った。
「――――いやだ」
――――そんな彼らに、呼応するかのように。
アンサーの声が聞こえた。
は、となって振り向いた先。
「あなたの言うことなんか・・・・聞かない・・・・!」
――――立っている。
重くて、重くて。
恐ろしくて、恐ろしくて。
溜まらないだろうに。
ウソノワールの『言葉』に逆らって、抗って。
立ち上がっている。
「わたしの答えは・・・・!」
「何・・・・!?」
ウソノワールの声が、初めて驚愕を帯びる中。
「わたしが出すんだああぁーーーッ!!」
雄叫びと共に、重圧を打ち払ったのだった。
「なんだと・・・・!?」
「ウソノワール様のウソを・・・・破った!?」
「おおっ!やるなぁ!」
怪盗達も信じられない光景に目を向き、そちらに注視してしまう。
『今だ』とぎらついた大也の目に、アルカナ・シャドウだけが気付いた。
「ッ
「ぐあっ!」
「ッしまった!」
ぎゅるりと回転して、広範囲に炎と斬撃を放って包囲網を脱出。
アンサーの下へひとっ飛びして、ウソノワールに肉薄すると。
「
「ぬう・・・・!」
再三の必殺技を目くらましに叩き込んで、アンサーを回収。
ミスティック達の下へ、送り届けた。
「アンサー!」
「は、は、は・・・・っ、ありがとう、大也さん、モンドさん・・・・!」
「気にすんな、まだ終わっとらん」
「よくぞ退けた、天晴じゃ!」
ミスティックにアンサーを託しながら、刀を構えなおす。
「私のウソが・・・・!」
ウソノワールはと言うと。
アンサーに能力を破られたのが、よほど屈辱的だったらしい。
拳を握りしめ、わなわな震えている。
「未來自由の書は・・・・!?」
自らの問いに、本を持っていたマシュタンが、首を横に振ったのを見たウソノワールは。
今度こそ、怒りを爆発させて。
「やはり、消えてもらうしかないなッ!!プリキュアッ!!」
飛び掛かって来た。
――――速い。
今までが本気ではなかったと、手に取る様に分かるくらいに速い。
向けられる拳の圧力を前に、一瞬だけ硬直してしまった大也。
慌てて刀を振ろうとしたが、とっくに致命的な差が生まれてしまっていた。
(せめて、壁になれることを祈るしか・・・・!!)
出来る限り、足を踏ん張って構えた。
拳はもう目の前。
プリキュア達は、やっと動き出そうとしてくれているが。
もう遅い。
「――――は」
――――刹那。
誰かが。
否。
(――――キュアアルカナ・シャドウ!?)
理解が追いついた時には、彼女のロッドがウソノワールの拳と激突していた。
衝撃がはじけ飛び、大也の体が一瞬浮かび上がる。
「なんのつもりだ・・・・キュアアルカナ・シャドウッ!?」
ありったけの憤怒をぶつけられたからか、それとも拳の威力か。
大也も、そしてプリキュア達も初めて見る。
余裕のない表情のアルカナ・シャドウ。
「ッ・・・・未來自由の書が・・・・!」
「何・・・・?」
そんな彼女から、何度も気にかけている書物の名を告げられて。
ウソノワールは怪訝な声を上げる。
『青年』がうやうやしく持ってくると。
戦いの最中にも関わらず、件の書に目を通し始めた。
「・・・・今はこのまま去れとある」
そして読み終えるや否や、あっさり踵を返してしまった。
「全ては未來自由の書の為に・・・・」
「はっ?」
「待てッ!!」
あまりに急なことに、事態を呑み込めない大也が呆ける横。
モンドは果敢に引き止める。
「貴様ら、マコトジュエルを手に入れてなんとする!?先ほどから気にかけている未來自由の書とは、何なのだッ!?」
「・・・・よかろう」
答えられるほどの余裕が出来たのか、ウソノワールはマントを靡かせて振り向いた。
「この未來自由の書とは、遥か過去に占いの妖精が書き記した予言書だ。ここには、未来のあらゆる出来事が浮かび上がり、読み解くものを導いてくれる」
「ちなみに、アタシのご先祖様が著者よ」
「予言書とか、実在してたのか・・・・!?」
予言書の存在に、普通にびっくりする大也へ。
マシュタンはウィンクを飛ばす。
「誰にも読み解けなかったこれを、ウソノワール様だけが読むことが出来た」
「・・・・お前達とは、近いうちにまた会うことになるだろう、プリキュア。未來自由の書に、予言にある」
マシュタンの補足が終わったタイミングで、再び口を開くウソノワール。
「1999年、七の月。真の地で真実の石を抱くもの、大王となる」
「――――そして、世界が嘘の陰で覆われる」
彼が諳んじた内容に、誰もが目を見開いていく。
・・・・同じ旨の文言を。
耳にしたこと上がった。
まさしく今年、1999年。
日本どころか、世界を騒がせている大予言。
