「改良が必要だ!」
レッドウィンターの広場の端にあるテント...その入り口でモモは仁王立ちしながらそう叫んでいた。
「...部長、いきなりどうしたんですか?」
「こんな朝早いのにー」
モモの大声に起こされた部員達は目をこすりながら声をかける。
そんな2人に対し、モモはニヤリと笑いながら言葉を続けた。
「お前達、私があれだけ努力を重ね唐揚げの魅力を広めようとしているのに未だ成果が出ないのは何故だと思う?」
「え、誰もまともに聞いてないからでは?」
「そう!それは私の作る唐揚げがまだ完璧ではないからだ!」
モモは部員の返答を無視して自論を展開する。
「真の唐揚げとは何か!それは食べるまでもなく見ただけで人を惹きつけられるような力を持つものだ!」
「それだと唐揚げどころか何かやばいものの気がしますけど」
「つまりそれを作り上げる事が出来れば今の状況を大きく変えることも、そして別れてしまった多くの派閥の者達も全て私の元に戻ってくるというわけだ!」
「全然聞いてないねー」
「....まあ百歩譲って言いたいことはわかりましたけど、ならどうする気なんですか?」
「簡単だ、人は知らない知識をつける為に何をする?」
そう言ってモモは部員達へ振り返ると手を大きく広げ告げた。
「さあ行くぞ!出かけの準備だ!」
「行くってどこへ....?」
「無い知識であればそれを補える場所へ向かえばいい...いざ行かん!我がレッドウィンターが誇る図書館へ!」
───────
「完全に閉まってるねー」
「くそっ!何故こうも足止めをくらうんだ!」
あれだけ自信満々に部員達を連れ目的地である図書館前へとやって来たモモだったが、肝心の建物の扉は硬く閉ざされてしまっていた。
「どうします?帰りますか?」
「もう一回寝るー?」
「....ふん、この程度の足止めで引き返しては今後何もかもが駄目になってしまう」
「いやでも閉まってますし...って部長?」
一体何をするのかと見守る2人の目の前で、立ち上がったモモはいきなり図書室の窓を手当たり次第触り出した。
やがてその内の1つの前で力を込めると、そこだけ鍵がかかっていなかったのか人1人が通れる程度の隙間が出来上がる。
「よし、行くぞ」
「まさか入る気ですか!?これって不法侵入になるんじゃ...」
「何を言う!レッドウィンターの敷地にある建物にレッドウィンター生が入っても何も問題無いだろう!大丈夫だ、私が保証する」
「部長が自信たっぷりな時が1番怖いけどねー」
不安そうな顔を浮かべる部員をそのままに堂々と窓から中へと身体を滑り込ませるモモ、その後2人ともついて来た為3人は無事(?)図書館へ足を踏み入れる事が出来た。
そんな3人の視界を埋め尽くしたのは大量に並べられた棚だった。
綺麗に等間隔に並んでいる棚にそこへ仕舞われている本の数々、天井にはいくつもの照明が設置され足元の床を綺麗に照らしている。
「凄いですね、私初めて来ました....」
「ふふふ、感心するのは早いぞ。目当ての本を見つけなければ...」
「目当ての本ってどんなやつー?」
「ああ、唐揚げを大々的に取り上げていて、作る工程や材料一つ一つに注目して解説されている様な....」
「何してるんですか...?」
その時、不意に3人とは違う声が聞こえて来た。
慌てて辺りを見渡すと、そこには怪訝そうな顔で彼女達を見つめるモミジが立っていた。
「図書館は閉めてた筈、ですけど...」
「ああ、その事か!窓が開いていたからお邪魔させて貰っている。君はこの図書館の管理人か何かか?であれば本探しに協力してもらいたいんだが....」
「出ていってください!」
───────
「何故だ!何故我々が追い出されなければならない!」
「勝手に入ったからですよね?」
あれから怒ったモミジによって図書館を追い出されたモモ達は自分達のテントへと戻って来ていた。
モモは不機嫌になりながら作り終えた唐揚げを部員達へと取り分けていく。
「はむっ....結局何も出来てませんけど、本探しは諦めるんですか?」
「諦めるだと?何を言うんだ、今日はたまたま見つかったただけだ。明日にでもまた向かうぞ」
「ですよね....」
「んー美味しいー」
──翌日、
「昨日はすまなかった!つい目的を達成する事を優先してしまってな!」
再び図書館へとやって来たモモは入り口の扉をノックしながら中にいるであろうモミジへ声をかけていた。
「どうしても探したい本があるんだ、是非とも入れて欲しい!」
「....昨日の怪しい人達、ですよね...?全く信用出来ないんですけど....」
