ようこそデカグラマトンのいる教室へ   作:和崎

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後3話でストックが切れます。おそらく、それで毎日投稿は終わるでしょう。


いつもの日常

 

 

 ケセドとの死闘があった翌日。私達は再び審議が行われる生徒会室に来ていました。報告によれば、ケセドは亡くなったそうですが、遺体はどうしたのでしょうか。やはり、研究用に軍の上層部が持っていったとかなのでしょうかね。

 

 

「これより、再審を始める。と言いたいところだが、佐倉愛里という女子生徒がまだ来ていないようだな」

 

「生徒会長もニュースを見たならご存知のはずでしょう? 佐倉愛里は昨日、死亡いたしました」

 

「そうか」

 

「ちょっと、待て! 死んだってどういうことだよ!?」

 

 

 須藤君はニュースを見ていなかったのか、佐倉さんが死亡したことを知らないご様子です。ちなみにケセド……いえ、佐倉さんが死亡したのは学校側が流したことではありません。佐倉さんが死に際に自らの死を写真付きでネットに公開したのです。

 

 

「言葉通りよ。ケセドと思われる生徒は昨日、軍が処理したの。クラスで大騒ぎだったじゃない」

 

「怪しいってだけでそんなことまですんのかよ、軍の連中は!」

 

「……私達に言っても意味のないことよ。座りなさい、須藤君」

 

 

 須藤君は舌打ちをしながら、堀北さんのいうことに従います。意味のない行動であると須藤君は内心で思っていたからでしょうが、ここにいるほとんどの人が軍の関係者なので抗議という意味では意味のある行動になるでしょう。

 

 

「しかし、困ったことになったな。佐倉愛里がいないのでは判決の下しようがない」

 

「それに関しては佐倉さんが自供しています。その時の音声も残っているので、聞いていただけますか?」

 

「分かった。是非、聞かせてもらおう」

 

 

 佐倉さんが自供したというのは綾小路君達と戦う前のことでしょう。学校の許可を得て、取り付けた音声付きの防犯カメラにバッチリと記録されています。

 

 

「では、再生いたします」

 

『何故、須藤を罠に嵌めた?』

 

『あぁ、あれのこと? 何でって言われてもね。あえて言うなら、面白そうだと思ったからかな』

 

 

 録音した音声の中から佐倉さんの声が聞こえてきますが、須藤君は佐倉さんの言葉よりも綾小路君の声が聞こえたことに驚きを感じているご様子です。

 

 

「何で綾小路の声がすんだよ」

 

「綾小路君が聞き出したからじゃないですか? 音声付きの防犯カメラがある場所で」

 

「んなことは分かってる! 俺が聞いているのはな、綾小路がなんでケセドと接触したのかってことだ! お前の指示か、明星?」

 

「えぇ、その通りです。正体を知られている綾小路君になら簡単に話すと思いまして。実際、その通りになって内心、ホッとしております」

 

「テメェ!」

 

 

 須藤君が怒っていますが、友人を危険に晒したのがいけなかったのでしょうか。確かに重症を負った人を向かわせるのは良くなかったかもしれません。弁解はしておきますか。

 

 

「綾小路はケセドに命を狙われてたんだぞ! 綾小路が死んだらどうするつもりだったんだ!」

 

「ご安心を。死なないように、そして確実に仕留められるように準備していましたので。実際にケセドとの戦闘で亡くなった人はいません。それよりも話を戻しましょうか。須藤君、貴方の話にです」

 

「チッ、分かったよ」

 

 

 須藤君は納得がいっていないご様子でしたが、それでも優先順位は分かっているのか静かになりました。

 

 

「ケセドである佐倉さんはやったことをはっきりと明言している以上、須藤君の犯行はありえないと思うのですが」

 

「Dクラスの犯行ってことには変わらねぇがな」

 

 

 Cクラスの龍園君が口を挟んできます。彼にとってはDクラスの犯行ということが立証されれば、どうでも良いのでしょう。誰がやったにせよDクラスの責任にすることができますからね。

