ようこそデカグラマトンのいる教室へ   作:和崎

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既に気づいている人が多数だと思いますが、あの子とはケセドのことです。


あの子は誰?

 

 

「それで、要件とは何ですか?」

 

 

 翌日の放課後。私達は職員室に呼び出しを受けていました。部活動の都合上、呼び出されるのはよくあることなので気にしてはいません。なので、率直に聞いてしまいます。

 

 

「その前に綾小路はどこだ?」

 

「彼なら、クラスメイトと目撃者を探している最中です」

 

「なるほどな。ならば、仕方あるまい」

 

 

 堀北さんはそのように答えます。てっきり、綾小路君が来なかったことについて何か言われるものだと思っていましたが、杞憂だったようですね。

 

 

「葛城が見たという例の女子生徒だが、絞り込みが終わった。葛城に是非、見てもらいたくてな」

 

「ケセドかもしれない少女のことですか」

 

「あぁ、本当は個人情報を他人に見せることは厳禁なのだが、そうも言っていられまい」

 

 

 そう言って、真嶋先生は写真と個人名が載せられている資料を葛城君に見せます。私達に極力見せないようにしているのは、個人情報のなるべく漏らさないようにするためでしょう。

 

 

「いました。この人です」

 

「ふむ……一年D組の佐倉愛里か。間違いないのだな?」

 

「はい、間違いありません」

 

 

 葛城君が見たのはDクラスの人でしたか。すると、堀北さんは真剣な表情になります。同じDクラスに預言者と思われる生徒が隠れていたからでしょうか。

 

 

「堀北に聞きたい。佐倉という生徒はどのような様子だった?」

 

「そうね。地味で目立たないからよく分からないけど、少なくとも私が見た感じでは普通そうにしていたわよ。目撃者の話をしていた時でも関係なさそうに振る舞っていたもの。でも、この事実は私達のクラスにとって非常に嫌なことね」

 

「結局、Dクラスの人が犯人だからか」

 

「一応はまだ、目撃者よ」

 

 

 そこはDクラスとしては訂正しますか。Dクラスとしては彼女の無罪も立証しないといけない立場ですからね。そうでなければ、結局はDクラスの仕業ということになるでしょう。

 

 

「Dクラスは機械兵がやったことを証明しつつ、佐倉がケセドであることを否定しないといけないわけね。どちらかだけなら簡単でしょうけど、どちらもとなるとかなりキツイと思う」

 

「Dクラスとしてはどうするのか、堀北さんに話を伺ってみたいところですね」

 

「それを言う必要はないわ」

 

「まぁ、確かに別のクラスですからね。言いたくないのであれば、それで構いません」

 

 

 まぁ、他のクラスに裁判の対策を漏らすわけにはいきませんよね。まだ捜索をしている最中だという話を聞いていますので、作戦はこれからなのかもしれませんが。

 

 

「それでは、先生。学校側が把握している佐倉さんの情報を譲ってください」

 

「何のためにだ?」

 

「ケセドの情報と比較するためですよ。学生時代に何をやっていたのかという情報は知っておきたいですから」

 

「学校としては許可できないな」

 

 

 まぁ、当然そのような反応が返ってきますよね。ですが、諦めるわけにはいきません。折角のチャンスですから。

 

 

「では、その情報をポイントで買うとしたらどうですか? 確か、この学校ではポイントで買えないものはないのですよね。であれば、情報もポイントで買えるはずです」

 

「クラス替えが二千万ポイントでできるようなものね」

 

 

 その情報は初めて聞きました。ですが、そんなことができるのであれば尚更、個人情報をポイントで手に入れることはできそうです。何せAクラスの特権すらポイントで買えるということなのですから。

 

 

「結論から言えば、できる。ただし、絶対に個人情報を外部に渡すことはしないでくれ。そのことが約束できるのなら、売ろう」

 

「かしこまりました。そのことは約束いたしましょう」

 

