赤き土地の唐揚げ闘争   作:Mrふんどし

5 / 5
広告塔を探せ!

「ぶ、部長....!本当にこんな場所に人がいるんですか!?」

 

「な、何度も言わせるな!とにかく足を動かすんだ...!」

 

「そうは言っても雪が深過ぎて全然...」

 

「まだまだ見えないねー」

 

レッドウィンターの敷地の中でも片隅に存在する雪山の上、そこには現在大量に降り注ぐ雪を掻き分けながら進む3人の姿があった。

何故彼女達がこんな雪山を登っているのか、それは数時間前のモモの発言が発端だった。

 

 

 ——————————————

 

『やはり我々だけでは唐揚げの魅力を方々に伝えるのは手が足りん、協力者が必要だ!』

 

『それもう何百回も聞いた気がします』

 

『手は考えてるのー?』

 

『勿論だ!どうやらチェリノ会長によって停学処分となった者達が集まっている場所がここから離れた所に存在するらしい、つまりまだ我々が話をしていない者が多くいる可能性があるということだ!』

 

『成る程、確かに今この学園内で部長の話を真面目に聞いてくれる人なんて殆どいませんしね....というか初めて聞いたみたいな感じですけど、部長は3年生なのに知らなかったんですか?』

 

『私がいちいちそんな情報を仕入れるわけないだろう!そんな事をしている時間があれば唐揚げを1つでも多く作る方が先決だ!』

 

『いや自信満々に言うことじゃ無いと思いますけど』

 

『それでー?場所はわかってるのー?』

 

『ああ、どうやらあそこに見える雪山を登った先にあるらしい』

 

『...結構な距離に見えるんですけど、本当に大丈夫なんですか?』

 

『問題無い!あれくらいの苦難など唐揚げを広める事を考えれば小石程度にもならん!』

 

 

——————————————

 

 

「──って言ってた人が何で先にダウンしてるんですか!?」

 

「部長ー頑張ってー」

 

「.....うぅ...」

 

先程から歩き続けていた3人だったが、1番に限界を迎えたのはこの雪山登りを提案した当の本人だった。

雪山へ挑み始めてから30分、初めは威勢が良かったモモだったが次第に口数が少なくなり、ついには顔面から雪の中へと倒れ込み動かなくなってしまったのだ。

 

「とりあえず帰りますか...?あとどれくらいなのかもわからないですし....」

 

「....い、いや駄目だ...!このまま進んでくれ...」

 

「どうしてこういう時に諦めが悪いんですか!というか部長を運ぶのは私達なんですからね?」

 

「私が運ぶよー、荷物と先導よろしくー」

 

「はぁ...もうわかりましたよ....」

 

結局モモの言う通り部員達は引き返す事を止め、1人が道を作りもう1人がモモを抱えて進むことに。

彼女達はもはや周りは雪だらけで方向も、残りどれくらいの距離なのかもわからない中ひたすらに足を動かし続けた。

 

そこから更に30分以上かけて登っていくと...

 

「...あっ、部長!あれじゃないですか!」

 

不意に先導していた部員が遠くに指を差しながらそう告げる声が響いた。

彼女の示す先に見えてきたのはこの辺りに建っているにしては大きな建物、しかしその見た目は明らかにボロボロでどこからどう見ても廃墟にしか見えない。

 

近づけば近づくほど壁が崩れていたり窓が割れて雪が入り込んでいるなどその悲惨さがハッキリ伝わってくる。

 

「えぇ...本当にこんな所に人がいるんですか?」

 

「部長ー着いたよー」

 

「....ん?ああ到着したか...よくやったぞ」

 

半分気を失っていたモモは目的地に着いた事に気づくと、運ばれていた部員の背中から降りて目の前の建物へと入っていく。

 

「誰かいるか!」

 

そして入り口らしき場所でそう声を上げるが、中から反応は無い。

 

「やっぱりいないんじゃないですか?流石にこんな場所で過ごしてる人なんて....」

 

そう部員の1人が言おうとした瞬間──

 

「ああああ!!!ついに復学許可の連絡をしに来てくれたんですね!」

 

「な、何だ!?」

 

突然どこからか謎の声が3人の耳に聞こえてきた。

それと同時にドタドタという足音が響き、ボコボコに崩れていた扉が勢いよく開かれる。

 