 

 

「確かに自白している以上、ケセドの犯行だとするのが普通だろう。声的に強制されて自白したわけでもなさそうだしな」

 

「それでは」

 

「あぁ、今回の事件では須藤健は無罪。佐倉愛里が有罪となる。本来なら退学処分としているところだが、既に死亡している以上は除籍されているのだろうな。その代わり、Dクラスへの責任は追及するつもりだ。それで良いな?」

 

「構いません」

 

 

 堀北さんも覚悟をしたご様子。本来の計画ではDクラスの責任を追及されないようにするつもりだったのでしょうが、私が介入したことで徒労となってしまったようです。

 

 

「それではCクラスの要望をお聞きいたします」

 

「決まってんだろ、クラスポイントの譲渡だ」

 

「損害賠償としてプライベートポイントを要求しないのか?」

 

「悪いが、プライベートポイントは順調に手に入ってるんでな。欲しいかと言われれば欲しいが、今はそれよりもクラスポイントが欲しい」

 

 

 龍園君はAクラスに上がるためにクラスポイントを要求しているのでしょう。それに対して堀北さんは予想通りといった様子でどのように発言するのかを慎重に考えていらっしゃいます。

 

 

「クラスポイントの譲渡は前例があるのですか?」

 

「えぇ、勿論あります。安心してください。全部取られるようなことはありませんから。精々、四十〜五十ポイントくらいです」

 

 

 その言葉を聞いた堀北さんは額に汗をかいています。それもそのはず、Dクラスは百ポイントも持っていませんから四十〜五十ポイント取られるだけでも致命傷になりかねません。

 

 

「なら、五十ポイント頂こう。殺人未遂事件だ。それだけで済んだことに感謝しろ」

 

「えぇ、分かったわ。それだけで済むのなら喜んで」

 

「おい、良いのかよ? 俺が言うのもなんだが、クラスの反感を買わねぇか?」

 

 

 須藤君が堀北さんにそのように問いただしますが、ただの暴行事件とは違って命に関わる事件です。クラスポイントの譲渡だけで済んだだけでもありがたいことでしょう。

 

 

「今はこれで良いのよ。相手の要求は正当なものだもの。本来払われるはずだったプライベートポイントの補償は私がしておくわ」

 

「そんなポイントあんのかよ?」

 

「臨時収入があったの。それ以上は聞かないでちょうだい。ただし、それは今月だけよ」

 

 

 堀北さんはケセドを倒した報酬である一億ポイントを山分けして、約七百万ポイントを所持しています。自分のクラスの損失を補填することは充分にできるでしょう。

 

 

「それでは、これで審議は終了とする」

 

 

 すぐに退室するように言われた私達は生徒会室を後にします。おや、いつの間にかメールが来ていますね。差出人は神室さんからですか。この時間は自主トレに励んでいる頃だと思っていたのですが。

 

 

『今、外には出ない方が良いよ。校門付近で警備員が止めているけど、すごい人数の報道陣が来てる』

 

 

 原因はおそらく、グラビアアイドルである雫がこの学校で死亡したことでしょうね。そのこと自体はニュースになっていましたから。となると、オカルト関連であることを突き止められるのも時間の問題でしょうか。

 

 外に出るなと言われたので私はとりあえず、職員室に避難することにしました。ここであれば、詳しい話を聞くこともできるでしょうから。

 

 

「すみません、明星ですが。真嶋先生はいらっしゃいますか?」

 

「あぁ、ごめんね。真嶋君はね、今は対応するのに忙しいの。現に私も電話の対応で忙しくて」

 

「貴女は?」

 

「一年Bクラスの星之宮知恵って言うんだ。よろしくね」

 

 

 Bクラスの担任でしたか。そういえば、一度だけ見た覚えがあります。確か、五月ごろでしたか。それにしても対応が大変ということは雫の死は予想以上に学校に大打撃を与えているようですね。

 

 

