ようこそデカグラマトンのいる教室へ   作:和崎

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今回から2巻の話が始まります。ここまでついてきてくださった皆様には感謝しかないです。


2巻 あの子は何を芸術としたのか
特別棟


 

 

 あの祝勝会からおよそ一ヶ月が経過しようとしていました。その間、預言者達の襲撃というものはあの一件以外には特にありません。そういえば、葛城君や綾小路君に銃が渡されたりもしましたか。彼らは射撃の訓練をしているようで、結構筋は良いみたいですね。防護服も空いている時間で作りましたし、このまま上手くいけばケテルと戦うまでそう時間はかからないかもしれません。

 

 あれからもキヴォトスとデカグラマトンの関連性を調べていたのですが、あることが分かってきました。デカグラマトンは神の存在証明を行うためのAIであり、それに近いものがキヴォトスには存在していることが分かっています。遠い昔に神の存在証明を行い、新たな神を作り出す方法を研究していた組織があったこと。その組織をゲマトリアという組織の支援したことによって対・絶対者自立型分析システムというものが誕生したそうです。

 

 この対・絶対者自立型分析システムとデカグラマトンがどのような関連があるのかは分かりません。しかし、デカグラマトンがキヴォトスから来たものである以上、関連性が全くないとは考えられません。考察の域ではありますが、ようやくデカグラマトンの正体についての手がかりを得ることができたと思っています。とはいえ、この情報を先生方が知らないとは考えられません。記録に載っていないのは考察の範囲を出ないからでしょうか。私は一応、この考察について記録しておきましょう。勿論、考察であるという注意事項を書いた上でですが。

 

 そうやって書き始めようとしたその時、突然アラームが鳴り響きました。預言者が現れたということなのでしょうか。信号を調べてみるとケセドという預言者であることが分かりました。しかも、この信号は立ち入り禁止区域から出ているわけではありません。

 

 

「明星、大変だよ!」

 

 

 神室さんが葛城君を連れて、部室にまでやってきました。何が大変かということはおおよそ分かっていますが、認識の擦り合わせのために聞いておきましょう。

 

 

「分かってると思うけど、生徒がいるエリアに預言者が出たの! 場所は特別棟!」

 

「先ほど、信号を調べましたが、相手はケセドだそうです」

 

「ケセドか。物量で攻めてくる嫌な相手だ」

 

「念のため、堀北さん達も呼んでおきましょう」

 

「堀北は綾小路と先に向かっているって」

 

 

 おや、そうでしたか。まぁ、綾小路君にも防護服は渡しましたし、戦闘は心配する必要はないかもしれませんね。

 

 

「じゃあ、俺は外で着替えている」

 

「かしこまりました。神室さんも着替えますから、呼ぶまで中には入らないでください」

 

「分かった」

 

 

 そう言うと、葛城君は着替えるために外に出ました。神室さんは既に着替え始めていますね。では、着替えている間にケセドの情報確認をいたしますか。

 

 ケセドは強固な外骨格装甲に保護されており、この本体は戦うことはありません。代わりにケセドが生産する機械兵やドローンなどが攻撃をしてきます。防衛設備などがあれば、それも使ってくるのでしょうか。簡単な情報確認を終えたところで神室さんが着替え終わりました。

 

 

「葛城君、神室さんは着替え終わったみたいですよ」

 

「あぁ、俺もようやく着替え終えたところだ」

 

「随分と早かったですね。それでは行きましょうか」

 

「明星、分かっていると思うけどあんたはここで待機。あんたは基本、前線に立つのには向いていないんだから。ここで反応が消えるまで見張っておいて」

 

「仕方ありませんね。反応が消えたら、神室さんにご連絡いたします」

 

 

 

 

 

 

 葛城 side

 

 

 ケセドのいる特別棟に着いた途端、ドローンが行く手を塞ぐ。こんなところで足止めを喰らっている場合じゃないんだがな。俺は銃でようやく一機を撃墜すると、残りは既に神室が撃墜させていた。

 

 

「流石だな」

 

「あんたは練習よりも外しすぎ。怖いのはわかるけど、こんな奴らにモタモタしていたら死ぬよ」

 

「その通りだな」

 

 