「ノストラダムス・・・・!?」
それを、本気で実現させようとしているのか。
いや、しかし。
今しがた、散々見せつけられた彼の実力は、確かに。
世界を滅ぼす『大王』に相応しい暴威で。
「私は大王となり、世界を嘘で覆う」
戸惑っている大也達へ、迷いなく宣言するウソノワール。
「次に会う時が、世界とお前達の終わりとなるであろう・・・・!」
その言葉を最後に、緑の炎に包まれて。
もう用はないとばかりに、ウソノワールは立ち去る。
それを皮切りに、他の怪盗達も同じ炎に包まれて撤退していく。
「・・・・はぁ」
「――――あの!」
軽くなっていく空気に、ずっと張りつめていた大也が息を吐き出していると。
アンサーとミスティックが、同じく去ろうとしていたアルカナ・シャドウを呼び止めていた。
「ありがとう、助けてくれて!」
「・・・・勘違いしないで、ただ、予言が出たから」
――――確かに。
先ほど、ウソノワールの攻撃を受け止めていたのは彼女だ。
何らかの思惑があったにせよ、わざわざ敵にお礼を伝えるとは。
「それに、私にはやることがある・・・・邪魔しないで」
モンドが元に戻る横。
『律儀だな』とぼんやり考えている大也へ、
「あなたもよ、中村大也」
「・・・・なんや」
アルカナ・シャドウが目を向けて来た。
「次、邪魔したら・・・・潰す」
「・・・・は、やってみろ」
鋭い視線へ、挑発的に笑い返すと。
癪に障ったらしいアルカナ・シャドウは、さらに視線を鋭く
してから。
緑の炎の中に撤退していったのだった。
「マコトジュエル・・・・話には聞いていたが、それほどの力を秘めていようとは・・・・!」
キュアット探偵事務所、中庭。
共にウソノワールの襲撃を生き延びた面々は、情報を整理しなおしていた。
あんなとみくるの境遇、マコトジュエルのこと、ウソノワールのウソの力。
改めてそれらを聞いたモンドは、眉間を揉みながら難しい顔をする。
「『嘘を現実にする力を永遠にする』・・・・そんなこと出来るのか?」
「可能であろうな・・・・信じる力というものは、我らが思っている以上に強大なのだ」
大也の問いかけに、モンドはこっくり頷く。
「1999年、七の月・・・・あいつが大王になるのはマズかよな・・・・」
想起する。
ウソノワールの、強大な力。
速さ、重さ、威圧。
何もかもが、桁違いだった。
現時点ですら、大王を名乗っても不思議ではないのに。
それがさらに進化しかねない?
『冗談ではない』、と言いたくなる。
「むぅ・・・・脱獄囚ばかりに気を向けているのは、危ういかもしれんのう・・・・」
モンドと一緒に、大也が静かに頭を抱えていると。
「「――――きゃーっ!!」」
「うおっ!?」
「ぬうっ!?」
考え込んでいるところへ、あんな達の悲鳴が聞こえたものだから。
二人そろって、肩を跳ね上げた。
「な、何事じゃ!?」
「モンドさん!大也さん!」
「ポチタンが!」
狼狽えている彼らの下へ、あんな達が駆け寄ってくる。
しかし、悲鳴を上げた割には、その顔はとってもキラキラしていて。
「ポチタンがどうしたのだ?」
「――――もーお!」
落ち着かせるように、モンドが話しかけると。
みくるが、ずい、と差し出したポチタンが満面の笑みで。
名前らしき単語を、口にしたのだった。
「・・・・む?」
「ひょー!ひょー!」
ぽかんとする目の前で、続けて元気に大也を指したことから。
「・・・・もしかして、名前を呼んでいる?」
「そーなんです!!」
鼻息を荒くした、あんなとみくるがまくしたてるには。
今回ウソノワールからなんとか守り抜いたマコトジュエルを、ポチタンに与えたところ。
おしゃべりが出来る様になったとのことだった。
「あんなのことや、わたしの名前も呼んでくれてー!!」
――――最大の危機から、脱したこともあるのだろう。
あんなもみくるも、ニッコニコでポチタンを頬ずりしている。
「・・・・呑気だな」
「はははっ、まあ、折れてしまうよりはずっとよかろうて!」
「そりゃあ、そう
悲鳴は悲鳴でも、黄色い悲鳴であったことに脱力してしまう大也だったが。
「・・・・ま、
微笑ましい彼女達を、しばし目の当たりにして。
静かに笑うのだった。
おまけ
拙作オリジナル。
長生きした力のある妖精だけが使える切り札。
生命力に等しい『信じる・信じられる力』を、文字通り爆発的に燃やすことで。
自らの力を底上げする。
チュチュのケーキをちょくちょく食べていたことで、ある程度力が戻ったことと。
オミネに鍛えられた大也が、モンドの力に耐えうるだけの体になったこともあって。
今回解禁した。