妖精犯科帳   作:数多 命

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38話、くれあさんが深堀されるかもと身構えていましたが。
大丈夫そうなのでこのまま行きます!()


弐弐

「――――るるかさん!?」

 

猫を探していたところに、現れた人物に。

あんなとみくる、それから大也が身構える。

 

「えっ?えっ?なになに!?」

 

三者三様に臨戦態勢に入ったのを見て、エリザが困惑する横では。

るるかの腕からすり抜けたミーコが、虎太朗の胸に飛び込んでいた。

 

「ミーコ・・・・よかった、ミーコ・・・・!」

「にゃぁん」

「――――ここで何ばしよった(何をしていた)?」

 

涙ながらに再会を喜ぶ二人に安堵しつつ、大也が鋭く問いかけると。

 

「その子の首輪に、マコトジュエルが宿っているから」

「えっ・・・・あっ、首輪がない」

 

るるかは相変わらずの読みにくい表情で、そんなことを告げる。

その言葉を受けた虎太朗が、ミーコの首元を確認。

首輪は、無くなっていた。

 

「首輪はどこ!?」

「さあ、どこかしら?」

 

ファントムの一員で、マコトジュエルを狙ってやってきている。

一番の容疑者であるるるかに、あんなが果敢に問い詰めると。

マシュタンが『はあ?』と逆ギレ気味に反応する一方、るるかは挑発的に笑うだけ。

・・・・ゴウエモンを始めとした、他のメンバーと空んでいる可能性もあるが。

何にせよ、放っておく理由もない。

 

「あんな!」

「うん!」

 

あんなとみくるが、ジュエルキュアウォッチに手をかけたのを見た大也は。

 

「ッ、すぐ戻る!」

「二人とも、こっちに!」

「な、何がどうなってるの!?」

「良かけん(良いから)!とにかく離れて!」

 

まず、エリザと虎太朗を安全圏に逃がすことにした。

 

「あとは頼みます!ジェットさん!」

「ああ!」

 

ジェットに困惑しきりの二人を任せて、現場にとんぼ返りすれば。

 

「――――ハンニンニャーン!!」

 

巨大な猫の姿をしたハンニンダーと、アゲセーヌが新たに加わっていた。

 

「ヒロヤ!」

「ッ御用改めである!」

 

十手を発動させ、同じく変身していたアルカナ・シャドウと対峙する大也。

 

「・・・・中村、大也」

 

一度撤退しようとしていた彼女だったが、大也が来たことで取りやめたらしい。

ロッドを軽く取り回して、構え直す。

十手と刀を抜き放った大也もまた、天地に構えることで応じた。

 

「・・・・そっちは任せる」

「ハァッ!?」

「マコトジュエルは頼む!」

「「はい!」」

 

それぞれの味方にもう一方を任せ、あるいは託して。

しばし、相手を見据えると。

 

「「・・・・ッ!」」

 

どちらともなく飛び出して、得物を激突させる。

一合、二合、三合。

火花を散らして剣戟を交わす。

 

「オオオッ!!」

「・・・・ッ」

 

ひたすら間合いに飛び込もうとする大也と、同じく寄せ付けまいとするアルカナ・シャドウ。

一進一退、息もつかせぬ攻防は。

もし、画面の向こうから見ているものがいるのなら。

『踊っている様だ』という感想が出て来ただろう。

 

「シィッ!!」

「見えてる」

 

背後を取った大也が十手で殴りかかると、ロッドを背に回して難なく防ぐアルカナ・シャドウ。

しかし、次の瞬間。

大也はにやりと笑って。

 

「――――ない、こぃは(なら、これは)?」

 

十手を摺り上げると、鉤の部分にロッドを引っかけて弾き飛ばす。

 

「・・・・ッ!?」

 

まさに『刀奪い』の別名に相応しい使い方に、目を見開くアルカナ・シャドウ。

 

「オラァッ!!」

 

今だとばかりに、掬い上げる様な一閃を放つ大也だったが。

 

「ッ、の・・・・!」

「・・・・ッ!?」

 

アルカナ・シャドウはあろうことか、刃をブーツの底で受け止めると。

そのまま踏みつけて刀を封じてしまう。

 

「アルカナ・シャドウー!!」

「ありがとう、マシュタン」

 

そこへさらに、マシュタンが回収したロッドを受け取ると。

大也の横っ面へ、叩き込もうとする。

 

「・・・・ッ」

「っあ・・・・!?」

 

対する大也は、なんと刀を手放した。

足場が崩れ、アルカナ・シャドウは間合いを乱される。

 

