ようこそデカグラマトンのいる教室へ   作:和崎

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私はミステリーを書く才能はありません。故に犯人は分かりやすかったですね。


ケセド

 

 

「何があったのか伺ってもよろしいでしょうか?」

 

 

 葛城君と神室さん、それに綾小路君に堀北さんが帰ってきました。それもかなり、深刻そうな顔をして。何があったのかを聞き出すための言葉が先ほどのものです。

 

 

「オレから話そう」

 

 

 綾小路君からケセドに関する情報をもらいました。人型の状態になれる可能性があることや瞬間移動ができる可能性があることなど様々な情報が出てきます。しかし、深刻な顔をしていた理由はそれではないでしょう。今の情報ですと深刻な顔をする理由はありませんから。すると、綾小路君が驚きのことを口にします。

 

 

「ケセドによる犠牲者が出た。それも三人」

 

「三人とも一命は取り留めたみたいだけどね。まだ、意識を失っているみたい」

 

「そうでしたか」

 

 

 とうとう、預言者による人的被害が出てしまいましたか。それにしてもその三人は何故、特別棟にいたのでしょう? 普通はあの時間に特別棟に行く用事などはないはずですが。まぁ、これに関しては本人に問いただすしかありませんね。

 

 

「この学校にいる以上、いずれ学生への被害は出るとは思っていましたが、まさかこんなに早く出るとは思いませんでしたね」

 

「あぁ、それは同感だ。預言者がこの地に出たのなら、避難させれば良いものを。外にこの学校の情報が漏れるのが嫌な上が拒否したんだろう」

 

 

 綾小路君の言葉に私も賛成です。被害が出た今からでも遅くないとは思いますが、どうでしょうか。先生と相談してみるというのは。いえ、先生が仮に頷いたとしても上が拒否するでしょうね。

 

 

「まぁ、人的被害に関しては私達にできることはなさそうです。それよりもケセドの話をいたしましょう。葛城君はケセドの人型の姿を見たのですよね? 特徴を教えていただけますか?」

 

「雰囲気は地味でメガネをかけていたな。それと髪が長い女子生徒だったぞ」

 

「女子生徒?」

 

「あぁ、高育の制服を着ていたからな」

 

「となると、高育の生徒である可能性が高そうね」

 

 

 つまり、ケセドはこの高育に生徒として潜入しているということですか。そうなると、生徒を避難させるということはむしろ悪手になりますね。生徒の中に預言者がいるということですから、預言者を全て見つけるまでは迂闊に生徒を避難させられません。預言者が外に逃げてしまう可能性もありますから。

 

 

「それにしても、メガネで髪の長い女子生徒ですか。一年から三年までそのような女子生徒はたくさんいるでしょうね。この辺りの捜索は一度、先生に任せましょう。そして、リストに並べてもらったものを葛城君が確認すればケセドは炙り出せます」

 

「ケセドを見つけたとして、排除するにはどうすればいいかって問題もあるな」

 

「そうなんですよね。現状、ケセドを完全に機能停止させる方法は見つかっていませんし」

 

 

 ケセドだけではありません。他の預言者達の機能停止させる方法は分からないままです。もしもコアのようなものがあるのだとすれば、それを破壊して終わりなのでしょうけど。そのコアを破壊する方法も不明ですからね。

 

 

「まぁ、その辺の問題は見つけるまでに考えるしかないでしょう。私が言うまでもないと思いますが、神室さんと堀北さんは先生方への連絡をお願いします」

 

「分かってる」

 

「当然、そのつもりよ」

 

 

 さてと、私の方は忘れないうちに報告書を書いておきましょう。今回、浮上してきた可能性は大発見なものばかりでしたからね。まぁ、あくまでも可能性に過ぎないことは留意すべきですが。

 

 

 

 

 

 

 今日はポイントの支給日ですが、ポイントは振り込まれていませんね。先ほど、残高を確認したので間違いありません。そのことに困惑している人は多いようで、先ほどから教室ではその話で盛り上がっています。もっとも、真嶋先生が教室に入ってきた途端に静かになりましたが。

 

 

「それでは今月の各クラスのポイントを発表していく」

 

 

 真嶋先生は手に持った紙を広げて黒板に磁石でくっつけました。ポイントの結果はAクラスから順に公開されていきます。

 

 

Aクラス━━ 1024 cp

Bクラス━━ 746 cp

Cクラス━━ 560 cp

Dクラス━━ 87 cp

 

 

 私達のクラスは1024もポイントがあるわけですか。前回よりも84のポイントが増えているというわけですね。ポイントの増加量だけで言えば、Dクラスに負けています。おそらく、ポイントを増やす方法が分からないので、減点対象であった生活態度を改めたのでしょう。何故、ポイントが増えたのかは分かりませんが。

