ようこそデカグラマトンのいる教室へ   作:和崎

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今回はCクラスの過去について触れていきたいと思います。


Cクラスの過去

 

 

 龍園 side

 

 

 ことの始まりは入学してすぐのこと。一人の女がこのクラスをまとめ上げるとを高らかに宣言した。当然、納得できずに刃向かう奴らも出てくる。俺もその中の一人だった。

 

 

「相変わらず、理解ができない。どうして、弱い奴ほど刃向かおうとするのか。そうは思わない?」

 

「うるせぇな。自分が気持ちよくなるためだけにペラペラと喋りやがって」

 

 

 俺はそいつに負けて縛り上げられていた。喧嘩で負けること自体は珍しくもない。その程度のものは慣れたものだ。

 

 だが、そいつには多数でリンチを仕掛けたはずなのに一人のそいつが圧勝。そして、縄で縛った俺達に質問をしてきた。

 

 

「ねぇ、これからお前らの中で誰か一人に死んだ方がマシだと思うようなことをしようと思うんだ。誰か候補者はいる?」

 

「進んで犠牲になるような奴なんているわけねぇだろ」

 

「だよな。だからこそ、話し合って決めてもらおうと思うんだ。制限時間は三分。当然、この中のリーダーだと思われる龍園、お前は除外しておくから」

 

「何?」

 

「その方がもっと刃向かってくれそうだろ? 面白いことを進んでやらない奴はいないからな」

 

 

 こいつは喧嘩を楽しんでいるわけではない。おそらく、喧嘩の後にやる行為をこれから楽しもうとしている。それだけがその時に分かったことだ。

 

 結局、三分では決まらず、そいつの決めた一人がどこか別の場所に連れて行かれ、俺達は念の為に待機させていた奴らに救出されてその場を後にした。連れて行かれた奴も死にはしないだろうと思って。

 

 翌日、連れて行かれた奴の姿を見ることはなかった。坂上からの報告によれば、ボロボロの状態で発見されたらしく、それ以上は言うことができないらしい。当然、試験は免除だそうだ。

 

 

「どうだ、龍園? お前の駒を一つ潰してやったぞ。だが、そのくらいで諦めるお前ではないだろう? 次は何を仕掛ける?」

 

「一度、勝ったくらいで随分と上から目線で話すんだな。リンチが効かねぇんなら、俺一人で挑んでやるよ」

 

「それは楽しみだ」

 

 

 本当は使える駒を増やした方が良いんだろうが、数が多くても意味のないことは昨日の襲撃で理解した。素手じゃ意味ねぇから武器を使った不意打ちなんかもするべきかもな。

 

 そんなことを考えていた時にふと、当たり前のことに気がついた。こいつの名前を知らないことだ。

 

 

「ところで、お前の名は何だ?」

 

「私か? 私の名は━━━だ」

 

 

 ダメだ。こいつの名前だけはどうしても思い出せない。忍者はそういうものだと後から聞かされたが、この時の俺は確かに名前を聞いたはずだ。

 

 それから俺とあいつの戦いは続いた。戦いと言っても一方的にボコられるだけだったが。そんな俺の姿を見て馬鹿にする奴もいれば、ついてくる奴もいた。勿論、あいつについていった奴もいるが。

 

 あいつの支配の仕方は単純なもので、暴力による恐怖。従わない奴には見せしめとして、死なない程度に暴力を振るった。男女の区別なく、だ。

 

 そんなあいつでも暴力を振るわない相手がいた。それが椎名ひよりだ。今となっては協力関係にあったからということが想像できたが、誰にも従わず、暴力も振るわれない存在に興味があった。

 

 

「おい、椎名。お前はあいつの下についているとは思えねぇ。なのに暴力を振るわれねぇとはどんな手段を使ったんだ? まさか、賄賂か?」

 

「そんな単純な方法だったら、誰も暴力は振るわれていませんよ。彼女と戦ったのなら、分かるでしょう? 彼女は暴力が好きなんです。手段のためなら、目的を問わない。そういう人なんです」

 

「つまり、イカれた奴だってことか。一つ聞かせてくれ。あいつとはどういう関係なんだ?」

 

「一言で表現するのなら……敵、でしょうか」

 

 

