大丈夫そうなのでこのまま行きます!()
「――――るるかさん!?」
猫を探していたところに、現れた人物に。
あんなとみくる、それから大也が身構える。
「えっ?えっ?なになに!?」
三者三様に臨戦態勢に入ったのを見て、エリザが困惑する横では。
るるかの腕からすり抜けたミーコが、虎太朗の胸に飛び込んでいた。
「ミーコ・・・・よかった、ミーコ・・・・!」
「にゃぁん」
「――――ここで
涙ながらに再会を喜ぶ二人に安堵しつつ、大也が鋭く問いかけると。
「その子の首輪に、マコトジュエルが宿っているから」
「えっ・・・・あっ、首輪がない」
るるかは相変わらずの読みにくい表情で、そんなことを告げる。
その言葉を受けた虎太朗が、ミーコの首元を確認。
首輪は、無くなっていた。
「首輪はどこ!?」
「さあ、どこかしら?」
ファントムの一員で、マコトジュエルを狙ってやってきている。
一番の容疑者であるるるかに、あんなが果敢に問い詰めると。
マシュタンが『はあ?』と逆ギレ気味に反応する一方、るるかは挑発的に笑うだけ。
・・・・ゴウエモンを始めとした、他のメンバーと空んでいる可能性もあるが。
何にせよ、放っておく理由もない。
「あんな!」
「うん!」
あんなとみくるが、ジュエルキュアウォッチに手をかけたのを見た大也は。
「ッ、すぐ戻る!」
「二人とも、こっちに!」
「な、何がどうなってるの!?」
「
まず、エリザと虎太朗を安全圏に逃がすことにした。
「あとは頼みます!ジェットさん!」
「ああ!」
ジェットに困惑しきりの二人を任せて、現場にとんぼ返りすれば。
「――――ハンニンニャーン!!」
巨大な猫の姿をしたハンニンダーと、アゲセーヌが新たに加わっていた。
「ヒロヤ!」
「ッ御用改めである!」
十手を発動させ、同じく変身していたアルカナ・シャドウと対峙する大也。
「・・・・中村、大也」
一度撤退しようとしていた彼女だったが、大也が来たことで取りやめたらしい。
ロッドを軽く取り回して、構え直す。
十手と刀を抜き放った大也もまた、天地に構えることで応じた。
「・・・・そっちは任せる」
「ハァッ!?」
「マコトジュエルは頼む!」
「「はい!」」
それぞれの味方にもう一方を任せ、あるいは託して。
しばし、相手を見据えると。
「「・・・・ッ!」」
どちらともなく飛び出して、得物を激突させる。
一合、二合、三合。
火花を散らして剣戟を交わす。
「オオオッ!!」
「・・・・ッ」
ひたすら間合いに飛び込もうとする大也と、同じく寄せ付けまいとするアルカナ・シャドウ。
一進一退、息もつかせぬ攻防は。
もし、画面の向こうから見ているものがいるのなら。
『踊っている様だ』という感想が出て来ただろう。
「シィッ!!」
「見えてる」
背後を取った大也が十手で殴りかかると、ロッドを背に回して難なく防ぐアルカナ・シャドウ。
しかし、次の瞬間。
大也はにやりと笑って。
「――――
十手を摺り上げると、鉤の部分にロッドを引っかけて弾き飛ばす。
「・・・・ッ!?」
まさに『刀奪い』の別名に相応しい使い方に、目を見開くアルカナ・シャドウ。
「オラァッ!!」
今だとばかりに、掬い上げる様な一閃を放つ大也だったが。
「ッ、の・・・・!」
「・・・・ッ!?」
アルカナ・シャドウはあろうことか、刃をブーツの底で受け止めると。
そのまま踏みつけて刀を封じてしまう。
「アルカナ・シャドウー!!」
「ありがとう、マシュタン」
そこへさらに、マシュタンが回収したロッドを受け取ると。
大也の横っ面へ、叩き込もうとする。
「・・・・ッ」
「っあ・・・・!?」
対する大也は、なんと刀を手放した。
足場が崩れ、アルカナ・シャドウは間合いを乱される。
「――――煌鴉」
体を大きく逸らして、ロッドを回避した大也は。
まんまと懐に潜り込み。