何度か続けていると、中からモミジの疑いの声が返ってきた。
「昨日のことは謝罪する!そのお詫びとして美味しい唐揚げを作ると約束しよう!それを食べてから判断してくれてもいいだろう?」
「唐揚げ....?もしかしてモモ先輩、ですか...?」
「おお私の事を知っていたか!それは嬉しい限りだな!」
「何度も変な騒ぎを起こしてよく粛正されてる、あの...?ならやっぱり図書館には来ないでください....」
「......」
何とも不名誉な覚えられ方にモモは項垂れるが、ここで諦めるわけにはいかない。
「コホン....た、確かにそれは私のことだが、今日は本当に本を探しにきただけだ、見つかればすぐに帰る!唐揚げに誓って約束しよう!」
「......」
暫くモミジからの返事もなくその場に沈黙だけが残されていく。
だがそれから施錠が外される音と共にゆっくりと扉が開かれ中からモミジが現れた。
顔はジト目でモモ達を警戒しているのは変わりないが、本を探すと言う真っ当な理由で訪ねてきた者を追い返す訳にはいかなかった。
「お邪魔します」
「やっぱり凄いねー」
昨日来たばかりではあるが、本の棚が壁の奥までびっしり続いている光景には何度見ても驚かされる。
「それで...お探しの本はどんなものなんですか...?」
「とにかく唐揚げのことを徹底的に取り上げている内容のものだ!何冊でも構わん」
「唐揚げの本...料理本とかですか...?」
「いや、もっと専門的な奴を頼む!唐揚げだけを語っているものは無いのか?」
「そんな本は見たこと無いですね...まあ追加する時にお願いすればもしかしたら、手に入るかもしれません...」
「そうか、なら早速追加してくれ!」
モモがそう言うとモミジはジト目を彼女に向けながら口を開いた。
「嫌です....」
「い、嫌だと!?」
「だって、1回ごとに事務局に申請できる数は決まってるんです....私が欲しい本を申請する時も、数が足りなくて困ってるくらい何ですから....」
「そ、そこを何とかしてくれ!」
「それに申請出来ても、許可が下りるかはまた別です...普段の申請でもほとんどが却下されちゃうので....」
それから何度も説得しようとするが、モミジは一向に首を縦に振ろうとしなかった。
「部長、諦めましょう。別に本にこだわらなくてもいいじゃないですか」
「そうそうー、今の唐揚げだって凄く美味しいしー」
「....いや、言っただろう?この程度の足止めで引き返しては今後何もかもが駄目になってしまうと」
モモは怪しく笑いながら一度その場を後にする、残された部員達やモミジは不思議そうにしながら待っているとすぐに彼女は戻ってきた。
....唐揚げを作る際の油や鶏肉、カセットコンロなどを携えて。
「ぶ、部長!何する気ですか!?」
「ふっふっふ...さあ図書館の管理人よ!お前が本の申請をしないのであれば、私は今からここで唐揚げを作りお前に味合わせてやろう!」
「ここでですか...!?そんな事をしたら周りの本が...!」
「さあどうする!ここで本の申請をするか、それとも私の唐揚げをたらふく味わうか!」
勝ち誇った様な表情のモモに対し困惑していたモミジだったが、やがて顔を俯かせるとゆっくりとカウンターの裏へと歩いていく。
「わかってくれたか、ではこれから....」
そして彼女は戻ってきた。
.....大きなRPGを両手に携えて。
「逃げるぞ2人とも!」
「これはまずいー」
「完全に部長のせいですよね!?」
「...図書館の邪魔をする気なら許しません!」
モモ達は図書館を出ると後ろを見る事なく全速力で駆け抜けた、背後からはモミジの足音とカシュっという明らかに弾を詰める音が聞こえてくる。
「伏せるぞ!」
「きゃあ!?」
必死に地面へ倒れ込んだその瞬間、モミジが撃ったであろうRPGの弾が頭上を掠めていくのを感じる3人。
「ふぅ〜これで最後だっけ?」
「...あれ?何か飛んできてr....」
弾はそのまま3人通り過ぎ.....少し離れた所で像を運んでいた生徒達にクリーンヒットした。
「「「「あっ」」」」
────粛清対象者、【唐衣モモ、秋泉モミジ、その他2名】
チェリノ会長の像を破壊した罪で上記の者らを粛清対象者とする。
"チェリノ会長の銅像の新たな設置、及び像の清掃5日間"
情報④
・唐衣モモの評判
よく現れよく粛正対象になっている為、周りの生徒からは少々ヤバイ奴扱いされている。
本人には全くその自覚は無く、毎日元気に唐揚げのことを考えている。