赤き土地の唐揚げ闘争   作:Mrふんどし

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次回以降更新の間隔が空くと思います。


クーデターは美しき犠牲を元に

「部長、取り皿取ってもらっていいですか?」

 

「私もー、あと水ねー」

 

「全くお前達は私をこき使いおって...」

 

雪がまばらに降り積もる中、その日も広場の一角では油がパチパチと跳ねる音が静かに響いていた。

 

「んー!やっぱり美味しいですね〜、この口に広がる旨味が何とも....そういえば使える鶏肉ってあとどれくらいあるんでしたっけ?」

 

「ん?ああ....まだあるぞ、あの"馬鹿達"がいなくなったおかげでな!全く...」

 

部員の言葉に唐揚げを摘んでいたモモは不機嫌そうに答えた。

 

彼女が言う馬鹿達とは、以前和解した"唐揚げにレモンをかけ隊"の面々である。

あれからまた大規模な集団となったのも束の間、またもや部員の内の数名と言い争いとなり再びモモ達3人だけとなってしまったのだった。

 

ちなみにそれに伴い現在モモ率いるグループの名前は"唐揚げに海苔を巻くことを許さない集団"へ変更となっている。

 

「部長は許容しなさすぎなんですよ、少しは懐の広さを見せた方が良いと思いますけどね。それに怒ってばかりだとストレスで背も伸びませんよ」

 

「許容と言っても私はありのままの唐揚げを愛しているんだ!手を加えるのは何があろうと許さん!....あと背は関係ないだろう!」

 

「だって朝方とかどこで見たのかよくわからない体操をいつもしてるじゃないですか、あれ絶対背を伸ばすための...」

 

「ち、違うぞ!というか人のことを勝手に覗き見るんじゃない!」

 

「私はありのままの部長がいいと思うよー、そのままでいて欲しいしー」

 

ギャーギャーと騒ぎながらもいつもの様に過ごしている3人、やがて唐揚げも食べ終えるとモモは溜息をつきながら呟いた。

 

「はぁ....しかしどうすれば我々の理念が広まってくれるんだろうか...これまであの手この手を尽くしてきたが一向に賛同者が増えん」

 

「あの手この手って...色んな場所に突撃して勝手に話しては追い返されてるだけですよね?」

 

「おまけに賛同しても皆殆ど離れちゃうしねー」

 

「やはり手っ取り早いのはこの学園のトップの考えから変えていくことだ、そうすればこの学園中...上手くいけば学園外にも唐揚げの素晴らしさを広めることが出来るだろう!」

 

「でもそれで事務局に突撃しては毎回粛清されてるじゃないですか」

 

モモは立ち上がりながらそう高らかに告げるが、直後にズバッと背中から言葉を刺され膝から崩れ落ちてしまう。

 

「ぐっ...だ、だがあれは私1人か他の奴らだけの力で何とかしようとしていたからだ!そもそもお前達もその時に一緒に来てくれれば変わっていた可能性があるんだぞ!」

 

「いや無理ですよ、私達にそんな力があったら苦労しませんって」

 

「同感だねー、私達そこまで強くないしー」

 

反論しようとするモモだったが、あまりにもその通りだったため黙ってしまう。

 

「くっ...あの会長を何とか出来れば.....」

 

チェリノ会長を引き込めれば一気に自分達の力は強くなる。

だが正面突破しようとすれば返り討ちに合うほど自分達には力が無い。

 

「...ふふ、トップが崩せないのであれば簡単だ」

 

「部長?」

 

項垂れていたモモは突然不敵に笑い出すと部員2人を見ながら口を開いた

 

「台の上の物が落ちないのであれば、その台自体を変えればいい....」

 

 

 

 

──────

 

「....って言ってましたけど、だからって秘書室長に話をつけるなんて上手くいくんですか?」

 

「大丈夫だ、アイツは常に会長のそばにいる。だからこそこちら側に引き込めれば自ずと会長の力も弱まり最後には引き込める筈だ!」

 

