『離島が見えてきたぞ! 総員、戦闘準備!』
真嶋先生が放送でそのようにおっしゃったので、作戦に参加するメンバーは個室に戻って準備をしています。
私は前線には出ないので、防護服を着る必要がありませんが、折角購入したものですし、着ておきますか。
まもなく、離島の港に到着するとAクラスとDクラスのメンバーは念のために手配していた車で上陸をしました。
「では、上陸を確認しましたし、私達はゾンビを探すとしますか」
「だが、どうやって探すんだ?」
「櫛田さんの情報によれば、ゾンビは生体反応があるそうですからソナーで見つかると思います。逆に言えば、それしか探す方法はないのですが」
「いや、充分だ。当然、軍の奴らには言ってるんだろ?」
「そうでなければ、私はここにはいませんよ」
さて、軍の方々が見つけるまでの間、私は何をしていましょうかね。寝るわけにはいきませんし、ゾンビに関することでも話し合いますか。
「皆さんに確認したいことがあるのですが、そもそもジャイアントゾンビというのがどういうものなのか知っていますか?」
「名前通り、デカいゾンビのことだろ?」
「あぁ、ゲームとかで強敵として扱われるよな」
「ゲームとかやるんだな、お前」
「意外か?」
喧嘩が趣味のような龍園君がゲームをすることは別に意外でもありませんが、話が脱線しそうなので戻しましょう。
「ジャイアントゾンビはゾンビ型とスケルトン型に分けることができます。スケルトン型のものは『がしゃどくろ』なんて言ったりもしますね」
「そういえば、今回はどっちなのか聞いてなかったな」
「今回はゾンビ型だそうですよ。一応、過去にも巨大なオカルトの目撃例があるようで、その時は海に誘導して倒したそうです」
「そのオカルトというのは……いや、今はやめておこう。明星が言いたいことは今回は倒すのに絶好の機会ということだな?」
「足止めって話じゃなかったのか?」
確かに足止めが目的ではあります。しかし、相手が想像以上に弱かった場合には倒してしまっても問題はないでしょう。そのことを伝えると、龍園君は面倒だという顔をしました。
「今回のジャイアントゾンビは合体したゾンビの集合体のようですから、魚雷や大砲を使えば倒せる可能性もゼロではありません」
「倒せなかった場合でもコクマーを撃退もしくは討伐したという報告があるまでは足止めをしなければならない、か。本当に面倒な仕事だな」
「それでも、船上で銃を撃つだけの俺達はかなり楽だと思うがな」
大変なのは指令を出す人……つまり、私です。どのような行動をするのかということやどんな攻撃が有効なのかを見極めないといけませんからね。
『対象と思わしき、物体を確認! 総員、直ちに持ち場につくように!』
「もう見つけたのか。もう少し、話していたかったが、仕方ねぇ」
「俺達の命運は明星、お前にかかっていると言っても過言ではない。そのお手並み、しかと見せてもらうぞ」
「分かっていますよ。それでは、戦いが終わった時にまたお会いしましょう」
私は自身の持ち場である戦闘指揮所に向かいます。本来、私のような身分では立ち入りができないのですが、指揮をする立場として立ち入らざるを得ないという理由で許可が出ました。
「君が明星ヒマリだな? 私はこの船の艦長をしているものだ」
「事前にお話しした通り、私が指揮をさせていただきます。そのための許可を出してくださったことに感謝を」
「上層部からの命令となれば、仕方がない。本来なら提督の役目だが、あの人は置いてきてしまったからな」
本来、海上でのオカルト討伐は艦隊を率いて、提督が指揮しながら戦うそうです。しかし、今回は軍艦が一隻ある程度。そのため、討伐を視野に入れて取り組まないと足止めすらできません。
「ゾンビを目視で確認! 距離、およそ十キロメートル!」
「そんなにデカいのか……いや、だが何としても足止めをしなければ」
今更、説明することではないと思いますが、距離が離れているほど物体は小さく見えます。普通の人間であれば、一キロメートルも離れれば、見えなくなるでしょう。
しかし、十キロメートルも離れている物体がここから目視できるということはそれだけの大きさがあるということ。念のため、用意をしておいて正解でしたね。
「大砲の射程距離はどのくらいですか?」
「射程距離は四十キロメートル。ここからでも充分に当てられる」
「では、相手の様子を探るために一発、撃ってみますか」
それで、攻撃が当たるようであればここから狙い続けて足止めをしましょう。万が一、当たらないようであれば、近づくしかありませんが。
「発射用意!」
「発射用意完了! いつでも発射できます!」
「そうか。では、撃て!!」
その合図と共に大砲がジャイアントゾンビに向かって発射されます。さて、大砲の威力がどのくらいなのか見極めなければなりませんね。
「目標に命中! しかし、損害は軽微な模様!」
素直に当たったということは大砲よりも速く動くことはできないということですか。それよりも相手がこちらに気がついたのであれば、それは絶好の機会です。
「このまま、撃ち続けましょう。ただし、狙いは正確に」
「だが、弾がなくなれば補充はできないぞ。その場合はどうする?」
「そのための用意は既に済ませております。もうそろそろだと思うのですが」
船上班の任務は船の上から銃でゾンビを撃つこと。しかし、先生方にはそれ以外の任務もあります。というより、その任務が本命ですね。大砲で軽微な損害しか与えられない存在に銃など無力でしょうし。
「敵の後ろに艦影あり! これは、我が艦隊のほぼ全てです!」
「援軍か! しかし、どうやってここが分かったのだ?」
ゾンビが逃走したということは昨日の夜中には既に聞いていました。そのため、できる対策は全てしておきたかったのです。
先生方のやっていたことは位置の発信と提督と言われている方への連絡、たったそれだけのことでしたが、上手く行ったようで安心しました。
そのことを艦長に告げると、納得の顔をしていましたが、一つ分からないことがあるようです。
「しかし、上層部からの命令では我が艦にのみ命令があったはずだ。命令なく、無断出撃できるわけがない」
「ですから、提督と言われている方へ連絡をしたのです。命令を得て、指揮をしてもらうために。もっとも、あの人はコクマー討伐に向けて元々、交渉を続けていたようでしたが」
「それは知っている。私もあの人の部下だからな。コクマーは特異現象捜査部に一任したと言われたそうだが、今回のゾンビも同じように言われたのではないか?」
「上層部がデカグラマトンやその預言者達の支配下にあることは知っていますよね? 今回のオカルト……というより、その黒幕は彼らとも敵対しています。故に簡単に命令を得ることができたのでしょう」
この艦隊が来た以上は指揮自体を提督と言われている方に任せましょうか。経験の差がありますし、何より私達にはやるべきことがあります。
「さて、改めて離島に向かいましょうか。この艦が離脱することは伝えていますから」
「分かった。聞いていたな、お前達! この艦は直ちに離島に向かう! 我が艦隊の攻撃が始まり次第、ここから離脱せよ!」
さて、これでゾンビの方はなんとかなりそうですね。後はコクマーと戦うための支援をしましょうか。もっとも、既に作戦が終わっている可能性は高そうですが。
コクマーとの戦いは次回になると思います。
物語の本題ですので今まで通り、しっかりと書こうと思います。