ようこそデカグラマトンのいる教室へ   作:和崎

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続きができたので、投稿します。今回で五日目も終了すると思います。


想定外の行動

 

 

 作戦を遂行するには囮となる人が欠かせません。撃たれる人がいなければ、上陸される恐れがありますので。

 

 上陸させてしまえば良いと考える人もいますが、私の提案は船に乗っているからこそ有効なのです。それに上陸されるとどこにいるかが分からなくなり、安全策が取りづらくなりますから。

 

 

「こちら、明星。指定の場所に到着しました。どうぞ」

 

『了解。そのまま、船が来るまで待機しているように』

 

 

 囮とは船から撃たれることを前提にしたものであり、当然その役目は私が引き受けます。何故、撃たれる前提なのかと言えば、撃ったという証拠がなければ、面倒なことになるのが目に見えているからですね。

 

 とはいえ、ただ待っているというのは怪しさ全開ですので、私は一人で浜辺で投げ釣りをしています。最近、爆弾の解体で忙しかったのでこういう時でないと遊ぶことができません。なので、少しだけラッキーだと思うことにします。

 

 

「私も混ぜてもらって良いかな?」

 

「危険なので、ダメですよ……ってその姿で来たのですね」

 

 

 振り返ると全身、白い格好をした櫛田さんがいました。ヘイローを出しているので、預言者がこの島に出現していることを軍の関係者に知らせていることになります。

 

 

「こちら、明星。人型のホドが接近していますが、敵意はないようなのでそのまま任務を続行します。どうぞ」

 

『了解した。敵には変わりないので、警戒は怠らないように』

 

 

 一応の報告を済ませて、櫛田さんに少し離れるように伝えます。浜辺での釣りは少し離れることが良いそうですから。そのことを分かったのか、櫛田さんは指示に従って釣りを始めました。

 

 

「それにしても貴女を探しに来るんじゃないですか? 貴女は人気者でしょう?」

 

「流石にこんな状況で外に出るほど、馬鹿じゃないよ……多分」

 

「だと良いのですが……おっと、かかりましたね」

 

 

 私は竿が引いたので、回そうとしたタイミングで船が見えてきました。おそらく、あれが犯人の乗っている船でしょう。その船を視界に入れながら、ハンドルを回していると突然、釣竿が破壊されて私の胸に弾丸が当たった感触がしました。

 

 

「あの船か……乗っている人も馬鹿だね。このタイミングでヘイローをつけている人なんて、あからさまな囮なのに」

 

 

 櫛田さんはそう言うと、船の方向に手のひらを向けました。何をするのかは予想がつきますが、こちらの方が早いでしょうね。

 

 ホドとして攻撃するよりも早く、私達の船からロケットランチャーが発射されます。ロケットランチャーの速度は時速四キロから六キロ程度ですが、油断している船にはその程度で充分でしょう。

 

 

「貴女にやらせては面子に関わりますから、今回はこちらでやらせてください」

 

「……しょうがないな。特別だよ」

 

 

 ロケットランチャーは船に当たり、爆発を起こします。そのまま、船が沈んでいくとこちらの船に乗っていた教師が助けに行きました。捕まえた上で色々と聞きたいことがありますからね。

 

 

「さてと、そろそろ戻る?」

 

「いえ、犯人に対する尋問を行う必要がありますから、私はここに残ります。貴女は帰ってもらっても構いませんが」

 

「どんな尋問をするのか見たいから私も同行するね」

 

「貴女には尋問はしないと思いますが……まぁ、拒否権はなさそうですし、構いませんよ。ただし、混乱を避けるために櫛田桔梗の姿でいることが条件です」

 

「うん、分かった」

 

 

 そのまま人としての姿に戻ると、そのまま私の後についてきました。流石に拷問はしないと思いますが、しそうになったら止めに入りますか。

 

 

 

◇

 

 

 

 合流地点に到着すると、そこには防護服を着た何者かと先生達、そして縛り上げられた犯人がいました。

 