「――――一閃ッ!!」
「――――ッ!!」
炎の打撃を、クリーンヒットさせたのだった。
「アルカナーッ!」
「あ、ぐ・・・・!」
肩を押さえて、溜まらず後退するアルカナ・シャドウ。
楕円形に掘げたケープの穴からは、肌が赤く腫れ上がっているのが見えていた。
「ちょーっと!!アンタァッ!!乙女のお肌になんてことをーッ!!?」
「いや、挑んできたのはそちらであろうに・・・・」
それを見た途端、マシュタンが瞬間湯沸かし器よろしく激昂する。
思わず、モンドが一度は帰りかけていたことを指摘したが。
「ハァーンッ!?」
「ぬおっ・・・・」
マシュタンの勢いに、気圧されてしまっていた。
一方の大也とアルカナ・シャドウは、互いを警戒の眼差しで見合い続けていたが。
「――――お前じゃないなら」
ふと、大也が口を開く。
「お前じゃないなら、誰が奪った?」
アルカナ・シャドウの目が、見開かれる。
「お前じゃないなら、
「・・・・ッ」
刹那。
ロッドが振るわれて、星が展開されて。
「――――アルカナスターレインッ!!」
「・・・・ッ!?」
「ヒロヤッ!!」
いつになく『殺る気満々』の攻撃に、思わず怯んだ大也を。
精霊転化したモンドの、紅蓮の炎が包んで守る。
「すまん、モンド!」
「無事なら良し!」
手短に礼を言いつつ、炎の壁を解除すれば。
アルカナ・シャドウ達の姿は、跡形もなく消えていた。
「退いたか・・・・」
気付けば、ハンニンダーも倒されたらしい。
風景が元に戻っている。
「大也さーん!」
「明智、小林。首輪は?」
「ばっちりです!」
「ばっちり!ばっちり!」
予想通り、あんな達が首輪もマコトジュエルも取り戻したらしい。
手足をパタパタさせながら近寄って来たポチタンの頭を、モンドが『良ぅやった、良ぅやった』と撫でていた。
「さて、早ぅ首輪を返してやらんとな」
「はい!」
「エリザさんも待たせちゃってるし、行きましょう!」
「ほーら、ミーコ」
「ニャ~ン!」
虎太朗に、無事に戻って来た首輪を掛けられて。
ミーコは嬉しそうに一鳴きしてから、喉を鳴らして彼にすり寄った。
「あははっ!よかったねぇ、ミーコ」
虎太朗もまた、安堵と喜びに満ちた顔でミーコを心行くまで抱きしめると。
元気いっぱいに手を振りながら、家路に着いていった。
「――――首輪を取り戻すなんてすごいよ!」
虎太朗達の姿が見えなくなって間もなく。
すっかり興奮したエリザが、キラキラした目を向けてくる。
「さすが名探偵だね!」
「エリザさんこそ!」
「虎太朗くんの気持ちに寄り添ったから、ミーコちゃんを見つけることが出来ましたし!」
心からの賞賛に、あんなとみくるも同じ熱量のそれを返す。
事実として、エリザの協力が無ければもっと長丁場になっていただろう。
その間に、ミーコがなんらかの原因で、怪我を負わないとも限らなかった。
「それに気付かせてくれたのは、二人だよ!」
しかし、エリザの興奮は冷めやらぬ。
「諦めない心が、真実のページを刻む!そのページにいたのは、ミーコちゃん、笑顔の虎太朗くん!そして、名探偵の二人!」
今日一日の体験を通じて得たものは、相当大きかったようだ。
大絶賛に、あんなとみくるはとうとう照れくさ気な笑顔を浮かべた。
「今日の経験を活かして、探偵エリーの続編を書いて見せる!そして日本中・・・・いいえ、世界中の人を幸せにする!」
輝かしい笑顔で語るのは、十代特有のちょっと壮大な夢。
しかし人生を豊かにするのは、案外そう言ったエネルギーなのである。
「実はね!もう思いついているの!」
そして、エリザはそこに手が届きうる輝きを秘めていた。
取り出したメモ帳に、アイデアを書きつけていく。
――――ある日突然。
名探偵エリーの前に現れたのは、謎の猫探偵!
手に汗握る推理合戦の行く末は、如何に!?