 

 ここでcpとはなんだと思われている方に説明いたします。クラスに振り分けられるポイントのことをクラスポイントと言い、個人が所有するポイントのことをプライベートポイントと言います。前者の略称はcpやclであり、後者の略称はppやprなどだそうです。

 

 

「これらのポイントは中間テストを乗り切った一年へのご褒美のようなものだ。各クラスに100ポイントを支給される予定になっていてな。そこから色々と引いた結果が今回のものだ」

 

 

 確かにどのクラスも100ポイント以上増えたところはありませんね。急にポイントが増えたので何があったのだろうと思いましたが、そういうことでしたか。

 

 

「先生、質問してもよろしいでしょうか?」

 

「葛城、聞きたいことは分かっている。何故、ポイントが振り込まれていないのかということだろう。今回は少しトラブルがあってな。一年生のポイント支給が遅れている」

 

 

 トラブルですか。学校側のトラブルでポイントが支給できないのであれば、学校全体での支給が遅れていると言うでしょう。となると、これは学校で起きたトラブルではなく、一年生の間に起きたトラブルと考えるのが自然です。トラブルといえば、昨日の一件が思い浮かびますが、あの一件はケセドが引き起こしたもの。今回のトラブルとは関係ないでしょうね。

 

 

「トラブルが解消次第ポイントが支給されることになっている。それまで、何とかやりくりしていてほしい」

 

 

 そう言うと、真嶋先生はホームルームを終わらせて教室を出ていきました。先生が去った後の教室はトラブルとは何かという話題で持ちきりです。中にはCクラスの生徒が病院へ運ばれたことに関係しているのではないかという人も出てきました。既に噂になっているのですね。まぁ、隠し通すことはこの閉鎖された環境だと不可能に近いでしょう。

 

 

「昨日のことを報告しておいたけど、先生の方で調べてくれるって」

 

「先生方はあの話を信じてくれたのですね。そんなはずがないと話を聞いてもらえないと考えていました」

 

「前から私達が考察したことに関する噂自体はあったみたい」

 

 

 確かに私達が数ヶ月で気づいたことです。年単位で調査している先生の方で気づかないはずがないですか。しかし、それを明かさなかったのは憶測に過ぎなかったからなのでしょうね。こんな話を聞いたとしたら、クラスメイトを疑うという魔女狩りのようなものが始まっていたに違いありません。

 

 

「そういえば、この話をした時に綾小路は何故そう思ったのか質問をしてきたけど、堀北はする素振りすらなかったわ」

 

「つまり、堀北さんはその噂を知っていたと?」

 

「可能性はあると思う。一応、堀北は私と同じだし、知っていても不思議はない。ただ、私が知らなかったというだけで」

 

「もしくは別の理由で知っていたかですね」

 

「別の理由?」

 

 

 考えられる可能性は三つあります。一つ目は神室さんの言う通り、軍内部の噂を知っていたということ。この噂に関しては神室さんが知らなかった時点で訓練生には知らされていない内容なのでしょうが、一番可能性が高そうです。

 

 二つ目は人型の預言者と接触をしたことがあるということ。この話に関しては堀北さんから話を伺ってみないことには分からないでしょう。

 

 そして、三つ目は堀北さんが預言者であるということ。この可能性はあくまでも可能性に過ぎないので、今のところ一番低いでしょう。このことは教室の中なので神室さんには伝えられません。堀北さんを無駄に疑うことになってしまうかもしれないので、神室さんには教室の中であろうと伝えない方が良いかもしれませんね。別の理由として思いついた二つ目のものを話しておきますか。

 

 

「なるほどね。確かにその可能性はあるかもしれない。葛城もそいつらと接触しているし、可能性はあるかもね。今度、堀北に聞いてみましょう」

 

「えぇ、それが良いかもしれませんね」

 

 

 神室さんには伝えなかった三つ目の可能性がないことを祈りましょうか。仲間同士で争いたくはないですからね。

 

 

 

 

 

 

 綾小路 side

 

 

「それで相談ってのは?」

 

 

 先ほど、オレの部屋に須藤が押しかけてきて相談に乗ってほしいと頼まれた。ついでにオレの部屋の合鍵を作っていたことが判明し、返してほしい気持ちになる。後から来た櫛田も持っていることが判明したため、もうどうにでもなれという気持ちだ。

 

 

「俺、もしかしたら退学になるかもしれない」

 

 

 須藤から聞かされた言葉に衝撃を受ける。須藤は入学当初こそ素行不良だったものの、今の生活態度は改善された傾向にあったはず。それがどうして、退学の危機になるのだろうか。

 

 

「何故、そんなことになった?」

 