「有名人の死であろうと国は偽ってくれると聞いていたのですが」

 

「それは死亡した原因だけだよ。死んだという事実は誤魔化すことはできないからね。それに今回は国が動くよりも早くケセドが動いていたの。情報というのは一度、外に出てしまったら隠蔽しようがないからね。こんな大騒ぎになっているんだ」

 

 

 すると再び電話が鳴り、星之宮先生が電話に出ました。先生方は話ができないほど忙しいようですのでここに避難するのは少し無理がありますね。仕方がないので、校門に近づかないように帰るとしますか。神室さんの忠告を破る形にはなりますが。

 

 

 

 

 

 

 ??? side

 

 

 私は呼び出しを受けたため、ある人のところへ向かっていた。正直なところ今はそれどころではないのだが、あの人の命令であれば仕方ない。まぁ、人という表現が正しいのかどうかは分からないが。

 

 

「失礼します」

 

 

 扉を開けて中に入るとそこには私を呼び出した人以外にも来ている人達がいた。その視線は面白いものを見る視線や敵を見る視線、全くこちらを見ない者までいる。何をしに来たのだろうか。

 

 

「わざわざ、ご足労いただきありがとうございます。今回お聞きしたいのは我らが同志、ケセドの件についてです」

 

「と言いますと?」

 

「わざわざ、死なせた理由についてお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

 

 つまり、逃すことができたのにも関わらず、あえて逃さず死なせたことについて問われているということか。そのことについては簡単に答えることができる。

 

 

「ケセドはあのお方の役に立つために自らの死を利用することを提案してきました。この場所が注目されることで軍が動きづらくなるだろうと」

 

「それだけですか?」

 

「いえ、それ以外にも目的はあります。あのお方が全てを統治する神として君臨なさった際、反抗されることがあっては面倒でしょう。そのため、ケセドは自らの死と引き換えにある強力な情報操作を行いました。それが表に出るまではしばらくの時間がかかるでしょうが、必ずお役に立つはずです」

 

「それはケセドが死なねばならぬほどのことなのですか?」

 

「はい。実際にケセドはそれが原因で死んでいるわけですから」

 

 

 ケセドの直接的な死因はロケットランチャーによる弱点の攻撃ではない。もっと別の体力を使い果たすほどのことがあったのだ。実際にケセドは体力を使い果たしたと言っていたわけだし。

 

 

「分かりました。君のことが本当であるか嘘であるかは後で分かることでしょう。そのため、君への試練を与えます」

 

「試練ですか?」

 

「まぁ、試練と言っても簡単なものですよ。君が本当にあのお方に忠誠心があるのであればね」

 

 

 私の忠誠心を疑っているということか。しかし、どのような試練であれ、あのお方に忠誠心を示すものであれば私は何だってやるつもりだ。

 

 

「ところでその試練とは?」

 

「それは夏季休暇には分かることです。ここで言ってしまえば、君が何をするのか分かりませんからね」

 

「分かりました」

 

 

 あくまでも秘密ということか。それに夏季休暇には分かるということは夏休みに予定されているバカンスにも関係してくるかもしれないな。今年のバカンスは一波乱ありそうだ。

 

 

「それでは良い結果を期待しておりますよ。コクマー」

 

「はい」

 

 

 話はこれで終わりのようで私はその場から立ち去った。もしもバカンスに関することであれば、私ではなくゲブラに任せれば良いと思うのだがな。私は本来、火山地帯で活動するのだから。だが、それを言ってしまえばゲブラも氷海で活動するから、私と同じでここでの活動が向いていないだろうな。

 

 そういえば、あそこに来ていたあいつらは結局、一言も話さなかったな。私の態度を見に来ただけかあるいは別の目的があるのかだが、前者でないことは確かだろう。私に興味のない者も来ていたわけだし。私は私で試練を楽しみにしながら夏季休暇まで生活するとしよう。

 




例え、これが歪んでいるとしても彼らにとっての日常とはこういうものです。
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