 

「さてと、キリキリと吐いてもらおうかな」

 

「一応言っておくが、拷問はダメだ。警察に引き渡した後、不起訴で終わる可能性があるからな」

 

「そして、こいつらは報復に来るかもってことですか。なら、あの方法しかないですね」

 

「あの方法?」

 

 

 どうやら、尋問は防護服を着た人物が行うようです。声色から男性であることが分かりますが、聞いたことがない声ですし、部員ではなさそうですね。

 

 

「えっと……こんなところで何をしてるのかな? 平田君」

 

「それはこちらの台詞だよ、櫛田さん。ホドっていうオカルトと共に明星さんが来るって聞いてたけど、君がそうなんだね」

 

 

 平田君……確か、撃たれた軽井沢さんの彼氏でしたか。一般の方に櫛田さんがオカルト的な存在だと知られたら、混乱を生む可能性があったので知らせたくなかったのですが、仕方ありません。

 

 

「てっきり、気づいていると思ったけど。そうだよ、私が……って今はそんなことはどうでも良いかな。茶柱先生、どうして平田君が尋問をしているんですか?」

 

「本当は我々が行うつもりだったのだが、少し脅されてな」

 

「脅しとは人聞きの悪い。ただ、僕に尋問をさせてくれれば、取り調べをされた時にロケットランチャーを使用したことを黙っているって言っただけじゃないですか」

 

「それを脅しと言うんだ。まぁ、この学校では評価ポイントではあるのだが」

 

 

 私もキヴォトスでは脅しを使ったことはありますが、高育に来てからはないですね。いざとなったら、使ってみるのも良いかもしれませんが、バレたら面倒なことになりそうですね。

 

 

「さてと、尋問を始めようか。まずは君達の動機からかな」

 

「話すわけがないだろ」

 

「まぁ、話さなきゃ話さないで良いよ。その時は警察に取り調べをしてもらうだけだから」

 

「へっ……警察に突き出しても無駄だぜ。あいつらも俺らとはグルだからな」

 

「戦闘準備中の軍にそんなことを言うとは、殺してくださいと言うようなものだが。もしくは、それが狙いか」

 

「なんとでも言うと良い」

 

 

 例え、命を失っても話すつもりはないということですか。そんな人に話すようにさせるのは難しいですね。平田君の言っていたあの方法とやらに賭けるとしますか。

 

 

「この状況でも口を割らないということはそのための訓練も受けてますね。となると、この人達の正体は殺し屋でしょうか?」

 

「一般人にはない狙撃スキルもある。こいつ自体は殺し屋かもしれんが、となると雇った奴を聞き出したいところだが」

 

 

 茶柱先生は携帯で犯人の顔を撮影すると、そのまま携帯をいじり始めました。殺し屋相手なら、軍で顔が分かっているタイプの相手かもしれないですからね。こんなにあっさり捕まる殺し屋なら尚更。

 

 

「最近は顔写真で検索できるから楽で良い。さて、こいつらの身元は分かった。確かに殺し屋だが、こいつら自体は低ランクだ。少しの金と頼むルートさえ持っていれば、島の奴らでも雇えるだろう」

 

「雇った人はそのルートとやらを調べれば、良さそうですね。ハッキングとなれば、私の出番ですが」

 

「いや、その必要はないよ。僕にはこういうタイプの人から情報を聞き出すためのとっておきの手段がある」

 

「それがあの方法ですか。一体、どういった方法なんですか?」

 

「口を割らない相手から情報を聞き出すための古典的な方法。それは、自白剤」

 

 

 確かに古典的な方法ではありますね。といっても開発は1900年以降にされたそうですけど。それに自白剤は大脳上皮を麻痺させる以上の効果はないので、最終手段以外に使うことはないものです。

 

 

「悪いが、私達は自白剤なんて持ってきてないし、それは拷問と見なされる恐れがある。だから、別の方法にしてもらおうか」

 