「わぁー!楽しみー!」
エリザの口からこぼれ出た内容に、作品のファンであるみくるは期待に胸を躍らせていた。
「若さというのは、良いものじゃの」
「まったくだ」
「はは・・・・」
どこか年寄り臭い感想を零したモンドとジェットに、大也は苦笑いを零したのだった。
「――――なんたる失態か」
怪盗団のアジト。
劇場のVIP席にて、ウソノワールは怒りに震えていた。
「約束の日は近づいているというのに、一つもマコトジュエルを手に入れられんとは・・・・!」
「ま、マジゴメンだしウソノワール様!」
「・・・・」
アゲセーヌは平謝り、るるかも静かに目を伏せる。
「特に・・・アルカナ・シャドウ」
ギラリ、と。
ウソノワールの目が、るるかに向けられる。
「貴様、ここのところ同心の妖精達にしてやられているな」
「・・・・ッ」
――――るるかが、恐れていた話題だ。
奴に、大也に圧され始めていることはいい。
ただ、
(――――くれあ)
奴との因縁の理由に触れられるのは。
『あの子』の存在を感づかれるのだけは。
絶対に避けねばならない。
(どうする、どう誤魔化す・・・・!?)
何よりも最優先すべきは、『あの子』の安全。
かつてないほど頭を回転させながら、切り抜け方を何百パターンもシミュレーションする。
「――――お言葉ですが、ウソノワール様!」
「・・・・何だ?」
そこへ声を上げたのは、ゴウエモンだった。
「同心の妖精と、その相棒については、新人はよくやってくれています!」
「・・・・ほう?」
手すりに片足をかけ、歌舞伎役者よろしく見得を切った彼は。
ウソノワールの圧をものともせずに発言する。
「新人がやつらを押さえてくれているからこそ、オレ達もプリキュアに集中出来ているんです!ここでこいつらを奈落にでも落としてしまえば、それこそ取り返しのつかない事態になるかと!」
「・・・・まあ、確かに」
ゴウエモンの演説を聞き、ニジーは頷きを一つ。
アゲセーヌもぶすっとしてはいるが、言い分は理解しているらしい。
「なればこそ!いつぞや新人の言っていた『頼み事』も、聞き入れてやってはくれませんか!?」
「・・・・頼み事?」
畳みかけるゴウエモンに、心当りのないるるかは首を傾げたが。
マシュタンだけは、顔色を変えた。
「ゴウエモン、聞いてたの!?」
「すまん、聞くつもりは無かったんだが・・・・たまたまな」
どうやら、るるかの知らない間に何か交渉ごとをしていたらしい。
「ふむ・・・・」
そして、ウソノワールは。
息を一つ吐いて、しばし沈黙してしまった。
一分とも、十分とも取れる。
重たい時間が流れて。
「――――よかろう」
やがて、ウソノワールは重々しく口を開く。
「アルカナ・シャドウ、今回はゴウエモンに免じて不問とし、お供妖精の要望も聞き入れよう・・・・次はないぞ」
「・・・・分かった」
「ありがとうございます、ウソノワール様」
『あの子』に触れられることを、回避できた安堵に。
るるかの口元から、鈍い息が吐き出された。
「・・・・マシュタン、いつの間に?」
「ご、ごめんなさい・・・・上手く行くかは、占いでも五分五分だったものだから・・・・」
次いで、膝のマシュタンに話しかけると、彼女はバツが悪そうに耳をぺたんとさせていた。
「・・・・ありがとう」
「当たり前よ!アタシはあなたのパートナーなんだから!」
彼女が、味方でいてくれていることが嬉しくって。
溢れる思いのままに抱きしめると、マシュタンは嬉しそうに身じろぎした。
「――――ゴウエモン」
「ん?」
自室に戻る前、るるかはゴウエモンを呼び止めた。
「・・・・助かった、ありがとう」
「オウ!気にすんな!新人の面倒を見るのは、先輩の役目だからな!アッハッハッ!」
顎を引くだけだったが、頭を下げたるるかに。
ゴウエモンはにっかり笑って、高笑いをしたのだった。
大也とるるかちゃんは、あの猫とネズミの様な。
『互いをドつき合うあまりステップ踏んで踊り出しちゃう関係』になる予定・・・・()