 実際、ドローンを撃墜する時に視界の外から攻撃されなかったのは神室のおかげだ。そう思いながら、俺達は特別棟の内部へと侵入した。機械兵が何体か倒れている辺り、堀北や綾小路は既に内部に侵入しているようだ。俺達も先に進もう。

 

 

「それにしても随分と数が少ないわね」

 

「機械兵の数か? 屋内だからそう多くの兵を配置させられなかったからじゃないのか?」

 

「屋内はね。でも、屋外にはドローンが数機いただけだったでしょう。本来なら、もっといるもの」

 

「確かにケセドが屋内にいるなら、入らせないように屋外に多く配置しているはず。確かに変だな」

 

 

 そう考えると、まるでケセドは俺達に侵入してほしいかのような振る舞いじゃないか。そんなことをして、ケセドに何のメリットがあるんだ?

 

 

「あれこれ、考えていても仕方ない。先に進もう」

 

「確かに立ち止まっていても答えは出てこないか。罠かもしれないが、行くしかないな」

 

「そういうこと」

 

 

 ケセドの特徴を考えれば、いるのはおそらく屋上だろう。そこ以外に自身を設置させられる場所はないからだ。だが、屋外からは見えていなかった。預言者の大きさからして見えていてもおかしくないのだがな。突然、神室の端末が鳴り響く。神室は端末を手に取ると顔を顰める。

 

 

「葛城、一つ最悪な情報が入ってきているんだけど聞きたい?」

 

「聞かせてくれ。その最悪な情報というものを」

 

「特別棟の方向に向かった生徒が何人かいることが分かったの。最悪、ケセドの攻撃に巻き込まれているかも」

 

「だとしたら、急がないとな」

 

 

 ここにいる生徒のためにも早く解決しなくてはいけなくなった。だが、その生徒は何のために特別棟に立ち寄ったのだろうか。まぁ、それは後で聞き出せば良い話か。

 

 

「一階の探索は終了。機械兵は倒れているものばかりで襲ってこなかったわね。堀北達は二階やよりも上にいる可能性が高そう。銃撃戦の音もあんまり聞こえてこないし」

 

「とりあえず、上に行くということで良いんだな?」

 

「当然じゃない。巻き込まれた生徒達も保護しないと」

 

 

 堀北達と合流をするためにも上に行こうとしたその時、再び神室の端末が鳴り響く。神室は端末を手に取るとそれを耳に当てた。どうやら、電話のようだ。

 

 

「なるほどね。了解」

 

 

 そう言うと神室は端末をしまった。何を伝えられたのだろうか。そんなことを疑問に思っていたのも束の間、すぐに神室から連絡された内容が伝えられる。

 

 

「ケセドは二階の一番奥の教室に隠れているって」

 

「二階か。想定外だったな」

 

「堀北達にもこのことは伝えたらしいけど、堀北達はそれどころじゃないみたい」

 

 

 それどころじゃないということはケセド本体と戦っている場合じゃないということだ。もしかして、ここに迷い込んだ人達を発見したのだろうか。神室にこのことを伝えると、可能性はあると言われる。巻き込まれた生徒達がそこにいるのだとしたら、迂闊に動くことはできない。そうなると、俺達だけでケセドの本体と戦うことになるだろう。

 

 

「一応、先生達はもう少ししたら到着するって。武器は普段、立入禁止区域の近くにある建物に隠しているから時間がかかったみたい」

 

「まぁ、今まで預言者達は立入禁止区域の中から出てきたからな。そこの近くに装備を置いておくのも自然なことか」

 

 

 そう言いながら、俺達は二階に進む。不意打ちがないかどうかを警戒しながら二階にたどり着くと、そこには機械兵の残骸が転がっていた。ここにも堀北達は来たのだろう。それにしても二人しかいないのによく、これだけの機械兵を倒せるものだ。正直、感心している。

 

 

「確か、一番奥の部屋だったな」

 

「機械兵がいないってことはケセドは屋上にいるように偽装しているってことでしょ。堀北達はその罠にかかったけど、そのおかげで巻き込まれた生徒達を発見できた可能性がある」

 

「後は気づかれないうちにケセドの本体のところまで俺達が行くしかないということか」

 

「物音を立てないように。でもなるべく急いで」

 

 