「待ってました!ついにここでの苦しい生活が終わるんですね!....あれ、誰ですか...?」

 

固まる3人を見ながら現れた少女...ノドカは首を傾げながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁ....そうですか、復学許可を伝えにきてくれた訳じゃなかったんですね...」

 

あれからノドカの案内の元、彼女が普段から過ごしている教室...と言っていいのかわからないレベルの場所へと通されたモモ達は彼女から色々話を聞かされていた。

 

「つまりお前はその盗撮とやらが原因で会長から停学処分を受けていたと、それでやって来た私達を会長の遣いだと思った訳か」

 

「はい、もうどれくらいここにいるのかもわからない程過ごしてきましたから、そろそろ許してくれたのかと思ったんですけど....ちなみに会長は普段何か私達の事を言ってたりしてます?」

 

「いや、特に聞いたことは無いな。そもそも私もここのことはつい最近知ったばかりだ」

 

「はぁぁ、ですよねぇ.....まさか忘れられてるなんて事は無いと思いたいんですけど」

 

ノドカは深く溜息をつきながら床に倒れ込む、流石のモモ達もどうしていいかわからずその場で様子を見るしかない。

 

「あの、ノドカ先輩?少し気になったんですけど、さっき私"達"って言ってたような...」

 

「確かにー、貴方以外にいるのー?」

 

「え?あ、はい、今はちょっと出かけてて...」

 

尋ねられたノドカはそう答えようとしたが、そのタイミングで別の足音が聞こえてくるともう1人の少女が姿を現した。

 

「あれ、もしかして私のこと噂してたかな?」

 

「あ、シグレちゃん!おかえりなさい!」

 

「...?この人達は?」

 

シグレはノドカの前に座る3人を見てそう尋ね、モモ達は改めて彼女にもここへ来た理由を話し始めた。

 

「なるほどね、唐揚げの魅力を伝えに....中々面白そうなことしてるんだね」

 

「ふふふ!そうだろう?となれば話は早い、お前達には我々の語る唐揚げの素晴らしさを伝える役割を手伝ってもらおうじゃ無いか!」

 

話をし終えたモモは立ち上がると堂々とした態度で2人に告げる、だがそれを聞いたシグレはうーんと少し唸ると首を横へ振った。

 

「それはちょっと難しいかな」

 

「な、何故だ!?」

 

「だっていきなりやって来た知らない人達にこれをやれって言われても普通困るでしょ?私からすれば貴方達は他人だし、本当はそう言ってるだけの怪しい人達かもしれない」

 

「ぐっ...!た、確かにそれは一理あるが....ならどうすれば受けてくれるんだ?」

 

「んーそうだなぁ....唐揚げ?をそんなに広めたいなら、その気持ちがわかるものが1番良いかな。言うだけなら誰でも出来るし、実際それを伝える為の努力をしてるか証明してくれれば私達も安心して話を聞けるしね」

 

シグレはそう言って3人を静かに見つめる、ノドカはそんな証明をどうやってするのかと不思議そうに考え込んでいたが、一方のモモは彼女の言葉を受けてニヤリと笑みを見せた。

 

「そうか、では我々が唐揚げにどれだけ全力を注いでいるのかを伝えればいいのだな?」

 

「うん、そうしてくれると助かるかな」

 

「ふふふ....なら話は簡単だ!2人とも、荷物を解け!」

 

「まさか持って来たことが本当に役に立つなんて...」

 

「了解ー」

 

モモの一声で2人はここまで来るのに持ってきた荷物を一気に取り出し始める。

素早い手際の良さにより、彼女達の前にはあっという間にあるものが完成した。

 

「こ、これは!」

 

「結構手慣れてるんだね」

 

彼女達が作り出したもの、それは普段から唐揚げを作るために用意している料理道具一式と大量の鶏肉だった。

 

「唐揚げへの思い、それを1番伝えられるのは唐揚げを味わって貰うことだ!始めるぞ!」

 

「まあお腹も空いて来てましたし、わかりましたよ」

 

「もう空腹だー」

 

それからのモモ達は早かった。

鶏肉を冷水で解凍し、柔らかくなった所で人数分食べやすいサイズへカットしていく。

そこから片栗粉と小麦粉を混ぜ唐揚げにまぶし、カセットコンロ上のクッカーへ投入していく。

 

「わわわわっ!か、唐揚げなんていつぶりだろう!」

 