「分かんねぇんだよ俺も。昨日、訳の分からねぇことに巻き込まれたのかと思えば、いきなり退学だぜ。俺が何したってんだよ」

 

「ちょっと待って、須藤くん。もう少しゆっくり話してくれないかな。」

 

「悪い、何も伝わんなかったか」

 

 

 須藤は落ち着くように深呼吸をし、改めて昨日起こった訳の分からないことについて話し始めた。

 

 

「顧問の先生から、夏の大会でレギュラーとして迎え入れるっつー話をされたんだよ。あくまで候補だけどな。そしたら、同じバスケ部の小宮と近藤が特別棟に呼び出しやがった。無視してもよかったんだが、いい加減ケリをつけたかったからな。そいつらのところに向かっている最中によ、銃を持った機械じみた奴らに襲われてよ」

 

「機械じみた奴ら?」

 

「まるで、キヴォトスにいるっつー機械兵みたいな奴らだ。そいつらの追跡を逃れるために身を隠していたらよ。誰かが機械兵を倒してくれててな。その隙に俺は特別棟から逃げたってわけだ」

 

「不思議な話だね」

 

 

 確かに何も知らずにこの話だけを聞けば、不思議な話で終わるだろう。しかし、この話は昨日のケセドが特別棟に出た時の騒ぎだ。須藤もそこにいたんだな。それでどうして須藤が退学になるんだろうか。

 

 

「そんでよ、さっき話を聞いたら小宮と近藤、ついでに石崎って奴が重症を負ったんだと。そんで、特別棟に呼び出されていた俺がやったんじゃねーかってCクラスが訴えてきやがった」

 

「それで須藤君が悪者にされちゃったわけだね」

 

 

 須藤は櫛田の言葉に頷いた。もしもこれが本当のことなら、Cクラスにやっていないことを証明できれば話は収まるはずだ。しかし、須藤がやっていないことを証明するか。中々、これは難しいぞ。

 

 

「学校側は今の須藤の話を聞いてなんて言ったんだ?」

 

「来週の火曜まで時間をやるから、やっていないことを証明しろだとさ。無理なら、俺が悪いってことで退学。その上、クラス全体のポイントもマイナスだとよ」

 

 

 須藤が焦っている理由は、退学になってバスケのレギュラーの話が白紙に戻るからだろう。そりゃあ、何もやってないのに青春が奪われるっていうのは嫌だろうな。

 

 

「今、ある唯一の証拠は重症を負った相手か。須藤がやっていないっていう証拠を見つけることは結構、困難だぞ」

 

「はぁ、何でだよ?」

 

「この事件は刑事事件だ。学校側で何とかできるレベルの話じゃない。それに須藤が特別棟に行ったってことが問題なんだ。学校側は須藤以外に特別棟にいたやつはいないって判断をしたんだろうしな」

 

 

 実際にはケセドと思わしき女子生徒の姿を葛城が見ているが、葛城しか見ていないということで証拠能力はない。そう思っていると須藤が思いついたように証言をする。

 

 

「これは先生に伝え忘れていたことだけどよ。一人だけ見たんだよ、特別棟で」

 

「本当!?」

 

「あぁ、特徴は全身が白くて眼鏡をかけた髪の長い女だったよ。あと、ヘイローもあったな」

 

「それさえ先生に言っていれば、問題は解決したんだろうな。だが、もう遅い。同じクラスの人間がどれだけ無実を訴えたところで、ポイントを減らされたくないだけの嘘って思われても不思議じゃない」

 

「それは……そうかもしれねぇけどよ。何でそれさえ言っていれば、問題は解決したんだ?」

 

「キヴォトスから来た人で学校側が確認しているのはおそらく、一年の明星ヒマリだけだ。それ以外の人となると学校側が確認できていないキヴォトス人。つまり、機械兵を呼び出すことができた犯人だけってことになるからだ」

 

 

 他にも理由はあるが、これは須藤に話せるような内容じゃない。預言者の話は須藤に話したとしてもよく分からないだろうからだ。

 

 

「ってことはあの女が犯人だったってことか。クソが! 舐めた真似しやがって!」

 

「全身が白いってことは制服は着ていなかったのかな?」

 

「あぁ、着ていねぇ。白い服は纏っていたけど、それだけだ」

 

「となると、犯人は外部からの人って可能性が高そうだね。一体、何のためにこんなことをしたんだろう?」

 

 

 葛城の話によれば、ケセドと思わしき人は女子生徒だったはずだ。つまり、制服を着ていたということになる。どういうことだろうか? 他にも人がいたのか、もしくは同一人物か。部活動の際に相談してみよう。

 




これだけの被害が出て、学校側が対応しない理由は生徒の実力を見るためと上に止められているからです。
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