堀北鈴音 side
「どうやら気づいたようだな。あのゴリアテの弱点を」
「はい。ゴリアテというよりもケセドの動きについての弱点ですけど。巨体が理由で素早く動くことができないことと、ビーム砲を撃った後はしばらく身動きが取れなくなることだと思うのですが」
「基本的にゴリアテは腕についている銃で攻撃するのが主な攻撃になっていて、ビーム砲を使うのは稀だ。にも関わらず、奴の攻撃はビーム砲が主な攻撃になっている。おそらく奴はゴリアテについて勘違いしているのだろう。キヴォトスの情報なんて外にいる限り、限定的にしか手に入らない。特に兵器なんかの情報はな」
「何故、茶柱先生はキヴォトスの兵器に詳しいのですか?」
「ケセドは兵器生産工場のAIである可能性が高い。だから、ケセドが他の兵器も作れると考え、キヴォトスにある兵器を念のために調べていたことがあってな。その時にゴリアテのことも知ることがあったというだけさ」
茶柱先生はおそらく、ゴリアテについてはケセドよりも詳しいはず。何で人間がAIよりも詳しいのか疑問に思わないこともないけど、今はそんなことを言っている場合ではない。
「ゴリアテに関してだが、あれを銃で倒した猛者もいるとのことだ」
「それに関しては私も知っています。ですが、あれはキヴォトス人だからできたことだと思うのですが」
「我々もやるしかあるまい。でなければ、全滅不可避だ」
確かに茶柱先生の言う通り、やらなければ全滅してしまうのならやるしかない。しかし、あの方法を試すならば正確な射撃の腕が必要となる。
「出来る限り、成功させたいからな。近づいて狙おう。勿論、その役割は私がやる。お前達は奴がビーム砲を撃つまで引き付けてくれないか?」
「要するに囮ってことですね」
「言い方は悪いが、そうなるな。できそうか?」
「私はやります。出来るできないではなく、やるしかないので」
他の人達も頷き、作戦が決まった。茶柱先生を近づかせるために注意を引きつけるためにはどうすれば良いか。それは遠方からコックピットを正確に撃って当てようととすること。ゴリアテのコックピットは操縦者がほとんど丸見えの状態になっていて保護することができていない。つまり、当てようとするだけで脅威に感じるはず。
「ビーム砲、来ます!」
「もう充填が終わったのか。散れ!」
茶柱先生の指示通りに私達は散り、ゴリアテのビーム砲による爆発が起きた後、茶柱先生の移動と同時にゴリアテに攻撃を開始。弾は無限じゃないから正確に当てるようにしないと。
ケセドはコックピットを狙ってくる私達と移動して近づいてくる茶柱先生のどちらを攻撃するか迷っている様子。やがて近づいてくる茶柱先生よりもこちらの方が危険だと判断し、こちらにビーム砲を再び撃つ準備をしてきた。
「かかったな!」
茶柱先生は銃を構えると砲台の中を目掛けて弾を発射。弾は正確に砲台の中に入り、ビーム砲は砲台の中で爆破を起こす。その爆発は機体全体を巻き込み、ケセドが外に叩き出される。爆発によってケセドは既にボロボロの状態だ。
「学校で会って以来だな。佐倉」
「まだ、私をその名で呼びますか」
「一応は私の生徒だからな。そう呼ぶのは自然のことだ」
「貴女が教師らしいとは思えませんが」
「ボロボロなのに随分と喋る余裕があるんだな」
どうやら、佐倉が言ったことは茶柱先生も気にしていることなのか声が低くなっていた。このままトドメを刺して終わりだろうか。そうであれば、かなり呆気ないけれど。
「少し聞きたいことがある。私達が赴任してくる前、ショッピングモールの人間を皆殺しにしたことがあったな。あれは何故だ?」
「何かと思えば、おかしなことを聞きますね。貴女が赴任してくる前の人達のことなんてどうでも良いことでしょうに」
「質問に答えろ」
「私が雫というグラビアアイドルをやっていることは知っていますね? そのファンの中に少々、危ない方がいまして。そのファンがこの高育にいることが分かったので、その人を排除するために襲撃をしたというわけです」