「言うのは簡単だけど、部長にできるのー?」

 

「問題ない、交渉などこの私にかかれば朝飯前だ!....トモエ秘書室長、失礼するぞ!」

 

「はい?どちら様で...ああ、"唐揚げはそのままが至高団"のモモさんとその部員の方でしたか」

 

「その名はもう使っていないがな!今日はお前に話があってきた」

 

「お話ですか?」

 

「担当直入に言おう、我々の仲間にならないか?もし仲間になれば唐揚げ食べ放題は勿論!我々の組織が大きくなった暁には今よりもより良い地位につかせることも出来るだろう!だからチェリノ会長なんかではなくこれからは我々と共に....」

 

 

──────

 

 

「....全然駄目でしたね」

 

「怖かったねー、あの笑顔...部長少し泣きそうになってたもんねー」

 

「そ、そんなことはない!これは...戦略的撤退だ!」

 

事務局へ向かいトモエと話をしようと彼女の部屋を訪ねたモモ達であったが、彼女の圧を前にあれ以上言葉を続けることが出来ずに慌てて退散していた。

 

「とりあえず今日はもう帰って休みません?折角食べた唐揚げのエネルギー分が無くなっちゃいましたよ...」

 

「...そうだな、仕方ない。次の機会までに体力を温存しめおくのも立派な作戦で....」

 

そんな事を話しながらテントへと戻ろうとした時。

 

「ん?何だお前達は、事務局に何か用でもあったのか?」

 

不意に聞こえてきた声に顔を上げると、そこには何やら掃除用具を手にしたマリナが立っていた。

 

「むっ、そうか思い出したぞ、どこかの唐揚げ集団だったか...」

 

「......」

 

「おい、何故黙って私を見ているんだ?」

 

「部長ーどうかしたのー?」

 

「.....」

 

マリナは事務局から出てきたモモ達を見て不思議そうな顔を浮かべるが、そんな彼女を見ながらモモは静かに考えを巡らせていた。

 

(...コイツは事務局の保安委員長だったか、あのトモエ程ではないにせよチェリノ会長とは近い人物なのは間違いない....であれば会長に近づく良い口実に...いや待て!確かコイツは以前何かの理由でクーデターを起こした事があったな。もしそれでトップが.....)

 

「...?よくわからないが私はもう行くぞ」

 

固まったモモを不審に思いながらマリナはその場から動こうとする、だがその瞬間モモによって腕を掴まれた。

 

「な、何だ!?」

 

「....マリナ保安委員長、少しばかり提案がある」

 

「提案だと?」

 

「ああ、君は今の立場をどう思う?不公平に感じたことは?物足りないと考えたことは?」

 

モモはゆっくりとマリナに歩み寄りながら淡々と問いかけ続ける。

 

「立場....特段問題はないが...」

 

「ではよく思い出してみるんだ、本当に不平不満がないのかどうかを。些細なことで良い、自らが立ち会った状況を振り返ってみてくれ」

 

マリナはそう言われ目を閉じ考えて始めた。

 

「....確かにこの前の食堂では少しばかり量が減っていた気がする...」

 

「いいぞ、その調子でゆっくり言葉にしていくんだ」

 

そのままポツリポツリと僅かに存在していた不満などを口に出していくマリナ、その一つ一つにモモは肯定の言葉を投げかける。

 

「部長悪い顔してるねー」

 

「なんか私達は帰った方がいい気がしてきましたね」

 

「そうだ、あの時もおかしいとは思っていた!あれは私が...」

 

部員2人が遠巻きに見守る中、マリナの声は徐々に大きくなっていく...そうして最大限まで文句が出た所でモモはマリナの顔を見上げながら告げた。

 

「ではその不満が無くなる為にはどうすれば良い?どうすれば君が自由になれる?」

 

「それは...はっ、そうか!」

 

マリナは顔を勢いよく上げると手に持っていた掃除道具を離し、まるで答えを得たかの様に清々しい表情で言った。

 

「私がトップになれば良い!」

 