「それじゃあ、死にたくないという恐怖を味わってもらいましょう。そしたら、喋りたくなりますよ。勿論、拷問は無しで」

 

「最初からそれが狙いだったな? それで、どうやってその感情を引き出すつもりだ?」

 

「オカルトになら、できるはずです。櫛田さん、お願いしても良いかな?」

 

「……分かった。でも、殺気に反応して撃ったりしないでね?」

 

 

 そう言うと、櫛田さんは殺し屋に向けて凄まじいほどの殺気を放ちました。近くにいた私もその殺気を感じていますが、生徒会の橘先輩が放った殺気とはまるで違いますね。

 

 橘先輩はこれから戦うための殺気でしたが、この殺気からは純粋な怒りが感じられます。オカルトならできるということは橘先輩も預言者なのでしょうか。

 

 

「よくも私達の大切な茶番を台無しにしてくれたな! お前達のせいで今回、犠牲者を出さないという方針がパァになっただろうが!」

 

 

 これが櫛田さんが隠していた本音ですか。確かに今回の茶番はこの人達が出てこなければ、預言者達の計画通りに終われたはずですからね。

 

 

「あ……あぁ」

 

「このまま話すか、私のようなオカルトになってから話すか、好きな方を選べ! ただし、オカルトになるのなら、死ぬのは避けられないと思え!」

 

「話す! このまま話すから、オカルトにするのはどうか勘弁してくれ! いや、してください!」

 

 

 低ランクの殺し屋というのは本当のようですね。命のやり取りをしているのにも関わらず、殺気程度で怯えるとは。それともオカルトにするという言葉に怯えているのでしょうか。

 

 

「依頼人は確かに島にいた奴らの誰かだ! 船を手配したのもそいつらだからな! だが、そいつらは協力者のような奴らで依頼人自体の顔は見てねぇ!」

 

「なら、何でそんな顔も見せないやつの依頼を受けたの? 少なくとも、私の知っている殺し屋はそんな依頼は受けたりはしないよ」

 

「それは……家族を人質に取られたからだ! 家族の拘束されている写真が送られてきたら、普通は従うだろうが!」

 

「なるほどね。だったら、もう手遅れかも。依頼を失敗したことは既に報告がされているはず。私だったら、そんな奴の家族はすぐに殺しているし、その家族の命はもうないかもね」

 

「そんな……」

 

 

 殺し屋をするのなら、家庭など持つべきではなかったのです。もしくはいつでも切り捨てられるようにしておくべきでした。そんなことが思えるのは、死から遠いキヴォトス人だからですかね。

 

 

「だけど、今ならまだ間に合うかも。貴方の家族がいる場所さえ、言ってくれれば、貴方に家族を救わせてあげるよ」

 

「お前はオカルトらしいが、お前に何ができるというんだ?」

 

「物は試し。ほらほら、早く言わないと尊い命が失われるよ」

 

 

 殺し屋は諦めたように家族がいる場所を話しました。その場所はどこか分かりませんが、少なくともここから近くはなさそうです。

 

 

「うん、分かった。じゃあ、一緒に行こうか」

 

「一緒に? 何を言っているんだ?」

 

「茶柱先生、ちょっとこの人を借りていきますよ」

 

「好きにしろ。ただし、明日までに必ずそいつを連れて戻ってこい。警察に突き出す必要があるからな」

 

「ありがとうございます。やっぱり、本物より良い人ですね」

 

「本物?」

 

 

 平田君がそのように疑問を持ちながらも、殺し屋ごと櫛田さんは瞬間移動をしてしまいました。預言者の瞬間移動は初めて見ましたが、本当にできるのですね。

 

 既に殺されていない限り、櫛田さんなら救出できそうですし、あまり心配する必要はありません。ペンションに戻って爆弾探しの続きでもしましょうか。

 




本当は殺し屋には死んでもらおうと思ったのですが、生き残ってしまったのは想定外でした。ですが、このキャラクターはこの章限りのキャラクターだと思います。
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