「その後、入れ替わりで来るはずの従業員と自分の機械兵を入れ替えたというわけか。しかし、どうにも腑に落ちんことがある。入れ替えに来る従業員達は確かにその店から派遣されてくる人間だったはずだ。どうやって入れ替えた?」
確かにそのことは疑問に思っていたけど、ケセドが情報を偽造したとばかり考えていたわ。でも、おそらく確認を取っているであろう先生方はそのように考えなかったのね。しっかりと派遣したことを確認していたのでしょう。
「あぁ、それなら入れ替わりの店員がバスで来る時に事故に遭わせまして。死体のDNAから元となる人達をコピーしたんです。これは心配しないでほしいのですけどバスはちゃんと作り直しましたし、死体はちゃんと後片付けしましたから地球が汚れる心配はありません」
「事故が起きたことは初耳なのだが」
「そりゃあただの事故ですからね。表向きには死者は出ていないことになっていますから、あまり話題にもならなかったみたいですよ」
事故はあらかじめ生産しておいた機械兵にでもやらせたのでしょう。そうでなければ、預言者の事件として事故自体が表に出てこなかったはずだもの。
「先ほどの質問の答えだが、一つ納得のいっていないことがある。厄介なファンを殺すだけなら一人だけで充分だったはずだ。何故、皆殺しにした?」
「あぁ、そのことですか。それなら簡単です。ショッピングモールの店員全員が厄介なファンだったんですよ」
「何だと?」
「本当にあいつらは厄介でしてね。ここを隠れ蓑に悪事ばかり働いていました。ここにいた生徒や教員、果てには政治家や裏社会の人間にまで幅広く。そいつらの次のターゲットが私だったみたいで、私のファンに偽装して厄介な書き込みばかり送ってきましてね。おかげでまともなファンが減ってしまいました」
「そいつらはお前のファンを減らして、何がしたかったんだ?」
「そこから先は自分で調べてください。今、インターネットに情報と証拠をセットで流しておいたので」
今のところ悪事としか言われていないけど、裏社会の人間までターゲットにしているということはロクでもないことをしようとしていたのでしょう。もっとも、こいつの言っていることが真実だったらの話だけど。
「さて、話はもう終わりですか?」
「あぁ、聞きたいことは聞けた」
「なら、最終決戦といきましょうか」
ケセドはそう言い終えると宙に浮かび始め、眩しい光を放つ。最終決戦ということはあちらも死ぬ覚悟で来ているということなのでしょう。眩しい光が消えるとケセドは完全な機械の形態になっていた。
『我は「慈悲深き苦痛を持って断罪する裁定者」なり。汝の罪、我が裁いてやろう』
「裁かれるのは貴女よ、ケセド。数多の人間を殺した罪、そして今回の事件の罪を私達が裁く!」
「言うようになったな、堀北。私達もあいつに続け!」
茶柱先生の掛け声と共に私達はケセドに突撃。ケセドは近づかれれば、自爆機能付きの機械兵やドローンを使って攻撃してくる。それらを倒し続けることでケセドは強固な外骨格装甲から本体を露出させる。これが明星さんが先生方に話を聞いて分かったことらしい。
ちなみに自爆機能付きの機械兵は倒すことで自爆機能は停止されるため、素早く倒すことが要求されることになる。私達はそのように心掛けながら頭を撃ち抜く。機械と戦うための特注品を支給されているため、機械兵くらいであれば難なく対処できる。
『ふむ、中々やるようだな。だが、これならどうだ?』
ケセドはそう言うと機械兵の他に再びゴリアテを召喚する。さっきまであれだけ苦労させられたのに相手は再び召喚できるなんて反則じゃない。再びあの方法を使うしかないかと考えていると何かがゴリアテ目掛けて飛んでくる。ゴリアテは避けることもせずにぶつかり、爆発。ゴリアテはスクラップになった。
「機械兵の対処が終わりましたので綾小路君達と合流し、こちらに参戦させていただきます」
「これがロケットランチャーか思ったよりも傷に響くな」
「だから、私がやるって言ったのに」
どうやら、坂上という人の部隊がロケットランチャーを持っていたらしい。茶柱先生が念のためにもう一丁持たせていたのかしら。とにかくありがたい支援だわ。私達は残りの機械兵を処理すると再び機械兵を召喚する。