「その通りだ!今の会長ではなく君が会長になれば全て解決する!」

 

その言葉を待っていたモモは彼女に賛同して両手を掴んだ。

 

「私も協力しよう、共に自由を勝ち取ろうじゃないか!」

 

「おお!」

 

「そして唐揚げの素晴らしさを広めよう!」

 

「おお!....ん?それは必要なことなのか?」

 

「ひ、必要だ!とにかく今は考えるよりも行動だ!」

 

「そ、そうだな、よし行こう!まずは共に行動する仲間を増やさなければいけないな!」

 

そう言って2人は笑い合いながら駆け出して行った。

 

「....とりあえず帰りましょうか」

 

「そうだねー」

 

そんな2人を見送った部員達はこれから起こる未来を少しばかり想像しながらテントへと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ会長!覚悟ー!」

 

「マリナ委員長に続けー!」

 

「プリンの量を増やせー!」

 

「もっとお腹いっぱいにさせろー!」

 

「な、何だお前達は!?またなのか!?」

 

「ふはははっ!チェリノ会長、これまで私の願いを聞き入れなかったがそれも今日で終わりだ!観念するんだな!」

 

 

────────

 

 

 

 

「良しトモエ、ご苦労だった」

 

「ま、まさか負けるなんて...!」

 

会長室には何人ものクーデターを起こした生徒達が気を失い積み重なった山が完成していた。

 

奇襲をかけたまでは良かったが、その後あっさりとトモエが呼び出した護衛の生徒達によって多くが取り押さえられたり、勝ち目がないと悟った生徒達が逃げ出したりなどがありクーデターは失敗に終わったのだ。

 

「全くどうしてこう何度も問題を起こすのだ、折角お昼寝をしようと思っていたのに...お前達全員粛清だ!」

 

「くそ....」

 

チェリノの指示により捕まった生徒達が次々と運ばれようとしていく、だがその瞬間。

 

「待ってくれ!」

 

「マリナ...?」

 

立ち上がったマリナが両手を広げ運ぼうとしている生徒達を制止した。

 

「...今回の件は、全て私がやったんだ。彼女達は私が無理矢理連れてきたにすぎない」

 

「...っ、まさか!」

 

モモは驚き声を上げるが、マリナは振り返ると小さく笑みを浮かべた。

 

「だからこそ、連れていくのは私だけで十分だ」

 

そんな彼女の発言にチェリノ達は無言になる。

やがて護衛の生徒達が彼女の手を掴み拘束すると、そのまま反省室へと歩き始めた。

 

「マリナ...お前は....」

 

モモはフラフラとしながら、連れて行かれる彼女の背に声を投げかける。

 

「マリナ!必ず....必ず唐揚げを差し入れに持っていく...!だから....!」

 

そんなモモの叫びにマリナは振り返ることなく先程の様に笑みを浮かべて去っていく。

 

(....絶対に美味しい唐揚げを作るからな)

 

やがてその姿が見えなくなると、モモは目元に滲んでいた涙を拭い取りそんな決意を固めて部屋を出ようと歩き出した。

 

その一歩はただの一歩ではない、大切な思いを込めた大きな一歩だった.....

 

 

 

 

 

 

 

「どこへ行こうとしてるんですか?」

 

「え?」

 

「トモエの言う通りだぞ、マリナと一緒に反省室送りだ」

 

「え?」

 

 

 

  

 

────粛清対象者、【池倉マリナ、唐衣モモ、その他クーデター者】

 

チェリノ会長の座を下ろそうとクーデターを起こした罪で上記の者らを反省室送りとし、粛清対象者とする。

 

"レッドウィンター内の全トイレ、及び廊下の清掃3週間"

 

  




情報③

・唐揚げ集団
現在モモ率いる集団から思想の違いにより分かれ、"マヨネーズ派"、"塩派"、"野菜に巻く派"など様々な派閥が存在する。
結束力はあまり無く、事あるごとに解散が起こりその度に新たな派閥が出来上がっている。
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