調査開始
「オカルトというものを信じますか?」
この答えに大抵の人はおそらく、信じないと答えるでしょう。まぁ、オカルトというものは怪しいという印象が強いから仕方ないとは思います。何故、このような話をするのかですか? それは私がこれから向かう場所に関係があるからです。
私の名前は明星ヒマリ。私の所属していた学校である、ミレニアムサイエンススクールでは「全知」という史上三人しか獲得していないものを持っていたるハッカーだったりします。そんな超天才清楚系病弱美少女ハッカーである私ですが、ある調査のためにミレニアムから離れて高度育成高等学校に入学することになりました。なんでも、依頼主である理事長から目立たないように生徒として入学してくれとのことです。本当は調査をするために普通に立ち入るつもりでいたのですが、仕方がありません。
さて、話を戻しますが私が調査をしに行くものもオカルト関係なのです。私のいたキヴォトスでは不思議に満ちたことが数多くありますが、今回の案件はその中でも更に不思議なもの。その名は、デカグラマトンといいます。元々はキヴォトスにいた存在だったそうですが、ある日キヴォトスの外で存在を確認しました。このことがキヴォトスの外に伝えられると大騒ぎになったそうです。それもそのはず、キヴォトスは日々、銃撃戦が起こっているような危険な場所。そこから来たものなど外にいる方々からすれば、危険すぎるものに違いありません。
そこで、政府はデカグラマトンがどこにいるのかを開始。無事に特定したのはいいのですが、それがまさかの高校の敷地内だったのです。ただの高校の敷地内であれば、一時的に休校にすればよかったのですが、その場所は高育と呼ばれる場所でした。そこは特殊な事情を除けば外部との接触が一切、禁じられた場所だったのです。デカグラマトンは特殊な事情でないかと言われると、間違いなく特殊な事情です。なので、調査のために普通に立ち入れば良いのではないかと言ったのですが、知られたくないことがあるのかこのような形で入ることになりました。ちなみに理事長は当初、自分の娘も入学させる予定でしたが今回の件があったのでそのお願いを断ったそうですよ。自分の娘だけを守るだなんて汚い大人ですね。
そんなことを考えていたら、バスが来ましたね。私は病弱のため車椅子に乗っているので、乗務員の方が座席を畳んでスロープを設置してくれました。乗務員の方に礼を言ってバスに乗り込むと、まだあまり人は乗っていません。色々と調べたいことがあるので、始発にしたからでしょうか。すると、前の席に座っていた桃髪の少女が話しかけてきました。
「ねぇ、同じ学校の人だよね! 名前は何で言うのかな?」
「明星ヒマリと言います。貴女は?」
「私は一之瀬帆波、よろしくね!」
この方も私と同じ高育に通うようになる方ですか。ですが、この方は事件のことなど知っていそうにありませんね。知っていたのであれば、もう少し緊張した雰囲気になると思います。もしかして、事件はかなり内密にされているのでしょうか? そうだとすれば、今年入学する予定の新入生はかなり可哀想ですね。それと同時に憤りも覚えますが。
「ところで、明星さんはどうして高育に行くことにしたの?」
「私は、少し調べたいことがあっただけです」
事件のことを知らされていないのであれば、本当のことは言えない。なので、嘘はついていないが、質問には濁すような形で答えることにしましょう。この様子ですと先生方にも話は伝わっているのかどうか、分からなくなってしまいました。先生方の協力を得ようと考えていたのですが、知らないとなると少々動きにくくなってしまいますね。
「調べたいこと? それってどんなのかな?」
「それは……」
高校に調べ物をしたいために入学をしたい生徒など基本的にはいないでしょう。困りましたね、なんて言えば良いのでしょうか? 私がそうやって言い淀んでいた時に突如、爆発音が聞こえました。キヴォトスではお馴染みの音でもキヴォトスの外では基本的には耳にしないもの。バスの中は騒然とし、中には悲鳴すら聞こえてきます。一体、何があったのでしょうか?