 

 私としては個人情報を外部に漏らすメリットがありません。まぁ、メリットがないとしても自主的に漏らすようなことはいたしませんが。

 

 

「それで、どのくらいのポイントを払うことになるのでしょうか?」

 

「そうだな。一人につき、十万ポイントといったところだろうか」

 

「少し安いような気がしますが」

 

「高いと文句を言われることは想定していたが、安いと言われるとは思わなかったな。本気でハッキングすればタダで手に入る情報をわざわざポイントで買おうとしてくれているんだ。この程度の値段になるのは当然だろう」

 

「そうですね。では、十万ポイントで手を打ちましょう」

 

 

 本当はもう少しだけ高いと思っていたのですが、そこまで厳重に保護しているわけではないのですね。それとも私達が信用されているのかのどちらかですが。

 

 

「俺も払おうか?」

 

「いえ、これは部活動ですから。部費で落とせます。そうですよね、真嶋先生?」

 

「あぁ、その通りだ。個人的な目的に使うわけでもなさそうだし、顧問として許可しよう」

 

 

 部費で支払うことに許可をもらえたことで早速、十万ポイントを真嶋先生に払います。入金を確認した真嶋先生は個人情報のコピーを取ってくるためにコピー機の方に向かいました。

 

 

「それにしても情報の売買ができるとは思っていなかった。他にも売買が可能なものをリストにまとめたいところだが……無理だろうな」

 

「えぇ、膨大な量になるのは間違いないでしょうし、何よりもリスト化する手間を考えると相当なポイントを払わなければいけないのでしょうね」

 

 

 そうやって雑談をしていると、真嶋先生が戻ってきました。一枚コピーを取ってくるだけですからそこまで時間は掛からなかったのでしょう。

 

 

「これが佐倉愛里の個人情報だ。学校側が知っている情報しか載っていないが、それでも構わないな」

 

「はい、ありがとうございました」

 

 

 ケセドに関する情報はおそらく載っていないでしょうが、普段は何をやっていたのかを知れるだけでも充分な価値があります。

 

 

 

 

 

 

 解散した後、私は佐倉さんの個人情報を持って部室に来ていました。中身はまだ見ていません。人目があるところで見るわけにはいきませんから。

 

 

「さてと、まずは佐倉さんの情報から見てしまいますか」

 

 

 小学校や中学校に通っていた形跡はちゃんとあるようですね。生徒として隠れるためには、そういうところにも通っておかないと怪しまれるからでしょう。もしかしたら、改竄している可能性もありますか。どうやって改竄したのかは不明ですけど。

 

 プライベートの情報も記載されていますね。廃工場に一人でいたところを保護されて、佐倉家に引き取られたという記述があります。養子なんですね彼女は。廃工場に一人でいた理由はケセドとして活動していたからでしょうか。

 

 ケセドは兵器生産工場の生産システムAIが感化された結果、生まれた可能性が高いとされています。ケセドが最初に発見されたのも兵器生産工場だったそうですから。その工場はケセドが暴れたせいで廃工場になってしまったそうですね。生産システムAIが無くなったからだという話もありますが。

 

 他には雫というグラビアアイドルとして活躍していた実績があるそうですね。ですが、ここは外部と連絡をすることが禁止されている学校です。そのことを活かすこともできないでしょう。ですが、排除した際の悪影響は強そうですね。間違いなく、ニュースになるでしょう。そして、学校に記者が大量に押し寄せるでしょうね。そうなったら、最悪です。

 

 

「情報はこんなところですか」

 

 

 佐倉愛里がケセドであることはほとんど、確定と言っていいでしょう。しかも、グラビアアイドルとして有名である以上、安易に機能停止をさせると大事になってしまいます。ケセドとして公表したとしてもそれはそれで記者を呼ぶことになるでしょう。困ったものですね。

 

 

「何か困っているのかな?」

 

「貴女は、えっと……」

 