「――――煌鴉」

 

体を大きく逸らして、ロッドを回避した大也は。

まんまと懐に潜り込み。

 

「――――一閃ッ!!」

「――――ッ!!」

 

炎の打撃を、クリーンヒットさせたのだった。

 

「アルカナーッ!」

「あ、ぐ・・・・!」

 

肩を押さえて、溜まらず後退するアルカナ・シャドウ。

楕円形に掘げたケープの穴からは、肌が赤く腫れ上がっているのが見えていた。

 

「ちょーっと!!アンタァッ!!乙女のお肌になんてことをーッ!!?」

「いや、挑んできたのはそちらであろうに・・・・」

 

それを見た途端、マシュタンが瞬間湯沸かし器よろしく激昂する。

思わず、モンドが一度は帰りかけていたことを指摘したが。

 

「ハァーンッ!?」

「ぬおっ・・・・」

 

マシュタンの勢いに、気圧されてしまっていた。

一方の大也とアルカナ・シャドウは、互いを警戒の眼差しで見合い続けていたが。

 

「――――お前じゃないなら」

 

ふと、大也が口を開く。

 

「お前じゃないなら、誰が奪った?」

 

アルカナ・シャドウの目が、見開かれる。

 

「お前じゃないなら、なして(どうして)怪盗団におる(いる)?」

「・・・・ッ」

 

刹那。

ロッドが振るわれて、星が展開されて。

 

「――――アルカナスターレインッ!!」

「・・・・ッ!?」

「ヒロヤッ!!」

 

いつになく『殺る気満々』の攻撃に、思わず怯んだ大也を。

精霊転化したモンドの、紅蓮の炎が包んで守る。

 

「すまん、モンド!」

「無事なら良し!」

 

手短に礼を言いつつ、炎の壁を解除すれば。

アルカナ・シャドウ達の姿は、跡形もなく消えていた。

 

「退いたか・・・・」

 

気付けば、ハンニンダーも倒されたらしい。

風景が元に戻っている。

 

「大也さーん!」

「明智、小林。首輪は?」

「ばっちりです!」

「ばっちり!ばっちり!」

 

予想通り、あんな達が首輪もマコトジュエルも取り戻したらしい。

手足をパタパタさせながら近寄って来たポチタンの頭を、モンドが『良ぅやった、良ぅやった』と撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、早ぅ首輪を返してやらんとな」

「はい!」

「エリザさんも待たせちゃってるし、行きましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーら、ミーコ」

「ニャ~ン!」

 

虎太朗に、無事に戻って来た首輪を掛けられて。

ミーコは嬉しそうに一鳴きしてから、喉を鳴らして彼にすり寄った。

 

「あははっ!よかったねぇ、ミーコ」

 

虎太朗もまた、安堵と喜びに満ちた顔でミーコを心行くまで抱きしめると。

元気いっぱいに手を振りながら、家路に着いていった。

 

「――――首輪を取り戻すなんてすごいよ!」

 

虎太朗達の姿が見えなくなって間もなく。

すっかり興奮したエリザが、キラキラした目を向けてくる。

 

「さすが名探偵だね!」

「エリザさんこそ!」

「虎太朗くんの気持ちに寄り添ったから、ミーコちゃんを見つけることが出来ましたし!」

 

心からの賞賛に、あんなとみくるも同じ熱量のそれを返す。

事実として、エリザの協力が無ければもっと長丁場になっていただろう。

その間に、ミーコがなんらかの原因で、怪我を負わないとも限らなかった。

 

「それに気付かせてくれたのは、二人だよ!」

 

しかし、エリザの興奮は冷めやらぬ。

 

「諦めない心が、真実のページを刻む!そのページにいたのは、ミーコちゃん、笑顔の虎太朗くん!そして、名探偵の二人!」

 

今日一日の体験を通じて得たものは、相当大きかったようだ。

大絶賛に、あんなとみくるはとうとう照れくさ気な笑顔を浮かべた。

 

「今日の経験を活かして、探偵エリーの続編を書いて見せる!そして日本中・・・・いいえ、世界中の人を幸せにする!」

 

輝かしい笑顔で語るのは、十代特有のちょっと壮大な夢。

しかし人生を豊かにするのは、案外そう言ったエネルギーなのである。

 

「実はね!もう思いついているの!」

 

そして、エリザはそこに手が届きうる輝きを秘めていた。

取り出したメモ帳に、アイデアを書きつけていく。

――――ある日突然。

名探偵エリーの前に現れたのは、謎の猫探偵!