ノドカは目の前で作られていく唐揚げにもはや涎まで出かかっており、シグレも口にはしないがどこか期待した様な眼差しを向けていた。

そんな2人の視線を感じながらもモモは最後の二度揚げを終わらせると、熱々の唐揚げを小皿に取り分けていく。

 

「完成だ!」

 

そんな宣言と共に取り分けた唐揚げをノドカ達に手渡したモモは腕を組みながら2人を見つめた。

その目は『早く食べてみろ』と言っているのがよくわかる程にキラキラと輝いている。

 

「ん〜美味しい〜」

 

「やっぱりあれだけ歩いて来たからでしょうか、何だかいつも以上に美味しく感じますね」

 

部員達は既に唐揚げを美味しそうに頬張っており、その様子が尚のことノドカ達の胃を刺激していく。

 

「っ!いただきます!」

 

「いただきます」

 

とうとう我慢できなくなった2人は熱々の唐揚げに勢い良く齧り付いた。

その瞬間....

 

「「っ!」」

 

2人の表情が一瞬でそれはもう幸せなものへと変わった。

 

「ん〜〜〜!お肉が、お肉の味が染み込んできます...!」

 

「これは....美味しいね」

 

「フハハハ!そうだろうそうだろう!どうだ、これが私の全力だ!」

 

「おかわり!おかわりください!」

 

そこからはもう言葉は要らなかった。

ノドカ達が美味しそうに唐揚げを食べ、モモが新しく唐揚げを作る....気づけばつい先程会ったばかりとは思えないほどに両者の間には隔たりが無くなっていた。

 

 

──数十分後

 

「ふぅー...もうお腹いっぱいです、こんなに食べたのなんていつぶりでしょうか...」

 

「ありがとう、凄く美味しかったよ」

 

「さて、これで私が持つ唐揚げの思いは伝わった筈だ!文句はないだろう?」

 

「うん、そうだね...いいよ、貴方達が言うその手伝いをしてあげる」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「おー凄い、部長の考えが初めて成功したー」

 

「ふふふ、ハハハハッ!ついに来たぞ!私達の野望の第一歩を踏み出す時が来たのだ!」

 

モモはついに手に入れた初の広告塔兼魅力を伝える仲間を手に入れたことに歓喜の高笑いを上げた。

 

「こうしてはおれんな!この流れをものにするぞ、早速学園に戻って次なる準備だ!」

 

「え、も、もう帰るんですか!?あ、そんなに急いだら絶対また途中で倒れますって!」

 

「じゃあねー」

 

「あ、ちょっと待って」

 

「ん?どうかしたか?」

 

立ち去ろうとするモモにシグレは声をかけて静止する。

 

「貴方達の広告塔になるのは良いんだけどさ、1つお願いしたいことがあって...」

 

「何だ?」

 

「定期的に唐揚げを作りに来てくれないかな?ほら、あれだけ美味しい唐揚げを食べられたら広告する私達もやる気が上がって良いと思うんだよね」

 

「.....確かにそうだな、よしわかった!これからは週に何度かはお前達の所に唐揚げを作りに行くとしよう!」

 

「本当?助かるよ。じゃあ気をつけて帰ってね」

 

そうして今度こそ山を下っていったモモ達....そんな3人に手を振り見送っていたシグレの元にノドカがやって来て呟いた。

 

「ねえシグレちゃん」

 

「んー?どうしたの?」

 

「あの人、私達を広告塔にするって言ってたけど....私達ってここから出たりして良かったっけ?」

 

「いや、停学中だから駄目だね」

 

「だよね....それでどうやって広告なんてさせる気何だろう」

 

「それはあの人達が考えるから大丈夫じゃないかな?それよりもほら、これであの唐揚げを定期的に食べられる事になったし、結果オーライじゃない?」

 

「...もしかしてシグレちゃん、最初からそれ目当てでさっきの話を...?」

 

「さあ...ふふ、どうだろうね」

 




情報⑤

・運動能力
モモ率いる集団の中で最も運動能力が無いのはモモ本人。
勧誘に失敗したり何かやらかした際に逃げ帰る時には真っ先に捕まることが多くら部員達はそんなモモを運ぶことが多いため最近は体力がつき始めており良い運動となっている。
ちなみにそんな時にモモを置いて逃げることも同じくらい多いため逃げ足も早い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。