「一之瀬だよ。一之瀬帆波」

 

 

 そうでした、一之瀬さんでしたね。忍者であるとはいえ、名前を覚えていないのは単純に自分の記憶力を疑ってしまいます。

 

 

「それで、一之瀬さんは私に何の用ですか?」

 

「あれ、忘れちゃった? 私が貴女の側にいるのは貴女を護衛するっていう任務のためだよ」

 

「そのことは覚えています。私が聞いたのは話しかけてきた理由についてですよ」

 

「いや、何か困っているのなら力になりたいなって思っただけだよ。それが普通だと思うけどな」

 

 

 この人はこういう優しい人でしたね。すっかり忘れていました。常に側にいるとはいえ、私は認識できないので話すこともありません。そのため、彼女の性格に関しても忘れてしまったのでしょう。

 

 

「それで、何に困っているの?」

 

「ケセドが人型になれる可能性があることはご存じですか? 世間ではちょっとした有名人のようでして、どうやっても高育に悪影響を及ぼしそうなのです」

 

 

 そもそも預言者である以上、素直に退学させられるわけがありません。そんなことをしたら、学校全体に機械兵やドローンを配置してくるでしょう。そうなったら、ある程度の犠牲者が出ることは覚悟しなければなりません。

 

 

「どうにかする方法はありませんかね?」

 

「気にする必要、ないんじゃないかな」

 

 

 気にする必要がないというのはどういうことでしょうか。そう疑問に思っていることを察したのか一之瀬さんは言葉を続けます。

 

 

「今まで国の命令で暗殺任務を受けたことが何度かあるんだけど、相手を病死なんかに偽ってくれたりして大きな騒動になったことはないんだ。だから、国の隠蔽能力は凄いんだよ。有名な人だったとしてもどうにかできると思うけどな」

 

「つまり、後のことを考えるのは私の役目ではないということですね」

 

「そういうこと」

 

 

 一之瀬さんがそういうのであれば、倒した後のことは国に任せましょう。それにしても良い人そうな一之瀬さんが暗殺任務を受けたことが何度もあるということには驚きました。忍者とはそういうものであることは知っていましたが、実際に言葉として聞くと恐ろしいですね。触れると怖いですし、暗殺任務の話は聞かないようにしましょう。

 

 

「それにケセドの正体が分かったところで、ケセドを倒す方法はまだ見つかっていないんだよね? だったら、まずはそっちについて考えてみない?」

 

「痛いところを突いてきますね。ケセドを倒す方法は見つかっていません。数が多いのもそうですが、何よりも本体が硬いのです。本体をどうにかする方法がなければ話になりません」

 

 

 ドローンや機械兵などはまだ何とかなりますが、本体はそれらよりも非常に硬い物で守られているそうです。中にあるコアのような物は脆いそうですが、どうやってコアのような物を露出させましょうか。まぁ、コアのような物が脆いということが分かっているということは、コアのような物を攻撃したことがあるということです。

 

 つまり、本体の意思とは関係なく露出するタイミングがあるのでしょう。そこを考える必要がありそうですね。重要そうな情報なのにも関わらず、資料に載っていないということは誰も知らない可能性が高そうです。まぁ、知っていたらとっくに倒せていそうですけど。

 

 

「何か思いついた顔だね」

 

「一応、ですけどね。後はケセドと戦ったことがある人に聞くか、ケセドと実際に戦うしか倒すための手掛かりを得る方法はありません」

 

「いきなり、後者を選ぶのはやめた方が良いと思うな」

 

「はい。ですから、まずはケセドが現れるまで地道に聞き込みですかね」

 

 

 知っている人がいるとは思えませんが、地道に聞き込みをすることで何か得るものがあるはずです。その情報から作戦を練り、ケセドを討伐することにいたしましょう。

 




堀北鈴音が最初に出てきたのは、誰か一人でも呼び出しに出ておいた方が良いからと判断したためです。
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