手に汗握る推理合戦の行く末は、如何に!?

 

「わぁー!楽しみー!」

 

エリザの口からこぼれ出た内容に、作品のファンであるみくるは期待に胸を躍らせていた。

 

「若さというのは、良いものじゃの」

「まったくだ」

「はは・・・・」

 

どこか年寄り臭い感想を零したモンドとジェットに、大也は苦笑いを零したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――なんたる失態か」

 

怪盗団のアジト。

劇場のVIP席にて、ウソノワールは怒りに震えていた。

 

「約束の日は近づいているというのに、一つもマコトジュエルを手に入れられんとは・・・・!」

「ま、マジゴメンだしウソノワール様!」

「・・・・」

 

アゲセーヌは平謝り、るるかも静かに目を伏せる。

 

「特に・・・アルカナ・シャドウ」

 

ギラリ、と。

ウソノワールの目が、るるかに向けられる。

 

「貴様、ここのところ同心の妖精達にしてやられているな」

「・・・・ッ」

 

――――るるかが、恐れていた話題だ。

奴に、大也に圧され始めていることはいい。

ただ、

 

(――――くれあ)

 

奴との因縁の理由に触れられるのは。

『あの子』の存在を感づかれるのだけは。

絶対に避けねばならない。

 

(どうする、どう誤魔化す・・・・!?)

 

何よりも最優先すべきは、『あの子』の安全。

かつてないほど頭を回転させながら、切り抜け方を何百パターンもシミュレーションする。

 

「――――お言葉ですが、ウソノワール様!」

「・・・・何だ?」

 

そこへ声を上げたのは、ゴウエモンだった。

 

「同心の妖精と、その相棒については、新人はよくやってくれています!」

「・・・・ほう?」

 

手すりに片足をかけ、歌舞伎役者よろしく見得を切った彼は。

ウソノワールの圧をものともせずに発言する。

 

「新人がやつらを押さえてくれているからこそ、オレ達もプリキュアに集中出来ているんです!ここでこいつらを奈落にでも落としてしまえば、それこそ取り返しのつかない事態になるかと!」

「・・・・まあ、確かに」

 

ゴウエモンの演説を聞き、ニジーは頷きを一つ。

アゲセーヌもぶすっとしてはいるが、言い分は理解しているらしい。

 

「なればこそ!いつぞや新人の言っていた『頼み事』も、聞き入れてやってはくれませんか!?」

「・・・・頼み事?」

 

畳みかけるゴウエモンに、心当りのないるるかは首を傾げたが。

マシュタンだけは、顔色を変えた。

 

「ゴウエモン、聞いてたの!?」

「すまん、聞くつもりは無かったんだが・・・・たまたまな」

 

どうやら、るるかの知らない間に何か交渉ごとをしていたらしい。

 

「ふむ・・・・」

 

そして、ウソノワールは。

息を一つ吐いて、しばし沈黙してしまった。

一分とも、十分とも取れる。

重たい時間が流れて。

 

「――――よかろう」

 

やがて、ウソノワールは重々しく口を開く。

 

「アルカナ・シャドウ、今回はゴウエモンに免じて不問とし、お供妖精の要望も聞き入れよう・・・・次はないぞ」

「・・・・分かった」

「ありがとうございます、ウソノワール様」

 

『あの子』に触れられることを、回避できた安堵に。

るるかの口元から、鈍い息が吐き出された。

 

「・・・・マシュタン、いつの間に?」

「ご、ごめんなさい・・・・上手く行くかは、占いでも五分五分だったものだから・・・・」

 

次いで、膝のマシュタンに話しかけると、彼女はバツが悪そうに耳をぺたんとさせていた。

 

「・・・・ありがとう」

「当たり前よ!アタシはあなたのパートナーなんだから!」

 

彼女が、味方でいてくれていることが嬉しくって。

溢れる思いのままに抱きしめると、マシュタンは嬉しそうに身じろぎした。

 

「――――ゴウエモン」

「ん?」

 

自室に戻る前、るるかはゴウエモンを呼び止めた。

 

「・・・・助かった、ありがとう」

「オウ!気にすんな!新人の面倒を見るのは、先輩の役目だからな!アッハッハッ!」

 

顎を引くだけだったが、頭を下げたるるかに。

ゴウエモンはにっかり笑って、高笑いをしたのだった。




大也とるるかちゃんは、あの猫とネズミの様な。
『互いをドつき合うあまりステップ踏んで踊り出しちゃう関係』になる予定・・・・()
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