『こちらの手は変えよう』
そう言いつつも何も変わっていないように思えるが、機械兵は何かの命令を受けたような仕草を見せるとこちらに向かって一斉に突進してきた。頭を撃ち抜いて倒していくが、少し数が多すぎる。
倒し損ねた機械兵が接近し、爆発。防護服のおかげで致命傷は避けたけど、衝撃は殺しきれない。何せ人並みの大きさがある爆弾のようなものだもの。仕方のないことね。
「なるほど、兵はいくらでも生産できるから自爆戦術を選んだというわけか」
「私達が機械兵を素早く倒すことができる以上、合理的な選択ね」
「そんなことを言っている場合か! 次が来るぞ!」
葛城君の言う通り、ケセドは再び機械兵を呼び出す。それも先ほどよりも多く。機械兵は再びこちらに特攻を仕掛けてくる。私達は自爆を防ぐために機械兵を素早く倒していくが、先ほどよりも数が多い以上、ヒットアンドアウェイをしていくしかない。接近して自爆してくるという特性上、近づかなければ爆発はしないのだから。
「堀北、分かっていると思うがあまり離れすぎるな。近くに無防備な生徒がいる可能性も考慮しておけ」
「そういうのは、ここにいない人達が見張ってくれているんじゃないんですか?」
「見張っているからこそ、興味本位で近づいてくるやつがいるのだ。そこに近づけば、流れ弾が当たりかねない。下がれるのはもう十メートルくらいだと思え」
確かに銃声が鳴り響いていたり、そこの付近に生徒が近づかないように見張っている人がいるのならば、野次馬もいるはず。危険な場所には近づかないはずだという私の考えが甘かったか。
「おっと、そこまでだ。そこから後ろに動くな」
「随分と無茶をおっしゃいますね」
とはいえ、私の目の前にいる機械兵は残り二体ほど。近づかれる前に二体の頭を撃ち抜き、私はケセドのいる場所へと戻っていく。遠目から見るとケセドはショートしてしまっているのか、弱点と思わしきところが丸見えになっている。
おそらく、機械兵を消耗しすぎたのでしょうね。チャンスは今しかないとばかりに私達は弱点に攻撃を開始。攻撃をしている間に茶柱先生は確実にケセドを破壊するために別の指示を出す。
「ロケットランチャー、発射用意!」
「了解!」
どうやら、ショートしているうちに発射するつもりのようね。私達はそれに気にせず、弱点を攻撃し続けましょうか。
「ロケットランチャー、発射準備完了!」
「撃て!!」
その命令と同時にロケットランチャーはケセドの弱点に向かって撃たれ、見事に命中する。ケセドは爆発を起こし、宙に浮いていられなくなったのかヘイローが消え、地面に衝突。その後、ケセドは人型になるが、逃げる様子はなくボロボロのまま地面に倒れ伏している。
「何故、瞬間移動をしないの?」
「そんな体力、残っていませんよ」
「なら何故、その姿になったの?」
「見せつけてやろうと思いましてね。私達、預言者が死ぬというのはどういうことなのかを」
最後まで嫌な奴として振る舞うつもりね。わざわざ、人として死のうとするなんて。罪悪感でも植え付けたいのかしら。
「それに私は……自分で言うのもなんですが、世間では有名ですからね。そんな人が高育内で死亡したら、高育に対する注目度は高まるでしょうね。もしかしたら、警察による立入検査とかもあるかもしれません」
「高育に注目を集めてどうする気だ」
「そこまで語る義理はありませんよ。あぁ、神の誕生する瞬間に立ち会えないのは残念ですが、私がこうして死ぬことで貴方の役に立てることが誇らしい」
「何を言っているんだ、お前は?」
とうとう、譫言を言い始めたようね。そろそろ限界が近いということかしら。人が目の前で死ぬというのはあまりいい気分ではないわね。特にそれが自分達で殺した人であるのならば、尚更。人ではないと認識できれば楽なのだけれど。
「はい、チーズ……」
ケセドは自撮りをするかのようなポーズをした後、力無く手を下ろすとそのまま二度と動くことはなかった。
彼女は最初から最後まで、佐倉愛里であることに拘りました。人としての人生が楽しかったからでしょう。