『お客様にお知らせいたします。只今、異常な音を検知したことによりしばらく停車いたします。お急ぎの方は大変申し訳ございません』
運転手の方はそう言うと、バスから降りて被害の確認をしに行きました。その間、車内は騒然としており不安そうな声も聞こえてきます。再び、運転手の方が戻ってきた際に衝撃的なことを告げられました。
『爆発により、道路が陥没していることが確認できました。このまま、運転することが不可能となりましたので、皆様には下車していただく形になります。誠に申し訳ございません』
知らされたのは、爆発によってできた被害と運転を続けることが困難になってしまったことということです。遅刻に関しては学校側に伝えるとのことでしたので、心配いらないと思います。もっとも、幸いにも高育の近くまでバスが来ていたため、そこまで時間はかからないでしょう。
「大変なことになっちゃったね」
「そのようですね。とりあえず、一刻も早く高育に向かいましょうか。また、同じ爆発が起きないとも限りませんから」
「うん、そうだね!」
一之瀬さんは取り繕っていますが、本当は怖いのでしょう。手を握りしめて、恐怖を抑えているようです。私は大丈夫だと思わせるために、握りしめていた手をそっと包み込みました。
「あっ……」
「行きましょう」
「うん!」
それにしても良い人ですね。私が車椅子に乗っていることについて何も聞きませんでしたし、今だって車椅子を押してくれています。こんな良い人を巻き込むことにならないように気をつけなければいけませんね。あら、何だか人だかりが……
「本当に道路が陥没してる」
「俺、こういうの初めて見た」
「しかも、煙が上がってるね。本当に爆発したんだ」
どうやら、先ほどの爆発した現場を見たい野次馬根性のある人達が集まっているようですね。もう爆発は起きないから安心だとでも思っているのでしょうか。キヴォトスでは二発目の爆発なんてよくあることです。危機意識が足りていませんね。
「一之瀬さん、早く行きましょう。次、いつ爆発が起きるか分かりません」
「う、うん。そうだね、行こうか」
私の言葉に納得していただけたようで、立ち止まるのをやめて前に進み始めました。それにしてもあの爆発は何だったのでしょうか。ただの爆弾による爆発にしては道路に置いてあって、誰も気が付かないわけありません。そうなると、考えられるのは道路の下に設置されていたということです。そうすれば、一般的には目につきにくいわけですから、いつでも爆発させることができます。問題はどうやって設置したのかということですね。高育に向かう道路は海の上を通っていますから設置することはできますが、普通そんな場所に設置できるわけがありません。まぁ、今は考えても無駄ですかね。
「見えてきたね、高育。なんか圧倒されちゃうなぁ」
「えぇ、そうですね。これからここで三年間過ごすことを考えると緊張してしまいます」
まぁ、嘘ですけど。私の場合は調査が終わったらキヴォトスに帰ることになっているので、一年程度で退学をするかもしれません。というより、三年以上かかることになったらどうしましょうか。悩みどころですね。私より天才な方はそうそういないと思います。まぁ、今はそんなことを考えていても仕方ありません。そんなことを考えていると人だかりのある場所を発見しました。
「おや、クラス分けが発表されているようですね」
「そうみたいだね! 明星さんはあの人たがりに行くのは大変だと思うから、私が見てこよっか?」
「あら、よろしいのでしょうか? それではよろしくお願いいたします」
やはり、一之瀬さんは優しい人ですね。そんな一之瀬さんには後で何か渡したいところですが、何が良いのでしょうか? やはり、洋服でしょうか。一般的に女の子というものはオシャレが好きみたいですから。まぁ、私も女の子ではあるのですが。おや、もう戻ってきましたね。
「見てきたよ。私がBクラスで明星さんがAクラスだって。一緒じゃなくて残念だよ」
「それは仕方がありません。二年生で同じクラスになれることに期待しましょう」
違うクラスになってしまいましたか。まぁ、仕方ありませんね。そういう日もあります。それにしても今日の運勢は良かったはずなんですけどね。爆破に違うクラス、とことんついていません。もしかしたら、ラッキーアイテムを持ってこなかったのがいけなかったのでしょうか? 学校には必要なもの以外の持ち込みが禁止されているので仕方ありませんが。
「あのね。別れる前に聞いておきたかったことなんだけど、明星さんのその耳ってもしかして……」
「あぁ、これですか私がエルフなだけですから気にしないでください」
「いや、気になるよ!」
明星ヒマリはAクラスでのスタートとなります。また、二年生編や三年生編で出てくるAクラスの人はあまり出てこないと思いますので、ご容赦ください。