OFA7代目継承者 孫悟飯 作:一般DBファン
英雄に憧れ、その力を受け継いだ少年と未来を自身の弟子である少年に託した戦士
その2人が今、夢の中で会合する。
視界を埋め尽くす、深く濃い黒い靄。
ワン・フォー・オールの精神世界――「面影」と呼ばれるその空間で、緑谷出久は息をのんでいた。
目の前に立っていたのは、ヒーローデータベースのどこを探しても存在しない、見知らぬ男だった。
使い古された橙色の道着。空いた左袖。全身に刻まれた無数の傷痕。
その佇まいからは、底知れない凄みと、同時に澄み渡った大木のような静けさが漂っている。歴代継承者の記録にも、オールマイトから聞いた話にも、こんなヒーローは載っていなかったはずだ。
(この人は……一体、誰なんだ……!?)
混乱し、必死に身構える出久。しかし、どれほど未知の存在を前にしても絶対に退かないという強い意志が、その瞳には宿っていた。
泥臭く、不器用で、けれど真っ直ぐなその眼差しを見つめ、男はふっと目元を和らげた。
(……あの子に、どこか似ているな。)
かつて絶望の中で自分を信じ、共に未来を掴もうと必死に背中を追いかけてきた少年の姿が、目の前の華奢な少年と重なる。
「……そっか。君が、今の時代でこの力を受け継いでくれたんだね」
男の口元に、懐かしさと愛おしさが混ざったような温かい笑みが浮かぶ。
「驚かせてごめんよ。ボクは孫悟飯。君より少し前に、その力を預かっていた者だ。」
「孫……悟飯……?」
出久は口の中でその名を繰り返す。やはり聞き覚えはない。けれど、彼が発する圧倒的な存在感と優しさは、間違いなくワン・フォー・オールの系譜に名を連ねる「本物」であることを示していた。
「君のその目……すごくいい目だ。不安で押し潰されそうなのに、誰かを救うためなら今すぐにでも飛び出そうとしている。ボクがいた世界にもね、君と同じような目をしていた少年がいたんだ」
悟飯はどこか遠くを見るような目をしながら、優しく語りかける。
「その子はね、すべてを背負おうとして、ボクの背中を必死に追いかけていた。……君もきっと、一人で全てを抱え込もうとしているんだろう?」
「それは……っ」
出久の胸が跳ねる。オールマイトの意志を継ぐ者として背負う重圧を、見知らぬ7代目は易々と見抜いていた。
「一人で戦い続ける必要はないよ。君の周囲には、君を信じてくれる仲間がいるはずだ。
……ボクがこの力を預かっていた時間は決して長くはなかったけれど、意志はこうして君へと繋がった。君が諦めない限り、ボクたちの力はいつでも君と共に生きている。」
空間全体が大きく揺らぎ始め、意識が現実へと引き戻されていく。出久は必死に手を伸ばし、声を張った。
「悟飯さん……! あなたは一体……!?」
悟飯はただ穏やかに微笑み、少しだけ可笑しそうに目を細めた。
「ボクの物語は、もう過ぎ去った過去だ。……大丈夫、君ならやり遂げられる。それにね、そろそろボクたちの仲間の中で、一番威勢のいい人が君に挨拶したがっているみたいだ」
悟飯の視線が、出久の腕のあたりへとしなやかに注がれる。
「感情が高ぶった時は気をつけなよ。最初に彼が顔を出した時はびっくりするかもしれないけれど……『心』で制御するんだ。君なら必ず自分の力にできる」
「え……? 最初に……って……」
「また会おう、10代目」
――ハッと息を呑んで目を覚ます。
そこは見慣れた雄英高校の寮の自室だった。カーテンの隙間から朝の光が差し込んでいる。
「ハァ……ハァ……っ」
激しい鼓動を抑えながら、出久はガバッと起き上がった。ビショリと汗をかいた手を見つめ、記憶を辿る。
「孫……悟飯……? 誰だ……? 7代目は志村菜奈さんのはずだし、あんな傷だらけのヒーローなんてデータベースにも……。」
頭を抱え、必死にオタク特有の分析思考を巡らせようとするが、どうしても該当する人物が見当たらない。
「最初に顔を出す……?威勢のいい人…? 心で制御……? 一体なんのことなんだ……。」
あまりにも現実離れした光景と、辻褄の合わない存在。混乱した出久は、頭をブルブルと振って布団を跳ね除けた。
「……ううん、ダメだ。最近ワン・フォー・オールについて考えすぎて、変な夢を見ちゃったのかな。オールマイトに話すほどのことでもないと思うし……とにかく、今日の訓練に集中しないと!」
出久は自分を納得させるように呟くと、顔を洗いに部屋を出て行った。
あの男の言葉が「ただの夢」などではないと知る由もなく――。
なぜ緑谷くんがまだ喋れないタイミングの筈なのに喋れたかって?
まぁ…まだその時じゃなかったからじゃないですか?
(適当)