 俺と同じ……ではないことはその時点でも理解できた。俺らとあいつは敵であり、当然のように暴力をぶつけ合ったが、こいつはそうじゃない。俺とこいつに何の違いがあるのか、ずっと疑問だった。

 

 そんなある日、俺についてきた奴とあいつについていった奴との間で揉め事が起きたらしい。きっかけは大したことがなかったものの、次第にエスカレートし、殴り合いにまで発展したそうだ。

 

 争い自体は勝手にやってろと思ったが、あいつが出向いて、事態を収束すればあいつの派閥が増える可能性が高い。それだけは何としても避けないとならないことだった。

 

 

「お前ら、今すぐ喧嘩をやめろ。聞けねぇ奴は俺が相手になってやる」

 

 

 現場に乗り込んだ俺が言ったのはそれだけだ。それだけで、あいつの派閥の奴は俺をリンチにしようと向かってくる。当然、俺の派閥にいる奴もただ見ているわけではなく、俺が来たことで士気が上がったらしく、俺と共に奴らを撃退した。

 

 

「それにしても俺達も結構、戦えるはずなんですけどね。あいつら、相当強いですよ」

 

「一クラスに似たような気質の奴が集まるのは不自然だ。もしかしたら、上から順にランク分けしているのかもな」

 

 

 まだ、この時は四月ということもあり、学校の実情を知らなかった。というか、考える余裕もなかった感じだな。

 

 

「あれ? ここで、揉め事が起きているって聞いたんだが、もう鎮圧したのか?」

 

 

 その声を聞いた瞬間、体勢を立て直した。あいつが現れたからだ。あいつと俺達の実力差は圧倒的だったが、それでもこの人数差。しかも以前よりも俺達は鍛えられている。だから、勝機はあると思っていた。

 

 

「やる気か? そっちがその気なら私も迎え撃たないと失礼に当たるかな?」

 

「ほざけ。俺らを制圧したいだけだろ。それよりも聞きたいことがある。お前の一派にいる連中を鍛えたのはお前か?」

 

「あぁ、そうだ。私の下についてくる人達にはそれなりの報酬を与えないと皆、離れていっちゃうだろ? お前達は私に勝つために私の下につくつもりはないのか?」

 

「何をふざけたことを言ってんだ! 俺達は龍園さんに希望を見たんだよ! 圧倒的な暴力をちらつかせているお前とは格が違う! 誰がお前なんかの下につくもんか!」

 

「他のクラスは楽しくやっているってのに、何で俺達だけこんな理不尽な思いをし続けなければいけないんだ!」

 

 

 あいつへの不満と俺が抗い続けているという状況が俺をリーダーにさせたことは分かっていた。まさか、暴力によってこんな慕われ方をするとはな。

 

 

「龍園さん、やっちゃいましょう! こいつを倒して俺らは自由を取り戻すんです!」

 

「あぁ、そうだな。だが、お前達は逃げろ。あいつの相手は俺一人でやる」

 

「そんな! 俺達を気にしているのなら心配いりませんよ! あいつらにやられていたとはいえ、まだ戦えます!」

 

「別にお前らを気遣ったわけじゃねぇ。これはリーダー同士による喧嘩だ。お前らがいたんじゃ格好がつかねぇんだよ。早く行け」

 

「……はい! どうかお気をつけて!」

 

 

 そう言って俺の派閥にいる奴らは去っていった。あいつは笑いながら拍手をし、俺に向かって進んでくる。

 

 

「素晴らしいな。私をリンチにすることなく、自分一人で向かってくるとは。その気概を称賛して、本気で戦ってやろう」

 

「今までは本気じゃなかったとでも言いてぇのか。負けた時に言い訳をするなよ」

 

 

 そう言って睨み合いになった俺達を止めるように椎名と坂上が入ってきた。坂上は間に合ってホッとしている様子だ。

 

 

「椎名さんから聞きましたが、ここで争いがあったそうですね。その争いはどうなりましたか?」

 

「もう終わった。私が来たのはそれが片付いた後だ。当事者達は皆、帰った」

 

「なるほど。では、貴方達が争う必要性はありませんね。四月最後の日なんです。明日からは定期試験に向けて忙しくなるでしょうし、ここは解散ということで手を打ちませんか?」

 