 かなり難しいことを要求されているな。銃を持っている状態で物音を立てるなとは。しかし、やらないと機械兵が召喚されて面倒なことになるだけだろうな。俺達はなるべく物音を出さないように注意しつつ、奥の教室を目指した。

 

 そうして、奥の教室の前にたどり着くと突然、神室の端末が鳴り響く。おそらく、電話だろう。俺達にとっては最悪のタイミングだが、出ないわけにもいかない。

 

 

「バレた可能性が高いけど、葛城は突入して」

 

 

 俺一人で突入するように言われたため、仕方なく教室の扉を開ける。扉を開けた先には一人の女子生徒が隠れるように座り込んでいた。

 

 

「大丈夫か?」

 

「うん、私は大丈夫」

 

 

 見た限り、傷とかはなさそうだ。ここに来たのは生徒達って言っていたよな。この少女に他に生徒を見ていないか聞いてみる必要がありそうだ。

 

 

「ここに来た他の生徒達を知らないか?」

 

「他の生徒は見てないです。私は自撮りスポットを探してここまで来ただけなので」

 

 

 自撮りスポットを探していただけか。確かに無人の教室は自撮りするにはうってつけの場所だろう。それで自撮りをしている途中にケセドに襲われたということか。しかし、ここにいたはずのケセドはどこに行ったのだ? 神室が電話を終えたのか教室にゆっくりと入ってきた。

 

 

「ケセドの反応はたった今、消えたんだってさ。私達がちょうど突入するタイミングでね」

 

「突入したすぐ後にいたのは隠れるように座り込んでいた女子生徒だけだったな」

 

「女子生徒? 葛城の他に誰もいないじゃない」

 

「なに?」

 

 

 振り返ると先ほどまでそこにいたはずの少女はいなかった。いつの間に姿を消したのだろうか。姿を消せたタイミングは俺が神室と話すために背を向けた一瞬しかない。物音も一切しなかったぞ。

 

 

「確かにいたんだがな」

 

「見間違いってわけじゃなさそうね」

 

「あぁ、話もしたんだ。見間違いのはずがない」

 

「なら、そいつは怪しいよね」

 

 

 怪しいとはどういうことだろうか。ただの人にしか見えなかったが。まぁ、確かにケセドがいたところに女子生徒がいたのはあまりにも不自然だったな。

 

 

「まさかとは思うが、その女子生徒がケセドと関係あるとでもいうんじゃないだろうな?」

 

「随分と遠回りな言い方をするね。そいつがケセドなんじゃないかって私は言っているのよ」

 

「預言者が人型になれるなどという話は聞いたこともないが」

 

「えぇ、私もそれは同じ。だけど、不可能だとも思えない。相手はオカルトだもの。それとその女子生徒がケセドだとした場合、預言者は瞬間移動ができることになる」

 

 

 確かにケセドと思われる女子生徒が急に消えたのはそうとしか説明ができないが、他の預言者にも同じことが言えるのか? いや、待て。もしも瞬間移動ができると仮定した場合、ビナーについては説明できることがあるぞ。

 

 

「つまり、ビナーが地中に潜った後、どこかに行った痕跡が見られないのは瞬間移動をしているからだということか」

 

「えぇ。だけど、瞬間移動ができる条件みたいなものがあるんだと思う。そうじゃなきゃ、ビナーはあんなチマチマした移動なんてしない」

 

「つまり、預言者は本来の姿では瞬間移動ができないということか」

 

「多分、人型じゃないとできないんだと思う。じゃなきゃ、ケセドは葛城に人の姿を見せたりしないはずだもの」

 

 

 つまり、俺が見たのは瞬間移動をする途中だったということか。だが、ケセドは決定的なミスをしたな。俺が近くにいる時に瞬間移動を使った。よほど焦っていたのだろう。あまり、知力も高いようには思えない。まぁ、生産された兵器が基本的な相手だから、本体の能力はあまり関係ないのかもしれないが。

 

 

「まぁ、このことは後で明星に伝えましょう。それよりも堀北達と合流した方が良さそうね」

 

「あぁ、そうだな」

 

 

 すると、突然サイレンが聞こえてきた。そのを見てみると救急車が何台か停まっている。まさか、巻き込まれた生徒達が怪我をしたのだろうか。それも救急車を呼ぶほどの。

 




この施設って救急車は来れますよね? 不安になってきました。
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