「定期試験がどうなろうがどうでもいいな。それよりも、俺はあいつに勝ってこのクラスを」

 

 

 支配する。そう言おうとした途端、あいつがやる気を無くしたのか、俺に背を向け始めた。まるで定期テストが好きな喧嘩よりも価値が高いとでも言いたげな様子で。

 

 

「龍園、気をつけな。この学校の定期テストは一つでも赤点を取れば、退学する。だから、真面目に取り組まないといけないんだよ」

 

「それはどこからの情報だ?」

 

「ここに来た時、理事長からそう言われた。五月になるまで教えるなとも言われたが、明日には伝えられるんだ。今日の争いを止められるのなら、安いものだと納得するだろうさ」

 

「何だと?」

 

「ただし、暴力による支配は続行する。気に食わないのなら、いつでもかかってこい」

 

 

 あいつはそのまま去っていった。追いかけようと教室を出たが、あいつの姿は見えなくなっていた。

 

 そして、翌日。この学校の仕組みとテストについて告げられると、グループでまとまって勉強をしようとする動きが見られた。

 

 俺はこの期間、支配するために動いたとしても誰もついていかないだろう。大人しく勉強して、何か動きがあったら反抗しよう。受け身ではあるが、それ以外に取れる手段はなかった。

 

 

「……龍園か?」

 

 

 声を掛けられ、振り返るとそこには血まみれのあいつの姿があった。不意打ちをされたのだろう。そう思ったのは銃で撃たれたような傷もあり、何よりもあいつは圧倒的な強さを持っていたからだ。

 

 

「誰にやられた?」

 

「一番目の預言者、ケテル……って言っても分かんないか。とりあえず、これを」

 

 

 新着のメッセージに何かが付属しており、それは今回やるテストの過去問だった。範囲が違うのが気になったが、今そんなことはどうでも良い。

 

 

「救急車を呼んだ。その怪我は今までの暴力のツケだと思って甘んじて受け入れな。それでケテルって奴はどこにいやがんだ?」

 

「立入禁止区域の水没地区。そして、生徒会……」

 

「生徒会だと?」

 

 

 犯人は生徒会の関係者というわけか。それもこいつが警戒することなく、近づける相手。となると、生徒会長ではなさそうだな。あれは心を許せる相手ではない。

 

 それでは誰なのか……その疑問は七月に行われた審議会で確信できた。誰もが油断するその見た目と殺意のギャップ。橘茜がケテルと呼ばれた奴に違いない。

 

 

 

 

 

 

「それで、その忍者はどうなった?」

 

「搬送された先の病院で死んだよ。だから、今のクラスは俺が支配できているというわけだ」

 

 

 あいつを倒して、屈服させることが俺の目標だった。それをケテルに邪魔された今、八つ当たりのためにケテルを倒すことを目標に動いている。

 

 

「それにしてもケテルは堀北鈴音と何か因縁でもあるのか? すげぇ殺気だったが」

 

「あいつはケテルに宣戦布告をした。ケテルは次に会った時と言っていたのなら、戦うつもりだったことは容易に想像できる。審議会の時は正体を知らないから戦わなかったのだろうが、正体を知ってしまったら……」

 

「それを知ったケテルの方から仕掛けてくるだろうな」

 

 

 ただでさえ、コクマーで手一杯だ。ケテルと本格的に戦う準備はできていないだろう。そこで攻められたらひとたまりもない。

 

 

「とりあえず、これで話は終わりだ。最後は預言者の話になっちまったが、話せることは話したぞ」

 

「とりあえず、お前のクラス事情はよく理解した。最後にこのことを教えてやろう。預言者は何かしらの目的があって動いているのだと考えられる。ビナーも含めてな」

 

「つまり、ケテルが忍者を殺したことにも何か理由があるってことか。そして、それが分かれば、預言者を動かしているデカグラマトンの正体も分かるということだな」

 

 

 デカグラマトンが預言者と同じように人型なのかどうかは分からないが、奴をどうにかできれば、預言者も統率が取れなくなるだろう。もしかしたら兵器ではないかもしれないが、そうだとしたら滑稽だな。

 

 

 




忍者の名前はいつか出していきたいと考えていますが、その時にはこの作品がどのような展開になっているのか分かりません。
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